北海道共同募金会、使途不明金問題で内部統制不備を具体化 札幌市は理事・監事・理事会の機能不全を指摘

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北海道共同募金会、使途不明金問題で内部統制不備を具体化 札幌市は理事・監事・理事会の機能不全を指摘

北海道共同募金会は2026年8月24日、多額の使途不明金問題を受け、札幌市へ提出した「指導事項改善報告書」と、法人独自の「赤い羽根共同募金運動の信頼回復に向けた再発防止策について」を公表しました。

今回の公表で重要なのは、これまで「使途不明金」として説明されてきた事案について、経理・会計業務を長期間1人の職員に担わせていたこと、必要な決裁が行われていなかったこと、公印管理が適切でなかったことなど、内部統制上の不備が公式文書で具体化された点です。札幌市の指導事項では、会長・常務理事・監事による監督や監査も十分に機能せず、理事、監事、理事会が機能不全に陥っていたと指摘されています。

セキュリティ対策Labでは6月16日の前報で本件を取り上げました。今回の続報では、8月24日に公開された公式資料を基に、明らかになった内部統制不備と再発防止策、なお調査中の事項を整理します。

北海道共同募金会の使途不明金問題のサマリー

  • 【確認済み】北海道共同募金会は8月24日、札幌市へ提出した「指導事項改善報告書」と独自の再発防止策を公開しました。
  • 【確認済み】改善報告書は8月21日付で、7月22日付の札幌市による指導事項に対する是正・改善状況を報告するものです。
  • 【確認済み】札幌市の指導事項では、長期間にわたり1人の職員が経理・会計事務を単独で担い、必要な決裁手続きが行われず、公印管理も適切でなかったとされています。
  • 【確認済み】会長、常務理事、監事が長期間にわたり異常を把握できず、法人内部の牽制・監督機能が働いていなかったことも重大な要因と指摘されています。
  • 【確認済み】8月17日付で会計責任者に事務局次長、出納職員に主事を任命し、公印管理責任者には常務理事を任命しました。公印使用簿の運用も同日から開始しています。
  • 【確認済み】事務決裁規程と経理規程は2026年12月末までに見直す方針です。
  • 【確認済み】現常務理事は8月31日付で退任し、新常務理事が9月1日から着任する予定です。会長、副会長、監事も後任決定後に退任する意向を示しています。
  • 【確認済み】第三者委員会はまだ設置準備中で、使途不明金の発生原因、元事務局長の行為による損害額と方法、役員の責任、再発防止策などを調査対象とする予定です。
  • 【未確定】最終的な損害額と資金流出の全容は確定していません。共同通信は使途不明額を約1億8千万円と報じていますが、8月24日の公式文書では最終額を示していません。
  • 【未確定】刑事告訴は実施済みではなく、公式文書では損害賠償請求とあわせて「検討を含む」とされています。役員への賠償責任追及も第三者委員会の判断を前提としています。
項目 内容
公表日 2026年8月24日
対象組織 社会福祉法人北海道共同募金会
インシデント 元事務局長による長期の不適切な会計処理に伴う多額の使途不明金
札幌市の対応 特別監査を実施。7月22日付で文書指導
改善報告書 8月21日付で札幌市長へ提出
主な内部統制不備 経理・会計業務の1人集中、決裁手続きの不履行、公印管理不備、監督・監査機能の不全
実施済みの対策 会計責任者と出納職員の分離、公印管理責任者の任命、公印使用簿の運用開始
今後の対策 規程改定、外部専門家を活用した監査、第三者委員会、再発防止策の定期公表
使途不明金・損害額 公式文書では最終額未確定。第三者委員会で損害額と方法を調査予定
元事務局長への対応 2026年7月13日付で懲戒解雇
刑事告訴・損害賠償 損害賠償請求、刑事告訴を含む対応を検討中

8月24日、札幌市への改善報告書と独自の再発防止策を公開

北海道共同募金会が8月24日に公開したのは、札幌市へ提出した「指導事項改善報告書」と、法人としてまとめた「赤い羽根共同募金運動の信頼回復に向けた再発防止策について」の2文書です。

同会は7月29日時点で、中央共同募金会による全国緊急一斉点検と札幌市による特別監査の結果を踏まえ、弁護士の監修のもとで再発防止策を策定中としていました。今回の公表は、その具体策を正式に示したものです。

改善報告書によると、札幌市の指導日は7月22日で、同会は8月21日付で是正・改善状況を報告しました。札幌市の指導事項は、単なる経理ミスではなく、規程違反が長期間継続し、内部牽制と監督機能が働かなかった組織的な統制不備を問題視しています。

経理・会計を長期間1人に集中、決裁と公印管理にも不備

札幌市の指導事項として改善報告書に記載された直接的な原因は、既存の経理規程や事務決裁規程に反し、長期間にわたり1人の職員に経理・会計事務を単独で担わせていたことです。

加えて、必要な決裁手続きが行われていなかったこと、公印管理が適切に行われていなかったことなど、「法人の規則等を逸脱した不適切な取扱い」が多数あったとされています。

重要なのは、規程そのものが存在しなかったのではなく、規程があっても実際の業務で守られていなかった点です。内部統制では、規程の整備だけでなく、その統制が日常業務で実際に機能しているかを検証する必要があります。

札幌市はさらに、会長と常務理事が業務実態や履行状況を十分に把握・検証できず、監事も長期間にわたり異常を把握できなかったことを重大な要因として挙げています。改善報告書には、法人内部の牽制・監督機能が機能しておらず、ガバナンス意識が著しく欠如し、理事、監事、理事会が機能不全に陥っているとの厳しい指摘が記載されています。

会計責任者、出納職員、公印管理者を分離

北海道共同募金会は8月17日付で、会計責任者に事務局次長、出納職員に主事をそれぞれ任命しました。従来、会計責任者だった事務局長が会計・経理業務を1人で行っていた状態を改め、職務を分離しています。

金融機関との取引に使用する印鑑については、出納業務に従事しない常務理事を保管責任者とし、公印使用簿も8月17日から運用を開始しました。

現金を金融機関口座から払い戻す場合は、出納職員が作成した払戻請求書、出金伝票、証憑書類を会計責任者が照合し、公印管理者の承認を得たうえで金融機関届出印を押印する運用とします。1人の担当者が出金から承認、印章利用まで完結できない形に改める内容です。

月次管理も見直します。出納職員が毎月末に現金・預貯金残高と帳簿残高を照合し、会計責任者へ報告します。会計責任者は内容を確認して記録し、月次試算表を作成して翌月22日までに会長へ報告する方針です。この会長報告については、現行規程に明記されていないため、規程改定も行うとしています。

契約事務では、契約の相手方を決定する際に必ず伺書を作成し、決定までの過程を明らかにして保管する運用へ改めます。事務決裁規程と経理規程は2026年12月末までに見直す予定です。

監査の実効性も見直し、証憑や入出金記録を確認へ

今回の改善報告では、監査のあり方も見直し対象となりました。

北海道共同募金会は、2025年度以降の決算監査について、従来の監査を反省したうえで外部専門家を活用し、外部監査を行う方針を示しています。監事監査でも、総勘定元帳、会計伝票、通帳などの証憑や入出金記録を確認し、実効性のある監査方法へ改めるとしています。

不正や不適切処理の検知を考える場合、作成された帳票だけを見るのでは不十分です。銀行残高、入出金記録、原始証憑、承認記録を突き合わせ、取引の実在性と承認過程を別の担当者が検証できる仕組みが必要です。

役員体制を見直し、第三者委員会で損害額や責任を検証

役員体制も変更されます。会長、副会長、監事はすでに辞任の意向を示しており、後任決定後に適正な手続きを経て退任するとしています。現常務理事は8月31日付で退任し、新常務理事が9月1日から着任する予定です。

一方、事案の全容解明はまだ終わっていません。同会は第三者委員会の設置準備を進めており、使途不明金の発生原因、元事務局長の行為による損害額とその方法、役員の責任の有無、再発防止策などの調査を依頼するとしています。

損害回復策としては、元事務局長に対する損害賠償請求、刑事告訴の検討、支給予定だった退職金相当額の損害額への組み入れを挙げています。また、第三者委員会が役員等の責任を認定した場合には、社会福祉法第45条の20を前提とした賠償責任追及も検討します。

現段階では、刑事告訴が実施されたと断定できる公表はありません。役員の法的責任についても未確定です。

使途不明金の最終額はなお確定していない

共同通信は8月24日、使途不明金を約1億8千万円と報じています。一方、北海道共同募金会が同日公表した再発防止策では金額を確定しておらず、第三者委員会に「損害額とその方法」の調査を依頼するとしています。

このため、約1億8千万円を現時点で北海道共同募金会が確定した損害額として扱うことはできません。

同会の6月14日の第一報では、2月17日に事務局長に対する所得税法違反の嫌疑で国税局の査察を受け、3月末に「募金会にあるべき金銭が相当額不足している可能性」を確認したと説明していました。これに対し、8月24日の再発防止策では「令和8年4月に発覚した本会における不祥事」と記載されています。

公式文書の間で「発覚」の表現が異なるため、時系列としては、2月17日に国税局の査察、3月末に同会が資金不足の可能性を認識、4月に弁護士による調査が進行したものとして分けて整理するのが適切です。

その後、元事務局長は7月13日付で、多額の使途不明金となる経理処理等を理由に懲戒解雇されています。7月14日には、滞っていた地域福祉活動への助成について、計画額のおよそ50%の規模で一部再開したことも公表されました。残額への手当ては同日時点で未定です。

内部監査・コンプライアンス部門への示唆

今回の文書で確認できる問題は、「規程がなかった」ことよりも「規程が存在していても運用されず、牽制・監督が機能しなかった」ことです。内部監査では、規程の有無を確認するだけでなく、実際の承認記録、残高照合、権限付与、例外処理をサンプリングし、統制が継続的に運用されているかを確認する必要があります。

職務分掌も、役職名を分けるだけでは不十分です。起票、承認、出納、印章・認証手段の保管、残高照合、監査を同一人物が兼ねないことが重要です。小規模組織で完全な職務分離が難しい場合でも、外部専門家による定期確認、二者承認、経営層への月次報告など代替統制を設ける余地があります。

情報システム面では、公印や銀行印と同じ考え方をインターネットバンキングや会計システムにも適用する必要があります。送金登録権限、承認権限、管理者権限、MFA端末や認証情報を1人に集中させれば、紙の印章を分離しても統制は十分に機能しません。人の職務分掌とシステム権限の分離を一致させることが重要です。

監事や内部監査部門は、報告書や月次試算表だけでなく、銀行明細、総勘定元帳、会計伝票、契約書、承認履歴などの一次証憑まで遡って確認できる監査手続きを整備する必要があります。長期間にわたり異常を検知できなかった事案では、監査の「実施有無」ではなく、異常を検知できる設計と深度になっていたかが検証対象となります。

北海道共同募金会は今後、第三者委員会の調査結果と再発防止策の実施状況を公表するとしています。最終的な損害額、資金流出の方法、役員責任、刑事・民事上の対応が次の確認ポイントになります。

出典