ソニー系24社・ワーナー系11社、Anthropicを提訴 Claude学習で「数万曲」の著作権侵害を主張

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ソニー系24社・ワーナー系11社、Anthropicを提訴 Claude学習で「数万曲」の著作権侵害を主張

Sony Music Publishing(US)を中心とするソニー系24社と、Warner Chappell Musicを中心とするワーナー系11社の計35社は2026年8月28日、生成AI「Claude」を開発するAnthropic PBCと共同創業者のDario Amodei氏、Benjamin Mann氏を著作権侵害で提訴しました。

訴訟は米カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提起され、事件番号は「5:26-cv-09217」です。原告側は、AnthropicがClaudeの開発・学習にあたり、海賊版サイトやWebスクレイピングなどを通じて著作権で保護された歌詞や楽譜を含む大量のコンテンツを取得・複製したと主張しています。

訴状で問題とされているのは、レコード会社が管理する録音物そのものではなく、歌詞や作曲を含む「musical works(音楽著作物)」です。米メディアによると、原告側は数万件の著作物が対象になり得るとしています。

一方、これらは現時点では原告側の主張であり、裁判所がAnthropicの著作権侵害を認定したわけではありません。AnthropicはTechCrunchに対し、出版社側の主張に同意せず、法廷で争う方針を示しています。

Anthropic著作権訴訟のサマリー

  • 2026年8月28日、音楽出版社35社がAnthropic、Dario Amodei氏、Benjamin Mann氏を提訴しました。
  • 訴訟は米カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提起されています。
  • 事件番号は「5:26-cv-09217」です。
  • 原告35社の内訳はソニー系24社、Warner Music Group系11社です。
  • Sony Group Corporation自体が原告として記載されているわけではなく、Sony Music Publishing(US)などの音楽出版社が原告です。
  • 原告側は、Claudeの開発・学習に「数万件」の著作権保護された音楽著作物が無断利用されたと主張しています。
  • 訴状は、LibGenから500万冊超、Pirate Library Mirrorから200万冊超の書籍が取得され、その中に歌詞や楽譜が含まれていたと主張しています。
  • Web上の歌詞もスクレイピングされ、Claudeの学習などに利用されたと原告側は主張しています。
  • Claudeが一部の歌詞を同一または近似した形で出力することも問題視されています。
  • 原告側は、著作権侵害に加えて著作権管理情報(CMI)の除去・改変も主張しています。
  • 故意の著作権侵害と認定された場合、米著作権法上は1作品あたり最大15万ドルの法定損害賠償が選択肢となります。
  • CMIの除去・改変についても、DMCAに基づく損害賠償を求めています。
  • Anthropicは原告側の主張を争う方針を示しています。
  • 本件は訴訟開始段階であり、侵害の有無や損害額は確定していません。
項目 内容
提訴日 2026年8月28日
裁判所 米カリフォルニア州北部地区連邦地裁
事件番号 5:26-cv-09217
原告 音楽出版社35社
原告の内訳 ソニー系24社、ワーナー系11社
主な原告 Sony Music Publishing(US)、Warner Chappell Musicなど
被告 Anthropic PBC、Dario Amodei氏、Benjamin Mann氏
対象 Claudeの開発・学習・出力など
主な争点 著作権侵害、海賊版取得、スクレイピング、学習利用、出力、CMI除去・改変
対象著作物 原告側は数万件の音楽著作物と主張
請求 損害賠償、差止めなど
Anthropicの反応 主張に同意せず法廷で争う方針
現在の状況 訴訟開始段階。裁判所による侵害認定はありません

原告はソニー系24社、ワーナー系11社

米連邦裁判所の訴訟記録には、原告として35社が記載されています。

Sony Music Publishing(US)をはじめ、Colgems-EMI Music、EMI April Music、EMI Blackwood Music、Famous Music、Jobete Music、Screen Gems-EMI Musicなど24社については、Corporate Disclosure StatementでSony Group CorporationがCorporate Parentとして開示されています。

一方、Warner Chappell Music、Warner-Tamerlane Publishing、Unichappell Music、Rightsong Musicなど11社についてはWarner Music Group Corp.がCorporate Parentとして開示されています。

そのため、「ソニーグループ35社がAnthropicを提訴」ではなく、「ソニー系24社とワーナー系11社の音楽出版社35社が提訴」とするのが正確です。

また、Sony Music EntertainmentではなくSony Music Publishing(US)が中心となっている点にも注意が必要です。

Anthropicと共同創業者2人を被告に

被告はAnthropic PBCだけではありません。

訴訟記録では、AnthropicのCEOで共同創業者のDario Amodei氏と、共同創業者Benjamin Mann氏も個人として被告に含まれています。

原告側は、Anthropicによるデータ取得やAI開発の意思決定に両氏が関与したとして責任を問う構成を取っています。

ただし、個人としての法的責任が認められるかどうかについても、今後の裁判で争われることになります。

原告はLibGenから500万冊超を取得したと主張

訴状で大きな争点になっているのが、Claudeの学習データをどのように取得したかです。

米TechCrunchやThe Vergeが訴状を基に報じた内容によると、原告側はBenjamin Mann氏が2021年6月にBitTorrentを利用し、海賊版図書館サイトLibrary Genesis(LibGen)から500万冊を超える書籍を取得したと主張しています。

さらに、Anthropicの関係者が2022年7月、Pirate Library Mirror(PiLiMi)から少なくとも200万冊を取得したとも主張しています。

原告側によると、これらの書籍の一部には、原告が権利を保有または管理する歌詞や楽譜が含まれていました。

このため、書籍の著作権者とは別に、書籍内へ掲載された歌詞・音楽著作物の権利者が新たな訴訟を起こした形になります。

これらの取得行為は原告側の主張であり、本件について新たな裁判所の事実認定が行われたわけではありません。

歌詞サイトからのスクレイピングも主張

原告側は海賊版書籍だけでなく、インターネット上から歌詞をスクレイピングしたことも問題視しています。

The Vergeなどの米メディアによると、訴状ではMusixmatchやLyricFindといった歌詞サービスが例示されています。

これらのサービスは権利者からライセンスを取得して歌詞を提供していますが、原告側はAnthropicが許諾を得ることなく歌詞を取得し、Claudeの開発に利用したと主張しています。

つまり、今回の訴訟は「AI学習に著作物を使用したこと」だけでなく、「学習データをどのような経路で取得したのか」を重要な争点にしています。

Claudeが歌詞を出力することも争点

原告側は、著作物を学習時にコピーしたとの主張に加え、Claudeの出力についても問題視しています。

米メディアが訴状を基に報じたところでは、Claudeが特定のプロンプトに対し、著作権で保護された歌詞と同一または近似する文章を生成するケースがあると主張しています。

訴状では「Ain’t No Mountain High Enough」「All I Want for Christmas Is You」「Eye of the Tiger」「September」「Hallelujah」などの楽曲が例として挙げられています。

ただし、これらの楽曲についてAnthropicが実際に著作権侵害を行ったと裁判所が認定したわけではありません。

今後は、どのデータが学習に使われたかだけでなく、モデル内部での利用や具体的な出力が著作権法上どのように評価されるかも争点になる可能性があります。

著作権管理情報の除去・改変も主張

今回の訴訟では、一般的な著作権侵害だけでなく、Copyright Management Information(CMI)の除去や改変も争点になっています。

CMIには、著作物のタイトル、著作者名、権利者名、著作権表示など、権利管理に使われる情報が含まれます。

原告側は、Webページやデータセットからテキストを抽出する過程や、Claudeが歌詞を出力する過程で、こうした情報が取り除かれたと主張しています。

米Digital Millennium Copyright Act(DMCA)の17 U.S.C. §1202は、一定の条件下でCMIを故意に除去・改変する行為を禁じています。

そのため今回の訴訟は、「AI学習に著作物を使えるか」という議論だけでなく、データ前処理で著作権表示や権利者情報を取り除く行為そのものにも法的リスクがあるかを問う内容になっています。

最大15万ドルは「1作品ごとの上限」で総額ではない

原告側は著作権侵害について法定損害賠償を求めています。

米著作権法では、故意の侵害が認定された場合、1著作物あたり最大15万ドルの法定損害賠償が認められる可能性があります。

また、CMIに関するDMCA違反についても、1件あたり最大2万5,000ドルの法定損害賠償を求められる場合があります。

原告側は「数万件」の著作物が対象になると主張しているため、米メディアでは理論上の損害額が数十億ドル規模になり得ると報じられています。

ただし、「数万件×15万ドル」がそのまま請求確定額になるわけではありません。

侵害した著作物の数、故意性、登録状況、CMI違反の成立、損害賠償方式などは裁判所が今後判断する事項です。

そのため「Anthropicに数十億ドルの賠償が確定した」とする表現は誤りです。

Anthropicは「主張に同意しない」と反論

Anthropicは今回の提訴について、TechCrunchへコメントを出しています。

同社は音楽出版社側の主張に同意せず、法廷で強く争う方針を示しました。

本稿執筆時点では、Anthropicによる詳細な答弁書や、原告側の個別主張に対する法的反論はまだ確認できません。

したがって、現段階では原告側の訴状とAnthropicの短い反論が示された段階です。

Bartz訴訟では「AI学習」と「海賊版ライブラリ」を分けて判断

今回の訴訟を理解するうえで重要なのが、Anthropicが2024年から争っていた「Bartz v. Anthropic」です。

2025年6月、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁は、Anthropicが書籍をLLMの学習に使用した行為についてはフェアユースに該当すると判断しました。

一方、海賊版サイトから取得した書籍を恒久的な中央ライブラリとして保存した行為については、学習利用と同じ扱いにすることを認めず、Anthropic側の略式判決請求を退けました。

つまり、この判決は「著作権作品をAI学習へ利用すればすべて適法」と判断したものではありません。

学習のためのコピーと、海賊版コンテンツを取得・保存する行為を分けて評価しています。

この区別は今回の音楽出版社35社による訴訟でも重要になります。

15億ドルのBartz和解は2026年7月に最終承認

Bartz訴訟ではその後、Anthropicが15億ドルを支払うクラスアクション和解が成立し、2026年7月20日に連邦地裁が最終承認しました。

この和解は、海賊版書籍を取得して中央ライブラリを構築したことに関する著作者側の請求を中心としています。

今回のソニー系・ワーナー系出版社による訴訟は、Bartz訴訟の原告とは異なる音楽著作物の権利者によるものです。

1冊の書籍に小説本文と歌詞・楽譜の双方が含まれている場合、書籍そのものの著作権と、掲載されている楽曲の著作権は別の権利として存在します。

そのため、Bartz訴訟の和解によって、今回の音楽出版社の請求まで自動的に解決したわけではありません。

既に別の音楽出版社もAnthropicを提訴

Anthropicを巡っては、今回の35社だけでなく、複数の音楽出版社が著作権訴訟を起こしています。

Concord Music GroupやUniversal Music Publishingなども、Claudeによる歌詞利用・出力を巡ってAnthropicと係争しています。

また2026年8月には、独立系音楽出版社Round Hill MusicもAnthropicを提訴しています。

そのため今回の訴訟は単独の事案というより、AIモデルの学習データ取得、歌詞の利用、モデル出力を巡る音楽業界とAI企業との訴訟が拡大している流れの一部と見ることができます。

情報システム・AIガバナンス部門への示唆

今回の訴訟はAI開発企業だけでなく、自社で生成AI、RAG、ファインチューニング、社内AI検索などを構築する企業にも関係する論点を含んでいます。

第一に、学習データやRAGデータの「取得元」を記録する必要があります。

公開Web上に存在することと、AI学習やデータベースへの複製が許可されていることは同じではありません。URL、取得日時、利用規約、ライセンス、権利者、取得方法を追跡できるデータプロベナンスの整備が重要です。

第二に、海賊版データや出所不明の大規模データセットを利用しないことです。

AIモデルの性能向上に有用であっても、取得経路そのものに違法性がある場合、後から正規ライセンスを取得しても過去の取得行為が自動的に解消されるとは限りません。Bartz判決も、学習利用と海賊版ライブラリの取得を分けて判断しました。

第三に、データクレンジングで権利情報を不用意に捨てないことです。

Webページから本文だけを抽出する処理では、ヘッダー、フッター、著作者名、Copyright表示などが削除される場合があります。米国向けサービスでは、CMIに該当する情報をどう扱ったかが訴訟上の争点になる可能性があります。

第四に、生成AIの出力監視も必要です。

モデルが学習データを長文で再現する場合、入力データのライセンスだけでなく、ユーザーへ提供される出力にも著作権リスクが発生する可能性があります。既知コンテンツとの高い一致率、長文引用、特定作品の再現要求などを検知する仕組みを検討する必要があります。

第五に、外部AIベンダーの著作権保証を確認する必要があります。

企業がAPIやSaaSとしてAIを利用する場合、学習データの出所、生成物の知財補償、第三者請求時の責任分担、ログ保存、モデル変更時の通知などを契約で確認することが重要です。

セキュリティ対策Labでは、企業におけるAI利用の統制について「国内導入・海外インシデント・規制対応から読み解くAIガバナンスの実装事例」でも整理しています。

今回の訴訟はまだ始まったばかりです。今後は、Anthropicの正式な答弁、裁判所がBartz判決をどこまで参照するか、海賊版取得とAI学習をどう分離して評価するか、Claudeの出力やCMI除去に関する主張が認められるかが確認ポイントになります。

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