大阪府 羽曳野市、家庭児童相談の情報流出で職員逮捕 26世帯への匿名郵送容疑、本人は否認

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大阪府 羽曳野市、家庭児童相談の情報流出で職員逮捕 26世帯への匿名郵送容疑、本人は否認

大阪府羽曳野市が保有する家庭児童相談の情報が外部へ流出した事案で、大阪府警は2026年9月2日、市保健福祉部生活福祉課の主幹を務める50歳の男性職員を、偽計業務妨害と地方公務員法違反の疑いで逮捕しました。

羽曳野市によると、家庭児童相談に関する相談記録等の情報や職員に関する情報を対象家庭へ郵送し、市政の運営を混乱させた疑いが持たれています。

朝日新聞などの報道によると、逮捕容疑は2026年1月から4月にかけて、子どもの養育などに関する相談内容をまとめた会議資料を、相談を寄せた26世帯へ匿名で郵送し、市に事実確認や市民対応などを行わせたというものです。

郵送された資料には、相談を寄せた家庭の氏名、住所、家族構成、相談内容のほか、一部では別の家庭に関する情報や、市職員の氏名、住所、連絡先も含まれていたと報じられています。

一方、男性職員は逮捕後の調べに対して容疑を否認していると報じられています。情報の入手経路、郵送の動機、どの資料をどのように取得したのかなどは、現時点で確定していません。

羽曳野市は2026年1月9日の時点で、家庭児童相談に関する情報が匿名で個人宅へ郵送されていることを公表し、羽曳野警察署へ相談していました。約8か月後に市職員の逮捕に至ったことになります。

羽曳野市の家庭児童相談情報流出のサマリー

  • 羽曳野市は2026年1月9日、家庭児童相談に関する情報が匿名で対象家庭へ郵送されていると公表しました。
  • 郵送された文書には、個人の氏名、住所、相談記録等が含まれていました。
  • 職員に関する情報も記載されていました。
  • 1月時点で市は流出経路と件数を調査中としていました。
  • 市は羽曳野警察署へ相談し、対象者への謝罪と説明を進めるとしていました。
  • 2026年9月2日、大阪府警は羽曳野市生活福祉課の主幹を務める50歳男性職員を逮捕しました。
  • 容疑は偽計業務妨害と地方公務員法違反です。
  • 朝日新聞などによると、逮捕容疑の対象は26世帯です。
  • MBSは、市が把握した同様の封書の送付先について29世帯と報じており、逮捕容疑上の26世帯とは数字が異なります。
  • 郵送資料には、各家庭の相談内容、氏名、住所、家族構成などが含まれていたと報じられています。
  • 一部には別家庭の情報や、市職員の氏名、住所、連絡先も含まれていたとされています。
  • 市は4月末に羽曳野署へ被害届を提出したと朝日新聞が報じています。
  • 警察は市役所や職員宅から押収したPCの解析、防犯カメラ映像などから関与の疑いを強めたと報じられています。
  • 男性職員は容疑を否認しています。
  • 動機、情報入手経路、資料の取得方法などは現在も捜査中です。
  • 市は情報管理の徹底と服務規律の確保を進めるとしています。
項目 内容
市の第一報 2026年1月9日
逮捕公表 2026年9月2日
対象組織 大阪府羽曳野市
対象情報 家庭児童相談の相談記録等、職員情報
流出方法 匿名の郵送
逮捕容疑上の対象 26世帯と報道
市が把握した送付先 29世帯とMBSが報道
含まれた情報 氏名、住所、家族構成、相談内容等
その他の情報 一部に別家庭や市職員の情報も含まれたと報道
容疑 偽計業務妨害、地方公務員法違反
被疑者 羽曳野市生活福祉課主幹の50歳男性職員
認否 否認と報道
動機 捜査中
情報入手経路 捜査中
市の対応 警察相談、対象者説明、情報管理・服務規律の徹底

1月9日に市が情報流出を公表

羽曳野市が本件を最初に公表したのは2026年1月9日です。

市は当時、「羽曳野市で保有している情報と近似している情報」が匿名で対象家庭へ郵送されている事案が発生したと説明しました。

郵送された文書には、家庭児童相談に関する過去の情報とみられる、

  • 氏名
  • 住所
  • 相談記録等

が記載され、職員に関する情報も含まれていました。

市が事案を把握したきっかけは、文書を受け取った家庭からの連絡でした。

この時点では、流出経路や対象件数は調査中とされていました。

市は羽曳野警察署へ相談するとともに、対象者への謝罪と経緯説明を行い、情報管理を徹底するとしていました。

1月から4月にかけて26世帯へ郵送した疑い

朝日新聞によると、逮捕容疑では2026年1月から4月にかけて、家庭児童相談の内容をまとめた個人情報を含む会議資料を、相談を寄せた計26世帯へ匿名で郵送した疑いが持たれています。

郵送後、市が情報流出の確認や市民対応を行うことになり、その業務を妨害したとして偽計業務妨害容疑が適用されています。

地方公務員法違反については、職務上知り得た秘密を漏らした疑いです。

地方公務員法第34条は、地方公務員に対し「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と定めています。

ただし、現時点で男性職員は容疑を否認しており、郵送行為や情報取得行為が裁判で事実認定されたわけではありません。

「26世帯」と「29世帯」は分けて見る必要

報道では世帯数に違いがあります。

朝日新聞やABCテレビは、逮捕容疑について「26世帯」と報じています。

一方、MBSは、市がこれまでに把握した同様の封書について「29世帯」と報じています。

この数字は矛盾しているとは限りません。

逮捕容疑として立件対象となった郵送が26世帯である一方、市側で把握した全体の送付先が29世帯である可能性があります。

ただし、羽曳野市の9月2日付公式リリースでは対象世帯数を公表していません。

そのため、本記事では、

  • 逮捕容疑上の対象:26世帯
  • 市が把握したと報じられている全体:29世帯

として分けて記載します。

相談内容だけでなく別家庭の情報も含まれていたと報道

朝日新聞によると、郵送された資料には、文書を受け取った家庭自身の相談内容、氏名、住所、家族構成などが記載されていました。

さらに、一部の資料には、送付先とは別の家庭に関する情報も含まれていたとされています。

この場合、単に「本人へ本人の情報が送られた」という問題ではありません。

他の家庭の相談情報が混在していれば、第三者への個人情報漏えいになります。

家庭児童相談では、子どもの養育、家庭環境、親子関係、生活上の問題など、極めてセンシティブな情報が取り扱われる場合があります。

羽曳野市の公式サイトでも、家庭児童相談をこども家庭支援課の相談業務として案内しています。

市職員の氏名や住所、連絡先も含まれていたと報道

郵送された資料には、市職員に関する情報も含まれていました。

朝日新聞によると、一部には職員の氏名、住所、連絡先などが記載されていたとされています。

羽曳野市の1月9日の一次リリースでも、「同封された文書には、職員に関する情報も記載されています」と公表していました。

つまり、今回の事案では相談者やその家族だけでなく、市職員側の情報も外部へ出た可能性があります。

市民の相談情報と職員情報が同一資料上で扱われていたのであれば、資料の作成・共有・保管方法自体も今後の検証対象になります。

4月末に被害届、PC解析や防犯カメラから関与の疑い

朝日新聞は、羽曳野市が4月末に羽曳野警察署へ被害届を提出したと報じています。

その後の警察捜査では、市役所や男性職員の自宅から押収したパソコンの解析、郵送に使われたとみられるポスト周辺の防犯カメラ映像などから関与の疑いが浮上したとされています。

ABCテレビも、防犯カメラ映像やパソコン解析から関与の疑いが強まったと報じています。

ただし、警察がどのデジタルデータを証拠として確認したのか、資料がどの端末から取得・印刷されたのかなど、詳細は公表されていません。

男性職員は容疑を否認

逮捕された男性職員は、警察の取り調べに対して容疑を否認していると複数メディアが報じています。

朝日新聞は「分からない」と話していると報じ、ABCテレビは「私はやっていません」との供述を伝えています。

したがって、現段階では、

「市職員が情報を流出させた」

と確定事項として書くのではなく、

「市職員が情報を流出させた疑いで逮捕された」

とする必要があります。

今後、送検、起訴・不起訴、裁判などで事実関係が変わる可能性があります。

動機と情報入手経路は不明

現時点で最も重要な未解明事項は、情報がどこから取得されたのかです。

報道では会議資料とされていますが、

  • 本人が業務上アクセス可能だった資料なのか
  • 他部署の共有フォルダ等から取得したのか
  • 紙資料をコピーしたのか
  • 業務端末から出力したのか
  • 権限外のシステムへアクセスしたのか

は明らかになっていません。

この違いによって、内部統制上の問題は大きく変わります。

正当な職務権限で閲覧できる情報を目的外利用したのであれば、アクセス権の有無だけでは防止できません。

一方、権限のないシステムや他人の端末へアクセスしていたのであれば、認証・権限管理にも問題があった可能性があります。

現時点では、どちらであったかを推測することはできません。

偽計業務妨害と守秘義務違反の疑い

羽曳野市は9月2日、男性職員が「偽計業務妨害罪及び地方公務員法違反の容疑」で逮捕されたと公表しました。

刑法第233条は、偽計を用いて人の業務を妨害した場合などについて規定しています。

今回の容疑では、匿名で相談資料を郵送することで、市に情報流出の事実確認や市民対応を行わせ、通常業務を妨害したとされています。

地方公務員法第34条は、職員が職務上知り得た秘密を漏らすことを禁止しています。

ただし、これらはいずれも現時点では「容疑」です。

逮捕されたことと、犯罪が確定したことは同義ではありません。

市は「市政への信頼を著しく失墜」と謝罪

羽曳野市は9月2日の公式発表で、市職員が逮捕されたことについて「市民の皆様の本市に対する信頼を著しく失墜させる事態」として謝罪しました。

山入端創市長は、捜査当局に全面的に協力し、事実関係の把握に努めた上で厳正に対処するとしています。

あわせて、

  • 職員の綱紀粛正
  • 服務規律の確保
  • 情報管理の徹底

を進め、市政への信頼回復に取り組むとしました。

現時点で懲戒処分は公表されていません。

逮捕を受けた処分や再発防止策の詳細は、今後の市の調査結果が確認ポイントになります。

外部攻撃ではなく「内部者リスク」が焦点

今回の事案では、ランサムウェアや外部からの不正アクセスが確認されたわけではありません。

市職員が情報を郵送した疑いで逮捕されたことから、捜査上は内部者による情報持ち出しが疑われています。

内部不正対策では、ファイアウォールやEDRだけでは十分ではありません。

職員が正規のアカウントと正規の権限で情報へアクセスできる場合、その行為は通常業務と技術的に区別しにくいためです。

重要になるのは、

  • 誰が情報へアクセスしたか
  • 業務上必要なアクセスだったか
  • 何件閲覧・出力したか
  • 印刷やファイル出力を行ったか
  • USBやメールなどへ持ち出したか

を後から追跡できることです。

函館市でも職員による個人情報持ち出し

セキュリティ対策Labでは2026年6月、函館市職員が同僚PCへ不正ログインし、個人情報を持ち出した内部不正事案を取り上げています。

北海道函館市でうさばらし目的の同僚PCへ不正ログインし個人情報 持ち出し

函館市の事案では、持ち出したデータを市のメールアドレスへ送信して情報漏えいを装い、その後、一部を印刷して市関連施設へ送付していました。

今回の羽曳野市事案とは動機や手口、事実認定の段階が異なります。

一方、行政機関が保有する住民情報を、内部職員が業務外の目的で利用・持ち出す可能性をどう検知するかという点は共通する課題です。

山梨県警では業務権限による個人情報の不正照会

2026年4月には、山梨県警の巡査長が職務とは関係のない目的で警察情報を照会し、取得した個人情報を使って男性へ接触した事案もありました。

山梨県警の巡査長、不正照会した個人情報で恋敵を脅迫 ストーカー規制法違反などで書類送検

このような内部不正では、職員がシステムへログインできること自体は異常ではありません。

「業務上必要のない人物を検索した」「特定人物の情報を繰り返し照会した」「短時間で大量の情報を取得した」といった行動を検知できる仕組みが重要になります。

自治体では外部攻撃以外の情報漏えいも相次ぐ

セキュリティ対策Labでは、2026年に発生した自治体・官公庁のサイバー攻撃・情報漏えいをまとめています。

2026年に発生した自治体・官公庁へのサイバー攻撃・情報漏洩事例

自治体の情報漏えいは、ランサムウェアや外部からの侵入だけではありません。

職員による目的外利用、委託先からの漏えい、クラウド設定ミス、端末紛失、SNSへの不適切投稿など、多様な経路があります。

住民情報を守るには、外部攻撃対策と内部不正対策を分けず、両方を情報ガバナンスの対象として管理する必要があります。

内部監査・情報システム部門への示唆

今回の事案で最も重要なのは、「職員がアクセスできる情報をどう守るか」です。

アクセス権管理では、単にログインを許可するかどうかだけでは十分ではありません。

家庭児童相談のような高感度情報を扱うシステムでは、

  • 職務ごとの最小権限
  • 定期的なアクセス権レビュー
  • 閲覧ログの保存
  • 印刷ログの保存
  • CSV・PDF等の一括出力制限
  • 大量閲覧・大量出力の検知
  • 業務目的外検索の監査
  • 異動時の即時権限見直し
  • 紙資料の保管・廃棄管理

を組み合わせる必要があります。

特に、今回のように紙で外部へ郵送された疑いがある場合、DLPやメール監視だけでは検知できません。

システムからの印刷、プリンター利用履歴、複合機の認証印刷、印刷枚数、持ち出し可能な紙資料の管理まで対象に含める必要があります。

また、相談記録は「業務上必要だから広く共有する」のではなく、担当者、管理職、会議参加者など、目的に応じて閲覧範囲を細かく分けるべきです。

高感度な相談情報は一般の住民情報より厳格に扱う

家庭児童相談には、一般的な住民基本情報よりもセンシティブな内容が含まれる場合があります。

氏名や住所だけでなく、

  • 家族構成
  • 家庭内の問題
  • 子どもの養育状況
  • 親子関係
  • 支援機関との相談履歴

などが組み合わされると、本人や家族へ大きな不利益を与える可能性があります。

そのため、システム上で「個人情報」と一括して扱うだけでなく、相談記録や福祉情報などについてアクセス制御や監査を強化する必要があります。

今回の事案では、実際にどの情報が何世帯分流出したのか、どの資料から取得されたのか、情報管理上どの統制が突破されたのかは、まだ明らかになっていません。

今後の捜査と羽曳野市の内部調査で、情報入手経路、動機、対象件数、再発防止策がどこまで明らかになるかが重要です。

出典