東証スタンダード上場の株式会社モバイルファクトリー(証券コード3912)は2026年10月1日、Suishow株式会社の株式譲渡契約を巡って片岡夏輝氏と争っていた訴訟について、裁判外で和解契約を締結したと発表しました。
同社による損害補償等請求訴訟と、片岡氏による追加対価の支払請求を巡る反訴が対象です。和解では解決金の支払いとSuishow全株式の譲渡などが取り決められ、解決金の受領後、双方が訴訟を取り下げる予定としています。
和解の事実|10月1日に裁判外で和解契約を締結
モバイルファクトリーの適時開示によると、和解契約の締結日は2026年10月1日です。主な合意事項は、片岡氏からモバイルファクトリーへの解決金の支払い、片岡氏が保有するモバイルファクトリー株式の所定の方法による処分、モバイルファクトリーが保有するSuishow全株式の片岡氏への譲渡です。
また、モバイルファクトリーは解決金の受領後に本訴を取り下げ、片岡氏も反訴を取り下げる予定です。和解契約の締結が公表された段階であり、これらの手続きがすべて完了したとの発表ではありません。
解決金の具体的な額やその他の和解条項は、秘密保持条項などを理由に公表されていません。
| 項目 | 公表内容 |
|---|---|
| 和解契約締結日 | 2026年10月1日 |
| 公表企業 | 株式会社モバイルファクトリー(3912) |
| 和解の相手方 | 片岡夏輝氏 |
| 対象の本訴 | 株式譲渡契約に基づく損害補償等請求訴訟 |
| 対象の反訴 | 株式譲渡契約に基づく追加対価の支払請求 |
| 主な合意事項 | 解決金の支払い、株式の処分・譲渡、双方の訴訟取り下げ |
| 解決金の額 | 非公表 |
| 株式譲渡・訴訟取り下げ | 開示時点では予定 |
和解に伴う業績への影響|2026年12月期に特別利益を計上予定
モバイルファクトリーは、解決金と、反訴取り下げに伴う未払債務の戻し入れによる利益を2026年12月期の連結決算で特別利益として計上する予定です。
特別利益の合計額は、2025年12月期の親会社株主に帰属する当期純利益の30%を上回る見込みとしています。
なお、後述する2024年の「6億円」は訴訟提起時の請求額であり、今回合意した解決金の額ではありません。
背景①|Suishowの買収と双方の訴訟提起
モバイルファクトリーは2023年5月30日、片岡氏らSuishowの元株主との間で株式譲渡契約などを締結し、同年6月12日にSuishowを完全子会社化しました。
その後、モバイルファクトリーは、株式譲渡契約上の表明保証に重大な違反があったとの認識を示し、2024年3月、片岡氏に6億円の損害補償等を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。
一方、片岡氏は2024年8月13日、株式譲渡契約に基づく追加対価として2億6,112万円を求める反訴を提起しました。モバイルファクトリーは当時、追加対価の支払条件を満たしていないとの見解を示しています。
双方の主張は訴訟上の立場を示すものであり、今回の和解発表は、裁判所がいずれかの主張を認定したとする発表ではありません。
モバイルファクトリーは2026年10月1日の開示で、裁判所から示された心証や和解条項の妥当性、裁判の長期化が事業に及ぼす影響などを総合的に検討し、和解を決めたと説明しています。
背景②|2023年に判明した「NauNau」のセキュリティ設定不備
Suishowが運営していた位置情報共有アプリ「NauNau」では2023年、利用していたクラウドサービスのセキュリティ設定に不備があり、特定の手順でデータベース内の情報を外部から閲覧できる状態だったことが判明しました。
同年12月7日に公表された調査結果では、外部からアクセス可能だった情報の範囲として、現在地が推定304万ユーザー分、チャット内容・画像が推定167万ユーザー分などと説明されています。これは外部から閲覧できた可能性がある情報の規模であり、実際に漏えいが確認された人数を示す数字ではありません。Suishowは、第三者機関の調査で確認した範囲では情報流出の事実は確認されなかったとしています。
セキュリティ対策Labでは当時、モバイルファクトリーによるSuishow元株主への訴訟提起とNauNauの情報管理問題を報じています。
このセキュリティ問題は買収後に公表された経緯上の出来事ですが、今回の和解は株式譲渡契約に関する民事紛争について成立したものです。和解をもってNauNauの情報流出や特定の人物の法的責任が新たに認定されたわけではありません。
IT企業買収における調査・契約管理の論点
今回の経緯からは、IT企業の買収に際し、対象サービスのクラウド設定、アクセス制御、個人情報の保管状況、過去のセキュリティ上の問題などを調査することと、それらの情報を株式譲渡契約上でどのように扱うかという二つの論点が読み取れます。
買収に関わる情報システム部門やセキュリティ担当者は、技術的な調査結果を法務・経営部門と共有し、契約締結時の確認事項と買収後の対応責任を整理しておくことが考えられます。
出典
- 和解契約の締結に関するお知らせ(2026年10月1日) – 株式会社モバイルファクトリー
- 訴訟提起に関するお知らせ(2024年3月19日) – 株式会社モバイルファクトリー
- 当社に対する訴訟(反訴)の提起に関するお知らせ(2024年8月28日) – 株式会社モバイルファクトリー
- (開示事項の経過)Suishow株式会社に関する報道について(2023年12月7日) – 株式会社モバイルファクトリー
- 当社運営の「NauNau」をご利用いただいているお客様への重要なお知らせとお詫びについて(2023年12月7日) – Suishow株式会社
- モバイルファクトリー、位置情報共有アプリ「NauNau」を運営するSuishowを完全子会社化(2023年5月30日) – 株式会社モバイルファクトリー








