CIAが中国軍幹部へスパイ勧誘動画を公開 習政権の粛清と内部亀裂を狙う米国の情報戦

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CIAが中国軍幹部へ異例の求人 ビデオを公開 習政権の粛清と内部亀裂を狙う米国の情報戦

2026年2月12日、米中央情報局(CIA)は、中国、イラン、北朝鮮の市民を対象に、安全にCIAへ情報を提供する方法を指南する新たな募集キャンペーンを開始しました。

特に中国に関しては、習近平政権への不満を抱く軍将校や情報機関員をターゲットにした北京語の動画をX(旧Twitter)、Facebook、YouTube、Instagram、Telegram、LinkedIn、さらにはダークウェブ上で公開するという大胆な動きに出ています。

動画の内容と目的

今回のリクルート動画は、中国人民解放軍(PLA)の軍人・幹部層を想定した中国語のショート動画で、汚職や粛清、派閥闘争に巻き込まれる中で将来に不安を抱く架空の軍人が登場し、「家族の安全」「自分と家族の未来を守る」といった動機で外部に助けを求める筋立てになっています。

映像内では、組織上層部への不信感や内部の不安定さを強調し、視聴者に心理的な共感を生むよう設計されています。

目的は大きく2つあります。

第一に、人的情報(HUMINT)の獲得です。中国国内でネット検閲があることを前提にしつつも、VPN等で到達できる層に向けて「安全な連絡手段がある」ことを示し、接触のハードルを下げる狙いがあります。第二に、心理戦(認知面の揺さぶり)です。軍内部の不信や疑心暗鬼を助長しうる公開メッセージとして機能し、中国側の対スパイ警戒を過敏化させ、統制コストを引き上げる効果も期待されます。

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処分された習近平の元幹部

中国人民解放軍(PLA)、特に核ミサイルを運用する「ロケット軍」の粛清に関連しされています。

特に注目すべきは、米国空軍大学が2022年10月に公開した「中国ロケット軍の組織に関する報告書」があまりにも詳細(基地の座標、指揮系統、調理班に至るまで記載)だったため、「内部からの漏洩以外にあり得ない」として、トップが更迭された件です。

こうした背景から習近平に不満を持つ幹部たちが発生し、最適な時期での情報収集が可能になったため動画が公開されたと思われます。

中国軍最高位の将軍・張又侠(ちょう ゆうきょう:Zhang Youxia)の粛清

2026年1月末、中国人民解放軍(PLA)の制服組トップであり、習近平国家主席の長年の盟友と見なされていた張又侠(Zhang Youxia)将軍(75歳)が粛清されました

これに加え、同じく高官である劉振立(Liu Zhenli)将軍も解任されました 。この一連の動きは、中国国内で展開されているエリート層の権力闘争の激化を示唆しており、台湾への武力行使や地域紛争への対応能力といった中国の戦争遂行能力に深刻な影響を与える可能性があります

張又侠の概要

張は中央軍事委員会(CMC)の副主席であり、CMCは習近平国家主席が主席として軍を統括する最高意思決定機関です。

張又侠の経歴は、いわゆる紅二代(革命幹部の子弟)としての出自と、軍歴の長さが特徴です。

張が1968年に入隊し、上級将官としては数少ない実戦経験を持つ人物でした。  こうした実戦経験の希少性は、近年のPLAが実戦機会に乏しいとされる中で、上層部の人材構成における重みとして繰り返し言及されています。加えて張は、軍のみならず党の中枢である政治局(Politburo)メンバーでもあり、軍事と党内政治の両方で影響力を持つ位置にいました。

なお、同氏は習近平の台湾進攻構想について、定期的に批判していました。

張又侠氏と習近平の関係

張又侠氏の父親は、習近平氏の父親(習仲勲氏)の「革命の同志(revolutionary comrade)」でした 中国政治において、親の代からの革命的な繋がりを持つ子供たち(太子党・紅二代)の絆は通常、鉄の結束と見なされます。

張氏は習氏と長い付き合いがあり、今回の騒動が起きる前までは、習氏の「親密な盟友(close allies)」であると広く認識されていました

安全な人間はいない誰でも粛清される

親密な盟友であり、親の代からの絆を持つ張氏ですら粛清されたという事実は、軍内部に「もはや誰も安全ではない」という強烈なメッセージと疑心暗鬼を植え付けています

その他  核開発・ロケット軍情報の漏洩疑惑で処分された主な幹部

李 玉超 (Li Yuchao)・前ロケット軍司令員(大将)

  • 経歴: 1962年生まれ。長期にわたり「第二砲兵部隊(ロケット軍の前身)」に所属し、現場からの叩き上げでトップに登り詰めた人物。第52基地、第53基地の司令員などを歴任し、2022年1月にロケット軍司令員に就任。習近平からの信頼も厚かったとされます。

  • 処分と疑惑: 2023年夏頃から動静が途絶え、解任されました。 【漏洩の嫌疑】 彼の息子が米国に留学しており、その息子を通じてロケット軍の配備状況や指揮系統に関する機密情報が米国側に漏れた疑いが持たれています。前述の米空軍大学の報告書作成に、この情報が寄与したと噂されています。

呉 国華 (Wu Guohua)・元ロケット軍副司令員(中将)

  • 経歴: 1957年生まれ。解放軍総参謀部第3部(技術偵察部)の部長などを歴任した後、2010年に第二砲兵副司令員、2015年のロケット軍発足時に副司令員に就任。情報・技術畑のスペシャリストであり、米国の諜報活動に対抗する立場でもありました。

  • 処分と疑惑: 2023年7月、中国メディアは彼が「病気のため死去した」と報じましたが、実際には自殺したとの見方が濃厚です。当局による厳しい取り調べ(双規)の最中、あるいはその直前に自ら命を絶ったとされ、内部情報の漏洩源として追及されていた可能性があります。

魏 鳳和 (Wei Fenghe)・前国防相 / 初代ロケット軍司令員(上将)

  • 経歴: 1954年生まれ。ロケット軍の前身である第二砲兵部隊の司令員を務め、2015年のロケット軍昇格時に初代司令員に就任。その後、国務委員兼国防部長(国防相)を務めました。

  • 処分と疑惑: 2024年に入り、党籍剥奪などの重い処分が発表されました。罪状は収賄ですが、実際には彼が長年トップを務めたロケット軍の腐敗と、それに伴う「装備の不備(ミサイル燃料の問題など)」や「情報漏洩」の最高責任者として断罪されたと見られています。

処分された側近に関するSNS投稿(呉国華氏の自殺に関する暴露)

「処分された側近がフェイスブックに声明を投稿」という点については、中国の高官本人が拘束中に投稿することは物理的に不可能です。 しかし、これに該当する事象として、自殺した呉国華(元副司令員)の死因をめぐる内部告発的な投稿が西側のSNS(FacebookやX)で拡散された件が挙げられます。

具体的な投稿内容と発信者

  • 発信者: 張小陽 (Zhang Xiaoyang)

    • 彼は中国人民解放軍の元幹部(少将)であり、かつての軍トップである張震(元中央軍事委員会副主席)の息子という「紅二代(革命の長老の子弟)」の有力者です。呉国華氏の元上司にあたります。

  • 投稿の内容: 呉国華氏が亡くなった直後の2023年7月、張小陽氏はSNS(WeChatのソーシャル機能等)において、当局の「病死」という発表を否定し、以下のような主旨を投稿しました。

    「呉国華は自宅で首を吊って自殺した」 「組織(共産党当局)からの過酷な圧力と、家庭内の不和に耐えきれなかった」

  • 拡散: この投稿のスクリーンショットが、中国国内の検閲をすり抜けてFacebookやX(旧Twitter)等の海外SNSで拡散されました。「当局が隠蔽しようとした軍高官の自殺と、その背景にある粛清の事実」を、内部の有力者が暴露した形となり、ロケット軍内部の深刻な動揺を世界に知らしめるきっかけとなりました。

中国人民解放軍は酷未燃ではなく体制を守る

この情報戦において理解しておくべきは、中国人民解放軍(PLA)の特殊性です。

PLAは「国家の軍隊」ではなく「中国共産党の軍隊」であり、その至上命題は「党中央(習近平)を守ること」にあります。

しかし、CIAの呼びかけは、その「党への絶対忠誠」が個人の安全や国家の利益と矛盾し始めている現状を突いています。動画のナレーションでは「無駄に我慢する必要はない」と説き、愛国心を持つ者こそが、現在の指導部に異を唱えるために情報を提供すべきだというロジックを展開し、幹部への感情を揺さぶっています。

なお、中国当局はこの動きに神経を尖らせており、国内でのスパイ摘発キャンペーンや、公務員の海外渡航制限、SNS利用の監視強化など、引き締めを一層強化しています。

日本への影響

米中が公然と情報提供者を募り、対抗措置を宣言する局面では、周辺国の企業・研究機関・政府機関も「情報戦の範囲」に入りやすくなります。

  1. 日本企業・在外拠点への二次的リスク増
    米中の情報戦が激化すると、第三国のネットワークやサプライチェーン、海外子会社が踏み台にされるリスクが上がります。特に防衛・半導体・先端素材・宇宙・通信などの分野は、スパイ活動とサイバー攻撃の双方で標的化されやすくなります。

  2. 対スパイ・対工作の運用強化が求められる
    採用・委託・共同研究・出張・展示会など、日常業務の接点が情報流出経路になり得ます。機微情報の取り扱い区分、アクセス権最小化、持ち出し監視(DLP/UEBA)、海外拠点のログ可視化、インシデント時の法務・広報連携まで含め、平時の設計が重要です。

  3. フィッシング・なりすましの波及
    注目ニュースに便乗した詐欺(関連動画・記事を装ったリンク、調査協力や取材依頼を装う接触など)が増えがちです。SOCやCSIRTは、情勢連動の攻撃キャンペーン(特定国・軍事・外交ワードを用いた誘導)を想定した注意喚起と検知ルール整備が有効です。