Microsoftは2026年8月11日、月例のセキュリティ更新(Patch Tuesday)を公開し、421件のCVEを修正しました。このうち1件は、既に実際の攻撃で悪用が確認されているゼロデイ脆弱性です。あわせて、技術的な詳細が既に公開されている脆弱性も2件含まれており、優先度の高い対応が求められます。
この記事のサマリー
- Microsoftは2026年8月11日、月例パッチで421件のCVEを修正しました。
- 悪用が確認されているゼロデイ脆弱性はCVE-2026-68820(CVSSスコア7.0)で、WinSock用のWindows補助関数ドライバー(afd.sys)における解放済みメモリ使用(Use-After-Free)です。ローカルで認証済みの攻撃者が特別に細工したアプリケーションを実行し、競合状態を発生させることで、ユーザー操作を経ることなくSYSTEM権限を取得できるとされています。
- セキュリティ企業Tenableの主任リサーチエンジニアSatnam Narang氏は、afd.sysを狙った過去の攻撃傾向を踏まえると、この脆弱性は国家支援型の脅威アクターによって悪用された可能性があると指摘しています。実際、この脆弱性は北朝鮮のLazarus Groupが偽求人キャンペーン「Operation Dream Job」の一環として悪用していたことが、Check Point Researchの調査で明らかになっています。
- 技術的な詳細が既に公開されている脆弱性としては、Windowsのユーザープロファイルサービスにおける権限昇格の脆弱性CVE-2026-62832(不適切なリンク解決)があり、Microsoftは攻撃者による悪用が始まる可能性が高いとしています。もう1件のCVE-2026-72971(Windows Container Isolation FS Filter Driver、unionfs.sys)も公開済みですが、実環境での悪用可能性は低いとMicrosoftは評価しています。
- このほか、Windows DNSサーバー、Windows展開サービスのTFTPサーバー、Microsoft QUIC、Microsoft HPC Packにおけるリモートコード実行(RCE)の脆弱性(CVE-2026-62878、CVE-2026-62893、CVE-2026-62815、CVE-2026-59124)や、Exchange Serverの権限昇格の脆弱性(CVE-2026-62911)にも注意が必要だと、Zero Day InitiativeのDustin Childs氏は指摘しています。
- 製品別の内訳は、Windowsが236件、Officeが98件、Office 2016が98件、SharePoint Serverが30件、開発者ツールが26件、Azureが17件、Exchange Serverが7件、Defenderが1件、その他の製品が6件です。あわせて、TPM 2.0リファレンス実装における非Microsoft製の脆弱性2件(なりすましのCVE-2026-6726、情報漏えいのCVE-2026-6727)も修正されています。
整理表
| CVE番号 | 対象 | 種別 | CVSS | 状態 |
|---|---|---|---|---|
| CVE-2026-68820 | Windows afd.sys(WinSock用補助関数ドライバー) | 権限昇格(Use-After-Free) | 7.0 | 実際に悪用確認済み(ゼロデイ、Lazarus Group関連) |
| CVE-2026-62832 | Windows User Profile Service | 権限昇格(不適切なリンク解決) | 記載なし | 技術的詳細を公開済み、悪用の可能性が高い |
| CVE-2026-72971 | Windows Container Isolation FS Filter Driver(unionfs.sys) | ローカル改ざん(リンク追跡) | 記載なし | 技術的詳細を公開済み、悪用の可能性は低い |
| CVE-2026-62878 | Windows DNSサーバー | リモートコード実行 | 記載なし | 注意が必要な脆弱性としてZDIが言及 |
| CVE-2026-62893 | Windows展開サービス(TFTPサーバー) | リモートコード実行 | 記載なし | 同上 |
| CVE-2026-62815 | Microsoft QUIC | リモートコード実行 | 記載なし | 同上 |
| CVE-2026-59124 | Microsoft HPC Pack | リモートコード実行 | 記載なし | 同上 |
| CVE-2026-62911 | Exchange Server | 権限昇格 | 記載なし | 同上 |
| CVE-2026-6726 | TPM 2.0リファレンス実装 | なりすまし | 記載なし | 非Microsoft製CVE |
| CVE-2026-6727 | TPM 2.0リファレンス実装 | 情報漏えい | 記載なし | 非Microsoft製CVE |
何が起きたか
Microsoftは2026年8月11日の月例パッチで、421件のCVEに対する修正を公開しました。このうち実際の攻撃で悪用が確認されているのは、CVE-2026-68820の1件です。この脆弱性は、WinSock用のWindows補助関数ドライバー(afd.sys)における解放済みメモリ使用(Use-After-Free)で、Microsoftは「ローカルで認証済みの攻撃者が、特別に細工したアプリケーションを対象システム上で実行し、競合状態を発生させる可能性がある。悪用に成功した場合、攻撃者はSYSTEM権限を取得できる可能性がある。ユーザー操作は不要」と説明しています。Microsoftは、観測された攻撃の詳細については明らかにしていません。
セキュリティ企業Tenableの主任リサーチエンジニア、Satnam Narang氏は、afd.sysを狙った過去の攻撃傾向を踏まえると、この脆弱性は国家支援型の脅威アクターによって悪用された可能性があると指摘しています。同氏は「2022年以降、afd.sysのゼロデイが実環境で悪用された事例は他に3件あり、CVE-2025-32709、CVE-2025-21418、CVE-2024-38193が含まれる。CVE-2024-38193は、北朝鮮に関連するLazarus Groupによって悪用されたと報告されている」と説明しています。
実際、今回のCVE-2026-68820についても、Lazarus Groupが偽求人キャンペーン「Operation Dream Job」の一環として、防衛・航空宇宙関連企業を標的に悪用していたことが、Check Point Researchの調査で明らかになっています。
公開済みだが未悪用の脆弱性
今回の月例パッチでは、Microsoftが「公開済み(Publicly Disclosed)」と分類した脆弱性も2件含まれています。CVE-2026-62832は、Windowsのユーザープロファイルサービスにおける、不適切なリンク解決(ファイルアクセス前のリンク追跡)に起因する脆弱性です。Microsoftは「別のローカルアカウントの認証情報を持つ認証済みの攻撃者が、特別に細工したアプリケーションを実行し、別の利用者のレジストリハイブを読み込ませる可能性がある。悪用に成功した場合、攻撃者は別の利用者のデータへアクセス・改変し、管理者権限を取得できる可能性がある。ユーザー操作は不要」と説明しており、この脆弱性については、攻撃者による悪用が始まる可能性が高いとの見解を示しています。
もう1件のCVE-2026-72971は、Windows Container Isolation FS Filter Driver(unionfs.sys)における、リンク追跡に起因するローカル改ざんの脆弱性です。こちらも技術的詳細は既に公開されていますが、Microsoftは実環境での悪用可能性は低いと評価しています。
その他、注意すべき脆弱性
Zero Day InitiativeのDustin Childs氏は、今回のパッチで注意を払うべき脆弱性として、Windows DNSサーバーのリモートコード実行の脆弱性CVE-2026-62878、Windows展開サービスのTFTPサーバーにおけるリモートコード実行の脆弱性CVE-2026-62893、Microsoft QUICにおけるリモートコード実行の脆弱性CVE-2026-62815、Microsoft HPC Packにおけるリモートコード実行の脆弱性CVE-2026-59124、Exchange Serverにおける権限昇格の脆弱性CVE-2026-62911を挙げています。
製品別の内訳としては、Windowsが236件、Officeが98件、Office 2016が98件、SharePoint Serverが30件、開発者ツールが26件、Azureが17件、Exchange Serverが7件、Defenderが1件、その他の製品が6件となっています。あわせて、TPM 2.0のリファレンス実装に関する非Microsoft製の脆弱性2件(なりすましのCVE-2026-6726、情報漏えいのCVE-2026-6727)も、今回の更新に含まれています。
8月6日に公開された別のセキュリティ更新との関係
今回の月例パッチとは別に、Microsoftは2026年8月6日、月例パッチに先立ち、Active Directory・Azure・Entra・SharePoint・Teamsなど広範な製品にまたがるセキュリティ更新を公開しています。この更新では、CVSSスコアの最大値10.0と評価された3件(Planetary Computer Pro、Azure SQL Database、Teams)を含む、極めて深刻度の高い脆弱性が複数修正されました。当サイトでは、この8月6日分の更新についてMicrosoft、Azure・Entra・Teams関連にCVSS最大値10.0を含む重大脆弱性を多数修正 Appleもネットワーク上の画面共有認証回避を修正(CVE-2026-63508,CVE-2026-56162)他で詳しく解説しています。
同記事でも触れているとおり、これらのクラウドサービス関連の脆弱性については、Microsoft側で既に対応が完了しており、顧客側での追加対応が不要なケースも含まれています。一方、今回の8月11日の月例パッチは、Windows・Office・SharePoint Serverなど、顧客側でのパッチ適用作業が明確に必要となる製品群を対象としており、両者は補完的な関係にあります。情報システム部門としては、8月6日分と8月11日分の両方について、対応状況を確認しておく必要があります。
情報システム部門が確認すべき対策ポイント
- afd.sysの脆弱性CVE-2026-68820については、既に悪用が確認されているゼロデイである以上、最優先でパッチを適用してください。
- CVE-2026-62832(Windows User Profile Service)についても、技術的詳細が既に公開されており、Microsoft自身が悪用の可能性が高いとしているため、優先度を上げて対応してください。
- Windows DNSサーバー、Windows展開サービス、Microsoft QUIC、Microsoft HPC Packなど、リモートコード実行につながる脆弱性が修正された製品を利用している場合は、あわせて優先的にパッチを適用してください。
- Exchange Serverを運用している場合、今回修正された権限昇格の脆弱性CVE-2026-62911についても確認してください。
- 8月6日に公開された、Azure・Entra・Teams等クラウドサービス関連の別のセキュリティ更新についても、あわせて対応状況を確認してください。
今後注目すべき点
本記事執筆時点で、CVE-2026-68820を悪用した攻撃の詳細な被害範囲は明らかになっていません。今後は以下の点が焦点になると考えられます。
- CVE-2026-68820を悪用した攻撃の被害範囲の全容
- CVE-2026-62832の悪用事例が実際に確認されるかどうか
- 今後の月例パッチにおける、修正件数・深刻度の推移








