世界的なLEDメーカー、日亜化学工業(徳島・阿南市)の横浜研究所で、退職直前の元社員が共用PCに仕掛けたプログラムにより、研究の実験結果やマニュアルが大量に削除されたとされる事案です。
民事では会社側が損害賠償を提起し、2025年10月31日の控訴審判決で約1,040万円の支払いが命じられました。刑事では電子計算機損壊等業務妨害の疑いで、2024年12月に元社員宅の家宅捜索が実施されています。
経緯(時系列)
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2019年9月~2021年7月:元社員が横浜研究所に在籍。金属加工用レーザー機器の開発を担当。
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2021年退職時:共用PCに時限式の削除プログラムを仕掛け、実験データ等を大量削除したと会社側が主張(削除規模は「200フォルダ超」報道と「232フォルダ」報道がある)。
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2023年2月:会社側が元社員らに約2,600万円の損害賠償を提訴(徳島地裁)。
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2024年12月17日:徳島県警が電磁的記録損壊等業務妨害容疑で元社員宅を捜索。
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一審・徳島地裁:会社側の主張を一部認め、約580万円の支払いを命令。
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二審・高松高裁(2025年10月31日):一審を変更し、約1,040万円の支払いを命令。会社側が再構築のために購入した物品費約460万円余を追加で認容。
判決の要点
元社員の削除行為は会社の利益を侵害する不法行為に当たると判断。データ復旧・再構築に要した費用(物品購入費など)を損害として認定し、賠償額を拡大。
元社員側の「引継ぎ不要データは会社利益の侵害に当たらない」との主張は採用されず、共用資産としての研究データ保全義務が重視された。
出典








