台湾国防部は2026年7月28日、8月5日から14日まで実施する「漢光42号」実兵演習の計画を公表しました。演習では、中国人民解放軍が定例の合同演習を装って大規模上陸作戦の準備を進め、台湾侵攻の最終準備を完了するというシナリオを採用します。台湾軍は平時から戦時への移行、海空封鎖への対処、上陸部隊の阻止、縦深防御、長期戦を連続した状況として検証します。民間工場の戦時生産への転換と疎開、重要物資を運ぶ船舶の護衛、港湾・空港を中国軍に利用させない措置、地域社会の避難・医療・通信まで組み込んでおり、従来の軍事演習から国家全体の抗戦能力を検証する段階へ移ったことを示しています。
漢光42号演習と中国軍の奇襲侵攻想定の概要サマリー
- 漢光42号の実兵演習は2026年8月5日から14日まで、連続した状況を付与する方式で実施されます
- 中国軍が定例の合同演習を隠れ蓑に大規模上陸作戦を訓練し、そのまま侵攻準備を完了するシナリオを採用します
- 台湾軍は備戦展開、戦力の防護・保存、共同反上陸、縦深防御・持久戦の4段階を検証します
- 反封鎖と重要物資の海上護衛を独立した訓練項目とし、全面上陸前の封鎖や準封鎖を主要脅威として扱います
- 重要な港湾、空港、交通要路を中国軍に利用させない「反資敵」措置を演練します
- 2個旅団規模の全面動員、部隊編成、臨戦訓練、戦力回復を検証します
- 台湾軍の第202工場と民間工場を使い、戦時生産への転換と生産ラインの疎開を演練します
- 海軍と海巡署が連携し、海上法執行、航路保全、重要物資の護衛を実施します
- 2026城鎮韌性演習と連動し、全国368の行政区で住民の防空避難を検証します
- 今回の発表は具体的な侵攻切迫情報の公表ではなく、台湾側が備えるべき最悪シナリオを示したものです
- 日本にとっては、南西諸島、海上交通路、台湾駐在員、半導体供給網、海底ケーブル、サイバー防衛に直結する内容です
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演習名 | 漢光42号演習 |
| 公表日 | 2026年7月28日 |
| 実兵演習期間 | 2026年8月5日~14日 |
| 演習方式 | 年間を通じた一連の訓練、連続状況方式 |
| 主要な想定 | 中国軍が定例演習を装い、台湾侵攻の最終準備へ移行 |
| 第1段階 | 備戦展開、動員準備、障害設置、物資分散、部隊機動、防御的機雷敷設の準備 |
| 第2段階 | 戦力の防護・保存、共同反封鎖、重要インフラ・政軍目標の防護 |
| 第3段階 | 共同反上陸、局地的航空優勢、防空、海空協同、沿岸・近岸防御 |
| 第4段階 | 縦深防御、持久戦、地形を利用した遅滞・消耗、全民による軍事作戦支援 |
| 動員訓練 | 2個旅団規模の全面動員と戦力回復 |
| 産業動員 | 第202工場と民間工場による戦時生産転換、生産ライン疎開 |
| 海上交通路 | 海軍・海巡署による反封鎖、航路保全、重要物資の護衛 |
| 重要施設 | 港湾、空港、交通要路を敵に利用させない措置 |
| 後方支援 | 物資分散、縦深配置、機動補給、修理拠点、隠蔽・偽装 |
| 医療 | 前進外科チーム、公民営医療機関、負傷者後送、戦場医療情報システム |
| 城鎮韌性演習 | 8月7日、10~13日に地域別で実施 |
| 軍民統合の重点地域 | 高雄市・屏東県、新北市・宜蘭県 |
| 防空避難 | 全国368の郷・鎮・市・区で避難行動を検証 |
| 戦略上の焦点 | 多領域拒止、韌性防衛、封鎖への耐久、国家機能の継続 |
| 情報評価 | 特定の侵攻切迫情報ではなく、台湾国防部が設定した演習シナリオ |
年次演習から実戦へ移行する曖昧な局面を想定
漢光42号で最も注目すべき点は、中国軍による上陸そのものより、その直前の識別が難しい局面を演習の出発点にしたことです。
台湾国防部は、中国軍が定例の合同軍事演習という名目で大規模上陸作戦を訓練し、侵攻意図を隠したまま攻撃準備を完了する状況を想定しています。
平時の訓練と実際の軍事行動の境界が曖昧であれば、台湾側には早期動員の判断が難しくなります。動員を急げば中国側から緊張を高めたと非難され、遅れればミサイル攻撃や封鎖が始まった後に部隊を移動させることになります。
中国軍が台湾周辺で行う大規模演習は、実戦的な能力の向上だけでなく、艦艇・航空機の展開を日常化し、台湾側の警戒基準を揺さぶる効果を持ちます。大規模な部隊展開が繰り返されるほど、どの時点を侵攻準備と判断するかは難しくなります。
日本の令和7年版防衛白書も、中国軍の台湾周辺活動について、実戦化、宣伝化、常態化という三つの特徴を挙げています。演習の規模や地点を調整しながら、必要な時期に大規模活動へ移行できる状態を作っているとの分析です。
漢光42号は、この警戒上の問題を正面から扱っています。軍事演習の開始を見てから対応するのではなく、平時の情報収集、即応訓練、動員準備、物資分散を年間の連続した活動として実施する考え方です。
ただし、台湾国防部の発表は、中国軍が2026年8月に侵攻するとの情報を示したものではありません。年次演習から実戦へ移行する可能性を、備えるべきシナリオとして設定したものです。
4段階で封鎖から上陸後の持久戦まで検証
演習は、備戦展開、戦力の防護・保存、共同反上陸、縦深防御・持久戦の4段階で構成されます。
備戦展開では、三軍が即座に警戒態勢を引き上げ、動員準備、障害物の事前設置、物資の分散保管、部隊の地域間移動、防御的機雷敷設の準備を行います。
戦力の防護・保存では、中国軍が海空軍と共同封鎖の支援下で、部隊の積載と海峡横断の準備を終えた状況を想定します。台湾軍は共同反封鎖、動員、重要インフラと政軍目標の防護を進め、初動攻撃を受けても戦闘力を残すことを目指します。
共同反上陸では、中国軍による統合火力攻撃、上陸船団の航行、複数地点への立体的な上陸を想定します。台湾側は局地的な航空優勢、防空、海空協同、沿岸打撃、近岸防御を検証します。
中国軍が海岸線を突破した後は、地形を利用した多層の縦深防御へ移行します。部隊を保存しながら敵の前進を遅らせ、戦力と補給を消耗させ、社会全体の資源で持久戦を支える構想です。
この構成は、台湾軍が上陸地点で敵を完全に止められない場合も想定していることを意味します。水際での撃破だけに依存せず、初撃後の戦力保存、後方支援、都市・山地を含む縦深防御までを計画に入れています。
演習の目的は、特定兵器の性能を示すことではありません。指揮系統が攻撃下でも機能し、部隊が分散・移動し、補給と医療を維持しながら戦闘を継続できるかを検証する点にあります。
反封鎖と重要物資の護衛を主要任務に設定
漢光42号は、上陸作戦だけでなく、海上封鎖への対処を主要な訓練項目としています。
台湾国防部は海軍と海巡署を統合し、共同の情報・監視・偵察、指揮統制、海上法執行、海域警戒、航路保全、重要物資を運ぶ船舶の護衛を実施するとしています。
この項目が重要なのは、中国が全面侵攻の前段階または代替手段として、封鎖、検査、航行制限、海警による法執行を組み合わせる可能性があるためです。
軍による封鎖と海警による検査が混在すれば、軍事攻撃と法執行の境界が曖昧になります。民間船舶や保険会社が台湾向け航行を避けるだけでも、正式な封鎖宣言なしに経済的圧力を生じさせることができます。
台湾はエネルギー、原材料、食料、工業部品の多くを海上輸送に依存しています。封鎖が長期化した場合、軍事物資だけでなく、発電、医療、通信、製造業を支える民生物資の不足が国家の抵抗力を低下させます。
反封鎖護衛を独立した訓練項目としたことは、台湾側が上陸撃退だけでなく、海上交通路を維持して国家を長期間機能させることを重視している証拠です。
一方、演習で航路を確保できることと、実際の有事に国際海運を維持できることは同じではありません。船会社、乗組員、保険、港湾荷役、燃料、通信、同盟・友好国の関与が必要であり、軍だけでは解決できない課題です。
港湾・空港を中国軍に利用させない「反資敵」
台湾軍は各作戦区で、重要な港湾、空港、交通要路を中国軍に利用させない「反資敵」の演練を実施します。
上陸した部隊が港湾や空港を確保できれば、中国軍は大型船や輸送機を使って兵員、車両、弾薬、燃料を継続的に投入できます。海岸からの揚陸だけに依存する初期段階と比べ、補給能力は大きく向上します。
台湾側は障害物、火力、守備部隊、軍民の資源を組み合わせ、重要施設の使用を妨げる計画です。
これは軍事的には合理的ですが、経済面では大きな代償を伴います。台湾の港湾、空港、幹線道路は平時の物流と産業活動を支える基盤でもあります。敵に利用させないための措置は、自国の補給、避難、復旧にも影響します。
重要なのは、破壊の有無だけではありません。どの時点で機能を停止し、どの範囲を制限し、いつ復旧できるようにするかという判断です。
港湾・空港運営者、物流企業、自治体、通信・電力事業者を含めた事前計画がなければ、軍事上の拒否措置が国家機能の長期停止につながる可能性があります。
戦時生産への転換と生産ラインの疎開
漢光42号では、台湾軍の軍備局生産製造センター第202工場と、兵器システムの組み立てに関わる民間工場を使い、戦時生産への転換と生産ラインの疎開を演練します。
これは、弾薬や装備を平時の備蓄だけで賄うのではなく、攻撃下でも国内生産を継続する考え方です。
中国軍が台湾の軍需工場、電力、物流、通信を攻撃すれば、工場が無傷でも部品や人員が到着せず、生産が停止する可能性があります。集中した生産拠点は効率的ですが、攻撃側にとって価値の高い標的になります。
生産ラインの疎開は、設備、金型、部品、設計情報、品質管理、人員を複数地点へ移し、一つの拠点が被害を受けても生産を継続する試みです。
民間工場の動員には、平時からの契約、仕様の共有、原材料の備蓄、従業員の訓練、輸送手段、電力・通信の優先供給が必要です。緊急命令だけで短期間に軍需生産へ切り替えられるものではありません。
台湾の防衛産業政策は、兵器調達だけでなく、攻撃下で生産能力を維持する産業基盤の構築へ重点を移しています。
総合商社、部品メーカー、物流会社、エネルギー事業者にとっても重要な動きです。台湾有事では半導体だけでなく、工作機械、電子部品、化学材料、輸送設備など幅広い供給網が軍民双方の需要と統制の対象になる可能性があります。
2個旅団の全面動員で予備戦力を検証
台湾軍は「同心36号」演習と連動し、2個旅団規模の全面動員を実施します。
確認するのは召集通知への応答だけではありません。所定時間内に人員を集め、部隊を編成し、臨戦訓練を行い、任務を遂行できる状態まで戦力を回復できるかを検証します。
予備役の実効性は、登録人数だけでは判断できません。召集地点までの交通、装備の受領、指揮官と部隊の関係、通信、宿営、食料、医療、家族支援までが機能する必要があります。
中国軍が初期段階で交通・通信拠点を攻撃した場合、平時の集合場所や移動経路が使えない可能性があります。演習では部隊の地域間移動中に、特殊部隊や火力攻撃を受ける状況も想定します。
台湾軍が全面動員を旅団単位で検証するのは、予備役を名目上の人数から、地域防衛と正規軍支援を担う実働部隊へ変えるためです。
ただし、2個旅団で成功しても、国家規模の同時動員が機能することを保証するものではありません。複数地域で同時に交通、通信、行政、物資供給へ負荷がかかった場合の拡張性が今後の課題です。
分散補給と戦場医療で長期戦に備える
後方支援では、物資を一か所へ集約せず、分散保管、縦深配置、機動補給を組み合わせます。
部隊の移動経路に前方支援・修理拠点を配置し、攻撃を受けても燃料、弾薬、食料、部品を供給できるかを確認します。隠蔽、偽装、欺瞞を使い、補給活動の兆候を敵に把握されにくくする訓練も含まれます。
現代戦では、兵器の保有数だけでなく、消耗した装備を修理し、弾薬と燃料を送り続ける能力が作戦の持続期間を決めます。
医療面では、軍の前進外科チームと公営・民営の医療資源を統合します。敵の攻撃下での救護、負傷者の後送、医療施設の運営を演練し、戦場医療の能力と後送状況を情報システムで把握します。
有事には軍人と民間人の負傷者が同時に発生し、道路、通信、病院の電力も影響を受けます。平時の救急医療体制だけでは対応できません。
病床、血液、医薬品、酸素、透析、手術、人員、非常用電源をどのように配分するかは、軍事と行政の共同判断になります。
城鎮韌性演習を漢光演習へ統合
2026城鎮韌性演習は、漢光42号と連動して実施されます。
8月7日は高雄市と屏東県、8月13日は新北市と宜蘭県で、作戦区と地方自治体の合同応変センターが情報伝達、通信指揮、状況対処を検証します。
防空演習は8月7日と10日から13日まで、南部、中部、離島、東部、北部の順に地域を分けて実施されます。
台湾国防部は、全国368の郷・鎮・市・区で、住民が実際に防空避難施設へ入る行動を全面的に検証するとしています。公共交通、商業施設、行政・事業機関など、日常生活に近い屋内施設が重点対象です。
警報はサイレンだけでなく、テレビ、ラジオ、地域放送、学校、警察車両、携帯電話の空中脅威警報システムを使って伝達します。
総統府の全社会防衛韌性委員会は、民力の訓練と運用、重要民生物資、エネルギー・重要インフラ、医療・避難、通信・運輸・金融の5分野を重点としています。
漢光42号への統合は、民間の避難訓練を軍事演習の付属行事として扱うのではなく、軍事作戦を支える国家機能の一部として位置づけるものです。
全社会防衛の成否は社会的合意に左右される
台湾には、災害対応の経験、発達した医療制度、活動的な市民社会という強みがあります。
一方、RANDの2025年の分析は、台湾の民間レジリエンス強化には、対中脅威と必要な備えを巡る政治・社会的合意の不足、大規模紛争への準備を避けようとする心理、戦争準備の価値に関する共通理解の不足があると指摘しています。
避難、物資備蓄、工場動員、施設の使用制限は、平時の経済活動や住民生活へ負担を与えます。訓練の目的が十分に説明されなければ、政治的対立や不安を拡大させる可能性があります。
防衛韌性は軍事力の補助ではなく、攻撃側に短期決着が困難だと認識させる抑止の一部です。政府、企業、自治体、住民が危機下でも機能を維持できれば、中国側が想定する政治的崩壊や早期降伏の可能性を低下させます。
反対に、社会の分断や情報混乱が進めば、軍事的な防御が維持されていても、政治的意思決定が困難になる可能性があります。
演習では通信と指揮統制だけでなく、偽情報、心理戦、金融不安、買い占め、避難混乱への対応も重要です。台湾国防部の公表資料では詳細な認知戦シナリオは示されていませんが、全社会防衛の実効性を左右する要素です。
中国軍の演習常態化が警戒時間を縮める
日本の防衛省は、中国軍の台湾周辺活動について、実戦的訓練の強化、宣伝を通じた圧力、活動の常態化を指摘しています。
中国軍が台湾周辺に艦艇や航空機を継続的に展開すれば、侵攻に必要な一部の行動を平時の活動として見せることができます。
演習のたびに台湾側が全面動員を行えば、経済的・人的負担が増えます。反対に、演習だと判断して動員を見送れば、実戦へ移行された場合に初動が遅れます。
これは、攻撃側が相手の意思決定を揺さぶる「警戒のジレンマ」です。
漢光42号が年間を通じた連続訓練を採用するのは、単発の大規模演習で対応能力を確認するだけでは、このジレンマに対処できないためです。
平時から部隊、予備役、自治体、重要インフラ事業者が段階的に準備し、明確な指標に基づいて警戒態勢を上げられる仕組みが必要になります。
台湾への中国発サイバー攻撃が2025年に過去最大規模となった事案では、中国軍の活動と同時期にサイバー攻撃が増える傾向を取り上げています。
軍事演習の常態化は、サイバー、通信妨害、偽情報、海警活動を同時に使う複合的な圧力と合わせて評価する必要があります。
海底ケーブルと通信網は初期段階から標的になり得る
台湾の軍民統合を支えるのは通信です。軍、中央政府、自治体、病院、交通、電力、金融が情報を共有できなければ、全社会防衛は機能しません。
海底ケーブル、携帯電話網、衛星通信、データセンター、クラウド、放送設備は、封鎖や火力攻撃の前後に影響を受ける可能性があります。
台湾周辺の海底ケーブル切断と中国のグレーゾーン戦略で整理した通り、ケーブル障害は意図的な破壊と事故の識別が難しく、軍事衝突に至らない段階でも通信へ圧力を加える手段になり得ます。
漢光42号では、地方合同応変センターと作戦区の通信・指揮を検証しますが、平時の通信回線が維持される前提では不十分です。
地上回線、海底ケーブル、携帯網が同時に制限された状況で、衛星、無線、移動式通信、オフライン手順へ切り替えられるかが重要です。
企業側も、台湾拠点との通信が途絶えた場合に、本社が現地の状況を把握し、送金、物流、人員避難、システム切替を判断できる体制を準備する必要があります。
演習から読み取れる台湾の戦略転換
漢光42号からは、台湾の防衛構想が三つの方向へ進んでいることが読み取れます。
一つ目は、上陸撃退中心から、封鎖、初撃、上陸、縦深防御、長期戦までを一体として扱うことです。
二つ目は、兵器や部隊だけでなく、生産、物流、医療、通信、金融、自治体、住民を戦略的な防衛資源として扱うことです。
三つ目は、大規模演習を年1回の行事として実施するのではなく、指揮所演習、即応訓練、共同防御、実兵演習を年間で連結することです。
この転換は、中国軍との装備数の差を正面から埋めるのではなく、中国側が短期間で政治・軍事目的を達成することを困難にする方向です。
日本の防衛白書は、中台軍事バランスが全体として中国側に有利な方向へ急速に傾いていると評価しています。台湾にとって、すべての領域で中国軍と同等の戦力を保有することは現実的ではありません。
そのため、戦力の分散、生存性、拒止、動員、社会の持久力を組み合わせ、侵攻の費用と不確実性を高める戦略が重要になります。
ただし、演習内容が高度化したことだけで、実際の能力が保証されるわけではありません。演習で判明した問題が予算、制度、装備、訓練へ反映されるかを継続的に確認する必要があります。
日本への影響と示唆
台湾有事は、日本にとって遠方の軍事危機ではありません。
台湾北東部の宜蘭県は日本の南西諸島に近く、台湾東部の港湾・空港、周辺海空域の状況は、日本の海上交通路と南西地域の安全保障へ直接影響します。
中国軍が台湾周辺で封鎖や大規模演習を実施すれば、東シナ海、西太平洋、バシー海峡の民間航空・海運が影響を受けます。船舶保険料の上昇、航路変更、港湾混雑、燃料・原材料の輸送遅延が日本企業へ波及します。
台湾の半導体産業が注目されますが、影響は半導体に限りません。電子部品、化学品、工作機械、精密機器、海運、航空、金融、通信、エネルギーまで広がります。
日本企業は、台湾拠点の退避計画だけでなく、現地に残る従業員の避難施設、通信手段、医療、給与支払い、現金、燃料、データへのアクセスを準備する必要があります。
事業継続計画では、中国軍の上陸後だけを想定せず、大規模演習、臨時の航行制限、海警による検査、サイバー攻撃、通信障害、金融市場の混乱を段階的な発動条件として設定してください。
日本政府と自治体には、南西地域の住民避難、港湾・空港の運用、海上輸送、医療受け入れ、通信の冗長化、偽情報対策を平時から統合する課題があります。
台湾の漢光42号が軍事演習と城鎮韌性演習を連動させたことは、日本でも防衛、国民保護、災害対応、重要インフラ、企業BCPを別々に扱わない必要性を示しています。
中露爆撃機と戦闘機が日本海・東シナ海・西太平洋で共同巡航した事案で取り上げた通り、台湾周辺の危機では、中国軍が台湾正面だけでなく、日本周辺の広い海空域で活動する可能性を考慮する必要があります。
漢光42号は台湾の演習ですが、日本にとっても、短い警戒時間、海上封鎖、通信途絶、物流混乱、社会機能の継続という共通課題を示しています。
出典
- 国防部115年7月份第4週例行記者会見資料 – 中華民国国防部
- 漢光42号実兵演習の実施を前に総統が国軍を激励 – 中華民国総統府
- 全社会防衛韌性委員会の設立目的と重点分野 – 中華民国総統府
- 令和7年版防衛白書 台湾の軍事力と中台軍事バランス – 防衛省
- 令和7年版防衛白書 台湾をめぐる中国の軍事動向 – 防衛省
- Building Taiwan’s Resilience – RAND
- 台湾への中国発サイバー攻撃が年間約9億6,000万回で過去最大規模 – セキュリティ対策Lab
- 台湾海底ケーブル切断事件と中国のグレーゾーン戦略 – セキュリティ対策Lab
- 中露爆撃機と戦闘機が日本海・東シナ海・西太平洋で共同巡航 – セキュリティ対策Lab








