東海財務局の職員が、別の職員の席の背後へ強引に回り込み、機密情報を繰り返しのぞき込むなどしたとして、2022年に訓告を受けていたことが2026年9月9日、共同通信の情報公開請求で明らかになりました。
共同通信によると、職員はつえを床に突いて音を出したり、「おまえんちに行ったろか」と発言したりするなど、他の職員を威圧する行為も行っていました。東海財務局は動機や機密情報の具体的な内容を明らかにしていません。
同一人物とみられる職員は2021年にも、勤務態度を指導しようとした職員へ顔や体を近づけ、大声で怒鳴った上、右手首を強くつかんで通院7日のけがを負わせたなどとして、文書による厳重注意を受けていたと報じられています。
今回の事案で、機密情報が外部へ持ち出された、第三者へ漏えいした、撮影・記録されたといった事実は確認されていません。一方、内部者が物理的に他人の画面や書類をのぞき込む行為は、ID・パスワードやシステムのアクセス制御では防げない情報セキュリティ上のリスクです。
東海財務局の機密情報のぞき見事案のサマリー
確認できている内容:
- 共同通信は2026年9月9日、情報公開請求で取得した文書を基に、東海財務局職員が2022年に訓告を受けていたと報じました。
- 訓告の理由には、別の職員の席の背後へ強引に回り込み、機密情報を繰り返しのぞき込んだ行為が含まれていました。
- 職員はつえを床に突いて音を出す、「おまえんちに行ったろか」と発言するなど、他の職員を威圧する行為も行っていました。
- 東海財務局は、動機やのぞき込まれた機密情報の具体的内容を明らかにしていません。
- 同一人物とみられる職員は2021年にも文書による厳重注意を受けていました。
- 2021年の事案では、勤務態度を指導しようとした職員へ顔や体を近づけて威嚇し、大声で怒鳴った上、右手首を強引につかみ、通院7日のけがを負わせたと報じられています。
- 同じ日には内線電話で大声を上げて不適切な発言をし、他の職員が恐怖を感じるなど職場環境を著しく悪化させ、その後の呼び出しの職務命令にも応じなかったとされています。
- 2021年の厳重注意書は「全く反省した態度がうかがえない」と指摘していたと共同通信は報じています。
- 訓告・厳重注意は、国家公務員法に基づく「懲戒処分」ではなく、各府省の内規に基づく指導・監督上の措置です。
- 人事院は、こうした訓告・厳重注意等を「矯正措置」として扱っています。
- 今回事案で機密情報の外部漏えい、持ち出し、撮影、複製、不正利用が確認されたとの情報はありません。
現時点で確認できない内容:
- のぞき込まれた機密情報の内容
- 情報の機密区分
- のぞき見の回数・期間
- のぞき見によって具体的にどの情報を認識したか
- 情報を記録・撮影・複製したか
- 情報を外部へ持ち出したか
- 情報を第三者へ伝達したか
- のぞき見の目的・動機
- 当該職員の所属部署・役職
- 2022年の訓告後に配置転換やアクセス制限などの追加措置が行われたか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 判明日 | 2026年9月9日 |
| 対象組織 | 財務省 東海財務局 |
| 行為時期 | 2022年以前(詳細日時は報道で明らかにされていません) |
| 行為 | 他職員の背後へ回り込み、機密情報を繰り返しのぞき見 |
| その他の行為 | つえで床を突く、威圧的発言など |
| 措置 | 訓告 |
| 2021年の事案 | 威嚇、大声、手首をつかみ通院7日のけが、職務命令への不服従など |
| 2021年の措置 | 文書による厳重注意 |
| 情報漏えい | 確認されていません |
| 情報持ち出し | 確認されていません |
| 動機 | 公表されていません |
| 情報の内容 | 公表されていません |
| 判明経緯 | 共同通信の情報公開請求 |
情報公開請求で2022年の訓告が判明
今回の事案は、東海財務局が2026年9月に新たに自主公表したものではありません。
共同通信が情報公開請求によって取得した文書から、2022年に行われた訓告の内容が明らかになったものです。
東海財務局は行政文書の開示請求を受け付けており、情報公開法に基づいて行政文書を開示する制度を設けています。
9月9日時点で、東海財務局のWebサイト上に今回の訓告内容を説明する独立した公式リリースは確認できませんでした。
そのため、今回の具体的な非違行為に関する一次文書そのものは公開Web上で確認できず、事実関係の詳細は共同通信が開示文書を基に報じた内容に依拠します。
一方、訓告の法的位置付けや、政府機関の情報管理に関するルールについては、人事院や国家サイバー統括室、IPAの公的資料から確認できます。
「訓告」は国家公務員法上の懲戒処分ではない
共同通信は、2022年の「訓告」は2021年の「厳重注意」より重い措置と報じています。
ただし、国家公務員制度上は、訓告と厳重注意はいずれも国家公務員法に基づく懲戒処分ではありません。
人事院の資料では、国家公務員法上の懲戒処分は次の4種類です。
- 免職
- 停職
- 減給
- 戒告
これとは別に、各府省では内規に基づき、
- 訓告
- 厳重注意
- 注意
などを行う例があります。
人事院はこれらについて、国家公務員法に基づく懲戒処分ではなく、職員が職務上の義務に違反した場合に、上級監督者が指導・監督上の措置として行うものと説明しています。
国家公務員倫理審査会の年次報告では、訓告・厳重注意等を「矯正措置」と呼んでいます。
つまり今回の「訓告」は、法定の懲戒処分である「戒告」とは別です。
2021年には威嚇・暴行で文書による厳重注意
共同通信によると、2022年に訓告を受けた職員と同一人物とみられる職員は、2021年にも文書による厳重注意を受けています。
当時、勤務態度について指導しようとした他の職員に対し、
- 顔や体を近づけて威嚇
- 大声で怒鳴る
- 右手首を強引につかむ
といった行為を行い、相手は通院7日のけがを負いました。
同じ日には、庁内の自席から内線電話で大声を上げ、不適切な発言を行い、周囲の職員が恐怖を感じるなど職場環境を著しく悪化させたとされています。
その後、上司などから呼び出す職務命令を受けたものの、これにも応じなかったと共同通信は報じています。
厳重注意書には「全く反省した態度がうかがえない」と記載されていたとされています。
人事院の懲戒指針では暴行・暴言・パワハラも対象
人事院の「懲戒処分の指針」は、具体的な処分量定を決める際の参考として、代表的な非違行為と標準的な処分を示しています。
職場内秩序を乱す行為については、
- 他職員への暴行:停職または減給
- 他職員への暴言:減給または戒告
を標準例としています。
また、パワー・ハラスメントについては、著しい精神的・身体的苦痛を与えた場合に停職、減給または戒告、指導や注意を受けても繰り返した場合には停職または減給を標準例としています。
ただし、これは一般的な人事院の標準例です。
今回の2021年・2022年事案について、東海財務局がどの法令・内規のどの条項を適用し、なぜ厳重注意や訓告を選択したのかは公表されていません。
そのため、人事院の標準例を今回の事案へ直接当てはめて「本来は停職にすべきだった」などと評価することはできません。
国家公務員には職務上知った秘密を守る義務
国家公務員法第100条は、職員について「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と定めています。
退職後も同じ義務があります。
一方、今回確認されているのは「他職員が扱う機密情報を繰り返しのぞき込んだ」という行為です。
共同通信の報道からは、
- 情報を外部へ伝えた
- コピーした
- 撮影した
- 私的に利用した
といった「秘密漏えい」が実際に起きたとは確認できません。
人事院の懲戒処分指針も、故意の秘密漏えいについては免職または停職を標準例としていますが、今回の事案を秘密漏えい事案として扱えるだけの公表事実はありません。
「のぞき見」と「漏えい」は分けて扱う必要があります。
東海財務局は財政・金融・国有財産など幅広い情報を扱う
東海財務局は、財務省の総合出先機関であり、金融庁から事務委任も受けています。
公式の業務案内では、主な業務として、
- 財政
- 経済調査・統計
- 国有財産
- 金融・証券
- 企業内容等開示
- 対内直接投資等
- 公認会計士試験
- 通貨・交付国債等
を挙げています。
また、愛知、岐阜、静岡、三重の4県を管轄しています。
これらの業務では、金融機関、企業、地方公共団体などに関係する非公開情報を取り扱う場合があります。
ただし、今回の職員がどの部署に所属していたのか、どの業務に関係する機密情報をのぞき込んだのかは明らかになっていません。
東海財務局が金融行政を担っているという理由だけで、金融機関の検査情報や企業の未公表情報を見たと推測することはできません。
政府機関の情報には機密性区分がある
政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準は、国の行政機関が扱う情報を機密性の観点から区分しています。
令和7年度版では、代表的に次のような区分があります。
| 区分 | 概要 |
|---|---|
| 機密性3情報 | 行政文書管理ガイドライン上の秘密文書に相当する機密性を要する情報を含むもの |
| 機密性2情報 | 情報公開法上の不開示情報に該当する蓋然性が高い情報を含み、機密性3以外のもの |
| 機密性1情報 | 情報公開法上の不開示情報に該当する蓋然性が高い情報を含まないもの |
政府機関では、こうした格付や取扱制限に応じて情報を保護します。
しかし、共同通信が今回「機密情報」と報じた情報が、政府統一基準上の「機密性3」「機密性2」のどちらに該当したかは確認できません。
報道上の「機密情報」という表現と、政府統一基準の正式な格付を同一視しないようにする必要があります。
のぞき見はアクセスログに残らない内部脅威
今回の事案は、不正なIDでシステムへログインした「不正アクセス」ではありません。
他の職員が正規に閲覧している画面や資料を、背後から物理的にのぞき込んだと報じられています。
このような行為は、一般に「ショルダーサーフィン」「のぞき見」と呼ばれる物理的な情報取得手段に近いものです。
システム上では正規ユーザーが正規端末から正規に情報を開いているため、
- 認証ログ
- アクセスログ
- EDR
- SIEM
だけでは、不正な閲覧者が背後にいたことを直接記録できません。
内部脅威対策では、システム上のアクセス権限だけでなく、物理空間で誰が画面や書類を見ることができるかも確認対象になります。
IPAは内部不正対策としてクリアデスク・クリアスクリーンを推奨
IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」は、内部不正や情報窃取に備える物理対策として、クリアデスク/クリアスクリーンを挙げています。
具体的には、
- 離席時に画面をロックする
- 重要書類を机上へ放置しない
- 情報機器や記録媒体を適切に管理する
- 重要情報を扱うサーバー等を入退室管理された区域へ置く
といった対策です。
今回のように、正規の勤務エリア内にいる別職員が意図的に背後へ回り込むケースでは、離席時の画面ロックだけでは十分ではありません。
追加で、
- 機密情報を扱う席の配置
- 周囲から画面が見えにくい向き
- 必要に応じたプライバシーフィルター
- 取扱区域へのアクセス制限
- 業務上不要な人物が近づいた場合の報告ルール
などを組み合わせる必要があります。
関連記事:内部不正や内部要因による情報漏洩の事例とセキュリティ対策
物理的なのぞき見は「人の問題」だけで終わらせない
職員が意図的に他人の画面をのぞいた場合、直接の原因は本人の行為です。
一方、情報セキュリティ管理では「本人へ注意する」だけで再発防止が完了するとは限りません。
確認すべきなのは、
- 当該情報を扱う場所は適切だったか
- 通路や隣席から画面が容易に見えなかったか
- 関係のない職員が近づける配置だったか
- 機密情報を表示した状態で周囲を確認する運用があったか
- 不審な接近を受けた職員が上司やセキュリティ担当へ相談できたか
- 威圧的な行為が過去にあった職員に対して職場配置や監督措置を見直していたか
という組織側の管理です。
今回、2021年に厳重注意を受けたとみられる職員が、2022年に別の非違行為で訓告を受けたという経緯は、情報セキュリティ上も「過去の行動リスクをどのように管理するか」という論点につながります。
関連記事:なぜパワハラは内部不正を生むのか―犯罪心理学者が解説する「モノ言えぬ組織」のセキュリティリスク
威圧行為がある場合はセキュリティ報告そのものが難しくなる
内部不正・内部脅威では、情報へのアクセス権限だけでなく、組織内で問題行為を指摘できるかも影響します。
今回の報道では、職員が他の職員を威圧し、恐怖を感じさせる行為を行っていたとされています。
こうした環境では、周囲の職員が、
- 不審な閲覧
- 規程違反
- 不適切な情報取得
- 怪しい行動
に気付いても、本人へ注意したり上司へ報告したりすることをためらう可能性があります。
セキュリティインシデントの早期検知では、技術的なログだけでなく、従業員からの通報も重要な情報源です。
組織内で威圧や報復を恐れて報告できない状態は、内部脅威の発見を遅らせる要因になります。
2018年には別の減給処分も情報公開で判明
共同通信は今回の情報公開請求に関連し、東海財務局で2018年、パチンコ店で財布を盗んだとして逮捕され、その後不起訴となった職員に対し、減給10分の1、1カ月の懲戒処分を行っていたことも判明したと報じています。
この2018年の事案について、今回2022年に訓告を受けた職員と同一人物であるとは報道から確認できません。
そのため、本記事では別の職員処分事案として扱います。
また、刑事事件については不起訴となっているため、「窃盗を行った」と確定した表現にはできません。
内部者による情報閲覧はサイバー攻撃でなくてもセキュリティインシデントになり得る
情報セキュリティ事故というと、
- 不正アクセス
- マルウェア
- ランサムウェア
- フィッシング
など外部からのサイバー攻撃が中心に見られがちです。
しかし、組織内部の人物が、
- 業務上不要な情報を閲覧する
- 他人の画面をのぞく
- 書類を無断で見る
- 情報を撮影する
- 個人情報を私的に検索する
といった行為も情報資産へのリスクになります。
IPAは内部不正を、役員・従業員・派遣社員などの内部者による法令違反や、情報セキュリティに関する組織内規程への違反として扱っています。
今回の行為がIPAの定義上どの分類に該当するかは、東海財務局の規程や行為の目的が公表されていないため断定できません。
ただし、物理的なのぞき見が内部脅威の一つとして管理対象になることは、企業にも共通する論点です。
情報システム・内部監査部門が確認したいポイント
今回の事案を企業の情報管理へ置き換えると、次の項目を確認できます。
- 機密情報を扱う席が通路や来訪者スペースから見えない配置になっているか
- 高機密情報を扱う端末に必要に応じてのぞき見防止フィルターを使用しているか
- 離席時の自動スクリーンロックを強制しているか
- 機密書類を机上へ放置しないクリアデスク運用があるか
- 執務エリアを業務上必要な人物だけに制限しているか
- 部門内でも「業務上必要な者だけが閲覧する」ルールを定めているか
- 正規権限を持つ職員による目的外閲覧を監査できるか
- 他人の画面や書類を不自然に見る行為を報告対象として定めているか
- 威圧・ハラスメントと情報セキュリティ上の不審行動を別部門で分断せず共有できるか
- 過去に注意・処分を受けた職員について再発リスクを管理する手続があるか
- 問題行為を見た職員が本人を直接注意せずに通報できる経路があるか
- 内部通報者に対する報復防止を明文化しているか
- 重大な情報を扱う業務で座席配置・入退室・監視をリスクベースで見直しているか
特に物理的なのぞき見は、SIEMやEDRを導入しても直接検知できません。
情報分類、画面配置、入退室管理、監査ログ、内部通報、人事・コンプライアンス情報を組み合わせて管理する必要があります。
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