韓国の大手航空会社・大韓航空で、従業員の個人情報が大量に流出したことが明らかになりました。本件は、大韓航空の元機内食関連子会社へのサイバー攻撃が発端とされており、ランサムウェア集団「Clop(クロップ)」による犯行声明とも関連する可能性が指摘されています。
元子会社へのサイバー攻撃で従業員情報が流出
大韓航空は2025年12月29日、社内向け通知を通じて、従業員の個人情報が外部に流出した可能性があると明らかにしました。流出が確認されたのは、同社の元機内食関連子会社「KC&D Service」が保有していたデータで、氏名や銀行口座番号などを含む約3万件の従業員情報が影響を受けたとされています。
KC&D Serviceは2020年に大韓航空から米投資ファンドへ売却されており、現在は同社のグループ外企業です。大韓航空によると、今回の事案で顧客情報の流出は確認されていないとしています。
大韓航空の対応と社内説明
大韓航空の幹部は従業員向けメッセージの中で、「第三者企業が起点であったとしても、従業員情報が関係したことを重く受け止めている」とコメントしました。同社は事案判明後、KC&Dとのシステム連携に関する緊急点検を実施し、関係当局へ自主的に報告したとしています。
また、KC&D側に対しても、侵害の詳細調査と再発防止策の徹底を求めていると説明しています。
Clopランサムウェアの犯行声明との関係
今回の事件の背景には、ランサムウェア集団「Clop」による大規模な脆弱性悪用キャンペーンが影響している可能性が指摘されています。
セキュリティ調査によれば、Oracleの基幹業務システム Oracle E-Business Suite(EBS) において、CVE-2025-61882 という深刻なゼロデイ脆弱性が実際のサイバー攻撃で悪用されている事例が確認されています。 この脆弱性は EBS の Concurrent Processing(BI Publisher Integration) コンポーネントに存在し、認証なしでリモートから任意のコード実行が可能な点が特徴で、Oracleは10月の緊急パッチで修正しました。
サイバーセキュリティ企業や政府機関の解析によると、この脆弱性は Clop ランサムウェア関連のエクスプロイトキャンペーンで実際に悪用されていることが確認されており、特定の脅威アクターが Oracle EBS を標的に大規模な侵入・データ窃取活動を行った形跡があります。
Clop はこの脆弱性を 2025年7月〜8月ごろの時点で悪用し始め、影響を受けた多くの組織からデータを奪い、後の恐喝キャンペーンにつなげた可能性があると報告されています
また、米国サイバーセキュリティインフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)は、これらEBS脆弱性を「悪用が確認された脆弱性カタログ(Known Exploited Vulnerabilities, KEV)」としてリストに追加し、対応を促しています。
相次ぐ航空業界の従業員情報流出
航空業界では、直近でもアシアナ航空で約1万人分の従業員情報が流出したことが公表されたばかりです。顧客データではなく、従業員情報が狙われるケースが続いている点について、専門家からは「人事・給与関連データは二次被害につながりやすく、ランサムウェア集団にとって価値が高い」との指摘も出ています。
サプライチェーンリスクが改めて浮き彫りに
今回の大韓航空の事案は、自社システムではなく、すでに売却された元子会社という「サプライチェーン上の弱点」から情報が流出した点が特徴です。企業グループ再編後も、過去の業務委託やデータ連携がリスクとして残り続ける現実を浮き彫りにしました。
大韓航空は「個人情報保護体制をさらに強化する」としていますが、今後は第三者企業を含めた包括的なセキュリティ管理が、航空業界全体でより強く求められることになりそうです。
一部参照








