英国の小規模発電設備がサイバー攻撃で停止 Telegraphはイラン系ハッカー関与、4日間停止と報道

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英国の小規模発電設備がサイバー攻撃で停止 Telegraphはイラン系ハッカー関与、4日間停止と報道

英国で小規模な発電設備がサイバー攻撃を受け、運転を停止していたことが2026年8月22日から23日にかけて報じられました。

The Telegraphは、イラン政権と関係するハッカーが英国の発電設備を4日間停止させたと報じています。施設名や所在地は安全保障上の理由から公表されていません。

一方、英国政府が確認している範囲では、影響を受けたのは小規模な発電設備で、英国全体のエネルギーシステムに危険が及んだことはなかったとされています。今回の攻撃について、英国政府やNational Cyber Security Centre(NCSC)がイラン政府または特定の攻撃グループへの正式な帰属を公表した一次資料は、8月23日時点で確認できませんでした。

したがって、本件は「イランが英国の発電所をサイバー攻撃で停止させた」と確定事項として扱うのではなく、「小規模発電設備へのサイバー攻撃が確認され、Telegraphがイラン系ハッカーの関与と4日間の停止を報じている」と整理する必要があります。

英国NCSCは2026年3月、イランの国家系・イラン関連のサイバーアクターがサイバー活動を行う能力を保持しているとして、英国組織にセキュリティ態勢の見直しを呼びかけていました。さらに英国政府のエネルギー分野サイバーセキュリティ戦略は5月、イラン系脅威アクターが産業制御システム(ICS)を標的としていると明記しています。

英国発電設備へのサイバー攻撃のサマリー

  • 【確認済み】英国政府は、小規模な発電設備がサイバー攻撃の影響を受けたことを認めています。
  • 【確認済み】英国政府は、今回の事案によって英国全体のエネルギーシステムが危険にさらされたことはないと説明しています。
  • 【報道ベース】The Telegraphは、対象設備が4日間停止したと報じています。
  • 【報道ベース】The Telegraphは、攻撃にイラン政権と関係するハッカーが関与したと報じています。
  • 【報道ベース】The Telegraphは、英国でイラン系ハッカーが発電設備を停止させた初の既知事例とみられると報じています。
  • 【確認できず】英国政府またはNCSCによる、今回の攻撃のイラン政府・IRGC・特定グループへの正式な帰属公表は確認できませんでした。
  • 【確認できず】対象となった発電設備の名称、所在地、発電方式、設備容量は公表されていません。
  • 【確認できず】侵入経路、悪用された脆弱性、認証情報の悪用有無は公表されていません。
  • 【確認できず】PLC、SCADA、HMIなどOT/ICSが直接侵害されたかは公表されていません。
  • 【確認できず】攻撃者がマルウェアやワイパーを使用したか、設備停止を直接操作したかは公表されていません。
  • 【確認済み】英国NCSCは2026年3月、イラン国家系・イラン関連アクターがサイバー活動能力を保持しているとして英国組織へ警戒を呼びかけています。
  • 【確認済み】英国政府の2026年エネルギー分野サイバーセキュリティ戦略は、イラン系脅威アクターによるICS標的化を明記しています。
項目 内容
報道日 2026年8月22日
攻撃時期 2026年7月と報道
対象 英国の小規模発電設備
停止期間 4日間とThe Telegraphが報道
英国全体の電力供給への影響 英政府は広域のエネルギーシステムに危険なしと説明
攻撃主体 The Telegraphはイラン政権と関係するハッカーと報道
英政府・NCSCによる帰属 8月23日時点で公式な帰属公表を確認できず
施設名・所在地 非公表
侵入経路 確認できませんでした
悪用された脆弱性 確認できませんでした
OT/ICSへの直接侵害 確認できませんでした
データ漏えい 公表情報では確認できませんでした
NCSCの関与 英報道ではNCSCが対応に関与したとされています

英国政府は「小規模発電設備への攻撃」を確認

The Telegraphは8月22日、「Iranian hackers shut down UK power plant」と題し、イラン政権と関係するハッカーによるサイバー攻撃で英国の発電所が4日間停止したと報じました。

その後、英国政府のDepartment for Energy Security and Net Zero(DESNZ)は、影響を受けたのは小規模な発電設備であり、英国全体のエネルギーシステムに危険が及んだことはなかったとの趣旨を説明したと英メディアが報じています。

このため、今回の設備を大規模な火力・原子力発電所などのCritical National Infrastructure(CNI)が4日間停止した事案と解釈するのは適切ではありません。

施設名や所在地は安全保障上の理由から明らかにされていません。

一方、小規模設備であっても、サイバー攻撃によって実際の発電機能が停止したのであれば、情報窃取やWebサイト停止とは異なり、サイバー空間での侵害が物理的な運用へ影響した事例として重要です。

「4日間停止」「イラン系」はThe Telegraphの報道

現時点で特に切り分ける必要があるのが、停止期間と攻撃主体です。

The Telegraphは、

  • 攻撃によって発電設備が4日間停止した
  • イラン政権と関係するハッカーが実行した
  • 英国でイラン系ハッカーが発電設備を停止させた初の既知事例とみられる

と報じています。

しかし、英国政府やNCSCが公開している一次資料では、8月23日時点で今回の施設名、停止期間、攻撃者の帰属根拠などは確認できませんでした。

そのため、本記事では「イランの国家支援型サイバー攻撃で英国発電所が4日停止」と断定せず、The Telegraphの報道内容として扱います。

サイバー攻撃の帰属では、IPアドレス、言語、攻撃時間帯、過去のTTPとの類似、攻撃者の声明など一つの要素だけで国家関与を確定することはできません。

特に重要インフラへの攻撃では、政府・情報機関・捜査機関が技術情報やインテリジェンスを総合して判断するため、正式な帰属公表と報道ベースの情報を区別する必要があります。

NCSCは3月時点でイラン関連のサイバー脅威を警告

英国NCSCは2026年3月2日、中東情勢を受けて英国組織へサイバーセキュリティ態勢を見直すよう警告しました。

当時の評価では、イランから英国への「直接的なサイバー脅威に現時点で重大な変化はない」としながらも、情勢は急速に変化する可能性があるとしています。

同時に、NCSCはイラン国家系およびイラン関連のサイバーアクターが、少なくとも一定のサイバー活動能力をほぼ確実に保持していると評価しています。

また、英国国内への波及的な影響に備え、Iran-linked hacktivistsによるDDoS、フィッシング、ICSを標的とする活動に関する既存の注意喚起を確認するよう求めました。

高リスク組織に対しては、

  • 監視の強化
  • 外部攻撃面の確認
  • インシデント対応態勢の見直し
  • NCSC Early Warningの利用
  • CNI向けの重大サイバー脅威対策の確認

などを推奨しています。

今回の発電設備への攻撃との直接的な関連をNCSCが公表したわけではありませんが、英国当局が数カ月前からイラン関連のICSリスクを認識していたことは確認できます。

英国政府の戦略も「イラン系アクターがICSを標的」と明記

英国政府、NCSC、Ofgem、National Energy System Operator(NESO)が2026年5月28日に公表した「Energy sector cyber security strategy」でも、イラン系サイバー脅威が取り上げられています。

同戦略は、イラン系脅威アクターについて、サイバー空間で攻撃的な活動を続けており、比較的高度でない手法でも目的を達成し、産業制御システムを標的としてきたと説明しています。

さらに同戦略は、エネルギーシステムのサイバーリスクについて、大規模な重要インフラ事業者だけに存在するものではないと指摘しています。

再生可能エネルギー、小規模発電、分散型エネルギー、デジタル化の拡大によって、従来は重要インフラの中心と見なされなかった設備もエネルギーシステムへ組み込まれています。

今回の事案が小規模発電設備だったとの英政府説明は、この問題と重なります。

1つの設備停止が英国全体の供給へ直ちに影響しなくても、同様の攻撃が多数の分散型設備へ同時に行われた場合には、別のリスク評価が必要になります。

米政府は2026年、イラン系APTによるOT・PLC攻撃を確認

イラン系アクターによるOT攻撃は、想定上の脅威だけではありません。

米FBI、CISA、NSA、環境保護庁(EPA)、エネルギー省(DOE)、米サイバー軍は2026年4月7日、イラン関連APTによるPLC攻撃について共同アドバイザリを公表しました。

米当局によると、攻撃者はインターネットへ公開されたOT機器を標的とし、Rockwell Automation/Allen-Bradley製PLCなどへアクセスしていました。

攻撃によって、

  • PLCのプロジェクトファイルへの不正操作
  • HMIやSCADA画面に表示されるデータの改変
  • PLC機能の停止
  • 操業への影響
  • 金銭的損失

が確認されています。

米当局は、この活動をイラン関連APTによるものと評価し、米国内で妨害的な影響を発生させることを目的としているとしています。

標的には上下水道だけでなく、政府施設とエネルギー分野も含まれています。

ただし、今回の英国発電設備の攻撃が、米国で確認されたAPTと同一グループ、同一手法によるものだと示す一次情報はありません。

技術的な関連を推測してはいけません。

セキュリティ対策Labでは、この米政府共同アドバイザリについてイラン系APTが米重要インフラへサイバー攻撃、正規エンジニアリングツールで制御ロジックを改変で詳しく取り上げています。

米国の水道攻撃「12州」と公的確認の差

The Telegraphは、英国での事案が米国の水道インフラを狙った一連の攻撃と同時期に発生し、米国では12州に影響が及んだと報じています。

一方、米FBIとEPAが公開した2026年の注意喚起では、7月27日以降、少なくとも7州の上下水道事業者からインターネット公開PLCを狙った攻撃の報告を受け、一部で水道運用が低下したことを公式に確認しています。

攻撃者はPLCへリモートアクセスし、IPアドレスやパスワードを変更することで監視・制御機能を失わせていました。

「12州」という数字は複数の米メディアが関係者情報として報じていますが、FBIの公開資料で公式確認できる数字は少なくとも7州です。

また、米国の7州以上の水道攻撃について、FBI・EPAの公開注意喚起は攻撃主体をイランと正式に帰属させていません。

一方、別の4月7日の米政府共同アドバイザリでは、2026年3月以降に政府施設、上下水道、エネルギー分野のPLCへ妨害を加えている活動について「イラン関連APT」と公式に評価しています。

「同じ時期にイラン系APTのOT攻撃が確認されている」ことと、「個々のすべての水道・発電設備攻撃がイランによるものと公式確認された」ことは区別する必要があります。

攻撃手法は公表されず、PLC攻撃だったとも断定できない

英国の今回の発電設備について、具体的な技術情報はほとんど公開されていません。

現時点で確認できないのは次の項目です。

  • インターネット公開されたPLCが入口だったか
  • VPNやリモートアクセス機器が侵害されたか
  • 認証情報が窃取されたか
  • 既知の脆弱性・ゼロデイが悪用されたか
  • ITネットワークからOTへ横展開したか
  • HMIやSCADAが改変されたか
  • 攻撃者が発電設備へ停止指令を送ったか
  • サーバー障害などの結果として安全停止したか
  • マルウェアやワイパーが使われたか

発電設備が停止したという結果だけから、「PLCを乗っ取って発電機を停止した」と判断することはできません。

安全性を重視する産業設備では、ITシステムや監視機能に異常が発生した場合、安全側へ停止するフェイルセーフ設計が取られる場合もあります。

今回、どのプロセスによって4日間の停止に至ったのかは公表されていません。

小規模発電設備でもOT資産の棚卸しが必要

英国政府のEnergy sector cyber security strategyは、エネルギー分野の変化によってサイバーリスクが大規模事業者だけの問題ではなくなっているとしています。

企業でも同様です。

工場、物流センター、データセンター、大規模店舗、病院などでは、

  • 自家発電設備
  • コージェネレーション
  • 太陽光発電
  • 蓄電池
  • UPS
  • BEMS
  • 遠隔監視装置
  • PLC・HMI
  • 保守用VPN
  • セルラーモデム

などがネットワークへ接続されている場合があります。

これらが「情報システム」ではなく設備部門の管理物として扱われていると、SOCや情報システム部門が外部公開状況や脆弱性を把握できていないケースがあります。

攻撃者から見れば、組織内の管理区分は関係ありません。

インターネットから到達できる設備であれば攻撃面になります。

米当局がOT事業者へ求めている対策

米FBIなどの共同アドバイザリは、イラン関連APTによるPLC攻撃への対策として、最優先でPLCをインターネットへ直接公開しないよう求めています。

主な対策は以下です。

  • PLCをパブリックインターネットから切り離す
  • リモートアクセスはセキュアゲートウェイやジャンプホストを経由させる
  • 外部ネットワークからOTへ接続する際にMFAを適用する
  • VPN、ファイアウォール、プロキシなどでアクセス元を制限する
  • PLCのロジック・設定をバックアップし、オフラインで保管する
  • 不要なRDP、VNC、Telnet、FTP、Web管理機能を無効化する
  • ベンダーが提供するセキュリティアップデートを適用する
  • OT機器の設定変更を監視する
  • インターネットからの異常なログインやプロトコル通信を監視する

特に重要なのは、インターネットからPLCへ直接到達できる構成を避けることです。

PLC自体がMFAをサポートしていなくても、その前段のVPNやゲートウェイでMFA、接続元制限、ログ取得を実装できます。

日本の情報システム・OT/ICS部門への示唆

今回の英国事案について、日本企業が確認すべきなのは「イランから狙われるか」だけではありません。

米英当局が2026年に繰り返し警告しているのは、インターネットへ公開されたOT機器や管理経路を攻撃者が探索し、物理的な操業へ影響を与えられる状態が存在することです。

まず、自社のOT資産を把握する必要があります。

設備部門、工場、施設管理、外部保守会社が独自に設置したPLC、HMI、VPN、セルラールーター、遠隔監視装置まで含め、インターネットから到達できる機器を棚卸しします。

次に、遠隔保守を見直します。

常時接続のVPNや共有アカウントではなく、必要な時間だけ接続できる方式、MFA、接続元制限、個人単位のアカウント、操作ログを組み合わせます。

ITとOTの境界も確認が必要です。

ITネットワークへ侵入された後にOTへ横展開できる構成であれば、PLCそのものをインターネット公開していなくても操業リスクは残ります。

OTネットワークのセグメンテーション、ジャンプサーバー、管理端末の分離、双方向通信の必要性を再確認する必要があります。

さらに、復旧を「サーバーのバックアップ」だけで考えないことも重要です。

PLCのロジック、HMI・SCADA設定、ネットワーク構成、ファームウェア、エンジニアリング端末の復旧手順までバックアップ・検証しておかなければ、設備停止後の復旧に時間がかかります。

今回の英国事案では、小規模発電設備だったため英国全体の供給への影響はなかったとされています。

しかし、サイバー攻撃で物理設備が数日間停止したという報道が事実であれば、「重要インフラ指定されている巨大設備だけを守ればよい」という考え方では不十分です。

分散型エネルギーや工場設備を含め、停止した場合に事業へ影響するOT資産を自社のサイバーセキュリティ管理対象へ含める必要があります。

出典