静岡県長泉町は2026年8月25日、町が管理すべき廃棄対象の公文書を無断で自宅へ持ち帰り、町のコピー機を私的に利用するなどした教育委員会の女性主査を、8月20日付で懲戒処分として免職にしたと公表しました。
町の公式発表では、持ち帰った文書の中に個人情報を含む文書のほか、町の意思決定や財務事務に関する文書が含まれていたことが明らかになっています。一方、公文書の持ち帰りによる個人情報の流出は確認されていません。
朝日新聞によると、持ち帰られた公文書は約2万枚で、職員は公立図書館から借りた推理小説約80冊分、約1万2千枚を、夜間や休日に町のコピー機を使って公文書の裏面へ複写していたとされています。さらに、通勤方法を変更した後も届出を行わず、47カ月分、9万4千円の通勤手当を受給していたと報じられています。
今回の事案は、廃棄予定文書であっても正式な廃棄が完了するまでは組織の管理対象であり、職員が個人判断で持ち出せるものではないことを改めて示しています。内部者による情報持ち出し、公文書管理、物理媒体の廃棄統制という観点からも確認すべき事案です。
長泉町職員による公文書持ち帰りのサマリー
- 【確認済み】長泉町は2026年8月25日、教育委員会の57歳女性主査を8月20日付で免職処分にしたと公表しました。
- 【確認済み】職員は町が管理すべき大量の廃棄対象公文書等を無断で自宅に持ち帰り、保管していました。
- 【報道】朝日新聞などによると、持ち帰った公文書は約2万枚です。
- 【確認済み】職員は町のコピー機等を使い、持ち帰った文書の裏面に私的目的で大量の小説をコピーしていました。
- 【報道】朝日新聞によると、コピーしたのは公立図書館から借りた推理小説約80冊分、約1万2千枚です。
- 【確認済み】回収した文書には、個人情報を含む文書、町の意思決定に関する文書、財務事務に関する文書が含まれていました。
- 【確認済み】町は、公文書持ち帰りによる個人情報の流出は確認されていないとしています。
- 【確認済み】職員は通勤手段変更の届出も長期間怠っていました。
- 【報道】朝日新聞によると、徒歩通勤へ変更後も届出をせず、47カ月分、9万4千円の通勤手当を受給していました。
- 【確認済み】町は警察署へすでに相談済みです。
- 【確認済み】公文書を所管していた担当部長、課長など計5人も管理監督責任を問われ、口頭注意を受けました。
- 【確認済み】町は公文書管理ルールの再確認、個人情報管理研修、服務規律の再確認、倫理研修を再発防止策として挙げています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年8月25日 |
| 処分日 | 2026年8月20日 |
| 対象組織 | 静岡県長泉町 |
| 被処分者 | 教育委員会 主査、57歳女性 |
| 処分 | 免職 |
| 主な行為 | 廃棄対象の公文書等を無断で自宅へ持ち帰り、私的に利用 |
| 持ち帰った文書 | 公式発表は「大量」。朝日新聞などは約2万枚と報道 |
| 私的コピー | 公式発表は「大量の小説」。朝日新聞は約80冊、約1万2千枚と報道 |
| 文書に含まれていた情報 | 個人情報、町の意思決定、財務事務に関する情報 |
| 個人情報流出 | 確認されていない |
| 通勤手当 | 届出を長期間怠った。朝日新聞は47カ月分、9万4千円と報道 |
| 警察への相談 | 相談済み |
| 管理監督者への対応 | 担当部長・課長等5人を口頭注意 |
| 個人情報保護委員会への報告 | 確認できませんでした |
| 再発防止 | 公文書管理ルール再確認、個人情報管理研修、服務規律再確認、倫理研修 |
廃棄対象の公文書を無断で自宅へ持ち帰り
長泉町の公式発表によると、被処分者は町が管理すべき大量の「廃棄対象の公文書等」を無断で自宅へ持ち帰り、保管していました。
朝日新聞はその量を約2万枚と報じています。共同通信は、職員が5年以上にわたり、保存期限を過ぎた公文書を繰り返し自宅へ持ち帰っていたと報じています。
重要なのは、対象が「廃棄予定」だったからといって、職員が自由に持ち帰れる文書になったわけではない点です。
組織が廃棄対象と判断した文書でも、正式な廃棄処理が完了するまでは組織の管理下にあります。特に個人情報や内部情報を含む場合、廃棄工程そのものが情報セキュリティ管理の一部です。
廃棄対象文書を職員が自由に抜き取れる状態であれば、廃棄記録と実際の処分内容が一致せず、組織側が文書の所在を把握できなくなる問題も生じます。
持ち帰った文書には個人情報や財務事務の情報
長泉町は、自宅から回収した文書について、個人情報を含む文書や、町の意思決定、財務事務に関する文書が含まれていたと公表しました。
一方で、公文書の持ち帰りによる個人情報の流出は確認されていないとしています。
この点は、「個人情報を含む公文書が庁外へ無断で持ち出された」という事実と、「第三者への個人情報流出が確認された」という事実を分けて扱う必要があります。
今回確認されているのは、町が管理すべき情報が職員の自宅という管理外の場所へ移されたことです。第三者が閲覧した、複製した、外部へ提供したといった事実までは公表されていません。
そのため、本件を「個人情報漏えい」と断定することはできませんが、個人情報を含む公文書が組織の管理外へ持ち出されたこと自体は、重大な情報管理上の問題です。
小説約80冊、約1万2千枚を職場のコピー機で複写と報道
長泉町の公式文書では、職員が町のコピー機等を利用し、持ち帰った文書の裏面へ「私的目的のため大量の小説のコピー」を行っていたと説明しています。
朝日新聞によると、対象は公立図書館から借りた推理小説約80冊分、約1万2千枚でした。夜間や休日など、同僚がいない時間帯に職場でコピーを繰り返していたとされています。
この行為には、公文書の無断持ち出しとは別に、町の設備や消耗品、電力などを私的目的で利用した問題があります。
また、公文書の裏面を私的な印刷用紙として使えば、文書本来の用途と私物が混在します。その結果、回収、廃棄、所在確認がさらに難しくなり、個人情報や内部情報が意図せず第三者の目に触れるリスクも高まります。
公文書の廃棄統制では、単に「保存期限を過ぎたか」だけでなく、廃棄対象となった後に誰が文書へアクセスできるか、どの経路で廃棄場所へ移送するか、廃棄完了をどう確認するかまで管理する必要があります。
47カ月分、9万4千円の通勤手当を受給と報道
町の公式発表では、被処分者が通勤手段の変更に関する届出を長期間怠っていたことも処分理由の一つとして挙げられています。
朝日新聞によると、職員は自転車通勤から徒歩通勤へ変更した後も変更届を提出せず、47カ月分、9万4千円の通勤手当を受給していました。
長泉町は、この公文書持ち帰り、コピー機の私的利用、通勤手段変更の未届などを総合し、地方公務員としての信用を著しく失墜させるものと判断しました。
町は地方公務員法第33条の「信用失墜行為の禁止」などに抵触するとし、同法第29条第1項に基づき懲戒処分としています。
現時点で、通勤手当について町が返還を求めたかどうかは公式公表文から確認できませんでした。
前年には財務会計システムへの不正アクセスで停職処分
朝日新聞は、今回の主査について、2025年8月にも町の財務会計システムへの不正アクセスを繰り返したとして停職1カ月の懲戒処分を受けていたと報じています。
長泉町が2025年8月21日に公表した別の懲戒処分資料では、教育委員会の56歳女性主査が、過去に所属していた部署で知った財務会計システムの管理者権限を使って不正アクセスし、自身の権限を少なくとも2回、管理者権限へ変更したことが明らかにされています。
管理者権限が利用できなくなった後には、他課の職員から職員番号を聞き出すなどして、その職員になりすましてシステムへログインしていました。
町は当時、この行為について不正アクセス禁止法に違反すると判断し、停職1カ月としました。不正アクセスによる横領や情報漏えいは確認されず、裾野警察署へ通報済みとしていました。
朝日新聞によると、その事件に関連する自宅の家宅捜索で大量の公文書が見つかったことから、今回の持ち帰りが明らかになったとされています。
長泉町の2026年8月25日の公式公表では、今回の事案と前年の不正アクセス事案との関係までは説明していません。このため、両事案の発覚経緯については朝日新聞の報道に基づく情報として区別する必要があります。
管理監督責任で担当部長・課長など5人を口頭注意
長泉町は、持ち帰られた公文書を所管していた担当部長、課長など計5人についても管理監督責任を問い、8月20日付で口頭注意としました。
この対応は、今回の問題を職員個人だけの行為として処理していない点で重要です。
大量の公文書が長期間にわたり廃棄工程から抜き取られていたのであれば、文書管理の仕組みとして、廃棄対象文書の数量、保管場所、搬出、廃棄完了をどのように確認していたかが検証対象となります。
廃棄予定の紙文書では、日常的な業務文書に比べて管理意識が弱くなりやすい一方、保存期限を過ぎたことと、機密性が失われたことは同義ではありません。
保存期限後の文書にも個人情報、財務情報、意思決定過程などが残るため、廃棄が完了するまでアクセス制御と管理責任を維持する必要があります。
町は公文書管理と個人情報管理の研修を再実施
池田修町長は、今回の非違行為について町民の信頼を著しく損なうものとして謝罪し、再発防止を全庁的に進めるとしています。
具体策として、長泉町は以下を挙げています。
- 公文書管理ルールの再確認
- 個人情報の適正管理に関する研修の再実施
- 服務規律の再確認
- 職員への倫理研修による意識改革
町は2025年の財務会計システム不正アクセス事案でも、全職員に情報セキュリティポリシーの遵守を徹底するとしていました。
その後に今回の公文書持ち帰りが判明したことを踏まえると、研修や周知だけでなく、不適切な行為を物理的・技術的に実行しにくくする統制を組み合わせることが重要になります。
内部監査・自治体情報システム部門への示唆
今回の事案で最も重要なのは、「廃棄対象になった文書」を情報資産管理の対象外にしないことです。
保存期限が終了した後も、正式な廃棄が完了するまで文書には個人情報や内部情報が残っています。廃棄対象文書を一時保管する場所を限定し、施錠、搬出記録、廃棄数量の照合などを行う必要があります。
特に紙文書では、デジタルシステムのようなアクセスログが自動的に残りません。誰が何枚持ち出したかを事後的に追跡できない場合、長期間の不正持ち出しを検知できない可能性があります。
廃棄工程では、担当者1人で文書を処分できる運用ではなく、複数人での確認、廃棄業者への引き渡し記録、溶解・裁断完了の証跡など、処理の完了を確認できる仕組みが有効です。
また、内部者リスクへの対策では、研修だけに依存しないことも重要です。今回のように職員本人が規程に反することを認識した上で行動するケースでは、教育だけでは防げない可能性があります。
廃棄文書保管場所へのアクセス制限、庁外搬出の承認、コピー機の利用ログ、時間外の大量印刷検知、職員の自己関連情報へのアクセス監査など、異常を検知できる統制を組み合わせる必要があります。
長泉町は今回、公文書持ち帰りによる個人情報流出は確認されていないとしています。今後は、持ち帰られた約2万枚と報じられる文書の調査範囲、個人情報の種類や対象人数、第三者閲覧の有無、警察への相談後の対応、公文書管理手順の具体的な見直しが確認ポイントになります。








