雨ニモマケズ高等学校と現実科学研究所の連携について―オフホワイトハッカー・田中 悠斗氏が語る経緯や想い

コラム・インタビュー

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雨ニモマケズ高等学校と現実科学研究所の連携について―オフホワイトハッカー・田中 悠斗氏が語る経緯や想い

2027年4月開校予定の広域通信制高校「雨ニモマケズ高等学校」(学校法人幸和学園、校長:大﨑洋氏)と、デジタルハリウッド大学(DHU)内の学長直轄研究機関「現実科学研究所」が、共同研究プロジェクトを立ち上げました。2026年8月26日、両者はDHUで記者会見を開き、連携協定の締結を発表しています。

この連携の中心にいる人物の一人が、著書『攻撃学』の著者であり「オフホワイトハッカー」の呼称でも知られる、DHU特任教授でもある田中 悠斗氏です。今回は、この連携に至った経緯と、田中氏自身が高校生に何を伝えたいのかについて話を聞きました。

インタビューに答えていただいた方のプロフィール

田中悠斗(たなか ゆうと)

株式会社Fore-/Fore-Z 代表取締役

防衛大学校卒業後、自衛隊幹部として勤務。その後、海外軍事関係業務や攻撃部隊の指揮官(レッドチーム指揮官)を歴任。帰国後、ベトナム・ドゥイタン大学においてサイバーセキュリティ・ハッキング教育に携わりながら、ベトナム国防省との連携も担う。現在は株式会社Fore-/Fore-Zにて、インテリジェンス、サイバーセキュリティ、分散型台帳技術の研究開発を展開。2026年6月、著書『攻撃学』を出版。「オフホワイトハッカー」という呼称でも知られる。

高校と現実科学研究所をつなぐラボ

今回発表された連携の核となるのが、雨ニモマケズ高等学校の生徒を対象とした、デジタルハリウッド大学(DHU)現実科学研究所とのラボ設置です。田中氏はDHUで特任教授を務めており、大学そのものというより、学長直轄のこの研究機関と高校をつなぐ役割を担っています。

田中氏はこの取り組みの背景について、「高校で3年間学び、大学で4年間学ぶという流れが、うまく繋がっていない」という問題意識を語ります。「今は高校と大学が別々に存在し、その間に入試という関門がある仕組みです」。

自身も高校生の頃から大学の授業に「勝手に潜り込んでいた」という田中氏は、高校と大学という制度上の垣根を越えて、研究者や大学生が高校に顔を出し、逆に高校生が研究所レベルの取り組みに触れる機会を作ることに意義を見出しています。

大学生や社会人が高校に顔を出し、「先生」という立て付けで関わることについて想定しているとしています。

ここで田中氏が重視するのは、教員免許のような正式な「資格」の有無ではありません。

「僕は『資格ホルダー』と言っているのですが」と前置きしたうえで、田中氏は、資格を持っているかどうかよりも、未来にバトンを残すための仕掛けになっているか、そして関わる本人自身がそれを楽しめているか、この二つが両立していることの方がはるかに大切だと語ります。

資格ホルダーであること自体は、教える資格の本質ではない、というのが田中氏の教育観です。この考え方が、大学生や研究者、社会人が「先生」として高校生と関わることを積極的に肯定する、今回の連携の土台になっています。

ハッキング、サバイバル訓練、野草の見分け方

田中氏自身は、雨ニモマケズ高等学校で何を教えることになるのでしょうか。「まだ確定していませんが、ハッキング、サバイバル訓練、野草の見分け方などはやろうかと話しています」と、明かしました。

一見すると脈絡のない組み合わせに思えますが、田中氏の中では一貫しています。「みんな、すぐに上へ積み上げようとするんです。僕は、一段目の基礎工事は広ければ広いほどいいと思っています」。

田中氏は、ジャガイモの作り方やコンクリートの混ぜ方、レンガの作り方、飯盒での米の炊き方など、便利さの裏で失われつつある基礎的な経験を例に挙げます。

「その基礎工事を大人になってから行うのは、かなり大変です」。

「数学や物理、工学、ハッキングやサイバーセキュリティ、農業や漁業など分野を問わず、原理や本質に触れる経験は、できるだけ若いうちに積んでおくべきだ」というのが田中氏の考えです。

また、田中氏自身、高校生の頃から祖父の畑仕事や近所の田植えを手伝っていたといいます。

この考え方は、田中氏がDHUのハッカー部で行っている指導方針とも重なります。

「結局のところは後輩育成です」と語る田中氏は、AIやLLMがどのような原理で動いているのか、その手前でどのような処理が行われているのかを、できるだけ細かく分解して理解することを重視しているといいます。

「知らないものを一つずつ掘り下げる経験と場所は、どの分野でも大切です」。この力があれば、言語や環境が変わっても自分で考えて対応できますが、なければ「説明書がないのでできません」で立ち止まってしまう、と田中氏は説明します。

どのような生徒に来てほしいか

雨ニモマケズ高等学校でどのような生徒に学んでほしいかを尋ねると、田中氏は「もっといろいろな経験をしたい」「今の環境を変えたい」「何者かになりたい」と思っている人だと答えました。

また、「同じ失敗を繰り返すのではなく、多くの種類の失敗を、できるだけ若いうちに、できるだけ短期間で経験してほしい」といいます。

「公園でいう砂場のような場所」という表現で、転んでも痛くない環境の中で挑戦を重ねることの大切さを語りました。「自分の軸を見つけるために、できるだけ大規模にさまざまな体験や経験を積み、異分野の人と、血肉になるような交流をしてほしい」。

保護者に向けては、「学歴社会は、とっくに終わっていると思っています」とした上で、

「ここでなければ駄目ということではありません。こういう選択肢があると認識して、それを子どもに伝えてあげてほしい」とメッセージを送ります。

通信制高校という形態についても、田中氏は特定の層をターゲットにしているわけではないと説明します。

身体の成長期に長い睡眠時間が必要なアスリートや、さまざまな場所での経験を求める生徒など、多様なニーズに応じられる柔軟性こそが強みだといいます。「学校という仕組みを、使い倒すつもりで来ればいい」。

最後に田中氏は、今を生きる大人たちへも言葉を向けました。「未来にバトンを渡す意識を、今を生きている大人たちは全員持っていてほしい」。エネルギーのある子どもたちが集まってくる場だからこそ、大人の側もそれを支える姿勢を持ってほしい、という願いがにじみました。

謝辞

本記事の取材にあたり、田中 悠斗氏より率直な想いを共有いただきました。心より御礼申し上げます。

なお、本記事の編集方針・記述の最終的な責任は合同会社ロケットボーイズ(セキュリティ対策Lab)にあります。