警視庁は2026年9月30日、東芝グループの旧「東芝ITコントロールシステム株式会社」に勤務していた元社員3人を、取引先への架空発注を利用して勤務先から約3,800万円をだまし取ったとする詐欺容疑で逮捕したと、TBSや読売新聞など複数の報道機関が報じました。
報道によると、3人は2021年2月から2022年12月にかけて、日常的に取引のあった部品製造会社へ設計業務などを架空発注し、旧東芝ITコントロールシステムから計約3,800万円を振り込ませた疑いが持たれています。
取引先へ支払われた金銭は、知人名義の口座などを介して3人へ還流していたとみられています。
警視庁は、同様の手口が2013年ごろから約10年間繰り返され、総額約2億5,000万円規模に上った可能性があるとみて余罪を捜査しています。
3人は逮捕された段階であり、有罪が確定したものではありません。TBSの報道では、警視庁は3人の認否を明らかにしていません。
なお、東芝ITコントロールシステムは2025年4月1日、東芝デベロップメントエンジニアリングと合併し、「東芝ユニファイドテクノロジーズ株式会社」となっています。
2026年9月30日時点で、東芝または東芝ユニファイドテクノロジーズによる本件の公式リリースは確認できていないため、本記事では逮捕・捜査内容について報道各社が警視庁発表をもとに報じた内容として整理します。
東芝ITコントロールシステム元社員の架空発注事件 サマリー
確認できている内容:
- 警視庁が2026年9月30日、旧東芝ITコントロールシステムの元社員3人を詐欺容疑で逮捕したと複数メディアが報じています。
- 逮捕容疑の対象期間は2021年2月から2022年12月です。
- 取引先の部品製造会社へ設計業務などを架空発注した疑いが持たれています。
- 報道では7回にわたり計約3,800万円を勤務先から取引先へ振り込ませたとされています。
- 取引先へ支払われた資金は、知人名義の口座などを介して元社員側へ還流したとみられています。
- 警視庁は2013年ごろから約10年間、同様の手口が繰り返された可能性を捜査しています。
- 総額は約2億5,000万円規模に上った可能性があると報じられています。
- 2023年11月ごろの税務調査で不審な資金の流れが発覚したと報じられています。
- 旧東芝ITコントロールシステムは2024年8月、警視庁へ相談したと報じられています。
- 元社員3人のうち1人は2022年9月に退職、残る2人は2024年6月に懲戒解雇されたと報じられています。
- 3人の認否について、警視庁は明らかにしていないとTBSが報じています。
- 東芝ITコントロールシステムは2025年4月1日の合併により、現在は東芝ユニファイドテクノロジーズとなっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 逮捕日 | 2026年9月30日 |
| 当時の勤務先 | 東芝ITコントロールシステム株式会社 |
| 現在 | 2025年4月1日に合併し、東芝ユニファイドテクノロジーズ株式会社へ |
| 逮捕者 | 元社員3人 |
| 容疑 | 詐欺 |
| 逮捕容疑の期間 | 2021年2月~2022年12月 |
| 逮捕容疑額 | 約3,800万円 |
| 回数 | 7回と報道 |
| 手口 | 取引先への設計業務などの架空発注 |
| 資金の流れ | 取引先から知人名義口座などを介して元社員側へ還流した疑い |
| 余罪 | 2013年ごろから同様の手口を繰り返した可能性を捜査 |
| 全体規模 | 約2億5,000万円規模の可能性 |
| 発覚 | 2023年11月ごろの税務調査と報道 |
| 警察への相談 | 2024年8月と報道 |
| 認否 | 警視庁は明らかにしていないと報道 |
| 企業公式発表 | 2026年9月30日時点で本件のリリースは確認できず |
取引先へ架空発注し約3,800万円を支払わせた疑い
TBSと読売新聞の報道によると、逮捕された3人は旧東芝ITコントロールシステムのシステム部門に所属していました。
2021年2月から2022年12月にかけ、日常的に取引していた東京都内の部品製造会社へ、設計業務などを実際には存在しないにもかかわらず発注した疑いが持たれています。
読売新聞は、会社から取引先への支払いは7回、計約3,800万円だったと報じています。
取引先へ支払われた資金は、その後、3人の知人名義の個人口座などへ送金され、元社員側が回収したとみられています。
現時点では捜査段階であり、資金移動に関わった第三者の認識や刑事責任について報道された範囲を超えて判断することはできません。
通常の検査部門を通さず「直接納品」と偽装か
読売新聞によると、旧東芝ITコントロールシステムでは、取引先から納品を受けた場合、通常は検査部門が内容を確認する運用でした。
一方、今回逮捕容疑となった取引については、システム部門へ直接納品されたように偽装し、通常の確認手続きを通さなかったとみられています。
この点は、単純に「会社に検査制度がなかった」という事案ではありません。
報道が示しているのは、検査部門による確認という統制が存在する一方で、例外的な処理を装うことで確認を回避した疑いがあるという構図です。
内部不正対策では、承認・検収フローを設けるだけでなく、
- 通常フローを経由しない直接納品
- 手作業による検収完了処理
- 例外的な支払処理
- 同じ部署だけで完結する発注・検収
- 証憑の不足した取引
を抽出し、別の担当者が確認できる状態にする必要があります。
約10年間で総額2億5,000万円規模か
今回の逮捕容疑は約3,800万円についてです。
一方、警視庁は、3人が2013年ごろから同様の手口を繰り返していた可能性があるとみて捜査していると報じられています。
TBSは総額2億5,000万円以上、読売新聞は2023年3月までの約10年間で計約2億5,000万円に上ったとする警視庁の見方を報じています。
そのため、本記事では「約2億5,000万円規模の余罪を捜査」としています。
現時点で、
- 約2億5,000万円全額について起訴された
- 約2億5,000万円全額について犯罪が認定された
- 元社員3人が全額を取得したことが確定した
という段階ではありません。
逮捕容疑の約3,800万円と、警視庁が余罪として捜査している約2億5,000万円規模は分けて扱う必要があります。
税務調査で不審な資金の流れが発覚
読売新聞によると、一連の不審な資金の流れが発覚したのは2023年11月ごろの税務調査でした。
その後、旧東芝ITコントロールシステムは2024年8月に警視庁へ相談したとされています。
また、逮捕された元社員3人のうち、
- 1人は2022年9月に退職
- 2人は2024年6月に懲戒解雇
されたと報じられています。
不正が疑われる取引がどの税務調査項目から発見されたのか、社内調査でどの範囲まで確認されたのかについては、現時点の報道では明らかになっていません。
東芝ITコントロールシステムは現在「東芝ユニファイドテクノロジーズ」
事件当時に3人が勤務していた東芝ITコントロールシステム株式会社は、現在は同じ社名では存在していません。
東芝の公式サイトによると、2025年4月1日、東芝ITコントロールシステムは東芝デベロップメントエンジニアリング株式会社と合併し、「東芝ユニファイドテクノロジーズ株式会社」に社名を変更しました。
経済産業省のgBizINFOでも、旧東芝ITコントロールシステムは合併による解散として登記記録が閉鎖されています。
今回の逮捕報道は、合併前の旧会社で2013年ごろから2023年ごろまでに行われたとみられる取引に関するものです。
そのため、「東芝ユニファイドテクノロジーズで2026年に架空発注が発生した」という事案ではありません。
内部監査・購買部門が確認したい「例外処理」
今回の事件では、報道上、通常の検査部門による確認を避けるため、システム部門へ直接納品されたように偽装した疑いが持たれています。
内部統制では、通常の承認フローだけでなく「例外として処理された案件」を定期的に確認します。
たとえば、
- 検査部門を通過していない発注
- 発注者と検収者が同じ部署・同じ担当者
- 発注から検収までが極端に短い案件
- 同じ取引先へ繰り返される少額・中額発注
- 成果物を確認できない設計・コンサルティング・開発業務
- 手作業で検収済みに変更された案件
- 通常と異なる納品先
- 契約書や仕様書に対して成果物が不足する案件
を抽出できます。
例外処理そのものを禁止するのではなく、「誰が、なぜ例外を認め、何を根拠に検収したか」を後から確認できるようにします。
架空発注では発注・検収・支払を同じ担当者で完結させない
架空発注を防ぐ基本は職務分掌です。
業務上可能な範囲で、
- 発注申請
- 発注承認
- 納品・役務提供の確認
- 検収
- 請求書確認
- 支払承認
を分けます。
ただし、担当者が複数いるだけでは統制が機能するとは限りません。
実際には、
- 同じ部署内で相互承認している
- 検収者が成果物を確認していない
- 発注者からの説明だけで支払う
- 長年の取引先だから確認を省略する
といった運用があれば、形式上の分離だけでは不正を検知できません。
今回の旧東芝ITコントロールシステムで実際にどの内部統制が機能していなかったのかは、東芝側の調査結果が公表されていないため断定できません。
長期間続く不正は「1件」ではなく傾向で検知する
警視庁は約10年間にわたり同様の手口が繰り返された可能性を捜査しています。
長期間継続する内部不正では、1件の発注書だけを見ると異常性が低い場合があります。
購買・経理データを継続的に分析する場合は、
- 同じ取引先への発注回数・金額の推移
- 担当者ごとの発注集中度
- 特定部署だけで利用される取引先
- 成果物のない役務発注
- 発注・検収・支払の処理日時
- 休日・時間外に行われた承認
- 同額・類似金額の反復
- 予算消化時期に集中する発注
などを横断して確認します。
単発の不正を止めるだけでなく、異常が数年継続していないかを見ることが必要です。
「信頼できる担当者」でも確認を省略しない
長期間同じ取引先・業務を担当する従業員は、取引先との関係や業務知識を蓄積します。
これは事業運営上の強みですが、発注先の選定、検収、支払判断などが特定の担当者に集中すると、周囲が処理内容を確認しにくくなる場合があります。
内部不正対策としては、
- 権限の定期棚卸し
- 担当変更・ジョブローテーション
- 上長以外による抜き打ち確認
- 取引先への実在・取引内容確認
- 内部監査によるサンプルチェック
などを組み合わせます。
内部不正が起きる組織上のリスクについては、セキュリティ対策Labの着服・不正受給など組織資産の悪用が起きる組織の危険サインでも整理しています。
今回の事件について、同記事で扱う組織心理や内部統制上の問題が実際に存在していたと確認されたわけではありません。一般的な内部不正対策の参考として位置付ける必要があります。
2026年9月30日時点で東芝側の事件リリースは確認できず
2026年9月30日時点で、東芝および東芝ユニファイドテクノロジーズから、本件の逮捕・架空発注事件について説明する公式リリースは確認できませんでした。
そのため、
- 実際の会社側被害額
- 社内調査で確認した不正の全件数
- 不正発見後に実施した再発防止策
- 取引先側との関係
- 懲戒処分の具体的な理由
- 損害回収・民事請求
などは、現時点では企業公式情報として確認できません。
今後、東芝ユニファイドテクノロジーズや東芝から説明が公表された場合は、その内容を優先して更新する必要があります。
今後確認したいポイント
今後の捜査・企業側の発表では、次の点が確認対象になります。
- 約2億5,000万円規模とされる余罪の立件状況
- 架空発注が行われた実際の期間
- 取引先企業側の関与・認識
- 不正資金の最終的な流れ
- 税務調査で発覚した具体的な経緯
- 社内調査の範囲
- 会社が確認した最終的な損害額
- 発注・検収・支払プロセスの見直し
- 懲戒・損害賠償などの対応
- 再発防止策
- 起訴・公判の結果
逮捕段階では容疑であり、有罪が確定したものではありません。余罪として報じられている約2億5,000万円についても、捜査・裁判の進展に応じて評価が変わる可能性があります。








