採用担当者の47%がAI生成による履歴書やポートフォリオを確認-ディープフェイクによるビデオ面談も

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採用担当者の47%がAI生成による履歴書やポートフォリオを確認-ディープフェイクによるビデオ面談も

AIの導入が加速度的に進む中、採用の現場にもその影響が色濃く現れています。履歴書のスクリーニング、スキルマッチング、さらには面接の自動化まで、AIは人材選定の工程を大きく変革しています。

Resume Geniusが2025年初頭に実施した調査では、米国の採用担当者1,000人を対象にAIの採用現場への影響を分析しました。その結果、AIが効率性を高める一方で、「セキュリティリスク」や「採用の信頼性」に関する深刻な課題も浮き彫りになっています。

AIが変える採用の形──80%以上がAIスキルを重視

調査によると、採用担当者の81%が「AIに関するスキルを重要視している」と回答しています。とくに若年層の採用担当者にその傾向は顕著で、Z世代では実に89%がAIスキルを求めています。

注目されるAIスキルには、以下が挙げられます

  • ChatGPTやMidjourneyといったツールの活用能力

  • AIを業務プロセスに統合するスキル

  • 倫理的にAIを扱う能力

  • プロンプトエンジニアリング(効果的な指示文の設計)

こうした能力が重視される背景には、「AIと共に働ける人材」のニーズが高まっていることが挙げられます。

セキュリティ観点での懸念──偽装・詐称された応募書類の増加

AI導入の副作用として、採用担当者の58%が「応募者の真偽を見極めることが難しくなった」と感じています。とくに深刻なのが、以下のような“AIによる不正利用”です。

  • AI生成の履歴書やポートフォリオ:採用担当者の47%が確認

  • 偽のSNSプロフィール(LinkedInなど):33%

  • スキル評価におけるAIによるカンニング行為:29%

  • ビデオ面接でのディープフェイク:17%

これらはすべて、採用業務における「情報の信頼性」を根本から揺るがすものであり、サイバーセキュリティと表裏一体の問題です。

AI採用がもたらす攻撃面の拡大

AIを活用した採用管理システムは多くの利便性を提供する一方で、外部攻撃者にとっても新たな攻撃ベクトルになりつつあります。

たとえば、以下のような攻撃リスクが考えられます

  • AI生成メールを使った標的型攻撃メール(AIが模倣した人事担当者のメールなど)

  • AI面接ボットを通じた内部情報の詮索

  • ディープフェイクによるなりすまし面接

  • 応募フォームからの情報収集・悪用

このような環境下では、「AIで効率化された応募プロセス」そのものが攻撃対象になる危険性をはらんでいます。

日本国内でも発生したディープフェイクによる詐欺

2025年3月には日本でもディープフェイクによる詐欺事件が発生しています。

犯人は警察官や検事を名乗り、ビデオ通話で実在する人物の顔をAIで合成しながら、令状やIDカードを提示することで被害者を信じ込ませます。都内の20代男性は「無実を証明しないと逮捕されると思った」と語り、実際に100万円を振り込んでしまったと証言しています。

録画された映像では、AIによって合成された顔のヒゲがちらつくなどの違和感も見受けられ、専門家によるとリアルタイムでの顔置き換え技術が使用されている可能性が高いとのことです。

情報システム部門がとるべき対策

こうしたリスクに対応するため、情報システム部門には以下のような対策が求められます:

AI検出ツールの導入

AI生成された文章や履歴書を検出できるツール(GPT検出器など)の導入により、不正な応募を早期に識別する仕組みを構築しましょう。

面接・応募プロセスの多要素化

本人確認手段として、顔認証や身分証との照合、カメラ付きのライブチェック面接などを併用することで、なりすましやディープフェイクに備えた対応が必要です。

採用管理システムのログ監視と監査

応募フォームや面接ツールを含む採用プロセス全体における操作ログを収集・監査し、異常値のアラートを設定しましょう。

教育と啓発

人事・総務部門だけでなく、社内の面接担当者にもAI不正利用の事例や手口に関する教育を実施し、対応の初動を早める環境を整えましょう。

まとめ:AI活用と信頼性の両立が求められる時代へ

AIは採用の現場に革新をもたらす一方で、信頼性やセキュリティといった新たな課題を投げかけています。情報システム部門と人事部門が連携し、AIの利便性とセキュリティのバランスを取ることが、今後ますます重要になるでしょう。