
2025年2月25日、東京地方裁判所は、産業技術総合研究所(産総研)の元主任研究員である中国籍の権恒道被告(61)に対し、不正競争防止法違反の罪で有罪判決を言い渡しました。判決は懲役2年6カ月、執行猶予4年、罰金200万円となり、刑務所での服役は猶予されました。
この事件は、国が資金を投じる国立研究機関である産総研の営業秘密が国外の企業へ漏洩されたという点で、日本の研究機関の情報セキュリティに大きな影響を与えるものであり、産業スパイや技術流出に対する警戒感を改めて高める結果となりました。
情報漏洩事件の概要
権被告は2018年4月、フッ素化合物の合成技術に関する営業秘密をメールを通じて中国の企業へ送信したとして起訴されました。
権被告は研究施設内において、勤務中に研究成果を不正に持ち出し、中国企業に流出させたとされており、判決では「背信的で大胆な犯行であり、国立研究開発法人の研究者に対する信頼を裏切った」と指摘されました。
一方で、権被告は裁判を通じて一貫して無罪を主張し、「いわれのない告発であり、日本社会の恥である」と発言するなど、自身の行為について違法性を否定していました。
中国製造2025の重点プロジェクト
「中国製造2025」に記載されている10大産業分野は特に日本が得意としている、航空宇宙設備、省エネルギー、新素材、バイオが含まれています。 フッ素化合物はこういった産業でも不可欠で、イオン電池や半導体、高機能樹脂などの開発に利用されるます。
技術漏洩の深刻な影響
今回の事件は、日本の研究機関が持つ機密技術が国外に流出するリスクを改めて浮き彫りにしました。
フッ素化合物は、半導体・電子材料・エネルギー分野・医薬品・農薬など、極めて広範な産業で重要な役割を果たす化学材料です。そのため、日本の研究機関や企業が持つフッ素化合物関連の技術は、各国が競って取得しようとする戦略的価値の高い技術であるといえます。海外企業がこの技術を取得することで、日本の技術的優位性が損なわれる可能性があります。
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