旭化成株式会社は2026年9月17日、元従業員が在職中に入手した同社の「潜在性硬化剤」に関する機密情報を不正に持ち出し、中国企業へ流出させたとして、不正競争防止法違反の容疑で愛知県警に逮捕されたと公表しました。
旭化成は自社調査を通じ、元従業員が在職中に機密情報を持ち出し、退職後に中国の山東聖泉新材料股份有限公司へ流出させたことを確認しています。
同社が調査・確認した範囲では、流出した機密情報に取引先から預かった技術資料や個人情報等は含まれていません。
旭化成は再発防止策として、技術流出防止体制の強化、機密情報へのアクセス権限見直し、退職予定者に対する情報管理ポリシーの厳格化などを進めています。
旭化成の機密情報持ち出し事案のサマリー
確認できている内容:
- 旭化成は2026年9月17日、元従業員の逮捕を公表しました。
- 元従業員は、不正競争防止法違反の容疑で愛知県警に逮捕されています。
- 旭化成は、元従業員が在職中に潜在性硬化剤に関する機密情報を不正に持ち出したことを自社調査で確認しています。
- 持ち出した情報は、退職後に中国の山東聖泉新材料股份有限公司へ流出させたと旭化成は確認しています。
- 流出した機密情報には、取引先から預かった技術資料や個人情報等は含まれていないとしています。
- 旭化成は、元従業員と山東聖泉に対し、機密情報の利用停止と廃棄等を目的とした民事訴訟を提起する予定です。
- 流出した機密情報が不正利用されているかについて、調査を継続しています。
- 再発防止策として、アクセス権限見直し、新たなITツール導入、退職予定者のPC管理強化などを進めています。
現時点で公表されていない内容:
- 元従業員の氏名や所属部署
- 情報を持ち出した具体的な時期
- 持ち出しに使用された端末や媒体、クラウドサービス
- 流出したファイル数やデータ容量
- 機密情報の具体的な技術内容
- 山東聖泉で実際に当該情報が利用されたかどうか
- 旭化成が事案を把握した時期や経緯
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年9月17日 |
| 対象組織 | 旭化成株式会社 |
| 事案 | 元従業員による機密情報の不正持ち出し・第三者への流出 |
| 対象情報 | 潜在性硬化剤に関する機密情報 |
| 流出先 | 中国・山東聖泉新材料股份有限公司 |
| 刑事手続き | 元従業員が不正競争防止法違反の容疑で愛知県警に逮捕 |
| 取引先情報 | 取引先から預かった技術資料、個人情報等は含まれていないと公表 |
| 不正利用 | 調査継続中 |
| 今後の法的対応 | 元従業員と山東聖泉への民事訴訟を提起予定 |
| 再発防止 | 機密情報管理、アクセス権限、退職予定者管理、教育などを強化 |
元従業員が在職中に機密情報を持ち出し
旭化成によると、元従業員は在職中に、同社の潜在性硬化剤に関する機密情報を不正に持ち出しました。
その後、退職後に中国の山東聖泉新材料股份有限公司へ情報を流出させたことを、旭化成が自社調査で確認しています。
元従業員は9月17日、不正競争防止法違反の容疑で愛知県警に逮捕されました。
警察による捜査が続いているため、旭化成は詳細の公表を控えています。
現時点では、機密情報をどのような方法で持ち出したのか、私物端末やUSBメモリ、メール、クラウドストレージなどが使われたのかは公表されていません。
取引先の技術資料や個人情報は含まれず
旭化成が調査・確認した範囲では、今回流出した機密情報に、取引先から預かった技術資料や個人情報等は含まれていません。
このため、9月17日の公表内容では、顧客・取引先の個人情報漏えい事案とはされていません。
一方、旭化成自身が保有する潜在性硬化剤に関する機密情報については、第三者への流出が確認されています。
情報の具体的な内容、ファイル数、機密区分などは明らかにされていません。
山東聖泉に利用停止と廃棄を求める民事訴訟へ
旭化成は、流出した機密情報を保護するため、元従業員と山東聖泉に対して民事訴訟を提起する予定です。
訴訟では、当該情報の利用停止と廃棄などを求めるとしています。
また、流出した機密情報が実際に不正利用されているかどうかについて、引き続き調査します。
不正利用が確認された場合は、利用者に対して同様に対応する方針です。
9月17日時点では、山東聖泉が実際に機密情報を利用したと旭化成が確認したとの記載はありません。
アクセス権限と退職予定者の情報管理を見直し
旭化成は今回の事案を受け、再発防止の追加施策を順次実施しています。
機密情報管理では、グループ全体の技術流出防止体制を強化します。機密情報の特定・区分と管理方法を明確化し、新たなITツールを導入するとしています。
あわせて、機密情報へのアクセス権限も見直します。
退職予定者については、誓約書や貸与PCの管理など、情報管理ポリシーを厳格化します。
全役員・全従業員を対象とした機密情報管理研修も実施します。
情報システム部門・内部監査部門が確認したいポイント
今回の公表では具体的な持ち出し経路が明らかにされていないため、特定の技術対策だけを原因対策として挙げることはできません。
一方、旭化成自身が再発防止策としてアクセス権限、ITツール、退職予定者管理を挙げていることから、企業側では次の点を確認できます。
- 技術情報や研究データを機密区分ごとに特定できているか
- 機密情報へのアクセス権限が業務上必要な範囲に限定されているか
- 大量ダウンロード、外部ストレージへのコピー、社外送信などを記録・検知できるか
- 異動・退職が決まった従業員の権限を見直す手順があるか
- 退職予定者による機密情報へのアクセス量やダウンロード量の変化を確認できるか
- 貸与PCの返却前に、外部媒体利用やファイル持ち出しの痕跡を確認できるか
- 退職時の誓約書だけでなく、アクセスログや操作ログを一定期間保存しているか
- 営業秘密として保護する情報について、秘密管理性を説明できる状態になっているか
内部不正は、正規のアクセス権限を持つ従業員が関与する場合があります。そのため、アクセスを許可するだけでなく、「誰が、いつ、どの情報を閲覧・取得したか」を追跡できる管理が必要です。
営業秘密として保護するための管理要件については、以下の記事で整理しています。
営業秘密とは?機密情報との違い、不正競争防止法の3要件と企業の管理方法を解説
元従業員による情報持ち出しの事例は、以下のまとめでも確認できます。
2026年7月・8月 情報漏洩の事例まとめ(機密情報・営業秘密)








