ハリマ共和物産の9600万横領の元従業員、飲酒運転で交通事故を起こし反社から脅迫され犯行

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ハリマ共和物産の9600万横領の元従業員、飲酒運転で交通事故を起こし反社から脅迫され犯行

ハリマ共和物産株式会社(東証スタンダード、コード:7444)は、2025年2月3日に発表した元従業員による9600万横領を発表しました。3月31日特別調査委員会の報告書で、元従業員が横領した原因は「飲酒運転で交通事故を起こし反社から脅迫された為」と動機を語っています。

長期にわたる不正

2019年8月~2024年9月、販売先に現金取引を持ちかけ、自ら代金を回収する手法で約9600万円の金銭を横領していたとしています。

着服した元従業員は「現金払いなら半額にする」などと持ちかけ、集金して着服。また部門長の印鑑を無断で使い、領収証を偽造して現金を受け取っていました。なお、部門長の印鑑が管理されているカギは事務員のロッカーに管理されており誰でも引き出し可能でした。

不正が発覚しないよう、書類上で別の商品の値引き額を水増しするなどの不正も行っていた。

この不正は帳簿に現金入金記録を残さない形で行われていたため、会計処理上は表面化せず、5年以上にわたり発覚を免れました。

犯行の動機

横領した元従業員の犯行動機として2003年に飲酒運転を起こし、相手が反社であったため脅迫され複数のサラ金から借り入れ、300万を支払う。

その後借金返済の為、ギャンブルにハマりギャンブルを通じて知り合った知人の500万の闇金の借金の保証人になり、音信普通になったためさらに借金を背負う形になりました。

この後、闇金からの借金が膨れ上がりは犯行に至ったとの事です。

不正の方法は取引先担当者から教えてもらう

不正の方法は取引先の担当者に借金を相談したところ、具体的な不正の方法を教えてもらったと供述しています。

取引先担当者も2008年8月から2023年1月までの間に、1232万5950円を着服している事が疑われますが、取引先担当者も退職されており詳細ヒアリングが出来ておらず、詳細な横領の調査や認定ができなかったとしています。

なぜ見抜けなかったのか?報告書から読み解く3つのポイント

仕組みとしてのチェックが存在していなかった

特定の取引先では、着服した営業担当者がほぼ単独で実務を担当しており、現金の授受に対するチェック体制がなかったとされています。これは「職務の分掌」が機能していなかった典型的な例です。

記録と実態の乖離を見逃していた

商品在庫や売掛金など、他の管理資料と付き合わせることで不一致が検出されるはずでしたが、定期的な棚卸や債権管理の精度が低く、帳簿と実態の乖離を検知できませんでした。

内部監査が形式的だった

監査部門のチェックも形式的なものにとどまり、営業部門に対して実質的な監査ができていませんでした。特に現金授受の実態調査や、不審取引の深掘りが不足していたことが指摘されています。

情報システム部門から見た改善の視点

不正の抑止と早期発見には、システム的な仕組みが極めて有効です。今回の事案を踏まえて、情シス部門として注視すべき点は以下の通りです。

ログの可視化と異常検知

営業活動や経理処理に関する操作ログを保存・分析し、平常時と異なる動きを検出できる仕組み(UEBA:User and Entity Behavior Analyticsなど)を導入することが推奨されます。

内部監査支援ツールの活用

社内の会計システム・販売管理システムのデータを統合し、異常取引や傾向の可視化を行う「データ監査基盤」を構築することで、形式的な監査から脱却できます。

職務分掌を前提とした権限設計

営業、会計、監査の機能を明確に分離し、それぞれの部門に相互牽制が働くよう、アクセス権限の管理を再設計することが必要です。

今こそ見直すべきチェックリスト

  • 営業・経理部門の業務プロセスを可視化しているか

  •  現金取引を排除する方向で仕組みを見直しているか

  •  システムログを定期的にレビュー・分析しているか

  •  職務分掌が徹底されており、単独処理が起きないようにしているか

  •  内部監査部門がITシステムを活用して実効的な監査を行っているか

まとめ:内部不正は「起こる前提」で対策

この事件は、不正の手口自体が巧妙だったというよりも、「防げる不正を見逃した」ことが問題でした。情報システム部門には、単にツールを導入するだけでなく、運用プロセスを支え、不正を構造的に防ぐ設計が求められています。

従業員の「信頼」に依存する体制から、「仕組みで守る」体制へ――。この転換こそが、これからの内部統制に求められるアプローチです。