公益社団法人日本将棋連盟は2026年8月7日、公式サイトで発生した第三者による不正アクセスおよび改ざんについて、外部のセキュリティ専門機関によるフォレンジック調査が完了したと公表しました。
調査の結果、同連盟が利用していたウェブサイト管理システムのソフトウェアに存在する既知の脆弱性が悪用され、外部から不正なファイルを設置されたことが原因と特定されました。一部ページには、利用者を意図しない外部サイトへ誘導するコードが不正に書き込まれていました。
一方、日本将棋連盟は、公式サイトでは個人情報等を取り扱っておらず、システム全体を詳細に調査した結果、会員情報やその他の情報の漏えい、データ持ち出しなどの痕跡は確認されなかったとしています。被害を受けたサーバ基盤は再利用せず、安全な環境でシステムを一から再構築しています。
日本将棋連盟の公式サイト不正アクセス事案のサマリー
- 日本将棋連盟は2026年8月7日、公式サイトへの不正アクセスと改ざんに関するフォレンジック調査結果を公表しました。
- 原因は、利用していたウェブサイト管理システムのソフトウェアに存在する既知の脆弱性が悪用されたことと特定されています。
- 攻撃により、外部から不正なファイルが設置されていました。
- 一部ページには、利用者を意図しない外部サイトへ誘導するコードが不正に書き込まれていました。
- 公式サイトでは個人情報等を取り扱っておらず、会員情報やその他情報の漏えい、データ持ち出しなどの痕跡は確認されなかったとしています。
- 被害を受けたサーバ基盤は使用せず、安全な環境でシステムを一から再構築しました。
- 改ざん検知システムやWAF等のセキュリティ対策を改めて検証し、再発防止策を導入しています。
- 日本将棋連盟は、現在稼働しているサイトを正式な公式サイトとして、順次コンテンツを拡充しながら運用する方針です。
- 悪用された具体的な製品名、脆弱性のCVE番号、侵入時期、外部誘導先の詳細は公表資料では確認できませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年8月7日 |
| 対象組織 | 公益社団法人日本将棋連盟 |
| 事案 | 公式サイトへの第三者による不正アクセスおよび改ざん |
| 原因 | ウェブサイト管理システムのソフトウェアに存在する既知の脆弱性の悪用 |
| 確認された影響 | 外部から不正なファイルが設置され、一部ページに意図しない外部サイトへ誘導するコードが書き込まれた |
| 漏えい情報の内容 | 会員情報やその他情報の漏えい、データ持ち出しなどの痕跡は確認されていません |
| 件数 | 情報漏えいは確認されておらず、漏えい件数の公表はありません |
| 対応状況 | 外部専門機関によるフォレンジック調査を完了。被害サーバ基盤を使用せずシステムを再構築し、改ざん検知やWAF等を含むセキュリティ対策を検証した上で再発防止策を導入 |
| 個人情報保護委員会への報告状況 | 公表資料では確認できませんでした |
既知の脆弱性を悪用し不正なファイルを設置
日本将棋連盟は2026年5月、公式サイトで通常と異なる表示や挙動が確認されたことを受け、サイトの公開を一時停止して調査を進めていました。
セキュリティ対策Labでも初報時点の状況について、日本将棋連盟の公式サイトが一時公開停止、通常と異なる表示・挙動を確認し安全確認を実施で取り上げています。当時は不正アクセスや改ざんの可能性を含めて調査中で、具体的な原因は明らかになっていませんでした。
今回、外部のセキュリティ専門機関によるフォレンジック調査が完了し、利用していたウェブサイト管理システムのソフトウェアに存在する既知の脆弱性が悪用されたことが原因と特定されました。
攻撃者はこの脆弱性を悪用し、外部から不正なファイルを設置していたとされています。
ただし、日本将棋連盟は利用していたソフトウェアの製品名やバージョン、悪用された脆弱性のCVE番号、侵入に至った具体的な経路などを公表していません。このため、公表情報のみから対象製品や脆弱性を特定することはできません。
一部ページを外部サイトへ誘導するよう改ざん
フォレンジック調査では、一部のページに利用者を意図しない外部サイトへ誘導するコードが不正に書き込まれていたことも確認されました。
Webサイトへの不正アクセスでは、正規サイトそのものを停止させるだけでなく、訪問者を攻撃者が用意した別のサイトへ転送する改ざんが行われる場合があります。正規ドメインへのアクセスを起点に外部サイトへ誘導されるため、利用者が不審な挙動に気付きにくいケースもあります。
一方、日本将棋連盟の発表では、今回の外部誘導先のURLや内容、誘導先でフィッシングやマルウェア配布などが行われていたかについては明らかにされていません。
そのため、外部サイトへの誘導が確認されたことと、その誘導先で具体的な二次被害が発生したことは分けて考える必要があります。現時点で、公式発表から利用者の認証情報や個人情報が誘導先で取得されたと確認することはできません。
会員情報などの漏えい・データ持ち出しの痕跡は確認されず
日本将棋連盟によると、被害を受けた公式サイトでは個人情報等を取り扱っていません。
今回のフォレンジック調査ではシステム全体について詳細な確認が行われ、同連盟が保有する会員情報やその他情報の漏えい、データの持ち出しなどの痕跡は確認されなかったとしています。
このため、現時点では今回の公式サイトへの不正アクセスによって日本将棋連盟が保有する会員情報などが外部へ流出したことを示す事実は確認されていません。
ただし、不正アクセスによって一部ページが外部サイトへ誘導するよう改ざんされていたことから、事案の影響は「情報漏えいの有無」だけで評価するべきではありません。公式サイトの信頼性が攻撃者に悪用された点は、Webサイト運営における重要なセキュリティリスクです。
被害サーバを再利用せずシステムを一から再構築
日本将棋連盟は被害発覚後、暫定サイトでの運営を継続していました。
今回の復旧では、被害を受けたサーバ基盤を使用せず、安全な環境でシステムを一から再構築したとしています。
あわせて、改ざん検知システムやWAF等のセキュリティ対策を改めて検証した上で、再発防止策を導入しました。
現在稼働しているサイトを正式な公式サイトとして運用し、今後はコンテンツを順次拡充する方針です。
インシデント後の復旧では、侵害された可能性のある環境をそのまま修復して再利用すると、攻撃者が設置した不正ファイルや設定変更、追加されたアカウントなどを見落とすリスクがあります。今回のように被害を受けたサーバ基盤を再利用せず、新しい環境でシステムを再構築する方法は、侵害範囲を完全に把握できない場合の復旧策として重要です。
フィッシングやなりすましなどの二次被害にも注意
日本将棋連盟は今回、会員情報などの漏えいやデータ持ち出しの痕跡は確認されていないとしています。
一方、公式サイトの一部が意図しない外部サイトへ誘導するよう改ざんされていたため、利用者側では、正規サイトを閲覧している途中で別ドメインへ移動した場合や、ログイン情報、個人情報、決済情報などの入力を求められた場合には注意が必要です。
また、今回の不正アクセス事案そのものを利用し、日本将棋連盟や関係組織を装ったフィッシングメール、なりすましメール、偽のサポート連絡などが送られる可能性も考えられます。
現時点で、日本将棋連盟はこうしたフィッシングやなりすましによる具体的な二次被害が発生したとは公表していません。不審な連絡を受けた場合は、メールやSMSに記載されたリンクを直接利用せず、公式サイトなど別の経路から情報を確認することが重要です。
情報システム部門への示唆
今回の事案で特に注目すべき点は、攻撃原因として「既知の脆弱性」が明確に挙げられたことです。
Webサイト管理システムは外部公開されるため、脆弱性が公表されてから修正版を適用するまでの期間が長くなるほど攻撃対象となる可能性が高まります。情報システム部門では、OSやWebサーバだけでなく、CMSを含むWebサイト管理システム、プラグイン、ライブラリなどを資産として把握し、脆弱性情報と更新状況を継続的に管理する必要があります。
また、WAFは脆弱性への攻撃を緩和するための重要な対策ですが、ソフトウェア自体の更新を置き換えるものではありません。パッチ適用、不要機能の停止、管理画面へのアクセス制御、多要素認証、ファイル改ざん検知、ログ監視などを組み合わせた対策が必要です。
さらに、Web改ざんでは情報漏えいが発生していなくても、正規サイトの信用を利用して利用者を攻撃サイトへ誘導できる点に注意が必要です。自社サイトについて、トップページが正常に表示されているかだけでなく、外部への不審なリダイレクト、ファイルの追加・変更、管理者権限での異常操作などを検知できる監視体制を整えることが求められます。
インシデント発生後についても、侵害された環境を単純に復旧させるのではなく、フォレンジック調査による侵入経路と影響範囲の確認、認証情報の変更、安全な環境への再構築、再発防止策の検証までを復旧手順として事前に定めておくことが重要です。








