千葉県君津市の消防士が庁内情報システムへ不正アクセス―他者の認証情報を無断使用し人事情報を閲覧

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千葉県君津市の消防士が庁内情報システムへ不正アクセス―他者の認証情報を無断使用し人事情報を閲覧

千葉県君津市消防本部は2026年7月21日、消防署の男性消防士長(31歳)が庁内情報システムに不正アクセスしていたとして、戒告の懲戒処分を行ったと発表しました。消防士長は以前の業務で知り得た他所属のIDおよびパスワードを無断で使用し、閲覧権限のない人事関連の内部情報を閲覧しています。動機は自身の異動先を事前に把握したいというものでした。発覚の直接の契機は、幹部職員のIDを用いた二度目のログイン試みでアカウントがロックされたことであり、最初の不正アクセスはシステム側での能動的な検知を経ないまま実行されていました。

サマリー

  • 2026年3月上旬、君津市消防署の消防士長(31歳)が他所属のID・パスワードを無断使用し、人事関連の内部情報を閲覧
  • 動機は自身の異動先を事前に知りたかったというもので、異動情報の取得には至らず
  • 続けて幹部職員の個人IDを用いたログインを試みたが、パスワードの誤入力によりアカウントがロック
  • 幹部本人がログインしようとした際にロック状態が発覚し、不正行為が表面化
  • 地方公務員法第32条・第33条違反として戒告処分
  • 同日、経済環境部の副主査(41歳)も公印の不正使用で停職1か月の処分

項目 内容
発生時期 2026年3月上旬
発表日 2026年7月21日
対象職員 君津市消防署 消防士長(31歳・男性)
主な不正行為 他者のID・PW無断使用による人事情報閲覧、幹部IDを用いたログイン試行
取得した情報 人事関連内部情報(異動情報は未取得)
発覚経緯 幹部職員IDのアカウントロックにより判明
処分内容 戒告(懲戒処分)
根拠法令 地方公務員法第32条・第33条

異動先を知りたかった――他者の認証情報を無断使用し人事情報を閲覧

君津市消防本部の発表によると、消防士長は2026年3月上旬、以前に別の業務を担当していた際に知り得た他所属のIDおよびパスワードを使用し、庁内情報システムへ不正にログインしました。アクセスしたのは、自身に閲覧権限のない人事関連の内部情報です。

目的は自分がどこに異動するかを事前に確認することでしたが、肝心の異動情報は見つけられなかったといいます。それでも諦めず、今度は特定の幹部職員の個人IDを使って再ログインを試みました。しかし今回はパスワードを誤って入力し続けたため、その幹部アカウントはロック状態に陥りました。後日、当の幹部本人がシステムにログインしようとした際にロックが判明し、不正行為の全容が明らかになっています。消防士長は調査に対して、「自分がどこに異動するか知りたかった。反省している」と述べているとのことです。

アカウントロックが唯一の発覚契機――最初の不正アクセスは検知されなかった

今回の事案で情報システム管理の観点から見逃せない点は、最初の不正アクセスがシステム側では能動的に検知されていなかったという事実です。

消防士長が他所属のID・パスワードを使って人事情報を閲覧した段階では、誰も異常に気づいていません。有効な認証情報でログインされた場合、アカウントロックも発生しないため、正規のログインと見かけ上は区別がつきません。発覚したのは、二度目の試みで幹部職員のIDに対してパスワードを誤入力し続けた結果としてアカウントがロックされ、正規利用者がログインできなくなったからです。

ネットワークエンジニアとして複数の組織のシステム運用に関わってきた立場からいえば、こうしたケースはアクセスログに記録は残るものの、ログの定期的な確認や異常なアクセスパターンを検知する仕組みがなければ事後的にしか把握できません。今回も、アカウントロックという偶発的な事象がなければ、最初の不正アクセスが永続的に見過ごされていた可能性があります。

認証情報の管理に潜む構造的な問題

本事案が浮き彫りにしたもう一つの課題は、認証情報の管理サイクルです。

消防士長は以前の担当業務を通じて他所属のIDとパスワードを把握しており、担当業務の終了後もそれを記憶として保持していました。つまり、業務の区切りのタイミングで認証情報が変更・無効化されていなかったことが根本にあります。

特定の業務に紐づくID・パスワードは、担当者の交代や業務の終了時点で確実に変更する運用が求められます。また、仮に認証情報が漏えいしても被害を最小化するには、認証(誰がログインしたか)と認可(何にアクセスできるか)を明確に分離し、ロールに基づくアクセス制御を徹底することが有効です。今回の事案では、他所属のIDでも人事関連情報にアクセスできる状態であったことが被害の直接的な要因の一つであり、権限設計の見直しが急務です。

多要素認証(MFA)の導入も、こうした内部不正への有効な対策です。IDとパスワードの組み合わせだけでは認証情報の流用を防ぐことが難しく、デバイス認証やワンタイムパスワードを組み合わせることで、たとえ認証情報が漏えいしていてもなりすましログインのリスクを大幅に低減できます。

同日に公表された公印不正使用と組織ガバナンスの課題

君津市は同日、消防本部とは別の不正行為も公表しています。経済環境部の副主査(41歳・男性)が、契約書の作成に際して適正な決裁手続きを経ることなく公印を使用し、契約相手方へ交付していたとして停職1か月の懲戒処分を受けています。

この案件は情報システムへの不正アクセスとは性質が異なりますが、組織的な観点では共通の問題構造を持ちます。どちらも、権限を超えた行為が職員個人の判断で実行され、組織的な事前チェック機能が機能しなかった点で同じです。地方公務員法第32条および第33条への違反が同一日に二件公表されたことは、組織全体のコンプライアンス文化や内部統制の成熟度に課題があることを示唆しています。

内部不正が起きる組織的・心理的背景については別記事で詳しく解説していますが、技術的な制御だけでなく、職員が不正を思いとどまれる組織文化と、不正を早期に発見できる監査体制の整備が不可欠です。

自治体情報システムが今回の事案から得るべき教訓

函館市で発生した内部不正アクセス事案をはじめ、自治体における内部からの不正アクセスは継続的に発生しています。今回の事案から、情報システム部門が確認すべき点を整理します。

第一に、認証情報は業務変更のたびに更新する運用の徹底です。担当業務が変わるタイミングでは、その業務で使用していたID・パスワードを必ず変更するか、アクセス権限を無効化することで、業務終了後の悪用リスクを排除できます。

第二に、アクセス制御設計の見直しです。IDとパスワードが一致すれば権限外の情報にもアクセスできる状態は、認証と認可の分離が不十分であることを意味します。人事情報のような機密性の高いデータは、所属・役職・業務内容に応じた細かいアクセス制御を設けるべきです。

第三に、ログの異常検知体制の整備です。今回の最初の不正アクセスはログ上に記録が残っていたはずですが、それを能動的に検知する仕組みがなければ実質的に見えない状態と同じです。通常とは異なる時間帯や業務と無関係な情報へのアクセスをアラートで通知するSIEMやログ管理ツールの活用を検討する価値があります。

君津市消防長は、「市民の信頼のもと適正に管理されるべき情報資産に対し、不適切なアクセスが行われたことは誠に遺憾であり、情報セキュリティ対策の徹底を図るとともに、より一層のコンプライアンス意識の徹底及び厳正な服務規律の確保に努め、市民の皆様の信頼回復に全力を尽くしてまいります」とコメントしています。処分と反省の表明にとどまらず、具体的なシステム改善が実施されるかどうかが今後の注目点です。

 

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