米司法省、FIFAワールドカップ 2026の違法ストリーミング1,000超のドメインを差し押さえ-史上最大の海賊版対策「Operation Offsides」の全貌

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米司法省、FIFAワールドカップ 2026の違法ストリーミング1,000超のドメインを差し押さえ-史上最大の海賊版対策「Operation Offsides」の全貌

米司法省(DOJ)は2026年7月20日、2026 FIFAワールドカップの試合を無許可でストリーミング配信していた1,000件超のインターネットドメインを差し押さえたと発表しました。この一連の摘発は「Operation Offsides(オペレーション・オフサイド)」と名付けられ、大会期間中の3回にわたる法執行措置を通じて実施されたもので、米国史上最大規模のスポーツ海賊版対策と報じられています。DOJは今回の措置を、著作権保護と同時に、違法ストリーミングサイトに潜むマルウェアから米国の消費者を守るための取り組みだと位置づけています。当サイトでは、ワールドカップ2026に便乗したフィッシング・詐欺キャンペーンの急増を継続的に報じてきましたが、今回の摘発は、そうした大会に寄生するサイバー犯罪エコシステムに対する、当局側の大規模な反撃といえます。

サマリー

  • 米司法省は2026年7月20日、ワールドカップ2026の試合を違法にストリーミング配信していた1,000件超のドメインを差し押さえたと発表しました
  • BleepingComputerの報道によれば、差し押さえられたウェブサイトは1,000件超、ブロックされたドメインは1,970件に上ります
  • この摘発はOperation Offsidesと名付けられ、大会期間中の3回に分けて実施されました。1回目は6月26日までに約400ドメインが差し押さえられています
  • 捜査は、米移民税関捜査局・国土安全保障捜査部(HSI)ワシントン支局と、国家知的財産権調整センター(IPRセンター)が主導しました
  • 差し押さえ対象ドメインの特定には、FIFAをはじめ、beIN Media Group、NBCユニバーサル、ACE(映画協会の創造性・エンターテインメント連合)、UFC、ワーナー・ブラザースといった権利者・エンターテインメント企業が協力しました
  • 今回の差し押さえ規模は、カタール2022大会時のOperation Offsides(78ドメイン)と比べて約13倍に拡大しており、米国が共催国であったことによる法的管轄権の強さが背景にあります
  • 並行して、中南米・欧州を対象とした国際的な取り組みOperation Red Cardも実施され、コロンビアではサイバー犯罪グループLos Ciberinfiltradosのメンバー4人が逮捕されました
  • 当局は消費者に対し、違法ストリーミングサイトがマルウェア感染や決済情報の窃取につながる危険性を警告し、公式の配信パートナーを利用するよう呼びかけています

整理表

項目 内容
発表日 2026年7月20日
発表主体 米司法省(DOJ)刑事局
作戦名 Operation Offsides(米国内)、Operation Red Card(国際連携)
差し押さえドメイン数 1,000件超(ブロックされたドメインは1,970件)
実施回数 大会期間中3回(1回目は6月26日までに約400ドメイン)
主導機関 HSIワシントン支局、国家知的財産権調整センター(IPRセンター)
協力した権利者 FIFA、beIN Media Group、NBCユニバーサル、ACE、UFC、ワーナー・ブラザース
令状申請の管轄 バージニア州東部連邦地方裁判所
カタール2022大会との比較 78ドメイン→約13倍に拡大
Operation Red Cardの成果 アルゼンチン14件、エクアドル223件、ペルー28件、ブラジル309件、ドミニカ共和国256件、コロンビア1,140件のサイトをブロック
逮捕 コロンビアでサイバー犯罪グループLos Ciberinfiltradosのメンバー4人
当局の警告 違法ストリーミングはマルウェア感染・決済情報窃取のリスク

Operation Offsidesの概要-3波にわたる大規模摘発

米司法省の発表によれば、今回差し押さえられたのは、ワールドカップ2026決勝トーナメントを含む試合を、米国の著作権法に違反する形で無許可でリアルタイム配信していた1,000件超のドメインです。これらの差し押さえは、大会期間中の3回に分けて実施されました。BleepingComputerの報道によれば、最終的に差し押さえられたウェブサイトは1,000件超、ブロックされたドメインは合計1,970件に上ります。

摘発の第1波は、2026年6月26日までに実施され、HSIの捜査官がバージニア州東部連邦地方裁判所に差し押さえ令状を申請し、約400ドメインを閉鎖しました。その後、大会期間中にさらに2回の法執行措置が行われ、7月20日までに差し押さえ総数が1,000件を超えました。捜査は、米移民税関捜査局・国土安全保障捜査部(HSI)ワシントン支局と、国家知的財産権調整センター(IPRセンター)による調査に基づいています。DOJ刑事局のA. Tysen Duva司法次官補は、1,000件超のドメインを差し押さえる持続的な取り組みは、知的財産権とワールドカップ2026の成功に対する政権の関与を裏付けるものだと述べ、Operation Offsidesが、多くの不正なストリーミングサービスに埋め込まれた悪意あるソフトウェアから米国の消費者が受けるリスクを軽減しつつ、著作権を保護するための取り組みの一環であると説明しています。

差し押さえられたサイトには、当局による差し押さえを示すバナーが掲示されています。対象ドメインの特定にあたっては、ワールドカップの独占的な開催・興行権を持つFIFAが協力したほか、beIN Media Group、NBCユニバーサル、映画協会の創造性・エンターテインメント連合(ACE)、UFC、ワーナー・ブラザースといった、放送権を持つ企業や権利者団体からも支援情報が提供されました。

カタール2022大会からの規模拡大と米国の管轄権

今回の摘発が注目される理由の一つが、その規模の大きさです。複数の報道によれば、今回差し押さえられた1,000件超という数字は、カタールで開催された2022年大会の際に実施された同名のOperation Offsidesで差し押さえられた78ドメインと比べて、約13倍に拡大しています。

この規模拡大の背景には、2026年大会が米国・カナダ・メキシコの共催であり、米国が開催国の一つであったことによる法的管轄権の強さがあります。差し押さえ令状はバージニア州東部連邦地方裁判所に申請されましたが、これは同州に登記されているドメインレジストラ(主要な米国拠点のレジストリを含む)に対して令状の効力が及ぶためです。共催国として大会に直接関与したことで、米当局はより広範な司法的なてこを得ることができたと分析されています。2026年大会は、48チームが参加し、米国・カナダ・メキシコの16開催都市で行われた史上最大規模の男子ワールドカップであり、その規模の大きさそのものが、海賊版配信を含むサイバー犯罪にとって魅力的な標的環境を生み出していました。

国際連携「Operation Red Card」とコロンビアでの逮捕

米国内でのドメイン差し押さえと並行して、司法省の国際コンピューターハッキング・知的財産(ICHIP)プログラムと連携する形で、西半球全域の法執行機関がOperation Red Cardと呼ばれる大規模な取り締まりを実施しました。

この国際的な取り組みでは、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、パラグアイ、ペルーの各国が連携し、違法ストリーミングサイトのブロックが行われました。国別の内訳は、アルゼンチン14件、エクアドル223件、ペルー28件、ブラジル309件、ドミニカ共和国256件、そしてコロンビア1,140件に上ります。コロンビア当局はさらに、偽造スポーツ用品の製造・流通を標的とした13件の全国的な捜索・差し押さえ作戦を実施し、11件の逮捕・有罪判決につなげています。

特に注目すべきが、2026年7月10日に開始されたOperation Red Cardの第2フェーズです。コロンビアのボゴタ、ソアチャなど複数都市で同時作戦が実行され、サイバー犯罪グループLos Ciberinfiltradosのメンバー4人が逮捕されました。このグループは、2024年以降、不正な認証情報、VPN、セキュリティコードの傍受、企業システムプロファイルの操作といった手段を用いて通信システムに違法にアクセスし、ワールドカップの試合を含む海賊版ストリーミングコンテンツを販売していたとされています。欧州でも、ICHIPブカレストがEuropolや欧州各国の当局と連携し、大会期間中の違法ストリーミング対策を調整しました。

違法ストリーミングに潜むサイバーセキュリティリスク

今回のDOJの発表で一貫して強調されているのが、違法ストリーミングが単なる著作権侵害にとどまらず、視聴者自身のサイバーセキュリティ上のリスクに直結するという点です。

HSIのMatthew Millhollin副常任理事は、不正なサイトからコンテンツをストリーミングすることは、利用者のデバイスを未知のリスクにさらすものだと警告しています。同氏は、これらの不正なプラットフォームを運営する犯罪者は、著作権で保護されたワールドカップの試合を配信する時点ですでに法を破る意思を持っており、マルウェアを注入したり決済情報を窃取したりすることを計画している可能性もあると指摘しています。実際、一部の報道では、海賊版サイト上の偽の再生ボタンを通じてバンキング型トロイの木馬が展開され、大会期間中に視聴者のデバイスがマルウェアに感染した事例が確認されたとされています。

この警告は、当サイトで既報のワールドカップ2026を巡る一連のサイバー脅威とも符合します。FBIは2026年5月、FIFAを装った偽ウェブサイトが偽チケットやホスピタリティパッケージを販売し、個人情報・金融情報を窃取していると警告していました。また、BforeAIは大会の1年以上前から、ワールドカップ2026を標的にした不審ドメインの大量登録を観測しており、GHOST STADIUMと呼ばれる中国語話者の金銭目的グループが300超のドメインでFIFA公式サイトの精巧なクローンを運用していたことも確認されています。違法ストリーミングサイトは、こうしたフィッシング・詐欺のエコシステムと地続きにあり、無料で試合を視聴できるという誘惑の裏で、視聴者のデバイスや認証情報が危険にさらされる構図が繰り返し確認されています。

情報システム部門への示唆

今回の事案は、大規模なスポーツイベントに便乗するサイバー犯罪の広がりと、それに対する当局の対応の両面を示しています。情報システム部門・セキュリティ担当者にとって、いくつかの実務的な示唆があります。

第一に、業務端末での違法ストリーミング視聴のリスクです。大規模なスポーツイベントの期間中は、従業員が業務用PCやネットワークを通じて無料の違法ストリーミングサイトにアクセスするリスクが高まります。今回DOJが警告したとおり、こうしたサイトはマルウェア感染や認証情報窃取の温床であり、業務端末が感染すれば組織全体のネットワークへの侵入経路になりかねません。イベント期間中は、違法ストリーミングサイトの危険性について従業員に注意喚起を行うとともに、Webフィルタリングによる既知の海賊版・不正サイトへのアクセス制限を検討することが有効です。

第二に、ドメイン差し押さえという対策の限界を理解しておくことです。今回1,000件超のドメインが差し押さえられましたが、海賊版・詐欺サイトの運営者は新しいドメインを次々と登録して活動を継続する傾向があります。当局による摘発は重要な抑止力ですが、それだけで脅威が根絶されるわけではないため、組織としては、公式・正規のサービスを利用するという基本原則を従業員に徹底することが、最も確実な防御になります。

第三に、大規模イベントに便乗した攻撃の予見可能性です。ワールドカップのような世界的イベントは、開催の1年以上前から詐欺ドメインの登録が始まることが、今回の一連の事案で明確に示されました。次の大規模イベント(オリンピックや他の国際大会等)に向けても、同様のブランド悪用型フィッシング・海賊版配信が準備される可能性が高いため、自社のブランドや取引先が関わるイベントがある場合は、早期からのドメイン監視やブランド保護の取り組みを検討する価値があります。

出典