2025年7月、Cisco Talos Incident Response(Talos IR)チームは、新たなランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)グループ「Chaos」の攻撃活動を観測しました。Chaosはビッグゲーム・ハンティング(二重脅迫)戦術を採用し、急速にその影響力を拡大しています。
BlackSuitとの関連性
ランサムウェア グループ Blacksuit(ブラックスーツ)はKADOKAWAやニコニコ動画へのサイバー攻撃に関与し2025年7月国際的な捜査協力により、ダークウェブ上のリークサイトがテイクダウンされました。
しかしTalosは中程度の確度で、Chaos(カオス)はBlackSuit(Royal)ランサムウェアグループの元メンバーが形成した新しいグループであると評価しています。
両者の間には以下のような共通点が見られます。
- 暗号化手法の類似性(/lkey, /encrypt_step, /work_modeなど)
- ランサムノートの構成と文言
- LOLBinsとRMMツールの利用
これらの共通点から、ChaosはBlackSuitの後継、または派生グループである可能性が高いと見られています。
Chaosの概要
Chaosは2025年2月頃にその活動が確認され、比較的新しいグループながら、既に複数の国・業種に対して攻撃を実施しています。特徴としては以下が挙げられます:
- ランサムウェアはWindows、Linux、ESXi、NAS環境に対応
- ロシア語圏のダークウェブフォーラムRAMPで活動し、アフィリエイトを募集中
- 一部の対象(BRICS/CIS諸国、政府、医療機関)は攻撃対象外と公表
- 通信手段として専用のonionドメインとメールアドレスを提供
- 被害企業に対してデータ漏洩とDDoSを併用して脅迫
このグループの手法には、既存のChaosビルダー系とは異なる独自性が見られ、過去に存在した同名のツールとは一線を画します。
Chaosの戦術
Chaosは、従来の高度なランサムウェアグループと同様、複数段階に分かれた一貫した攻撃プロセスを持ちます。各フェーズでの手口は以下の通りです。
初期侵入
最初の接点はメールを利用したスパム攻撃です。受信者がメールに反応して電話をかけるよう誘導され、通話の中で攻撃者はIT部門を装い、Microsoft Quick Assistを使ったリモート接続を促します。これにより、攻撃者は正規の手段でマシンへの初期アクセスを取得します。
内部探索と権限昇格
侵入後、ネットワークの構成情報やユーザー情報、共有フォルダなどを調査します。その過程で、ドメインアカウントの認証情報を収集し、Kerberoastingなどの手法を用いて管理者権限の取得を試みます。取得した情報を基に、権限を拡大しつつ社内に横展開していきます。
常駐化と通信維持
AnyDeskやScreenConnectなどのRMM(リモート管理)ツールをインストールし、外部との恒常的な接続を確保します。レジストリ操作でログイン画面から特定ユーザーを非表示にするなど、持続的な隠蔽も行われます。また、OpenSSHによるリバーストンネルの構築も確認されており、C2(コマンド&コントロール)サーバーとの通信は極めて慎重に管理されています。
情報の窃取と外部送信
情報流出にはGoodSyncなど正規のファイル同期ツールを使用。1年以内に更新されたファイルを中心に抽出し、画像や音声、実行ファイルなどの検知されやすい形式は除外することで、検知のリスクを下げています。送信先は攻撃者が管理するクラウドストレージです。
暗号化と痕跡隠蔽
暗号化には選択的暗号方式を採用。ファイル全体ではなく一部のみを暗号化することで、短時間で広範囲のデータに影響を与えます。「.chaos」という拡張子が付与され、復元妨害のためシャドウコピーも削除されます。ログも適宜削除されるため、攻撃後の痕跡が残りにくくなっています。
参照
https://blog.talosintelligence.com/new-chaos-ransomware/








