
2025年4月6日未明に発生し、8都県・108カ所の料金所に影響を与えた中日本高速道路(NEXCO中日本)におけるETCシステム障害について、その技術的な原因の全容が徐々に明らかになってきました。この障害は、システムの改修作業に起因する「削除されるべきデータの蓄積」が引き金となり、全国レベルでETCの利用に大きな混乱が発生しました。
システム障害の発端:深夜割引見直しに伴うサーバー改修
NEXCO中日本によれば、障害発生の前日、2025年4月5日には7月に予定されているETC深夜割引制度の見直しに向けたシステム改修作業が行われていました。これは、ETC料金所の上位システム(サーバー)での構成変更や、他システムとの連携の再調整などを目的としたものです。
この作業の直後、4月6日午前0時30分ごろからETCシステムで障害が発生し、ETC車載器と料金所システム間での無線通信が不安定となり、バーが開かないといったトラブルが全国的に発生しました。
障害の本質的原因:本来削除されるべきデータが蓄積
4月18日に名古屋市内で開催された「広域的な危機管理を検討する委員会」の初会合で、NEXCO中日本は障害の根本的な原因について以下のように説明しました。
「システム間のデータ連携において、本来は消去されるべき『宛先データ』が蓄積されていたことが原因で、ETCカードの使用可否を判定するためのデータ領域が侵食・破損された」
この宛先データとは、ETCシステム内で次にどのシステムにデータを送信するかを指定する重要な情報で、処理完了後には削除されるべきものでした。
しかし、今回の改修においてその削除処理を行うプログラムが未実装だった可能性が浮上しており、それが結果的にデータ破損とシステム障害を引き起こしたと見られています。
障害の影響:広域108カ所に波及、復旧には「切り戻し」で対応
この障害は、東京・神奈川・静岡・山梨・長野・愛知・三重・岐阜の8都県、108カ所の料金所に及びました。ETCレーンの開閉バーが作動しない、通行記録が残らないなどの不具合が相次ぎ、NEXCO中日本は安全確保のため出口のバーを開放し無料通行を許可する緊急措置を講じました。
復旧対応としては、改修作業以前のシステム状態に戻す「切り戻し作業」が行われ、翌7日には障害の収束が確認されました。
今後の対応
NEXCO中日本は、今後の対応として以下を掲げています
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なぜ消去プログラムが実装されていなかったのかを技術的に究明
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広域障害の早期検知体制の構築
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発生時の情報提供手順の見直し
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6月中をめどに再発防止策および対応マニュアルを策定
また、この委員会には東日本高速道路(NEXCO東日本)や西日本高速道路(NEXCO西日本)も参加しており、ETCという共通インフラに対する横断的なリスク管理体制の必要性が強く認識されています。
一部参照