湘南美容クリニック運営SBCメディカル元幹部を背任容疑で逮捕 架空のセキュリティ業務発注、約6.3億円の不正流用をSECに開示済み

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湘南美容クリニック運営SBCメディカル元幹部を背任容疑で逮捕 架空のセキュリティ業務発注、約6.3億円の不正流用をSECに開示済み

「湘南美容クリニック」などを展開するSBCメディカルグループの元幹部が、架空の業務を発注してグループに損害を与えたとして、警視庁に背任容疑で逮捕されました。

TBSとFNNによると、逮捕されたのはSBCメディカルグループの元経営戦略本部長、三村大介容疑者(50)です。2021年から2023年にかけて、東京都港区のイベント企画運営会社の社長と共謀し、SBCメディカルグループに関連するウェブサイトのセキュリティ対策業務を架空発注して、グループに約1,300万円の損害を与えた疑いが持たれています。

警視庁は、発注先へ支払われた約1,300万円のうち約7割が三村容疑者へキックバックされていたとみて捜査しています。さらに、同様の手口が複数の取引先との間で繰り返され、グループから流出した資金は約6億円、三村容疑者が受け取ったキックバックは約3億円に上るとみられています。

この資金流出は、逮捕によって初めて明らかになったものではありません。SBC Medical Group Holdingsは米証券取引委員会(SEC)への提出資料で、2024年1月の税務調査をきっかけに、子会社の元管理職と複数の取引先による資金の不正流用が判明したと開示しています。

外部弁護士とフォレンジック専門家による調査では、2016年4月から2024年1月までに約6億3,200万円が不正流用され、このうち元管理職が約3億3,500万円を受け取っていたことが確認されました。SBCはこの事案を受け、過去の財務諸表を修正するとともに、取引先への発注・支払い、職務分掌、管理職への監督に重大な内部統制上の不備があったこともSECへ開示しています。

SBCメディカル元幹部逮捕のサマリー

  • 2026年9月29日、SBCメディカルグループの元経営戦略本部長、三村大介容疑者(50)が背任容疑で逮捕されました。
  • 逮捕容疑は、2021年から2023年に架空のセキュリティ対策業務を発注し、グループに約1,300万円の損害を与えたというものです。
  • TBSによると、発注先は東京都港区のイベント企画運営会社で、同社社長と共謀した疑いが持たれています。
  • 支払われた約1,300万円のうち約7割が三村容疑者へキックバックされたと警視庁はみています。
  • 同様の手口によるグループ全体の資金流出は約6億円、キックバックは約3億円に上るとみられています。
  • SBCは米SECへの過去の提出資料で、約6億3,200万円の不正流用と、元管理職による約3億3,500万円の受領をすでに開示していました。
  • SBC側の調査では、不正は少なくとも2016年4月から2024年1月まで続いていたとされています。
  • SEC資料では、取引先からのキックバックが2012年ごろから始まっていた可能性も記載されています。
  • 事案は2024年1月、日本の税務当局による通常の税務調査で発覚しました。
  • 対象となった元管理職は2024年2月23日付で解雇され、会社による刑事告訴は2025年2月25日に警察へ受理されています。
  • SBCは不正発覚後、発注・支払い承認、職務分掌、管理職への監督などについて「重大な不備」があったとSECへ開示しています。
項目 内容
逮捕日 2026年9月29日
容疑 背任
逮捕された人物 SBCメディカルグループ元経営戦略本部長・三村大介容疑者(50)
逮捕容疑の期間 2021年~2023年
逮捕容疑の内容 架空のセキュリティ対策業務を発注
逮捕容疑の損害額 約1,300万円
キックバック 当該発注額の約7割と報道
全体の資金流出 約6億円と警視庁がみて捜査
キックバック総額 約3億円とみられる
SBCの過去の調査 約6億3,200万円の不正流用を確認
元管理職への流入 約3億3,500万円
発覚 2024年1月の税務調査
会社の対応 外部調査、解雇、刑事告訴、財務諸表修正、内部統制改善

架空の「ウェブサイトのセキュリティ対策業務」を発注

警視庁が今回の逮捕容疑として捜査しているのは、SBCメディカルグループに関連するウェブサイトのセキュリティ対策業務です。

TBSによると、三村容疑者は2021年から2023年にかけて、東京都港区にあるイベント企画運営会社の社長と共謀し、実態のないセキュリティ対策業務をSBC側から発注させた疑いがあります。

グループから協力会社へ支払われた金額は約1,300万円で、このうち約7割が三村容疑者へ戻されたと警視庁はみています。

FNNも、架空発注によって約1,300万円の損害を与え、発注先へ支払われた金額の7割が三村容疑者へキックバックされたと報じています。

9月29日時点で、警視庁は三村容疑者の認否を明らかにしていません。

警視庁は約6億円流出、約3億円のキックバックを捜査

逮捕容疑となった約1,300万円は、捜査対象となっている資金流出の一部です。

TBSによると、警視庁は三村容疑者が元幹部としての立場を利用し、複数の別会社にも同様の架空業務を発注していたとみています。

グループから流出した金額は約6億円に上り、三村容疑者が得たキックバックは約3億円とみられています。

FNNは、警視庁が三村容疑者について、得た資金を高級外車の購入や会員制ラウンジなどに使っていたとみて調べていると報じました。

SBCは2024年に約6億3,200万円の不正流用をSECへ開示

今回報じられた約6億円規模の資金流出について、SBC Medical Group Holdingsは2024年以降、米SECへ詳細を開示してきました。

2024年10月のS-1登録届出書や、その後の年次報告書によると、不正が判明したのは2024年1月です。

日本の税務当局が、SBC Medical Groupの税務申告に対する通常の税務調査を実施する中で、グループ子会社L’Ange Cosmetique Co., Ltd.の総務・法務部門にいた元管理職と、複数の取引先との資金のやり取りを発見しました。

SEC資料では、この元管理職が複数の取引先からキックバックを受け取っており、不正が2012年ごろから始まっていた可能性があると記載されています。

SBCは発覚直後に対象者を職務停止とし、2024年2月23日付で解雇しました。

その後、独立した法律事務所とフォレンジック専門家を起用して調査を実施しました。

外部調査で2016年以降に約6億3,200万円、元管理職へ約3億3,500万円

SBCの外部調査は2024年3月に完了しました。

調査の結果、2016年4月から2024年1月までに、元管理職と複数の取引先によって約6億3,200万円が不正流用されていたことが判明しました。消費税を含む金額です。

このうち、元管理職が受け取った金額は約3億3,500万円でした。

SEC資料では、2016年4月より前のデータが一部残っていないため、それ以前の不正流用額を正確に算定できなかったとしています。SBCは、確認できなかった期間の金額については、当時の推計上、財務上の重要性は大きくないと判断していました。

TBSが9月29日に報じた「約6億円の損害」「約3億円のキックバック」は、このSEC開示の規模とほぼ一致します。

SEC資料では対象となった元管理職の氏名は記載されていません。一方、TBSは今回の逮捕報道で、警視庁が捜査する約6億円規模の損害についてSECの報告書を参照しています。

税務調査で発覚、会社内部の通常監査では検知できず

この事案で確認しておきたいのは、不正を最初に発見したのがSBC社内の監査部門ではなく、日本の税務当局だったことです。

SEC資料によると、税務当局は調査対象となった企業や個人の銀行預金情報へアクセスし、その確認過程で資金の不自然な流れを把握しました。

不正発覚後にSBCが実施した調査では、元管理職と取引先による不正が長期間継続していたことが判明しています。

2024年のSEC提出資料では、不正流用を社内の内部統制で発見できなかった原因として、複数の「material weakness(重要な不備)」を開示しました。

SBCが認めた内部統制の問題 発注・支払い確認と職務分掌が不足

SBCは2024年9月末時点で、財務報告に関する内部統制に重大な不備が残っているとSECへ報告していました。

不正流用との関係で具体的に挙げたのは、管理職が内部統制を上書きするリスクへの考慮不足、契約書と請求書を照合する仕組みの不足、契約・請求・支払いに対する多段階承認の不足、元管理職の業務に関する職務分掌の不足、元管理職への監視・監督不足などです。

さらに、取引先や外注先が実際にサービスを提供したか確認する手続き、不正取引や統制の無効化を検知する仕組み、リスク評価やモニタリングにも不足があったとしています。

今回の逮捕容疑は「実態のないセキュリティ対策業務への発注」であり、取引先が本当に作業を行ったかを支払い前に確認する統制が事件の中心にあります。

過去の財務諸表も修正

SBCは不正流用の判明を受け、過去に公表した財務諸表も修正しました。

SECへの登録届出書によると、不正流用された金額の一部は、関連する医療法人向けの広告サービスに伴う取引として会計処理されていました。

調査後、同社はこれを不正流用による損失として処理し直し、2021年、2022年の連結財務諸表や、2022年、2023年の一部四半期財務情報を修正しています。

2023年についても不正流用損失を計上しました。

2024年2月に解雇、2025年2月に刑事告訴を警察が受理

SBCは元管理職を2024年2月23日付で解雇しました。

その後、関係者に対する刑事告訴を東京で進めています。

SBC Medical Group Holdingsの2024年年次報告書によると、刑事告訴は2025年2月25日に警察へ受理されました。

今回の逮捕は、それから約1年7カ月後に行われたことになります。

SBCはSEC資料で、社内調査の範囲では他の従業員が不正を知っていた、または共謀していたことを示す証拠は確認されなかったとしています。

一方、取引先側については複数の業者が関係していたと会社自身が開示しており、警視庁は今回、イベント企画運営会社の社長との共謀を逮捕容疑に含めて捜査しています。

SBCは内部統制改善へ 銀行権限や支払い承認も見直し

SBCは不正発覚後、内部統制の改善計画をSECへ開示しました。

同社が実施、または実施を進めた対策には、関連当事者取引の承認・報告ルールの新設、組織と権限の明確化、契約・請求・支払いに対する複数段階承認、職務分掌の強化、従業員への内部統制教育などがあります。

銀行取引についても権限規程を更新し、資金管理機能を新設して、現金を扱う管理職の権限を分離する方針を示しました。

さらに、内部統制・内部監査部門と外部コンサルタントによる不正リスク評価、SOX法対応を含む財務報告統制の再設計も進めています。

SBCは2024年9月17日、米NASDAQ市場へ上場しました。

湘南美容クリニックを含むSBCメディカルグループとは

SBC Medical Group Holdingsは米デラウェア州法人で、2024年9月からNASDAQに「SBC」のティッカーで上場しています。

米SECへの2025年年次報告書によると、日本ではSBCメディカルグループ株式会社を通じ、医療法人に対してフランチャイズ、調達、経営管理、施設賃貸、マーケティングなどの経営支援サービスを提供しています。

湘南美容クリニックの公式サイトでは、2026年9月1日時点でグループのクリニック数を287院、2025年の年間総来院数を663万人以上としています。

今回の事件は、医療行為そのものではなく、グループの経営支援・管理部門で行われたとされる取引を巡る事件です。

内部監査・経理部門が確認したい「架空発注」の統制

今回の事案は、取引先と社内管理職が関係する架空発注が長期間継続したと会社自身がSECへ開示している点で、委託先管理と内部不正対策の事例になります。

特にセキュリティ、IT、広告、コンサルティングなどの無形サービスは、物品購入と違って納品物の存在を確認しにくく、請求書や契約書だけで支払いが進むと架空発注を発見しにくくなります。

企業では、発注担当者と検収担当者、支払承認者の分離、契約書・発注書・請求書に加えた成果物や作業記録の確認、セキュリティ診断やシステム改修における対象システム・作業日時・担当者・成果物・ログの保存、特定取引先への継続発注の分析などが確認対象になります。

SBC自身も、契約と請求書の照合、複数段階承認、職務分掌、取引先が実際にサービスを提供したかの確認を改善項目としてSECへ報告しています。

今後は、警視庁が約6億円規模とみている資金流出のうち、どの取引が刑事事件として立件されるのか、共謀したとされる取引先がどこまで広がるのか、三村容疑者の認否や起訴内容が確認点になります。

出典