東電、福島第一・第二原発でもテロ対策情報の管理不備-柏崎刈羽と同様の問題が別の社員により発覚

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東電、福島第一・第二原発でもテロ対策情報の管理不備-柏崎刈羽と同様の問題が別の社員により発覚

原子力規制委員会は2026年7月9日、東京電力ホールディングスの福島第一原発および福島第二原発においても、テロ対策に関する情報の管理に不備があったことを明らかにしました。決められた場所での厳重保管が義務付けられているデータが、パソコンの共有フォルダーに複数保管されていたとされています。

当サイトでは以前、柏崎刈羽原発の社員による核物質防護秘密文書の不適切な複製・持ち出し・保存の問題を取り上げましたが、今回は柏崎刈羽で問題を起こした社員とは別の社員が関与しており、東電の原子力関連拠点に共通する情報管理体制そのものの課題である可能性が浮上しています。

サマリー

  • 原子力規制委員会は2026年7月9日、東京電力の福島第一原発・第二原発で、テロ対策に関する情報の管理方法に不備があったと発表した
  • 決められた場所での厳重保管が義務付けられているデータが、パソコンの共有フォルダーに複数保管されていた
  • 規制委によれば、柏崎刈羽原発で不適切に文書を管理していた社員は今回の福島第一・第二原発の件には関与しておらず、東電がテロ対策担当部署の共有フォルダーや社員のパソコンを調べた結果、別途発覚した事案とされている
  • 現時点で外部への情報漏えいは確認されていない
  • 規制委は東京電力に対する追加検査を続け、経緯や原因を調べる方針
  • 発端となった柏崎刈羽原発の事案では、2020年11月ごろから2025年2月にかけて、情報管理・テロ対策の責任者を務めていた社員が、核物質防護秘密を含む文書を繰り返し無断で複製・持ち出し・共有フォルダへの保存等を行っていたことが判明しており、規制委は2026年2月24日、この事案の重大性を4段階のうち下から2番目の「白」と暫定評価していた
項目 内容
発表日 2026年7月9日(原子力規制委員会)
発覚した施設 福島第一原発、福島第二原発
不備の内容 厳重保管が義務付けられたデータをパソコンの共有フォルダーに複数保管
関与した社員 柏崎刈羽原発の事案で問題を起こした社員とは別の社員
発覚の経緯 東電がテロ対策担当部署の共有フォルダー・社員PCを調査
外部漏えい 現時点で確認されず
規制委の対応 東電への追加検査を継続し、経緯・原因を調査
発端となった事案 柏崎刈羽原発での核物質防護秘密文書の不適切な複製・持ち出し(2020年〜2025年)
柏崎刈羽事案の暫定評価 2026年2月24日、4段階中下から2番目の「白」

何が起きたか-福島第一・第二原発での新たな発覚

原子力規制委員会によると、東京電力は柏崎刈羽原発での文書管理不備の発覚を受け、他の拠点についても点検を進めていました。その過程で、福島第一原発と福島第二原発のテロ対策を担当する部署の共有フォルダーや社員のパソコンを調べたところ、本来は決められた場所での厳重保管が義務付けられているデータが、パソコンの共有フォルダーに複数保管されている状態が確認されました。核物質防護に関する情報は、テロなどによる核物質の窃取や妨害破壊行為を防ぐため、情報保護区域内など指定された場所でのみ保管することが法令・規則で定められています。共有フォルダーという、部署内の複数の社員がアクセスしうる場所にこうしたデータが保管されていたこと自体が、この保管ルールからの逸脱にあたります。

重要なのは、今回の福島第一・第二原発の事案に関与していたのが、柏崎刈羽原発で問題を起こしていた社員とは別の人物だったという点です。1人の社員による個別の逸脱行為ではなく、東電の複数の原子力関連拠点でそれぞれ独立して同種の管理不備が生じていたことになります。規制委は東電に対する追加検査を継続し、今回の事案がどのような経緯・原因で発生したのかを調べる方針を示しています。現時点で、外部への情報漏えいは確認されていません。

発端となった柏崎刈羽原発での秘密文書不適切管理

当サイトで既報の通り、事の発端は柏崎刈羽原発で発覚した核物質防護秘密文書の不適切な取り扱いです。東電の公表資料によれば、情報管理・テロ対策の責任者を務めていた社員は、2020年11月ごろ、本社の情報保護区域から核物質防護秘密を含む文書(文書A)を手順を踏まずに持ち出して複製し、2021年4月に柏崎刈羽原発へ異動した際にはこの文書をバッグに入れて自宅や転勤先アパートへ持ち出していました。さらに2024年3月ごろには、発電所の情報保護区域から改訂版の文書Aを持ち出して発電所内で複製し、2025年2月10日には、本社の情報保護区域内で文書Aの特定ページを会社貸与スマートフォンで撮影し、内容の一部をメール本文に転記して秘密情報取扱者に指定されていない者を含む社内関係者16名に送信していたことも確認されています。

調査の過程では、柏崎刈羽原発が作成した別の核物質防護秘密文書(文書B)についても、2023年11月22日に情報保護区域から持ち出してスキャンデータ化し、パスワードを設定したうえで発電所セキュリティ管理部の共用フォルダに保存していたことが判明しました。この共用フォルダは部署所属者であればアクセス可能な状態だったとされています。この事案は2025年6月12日の社内通報をきっかけに発覚し、東電は同年6月と10月に規制委へ報告、規制委は2026年1月まで検査を実施しています。当該社員は、業務を効率化するためルールに反して文書を持ち出したと説明しているとされています。

原子力規制委員会による評価と柏崎刈羽の過去のテロ対策不備

原子力規制委員会は2026年2月24日、柏崎刈羽原発の文書管理不備について、重大性を4段階のうち下から2番目の「白」と暫定的に評価しました。外部への漏えいや文書の紛失は確認されなかったとしており、個人による不適切な行為で核物質防護に実質的な影響を及ぼしていないとの整理です。東電はこれを受け、核物質防護秘密へのアクセスに対する物理的制限として2人での取扱いを求めるツーマンルールの適用、監視カメラ映像の定期確認、情報保護区域への持込物品の相互確認といった再発防止策を開始していました。

もっとも、柏崎刈羽原発を巡っては、これが初めてのテロ対策上の不備ではありません。同原発では過去にもIDカードの不正利用や、外部からの侵入を検知する装置の不具合などが発覚しており、これらを理由に2021年から2023年にかけて原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令を受けています。今回の福島第一・第二原発での発覚は、こうした一連のテロ対策上の課題が柏崎刈羽原発に限った問題ではなく、東電の原子力関連拠点全体にまたがる可能性を示すものとして、今後の追加検査の結果が注目されます。

原因-個人の逸脱ではなく組織的な課題である可能性

柏崎刈羽原発の事案について、原子力規制庁の担当者は当時、業務を円滑にするためにした行為と捉えていると説明していました。今回の福島第一・第二原発での発覚が、柏崎刈羽とは別の社員によるものである以上、単に特定の1人の規範意識の問題として片付けることは難しくなっています。核物質防護に関する情報を、指定された保護区域の外、しかも複数人がアクセスできる共有フォルダーへ保存してしまうという行為が、異なる拠点の異なる社員によって独立に行われていたという事実は、こうした情報の厳重管理ルールが、現場の業務実態と乖離していた、あるいは組織全体への周知・定着が不十分だった可能性を示唆しています。核物質防護秘密のような機密性の高い情報を扱う業務では、規則の存在そのものよりも、現場が日常業務の中でその規則をどこまで実効的に遵守できる運用になっているかが問われることになります。

出典