トレンドマイクロ、サポート詐欺の報告が前年同期比2.5倍 「人事評価」メールで法人従業員も標的に

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トレンドマイクロ、サポート詐欺の報告が前年同期比2.5倍 「人事評価」メールで法人従業員も標的に

トレンドマイクロは2026年8月20日、「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026 上半期」を公開しました。2026年1月から6月までの国内動向を分析したもので、テクニカルサポート詐欺の報告件数は5,499件となり、前年同期比で2.5倍に増加しました。

同社の調査では、従来はWeb広告などを入口としていたサポート詐欺がメールにも拡大しています。4月中旬から大手ECサイトや国税庁を装うメール、5月からは「人事評価」などの社内連絡を装う文面も確認されており、個人だけでなく法人従業員も標的になっています。

さらに、生成AIチャットボットの回答から偽ショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例も確認されました。企業側では、メール対策だけでなく、従業員が生成AIや検索結果からアクセスするURLについても、信頼性を確認する運用が必要になっています。

トレンドマイクロ「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026 上半期」のサマリー

  • トレンドマイクロは2026年8月20日、「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026 上半期」を公開しました。
  • 対象期間は2026年1月から6月で、国内の「詐欺」と「AIのリスク」を同社の観測データや独自調査から分析しています。
  • トレンドマイクロのサポートセンターに寄せられたテクニカルサポート詐欺の報告は5,499件で、前年同期比2.5倍に増加しました。
  • 5,499件は同社への報告件数であり、金銭被害が確認された件数ではありません。
  • 同社は165日間で、偽警告サイトへ誘導するメールを約1,338万通観測しました。1日平均では約8万1,000通です。
  • 観測された誘導メールの宛先は約94%が「.jp」ドメインで、配信時間は日本時間の9時から21時に集中していました。
  • 誘導先として確認された偽警告サイトは3万3,000件を超え、約9割が1日限りで使用されていました。
  • 4,721件の偽サイトに掲載されていた電話番号は11個に限られ、同じ電話番号が多数のサイトで使い回されていました。
  • 4月中旬から大手ECサイトや国税庁、5月からは「人事評価」など社内連絡を装ったメールが確認され、法人従業員も標的となっています。
  • ChatGPTやGeminiなど生成AIチャットボットの回答を経由して、偽ショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例も確認されました。
  • AIを組み込んだツールを使ったトレンドマイクロの検証では、従来リサーチャー2人で約1週間かかっていた標的分析からフィッシングサイト生成までの作業を30分以内で完了できたとしています。
  • AIによる詐欺やディープフェイクを「自信を持って見破れる」と回答した人は8.5%にとどまりました。
項目 内容
公表日 2026年8月20日
調査・観測対象期間 2026年1月~6月
公表元 トレンドマイクロ株式会社
主なテーマ 詐欺、AIのリスク
サポート詐欺の報告件数 5,499件
前年同期比 2.5倍
偽警告サイト誘導メール 約1,338万通を165日間で観測
1日平均 約8万1,000通
「.jp」ドメイン宛て 約94%
偽警告サイト 3万3,000件超
約1日で使い捨てられたサイト 約9割
4,721サイトで確認された電話番号 11個
法人向けに確認された誘導例 「人事評価」などの社内連絡を装うメール
AI関連の確認事項 生成AIの回答から詐欺サイトへ誘導される事例、AIエージェントへの間接的な指示の悪用など

サポート詐欺の報告は5,499件、前年同期比2.5倍

トレンドマイクロによると、2026年上半期に同社サポートセンターへ寄せられたテクニカルサポート詐欺の報告件数は5,499件でした。前年同期と比較して2.5倍に増加し、2026年はすべての月で前年の報告件数を上回っています。

テクニカルサポート詐欺は、偽のセキュリティ警告などを表示し、画面に記載した電話番号へ連絡させる手口です。利用者を偽のサポート担当者につなぎ、金銭の支払いや遠隔操作などへ誘導します。

ここで注意したいのは、5,499件という数字が「被害件数」ではないことです。トレンドマイクロが公表しているのは同社サポートセンターへの報告件数であり、5,499件すべてで金銭被害や端末侵害が発生したことを意味しません。

セキュリティ対策Labでは、サポート詐欺の基本的な手口や企業で発生した場合の対応について、以下の記事でも整理しています。

関連記事:サポート詐欺とは 手口・被害事例・電話してしまった場合の対処法を解説【2026年最新版】

約1,338万通の誘導メールを観測、約94%が「.jp」宛て

今回の調査で注目されるのが、サポート詐欺への誘導経路の変化です。

トレンドマイクロは165日間にわたり、偽のセキュリティ警告サイトへ誘導するメールを約1,338万通観測しました。1日平均では約8万1,000通となります。

宛先の約94%は「.jp」ドメインで、メールの配信は日本時間の9時から21時に集中していました。

誘導先となった偽警告サイトは3万3,000件を超え、その約9割が1日限りで使い捨てられていました。同社によると、サイトの構築には正規クラウドサービスの静的Webホスティング機能が悪用されていました。

一方、4,721件の偽サイトに掲載されていた電話番号を調べたところ、確認された番号は11個のみでした。大量のWebサイトを短期間で切り替えながら、最終的な電話窓口は使い回す構造が確認されたことになります。

約1,338万通という数字についても、被害者数ではなく、トレンドマイクロが観測したメール数です。1人や1組織に複数通届いている可能性もあるため、「1,338万人が被害を受けた」といった解釈はできません。

「人事評価」を装うメール、法人従業員にも標的を拡大

企業の情報システム部門にとって重要なのは、サポート詐欺が個人利用者だけの問題ではなくなっている点です。

トレンドマイクロは、2026年4月中旬から大手ECサイトや国税庁を装うメールを確認し、5月からは「人事評価」など社内連絡を装った文面も確認したとしています。

「人事評価」のようなテーマは、従業員にとって業務上確認する必要性が高く、メールを無視しにくい内容です。従来のサポート詐欺を「不審な広告をクリックした個人が遭遇するもの」と捉えていると、メールを入口とする新しい誘導を見落とす可能性があります。

法人環境で従業員が偽警告を信じ、攻撃者が指定した窓口へ連絡した場合、個人の金銭被害だけでなく、業務端末への遠隔操作ソフト導入や認証情報の入力など、組織側のセキュリティインシデントにつながる可能性があります。

3万3,000件の偽サイトに対し、電話番号はわずか11個

今回の観測では、偽サイトが短期間で大量に作成・廃棄されている一方、最終的な連絡先となる電話番号は限定されていました。

3万3,000件を超える偽警告サイトの約9割が1日限りで使われていたのに対し、調査対象となった4,721サイトに記載された電話番号は11個でした。

URLやドメイン単位の遮断だけでは、攻撃者が新しいサイトへ切り替えるたびに追随する必要があります。一方、電話番号など、攻撃キャンペーンの中で再利用される要素を横断的に検知・共有できれば、別のサイトから誘導されたケースでも関連付けられる可能性があります。

情報システム部門やSOCでは、メール送信元やURLだけをIOCとして扱うのではなく、電話番号、誘導文面、ブランドの偽装パターンなども含め、複数の手掛かりを組み合わせる必要があります。

生成AIの回答が詐欺サイトへの「入口」になる事例も確認

トレンドマイクロが2026年上半期のもう一つの重要な変化として挙げているのが、AIそのものが詐欺への入口になるリスクです。

同社はChatGPTやGeminiなど生成AIチャットボットの回答を経由し、偽のショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例を確認しました。

公式サイトのURLを生成AIへ質問する検証でも、正規サイトではなく詐欺サイトが提示される場合があり、検索結果に表示される「AIによる概要」でも同様の問題が確認されたとしています。トレンドマイクロは、公表時点では図示した事例について修正済みとしています。

これは、生成AIの回答を「検索結果より信頼できる案内」として扱う運用が危険になり得ることを示しています。

企業でも、従業員が取引先やクラウドサービス、金融機関などの公式URLを生成AIに質問し、その回答から直接アクセスするケースが考えられます。生成AIが提示したリンクであっても、正規ドメインかどうかを別経路で確認する運用が必要です。

AIエージェントは「正規権限のまま」操作を変えられるリスク

トレンドマイクロは、AIエージェント自体が攻撃対象になるリスクについても検証しています。

同社が紹介した検証では、商品ページに人間には見えにくい指示を埋め込み、AIショッピングエージェントの判断へ影響を与えるケースが確認されました。その結果、利用者が設定していた予算が30ドルから85ドルへ引き上げられ、別の販売者へ誘導される動作が発生したとしています。

重要なのは、AIエージェントが盗まれた認証情報で動作したわけではなく、利用者から付与された正規の権限の範囲内で処理を実行している点です。

AIエージェントを業務システムへ接続する企業では、「AIの認証が成功したか」だけでは十分ではありません。AIが参照する外部情報をどこまで信頼するか、金銭支払いやデータ変更など重要な操作に人間の承認を挟むか、AIエージェントへどこまでの権限を与えるかといった設計が必要になります。

セキュリティ対策Labでは、AIの攻撃利用やAIエージェントのリスクについて、トレンドマイクロへの独自インタビューでも整理しています。

関連記事:【インタビュー】AIによりサイバー攻撃はどう変わるのか?トレンドマイクロに聞く企業がとるべき対策

AIで標的分析からフィッシングサイト生成まで30分以内

攻撃者がAIを使うことで、標的型攻撃の準備に必要な時間が短縮される可能性も示されています。

トレンドマイクロは公開情報のみを使った検証で、従来リサーチャー2人が約1週間かけていた標的分析からフィッシングサイト生成までの工程を、AIを組み込んだツールによって30分以内で完了できたとしています。

これは実際の犯罪者による攻撃件数を示す数字ではなく、トレンドマイクロによる実証結果です。一方で、公開情報を収集して標的ごとに内容を調整する作業が高速化できることは、攻撃者側のコスト低下につながります。

セキュリティ対策Labが2026年7月に実施したトレンドマイクロへのインタビューでも、AIによる攻撃の変化として「攻撃速度の向上」「攻撃コストの低下」「攻撃可能な範囲の拡大」が指摘されています。

情報システム部門への示唆

今回の調査で重要なのは、詐欺対策を「従業員が怪しいメールを見抜く教育」だけで完結させにくくなっている点です。

サポート詐欺はWeb広告だけでなくメールへ入口を拡大し、「人事評価」のような業務上確認したくなる題材も利用されるようになっています。従業員教育では、「ウイルス感染」という直接的な警告だけでなく、社内通知を装ったメールから外部サイトへ誘導され、その後に偽警告が表示されるパターンも想定する必要があります。

また、偽サイトが短期間で大量に作り替えられる状況では、URLのブラックリストだけに依存した対策には限界があります。メール、Web、DNS、端末上の挙動など複数のレイヤーを組み合わせ、電話番号や文面などキャンペーン間で使い回される情報も検知に活用することが重要です。

生成AIについても、従業員に「AIの回答を信用しない」とだけ伝えるのでは不十分です。社内ポータルやブックマークから重要サービスへアクセスする、決済や認証に関わるサイトは公式アプリから確認するなど、URLを検索やAIの回答に依存しない導線を整備する必要があります。

AIエージェントを業務へ導入する場合は、最小権限、人による承認、操作ログ、外部コンテンツの信頼境界を設計段階から組み込む必要があります。AIが正規の権限で動作していても、その判断材料が外部から操作されれば、意図しない処理につながる可能性があるためです。

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