
2025年3月、CBSニュースによると元軍人で現国防長官のピート・ヘグセス氏、JD・バンス副大統領など、複数のトランプ政権高官が、軍事作戦の詳細を含むSignalグループチャットを使用し、その中にジャーナリストを誤って参加させていたことが明らかになりました。このグループチャットにはイエメンのフーシ派に対する空爆作戦の詳細が議論されており、機密情報の漏洩となっています。
この事案は、公的機関や行政機関が市販のメッセージングアプリを業務に使用するリスクを象徴する事件です。
参照:Signal グループチャットで軍事情報漏洩は「単なる誤送信」-情報機関の責任者が発言
目次
情報漏洩の概要
報道によれば、トランプ政権の複数の高官が、イエメンにおけるフーシ派への軍事攻撃について議論していたグループチャットに、誤って著名ジャーナリストを参加させていたのです。
このグループチャットは、エンドツーエンド暗号化が特徴のメッセージングアプリ「Signal」上で作られたもので、グループ名は「Houthi PC small group(フーシPC小グループ)」。
このやり取りが表沙汰になったのは、偶然にもそのグループに招待されてしまった米誌「The Atlantic」の編集長ジェフリー・ゴールドバーグ氏が、自身の体験を詳細に記事にしたことがきっかけです。
ゴールドバーグ氏は3月11日、”Mike Waltz”と表示されたSignalアカウントから突然連絡を受けました。
数日後、何の説明もなく先述のグループに追加されます。当初は悪戯やフェイクの可能性を疑っていたものの、チャット内で交わされる会話の内容があまりに具体的で、信憑性が増していきました。
会話の中では、攻撃目標の選定や使用する兵器の種類、作戦のタイミングといった具体的な軍事計画が話し合われており、現職の副大統領や国防長官、CIA長官らの名前で投稿が続いていたとされています。
フーシ派への空爆時間が投稿される
中でも、国防長官とされるアカウントからは、フーシ派への空爆が「米東部時間の午後1時45分」に開始されるという投稿がありました。
その時刻、ゴールドバーグ氏は実際にニュース速報を確認すべく、スーパーの駐車場でスマートフォンを手に待機していたといいます。
そして午後1時55分。SNS上でイエメンの首都サナアに爆撃音が響いたという投稿が拡がりはじめ、彼の中で“これは現実の軍事作戦だった”という確信に変わりました。
彼はSignalのチャットをチェックし、ウォルツ氏や他の人々からの一連の祝福メッセージを見つけたと述べた。
画像:CBSニュース
この事から、アメリカの中枢で練られていた軍事作戦の情報が、本人たちも気づかないまま、外部の第三者にリアルタイムで漏れていたのです。
事態の発覚後、ホワイトハウスは「誤って外部の番号が追加された可能性がある」とコメントし、チャット自体の信憑性を否定しませんでした。
これにより、「誤操作」や「連絡先管理の不備」といった基本的な情報管理ミスが、国家の安全保障に直結する形で露呈した格好となりました。
そもそも何が問題なのか?
誤送信による国家機密の漏洩
民間向けアプリにおける「誤って追加」というミスが、ここでは国家レベルの機密流出に繋がりました。誤送信は誰にでも起こり得るものですが、その影響範囲は利用者の責任と立場に比例します。
非公式チャネルでの政策協議
国家安全保障に関わる議論を、エンドツーエンド暗号化されたとはいえ民間アプリで行うこと自体が、運用ガバナンス上の重大な問題です。
政権側は「消えるメッセージ機能」を利用していたことも指摘されており、記録保全義務の違反も疑われています。
アクセス制御・認証の不備
Signalのようなサービスでは、相手が誰であるかの確認が電話番号ベースになりがちです。結果として「なりすまし」や「誤追加」が発生しやすく、今回のように内部者としての誤認リスクが高い設計となっています。
日本でもLINEでの機密情報は利用禁止だが・・・
日本国内でも行政機関や自治体がLINEでの機密情報の利用禁止を通達していますが、一方で行政のDXにはLINEが利用されています。
議員間や行政の職員間でのLINEは状態的に利用されているので、米国と同様に機密情報のやり取りがされている可能性があります。
参照
Top Trump officials included The Atlantic editor in group chat about plans to bomb Yemen