米上院議員、TikTokに安全機能のA/Bテスト巡り説明要求 未成年含む約1,500万人が対照群との報道

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米上院議員、TikTokに安全機能のA/Bテスト巡り説明要求 未成年含む約1,500万人が対照群との報道

米国のMarsha Blackburn上院議員(共和党、テネシー州)とRichard Blumenthal上院議員(民主党、コネティカット州)は2026年8月19日、TikTokの推薦アルゴリズムに関する安全機能のテストを巡り、TikTok Inc.のShou Zi Chew CEOとTikTok USDS Joint Venture LLCのAdam Presser CEOに書簡を送り、9月1日までに詳細を回答するよう求めました。

書簡はBloombergの報道を引用し、TikTokが類似する有害コンテンツの連続推薦を抑える「filter bubble prevention strategies」をテストする際、米国ユーザーの約10%、当時約1,500万人を安全機能が適用されない対照群に割り当て、その中に未成年者も含まれていたとしています。

ただし、約1,500万人という規模や実験設計の詳細は、公開されたTikTokの内部資料を本記事で独立確認できるものではありません。現時点で確認できる一次資料は、議員側の書簡とTikTokが過去に公開した推薦アルゴリズムの安全対策に関する説明です。議員側はTikTokに対し、対象人数、未成年者を含めた理由、評価指標、意思決定者、過去の同種実験など13項目について回答を求めています。

TikTok安全機能テストを巡るサマリー

  • 確認済み:Blackburn、Blumenthal両上院議員は2026年8月19日、TikTokのShou Zi Chew CEOとTikTok USDS Joint Venture LLCのAdam Presser CEOに4ページの書簡を送りました。
  • 確認済み:両議員はTikTokに対し、推薦アルゴリズムの安全機能を一部ユーザーへ適用しなかった実験について、2026年9月1日までの回答を求めています。
  • 報道ベース:議員書簡はBloomberg報道を引用し、TikTokが米国ユーザーの約10%、当時約1,500万人を安全機能が適用されない対照群に含めたとしています。
  • 報道ベース:対照群には未成年者も含まれていたとされています。
  • 報道ベース:16歳のChase Nasca氏も2022年1月の「backtest」に含まれ、TikTok内部資料では「filter bubble prevention strategies did not take effect on this user by design」と記載されていたと議員書簡は引用しています。
  • 報道ベース:同書簡によると、TikTok内部レビューはNasca氏が亡くなる前の2週間に閲覧した7,563本の動画を分析し、73%に悲しみや個人的な苦悩などのテーマがあり、約10%がTikTokのポリシーに違反していたとされています。
  • 確認済み:TikTokは2021年12月、極端なダイエットやフィットネス、悲しみ、別れなど、単体では問題がなくても連続視聴が問題となり得るコンテンツを続けて推薦しない仕組みをテストしていると公式に公表していました。
  • 確認済み:TikTokはその後、米国でのテストと改善を経て、利用者が一度に見る同種トピックの動画数を減らしたと説明しています。
  • 確認済み:両議員は、実験の期間、対照群と処置群の人数、未成年者数、選定基準、エンゲージメントや広告収益を含む評価指標などの開示を求めています。
  • 確認済み:両議員は、2019年以降に米国で安全機能、プライバシー保護、保護者向け機能などを対照群から除外・遅延・縮小したすべての実験についても説明を求めています。
  • 確認済み:上院商務委員会は8月5日、Kids Online Safety Act(S.1748)を修正の上、発声投票で前進させました。
  • 未確認:TikTokが安全機能を適用しなかった理由や、未成年者を対照群へ含めた意思決定過程について、TikTok自身からの詳細な公式説明は確認できませんでした。
  • 未確認:TikTokが9月1日の期限までにどのような回答を行うかは現時点では分かりません。
項目 内容
書簡の日付 2026年8月19日
送付者 Marsha Blackburn上院議員、Richard Blumenthal上院議員
宛先 Shou Zi Chew氏、Adam Presser氏
主な論点 推薦アルゴリズムの反復コンテンツ抑制策を一部ユーザーへ適用しなかった実験
対照群の規模 米国ユーザーの約10%、約1,500万人との報道。TikTokの公開資料では独立確認できず
未成年者 対照群に含まれていたとの報道
回答期限 2026年9月1日
議員側の要求 実験設計、対象人数、未成年者数、評価指標、意思決定者、リスク評価、内部報告書、過去の同種実験など
関連法案 Kids Online Safety Act(S.1748)
KOSAの状況 2026年8月5日に上院商務委員会が修正版を発声投票で前進

米上院議員がTikTokへ9月1日までの回答を要求

Blackburn、Blumenthal両議員は8月19日の書簡で、TikTokが安全対策を一部の米国ユーザーから意図的に除外し、ユーザーエンゲージメントへの影響を測定していたとの報道について説明を求めました。

書簡の宛先はTikTok Inc.のShou Zi Chew CEOとTikTok USDS Joint Venture LLCのAdam Presser CEOです。

両議員は、通常のA/Bテストそのものを問題視しているのではなく、繰り返し表示される有害な可能性のあるコンテンツを抑制する安全機能を対照群から外し、その対象に未成年者が含まれていたとされる点を問題視しています。

議員書簡では、対象となった対照群は米国ユーザーの約10%、当時約1,500万人だったとのBloomberg報道を引用しています。

この約1,500万人という数字はTikTokが今回公式に公表したものではありません。したがって、「1,500万人に安全機能が提供されなかったことをTikTokが認めた」とするのは現時点では適切ではありません。

TikTokは2021年12月に「反復パターンを中断する」テストを公表

TikTokは2021年12月16日、For Youフィードの推薦を多様化し、類似コンテンツが繰り返し表示される状態を抑える取り組みを公式に発表していました。

同社は、極端なダイエットやフィットネス、悲しみ、別れといったテーマについて、1本だけであれば問題にならなくても、同じカテゴリーの動画をまとまって視聴すると問題になり得るとして、似たコンテンツを連続して推薦しない方法をテストしていると説明しています。

また、孤独や減量など、TikTokのポリシー自体には違反していなくても、利用者がほぼ同じ種類のコンテンツだけを見る状態が悪影響を与える可能性があるとして、推薦内容が狭くなりすぎない仕組みも検討していました。

その後TikTokは、米国でのテストと改善を受け、こうしたトピックについて利用者が一度に見る動画数を減らしたと公式に説明しています。

今回の議員書簡の焦点は、こうした安全機能のテスト期間中、一部のユーザーを意図的に機能の対象外としたとされる実験設計です。

16歳のユーザーが「backtest」に含まれていたとの内部資料報道

議員書簡はBloombergの報道を引用し、2022年2月に16歳で亡くなったChase Nasca氏が、2022年1月にTikTokの「backtest」と呼ばれる実験へ割り当てられていたとしています。

書簡によると、TikTokの内部資料には、同氏について「filter bubble prevention strategies did not take effect on this user by design」、つまりフィルターバブル防止策が設計上このユーザーには適用されなかったとの記載があったとされています。

さらに書簡は、TikTok内部レビューが同氏が亡くなる前の2週間に閲覧した7,563本の動画を分析し、その73%に悲しみや個人的な苦悩などのテーマがあり、約10%がTikTok自身のポリシーに違反していたとのBloomberg報道を引用しています。

ただし、この内部報告書自体は本記事で直接確認できる公開資料ではありません。

また、同氏が亡くなったこととTikTokの推薦アルゴリズムとの因果関係について、今回の議員書簡が法的・医学的に確定したものではありません。本記事でも因果関係を断定しません。

13項目で実験設計や意思決定者の開示を要求

両議員はTikTokに対し、9月1日までに13項目について完全な回答を提出するよう求めています。

主な要求内容は以下です。

  • 「filter bubble prevention strategies」を含む実験の開始・終了時期
  • 実験の目的と設計
  • 処置群・対照群に含まれた米国ユーザー数と割合
  • 各グループに含まれた未成年者の人数と年齢別割合
  • ユーザーを各グループへ割り当てた基準
  • 視聴時間、セッション時間、継続率、DAU、広告収益など実験で使用した指標
  • エンゲージメントへの影響を理由に安全機能の導入を見送った事例の有無
  • 実験を承認、検討、推奨、認識していた従業員・経営幹部
  • 未成年者を安全機能のない対照群へ含めた理由
  • 実験前に実施したリスク評価
  • 2023年3月の内部報告書の完全版
  • 2019年以降、安全機能やプライバシー保護などを一部ユーザーから除外・遅延・縮小した米国内の実験
  • 経営陣がこうした実験や未成年者の参加を認識した時期

特に要求範囲が広いのは、今回報じられた1件のテストだけでなく、2019年以降にTikTokが米国で実施した安全機能に関する実験全般へ対象を広げている点です。

TikTokの公式発表と内部文書報道には確認範囲の差

TikTokが2021年から2023年にかけて、類似コンテンツの連続推薦を抑える仕組みを開発・テストしていたこと自体は、同社の公式Newsroomでも確認できます。

一方で、対照群が約1,500万人だったこと、未成年者を含んでいたこと、エンゲージメントや収益への影響を評価する目的で安全機能を適用しなかったことなどは、議員書簡が引用するBloombergの内部文書報道が根拠です。

The Recordによると、TikTokはBloombergに対し、Trust & Safetyへの投資を継続し、ガイドライン違反コンテンツを検知・削除する体制を強化していると説明しました。ただし、公開されているTikTokの公式資料では、今回問題となっている対照群の設計や未成年者を含めた理由についての詳細な説明は確認できませんでした。

このため、現時点では「TikTokが安全対策を利益のために停止したことが確定した」と断定するのではなく、「内部文書に基づく報道を受け、米上院議員がTikTokに説明を要求している」と整理する必要があります。

Kids Online Safety Actは8月5日に上院商務委員会を通過

Blackburn、Blumenthal両議員は今回の書簡で、TikTokを巡る報道をKids Online Safety Act(KOSA)が必要な理由の一つとして挙げています。

上院商務・科学・運輸委員会は8月5日、S.1748のKOSAを修正の上、発声投票で前進させました。

議員側の説明によると、KOSAは未成年者に対し、依存性のある機能の無効化やパーソナライズ推薦からのオプトアウト手段を提供するほか、プラットフォームに対して自殺、摂食障害、薬物乱用、性的搾取などの特定リスクを防止・軽減する義務を設ける内容です。

また、独立監査や研究を通じて、プラットフォームが未成年者へのリスクをどのように管理しているかについて透明性を高めることも盛り込まれています。

8月24日時点では法案は成立しておらず、上院商務委員会を通過した段階です。

リスク管理・コンプライアンス部門への示唆

今回の問題はTikTok固有の論点にとどまらず、安全機能をA/Bテストする際のガバナンスを考える上で重要です。

オンラインサービスでは、UIや推薦アルゴリズムの変更を一部ユーザーへ先行適用し、利用率や継続率などを比較するA/Bテストが一般的です。しかし、テスト対象が不正利用防止、プライバシー保護、未成年者保護、自傷行為など重大なリスクを軽減する機能の場合、一般的な製品改善テストと同じ統制では不十分です。

特に未成年者や脆弱な利用者を含む可能性がある場合は、テスト開始前に、機能を提供しないことで生じるリスクを文書化し、対象から除外すべき利用者を定義する必要があります。

また、安全機能の評価指標をエンゲージメントや収益だけに置くと、リスク低減と事業指標が衝突する場合があります。安全指標を独立して設定し、一定のリスク基準を超えた場合にはテストを中止できる承認フローが必要です。

組織内では、少なくとも以下を明確にしておくことが求められます。

  • どの機能を「安全・セキュリティ機能」と分類するか
  • 安全機能を無効化する実験を誰が承認できるか
  • 未成年者など高リスク利用者を対象外にする条件
  • 実験前のリスク評価と倫理審査の要否
  • エンゲージメント指標と安全指標が衝突した場合の判断基準
  • 問題発生時に実験を即時停止する手順
  • 後から検証できる実験ログ、意思決定記録、対象者数の保存
  • 経営層や監査部門へのエスカレーション基準

推薦アルゴリズムの安全性は、単に「有害コンテンツを削除できているか」だけでは評価できません。個々のコンテンツがルール違反でなくても、同じテーマが繰り返し推薦されることでリスクが高まる場合があります。

今回の書簡で議員側が求めているのも、個別投稿のモデレーションだけではなく、推薦システムの設計、安全機能のテスト方法、経営判断を含むガバナンス全体の説明です。

セキュリティ対策Labでは、TikTokと未成年者を巡る別の規制動向について「TikTokが児童のプライバシー侵害で米国から提訴」でも取り上げています。

出典