TrendAI Zero Day Initiative(ZDI)は、ベンダーへ通知済みで詳細をまだ一般公開していない脆弱性を「Upcoming Advisories」として公開しています。
2026年9月16日時点で、公開待ちのアドバイザリは699件です。直近ではLinux、Cisco、Google DeepMind、Google、Apple、Wireshark、Next.js、VMware、PyTorch、Langflow、Microsoft、NVIDIAなど多数のベンダー・プロジェクトが掲載されています。
一覧には脆弱性の識別子となるZDI-CAN番号、ベンダー名、ZDIが示すCVSSスコア、ベンダーへの通知日、原則120日後に設定された公開予定日、発見者が掲載されています。
現時点では詳細な脆弱性内容や影響製品、攻撃条件、修正版などは公開されていません。ASUSとNVIDIAについてはCVSS 10.0の案件も掲載されていますが、これだけをもって「インターネットから認証なしで悪用可能」「実際の攻撃で悪用されている」などと判断することはできません。
ZDI Upcoming Advisoriesのサマリー
確認できている内容:
- ZDIは2026年9月16日時点で699件の脆弱性を「pending public disclosure」として掲載しています。
- 対象はZDIが取得・発見し、影響を受けるベンダーへ通知済みの脆弱性です。
- 原則としてベンダーには120日間の修正期間が与えられます。
- 直近9月15日にはLinux関連2件が追加され、CVSSは8.8と7.8です。
- 9月11日にはCisco 1件とGoogle DeepMind 3件などが追加されています。
- 9月10日にはApple、Google、Cesanta、Wireshark、Net-SNMP、Linux、X.Orgなどの案件が追加されています。
- ASUSのZDI-CAN-31365はCVSS 10.0、公開予定日は2026年12月31日です。
- NVIDIAのZDI-CAN-32542もCVSS 10.0、公開予定日は2026年12月31日です。
- CesantaのZDI-CAN-29386はCVSS 9.8、公開予定日は2027年1月8日です。
- VMwareのZDI-CAN-34034はCVSS 9.8、公開予定日は2026年12月31日です。
- NVIDIAにはCVSS 9.8の案件も複数掲載されています。
- 詳細な脆弱性内容、影響製品名、CVE番号、修正版は多くの案件でまだ公開されていません。
- 「Upcoming Advisories」への掲載は、実悪用やPoC公開を意味しません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開元 | TrendAI Zero Day Initiative(ZDI) |
| ページ | Upcoming Advisories |
| 公開待ち件数 | 699件 |
| 掲載情報 | ZDI-CAN、ベンダー、CVSS、通知日、公開予定日、発見者 |
| 通常の開示期限 | ベンダー通知から120日 |
| 最大スコアの直近案件 | ASUS CVSS 10.0、NVIDIA CVSS 10.0 |
| 実悪用情報 | 一覧だけでは確認できない |
| PoC | 一覧だけでは確認できない |
| CVE番号 | 詳細公開前の案件では未記載が多い |
| 影響製品・バージョン | 詳細公開前のため原則未記載 |
9月15日にはLinux関連の脆弱性2件を追加
ZDIの一覧で最も新しい登録日は2026年9月15日です。
同日、Linuxを対象とする次の2件が掲載されています。
| ZDI-CAN | ベンダー/プロジェクト | CVSS | ベンダー通知日 | 公開予定日 |
|---|---|---|---|---|
| ZDI-CAN-33264 | Linux | 8.8 | 2026年9月15日 | 2027年1月13日 |
| ZDI-CAN-33095 | Linux | 7.8 | 2026年9月15日 | 2027年1月13日 |
発見者はいずれもparkjunhyun氏です。
ただし、ZDIは現時点でLinuxのどのコンポーネントやバージョンが影響を受けるのかを公開していません。
CVSS 8.8、7.8というスコアから具体的な攻撃条件を推測することも避ける必要があります。詳細なベクトルや脆弱性種別は正式公開後に確認する必要があります。
Google DeepMindはCVSS 7.8の案件3件
9月11日にはGoogle DeepMindを対象とする3件が掲載されました。
- ZDI-CAN-32141:CVSS 7.8
- ZDI-CAN-32142:CVSS 7.8
- ZDI-CAN-32162:CVSS 7.8
公開予定日はすべて2027年1月9日です。
発見者にはVicOne LAB R7のAaron Luo氏、Ziv Chang氏が記載されています。
ただし、Google DeepMindのどの製品・サービス・AIモデルが対象なのかは現時点で明らかになっていません。
そのため、「Geminiの脆弱性」「AIモデルそのものの脆弱性」などと具体化することはできません。
同じ一覧にはPyTorch、Langflow、LiteLLM、RAGFlow、LangChain、deepset、Hugging Face、n8nなどAI・機械学習関連のソフトウェアも複数掲載されていますが、各案件の詳細は正式公開を待つ必要があります。
ASUSとNVIDIAにCVSS 10.0の公開待ち脆弱性
一覧で特にスコアが高い案件の一つがASUSのZDI-CAN-31365です。
- ZDI-CAN-31365
- ベンダー:ASUS
- CVSS:10.0
- 通知日:2026年9月2日
- 公開予定日:2026年12月31日
- 発見者:0x0dee氏
NVIDIAにもCVSS 10.0の案件があります。
- ZDI-CAN-32542
- ベンダー:NVIDIA
- CVSS:10.0
- 通知日:2026年9月2日
- 公開予定日:2026年12月31日
- 発見者:Habibullo Izzatilloyev氏
NVIDIAでは同時期にCVSS 9.8や7.2の別案件も掲載されています。
ただし、両社とも対象製品名や影響バージョン、脆弱性の種類はまだZDIから公開されていません。
CVSS 10.0は深刻度評価として最高値ですが、「現在利用中のすべてのASUS/NVIDIA製品が危険」という意味ではありません。
製品名が分からない段階で利用者側が対象かどうかを判定することはできません。
Cesanta、VMwareにもCVSS 9.8
9月10日にはCesantaのZDI-CAN-29386が追加されています。
CVSSは9.8で、公開予定日は2027年1月8日です。
また、9月2日にはVMwareのZDI-CAN-34034が登録され、CVSS 9.8、公開予定日は2026年12月31日となっています。
ほかにもZDIの公開待ち一覧には、GStreamer、FLIR、Siemens、LangChain、NoMachine、NVIDIA、n8n、Hugging FaceなどでCVSS 9.8の案件が確認できます。
これらについても、製品名や攻撃条件は未公開です。
一覧を脆弱性対策に利用する際は、「ベンダー名+高CVSS」という情報だけで具体的な脅威シナリオを作らず、正式なアドバイザリ公開後に影響範囲を確認する必要があります。
ZDIの公開方針は原則120日
ZDIのDisclosure Policyによると、ベンダーが脆弱性通知に応答した場合、原則として120日間の修正期間を設けます。
期間内にベンダーが修正版や適切な対策を提供すれば、その内容に合わせて正式なアドバイザリが公開されます。
一方、期限までに修正されず、合理的な説明もない場合、ZDIは防御側が対応できるよう、緩和策を含む限定的なアドバイザリを公開するとしています。
120日の延長はZDIの裁量で、例外的なケースに限るとしています。
また、ベンダーが最初の通知へ応答しない場合は再度連絡を試み、それでも連絡が成立しない場合は初回通知から15営業日後に情報を公開する可能性があります。
不完全な修正に対する再報告では別の期限が設定されており、実悪用が確認または差し迫っているCritical脆弱性の場合は30日、一定の保護があるCritical/Highでは60日、それ以外は90日です。
「公開予定日」になれば必ず詳細が出るとは限らない
Upcoming Advisoriesの2つの日付は、各案件のベンダー通知日と、その120日後を基準とした公開予定日として読むことができます。
例えば9月15日に通知されたLinuxの2件は、120日後の2027年1月13日が公開予定日になっています。
ただし、一覧には公開予定日をすでに過ぎた案件も残っています。
ZDIのDisclosure Policyでは例外的な延長が認められており、実際の公開日はベンダーとの調整や修正状況によって変わる場合があります。
そのため、「2026年12月31日にASUSやNVIDIAの脆弱性詳細が必ず公開される」と断定することはできません。
予定日は、ZDIの開示ポリシーに基づく目安として扱う方が適切です。
Upcoming Advisoriesは「ゼロデイ攻撃が699件ある」という意味ではない
ZDIはZero Day Initiativeという名称ですが、「699 advisories pending public disclosure」を「699件のゼロデイが実際の攻撃で悪用されている」と解釈するのは誤りです。
一覧から確認できるのは、
- ZDIが脆弱性を取得または発見した
- ベンダーへ通知した
- 詳細はまだ一般公開していない
- ZDIがCVSSを評価している
- 開示ポリシー上の公開予定日が設定されている
という状態です。
実悪用の有無、PoCの存在、インターネットからの到達可能性、認証の要否、ユーザー操作の要否などは、一覧だけでは判断できません。
また、詳細公開前のためCVE番号が割り当てられていない、または公開されていない案件も多数あります。
企業側が緊急パッチ適用を判断するには、各ベンダーの正式アドバイザリ、CVE、CISA KEVなど追加情報を待つ必要があります。
一方で脆弱性管理の「予告情報」として利用できる
具体的な影響製品が不明な段階でも、Upcoming Advisoriesは脆弱性管理チームにとって事前準備の材料になります。
例えば、一覧に自社で利用するベンダーが掲載された場合、正式公開前に次の準備を進められます。
- 対象ベンダー製品を資産台帳から抽出する
- EOL製品や長期未更新製品がないか確認する
- ベンダーのセキュリティ通知を受け取れる状態にする
- 緊急パッチ適用時の検証・展開手順を確認する
- インターネット公開資産と内部利用資産を分けて把握する
- バックアップやロールバック手段を確認する
- 正式公開後にCVE、CVSS、KEV、悪用情報をすぐ突合できるようにする
特に、ASUS、NVIDIA、VMware、Cisco、Microsoft、Apple、Linuxなど企業環境で広く利用されるベンダーが掲載されている場合、正式アドバイザリ公開後に対象製品の有無をゼロから調査すると対応が遅れます。
ただし、製品が未公表の段階で利用者へ緊急更新を指示したり、該当ベンダー製品の利用停止を求めたりする材料にはなりません。
情報システム・CSIRTが確認したいポイント
ZDIのUpcoming Advisoriesを脆弱性管理へ取り込む場合は、「対応対象」ではなく「監視対象」として扱うのが現実的です。
- 自社で利用するベンダーが一覧に含まれているか
- 高CVSS案件の正式公開予定日を監視できるか
- ベンダー公式セキュリティアドバイザリを購読しているか
- CVE公開後に資産台帳と自動照合できるか
- インターネット公開資産を優先して影響確認できるか
- CISA KEV、NVD、CERT、ベンダー情報を追加確認できるか
- 「未公開脆弱性がある」という情報だけで不要な緊急対応を開始しない運用になっているか
- 正式公開後にパッチ、回避策、IOC、実悪用情報を再評価する手順があるか
699件という件数そのものより、利用中ベンダーの高深刻度案件がいつ正式公開される可能性があるかを把握し、公開後すぐに影響確認できる体制を整えておくことが実務上の使い方になります。








