カスタマージャーニーマップとは?事例や作り方を解説
マーケティング施策を考える上で、何から手を付けて良いか悩まれる方も多いかと思います。とはいえ、何も手付かずの状態だといっこうに前に進みません。そこで、最近ではマーケティング施策を考える上での土台として、カスタマージャーニーマップを作成するケースが多いかと思います。しかしながら、カスタマージャーニーマップのイメージはあるけれども、具体的にどのように進めて良いか分からない、という方向けに、今回の記事では、カスタマージャーニーマップの作り方や事例などを紹介していきたいと思います。
目次
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、認知から購買に至るまでの購買プロセスに関連する顧客との接点や行動・思考などを時系列に可視化したマップのことを指します。
横軸には「認知」「情報収集」「検討」「購入」などの購買プロセスの各ステージをまとめて、縦軸には「顧客行動」「顧客接点」「思考」「課題感」「対応策」などをまとめます。
なぜカスタマージャーニーマップが必要か
カスタマージャーニーマップ自体は1998年頃から使用されてきたと言われ、有名なところでは、2017年にマーケティングの神様であるフィリップ・コトラー氏が著書「マーケティング4.0」でカスタマージャーニーマップを紹介して大きな注目を浴びたと言われています。昔からある手法にも関わらず、今でも重宝される考え方である理由は何なのでしょうか。主には以下の様な理由が考えられます。
顧客目線での思考ができる
BtoB・BtoCを問わず、昨今においてはさまざまな業種で顧客行動が多様化しています。また、さまざまなチャネル(Web広告やアプリ、Webサイト、SNS、実店舗など)で企業と顧客はコミュニケーションをとっていますが、各チャネルにおいて最適な顧客体験を提供できているかの観点では、顧客視点で立ち返る必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成することにより、売り手目線ではなく、買い手目線で考えることができ、顧客が抱える悩みや不満に気付くことができます。顧客の立場に立ち、どのような思考で、どのような課題感をもって、その行動に移したか、等を考えることにより、新商品の開発にもつながる可能性もありますし、また、既存商品・サービスの見直しにもつながります。
カスタマージャーニーマップを作成しておくことにより、商品やサービスの売れ行きが落ち込んできた場合には、顧客アンケートを取ることなどにより、どこに改善点があるのか、カスタマージャーニーマップの中でどこが課題なのかを考えることができます。
チーム内での共通認識を持つことができる
カスタマージャーニーマップを作る上では、ベースは一人一人の担当者が作るかもしれませんが、最終的には、各関連部署(商品開発部門、営業部門、広告部門、マーケティング部門、など)と意見交換をしながら顧客理解を深めていく必要があります。各関連部署とコミュニケーションを取ることにより、自分が気づかなかった課題感を認識することもでき、また、自分の部署しか知りえなかったことなどを共有することにより、顧客に対しての認識を統一することができます。
また、カスタマージャーニーマップとして可視化しておくことが重要で、施策を考える際などにはカスタマージャーニーマップ起点で、マップ内のどこに焦点をあてて施策を展開していくかなど、各関連部署とコミュニケーションをとることで、スムーズに施策を回していくことが可能となります。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップの作成手順としては大まかには以下の通りです。
- ペルソナの設定
- 横軸に購買プロセスのステージを書く
- 縦軸にペルソナの行動・接点(タッチポイント)を書く
- 縦軸に思考、課題感、対応策を書く
ペルソナの設定
まずはターゲットとなるペルソナを設定します。ペルソナ設定はできるだけ詳しく設定することがポイントです。BtoBマーケティングでのペルソナは「企業」と「担当者」の2つのペルソナを掛け合わせた形式で設定するとよりイメージが湧きます。
カスタマージャーニーでは、商品・サービスの購買(利用)を意識していない初期接点の段階から考えていくことになるため、ペルソナについては普段の生活の様子なども含めて設定しておくことが重要です。
項目 | 設定・内容 |
年齢・性別 | 例:30代・男性、など |
役職・職務 | 例:営業部 マネージャー、など |
性格・考え方 | 例:大雑把、初見の印象で商品・サービスを購入する傾向がある、など |
趣味嗜好 | 例:料理好き。一人で食べ歩くのが好き。 |
横軸に購買プロセスを書く
ペルソナを設定した後は、購入に至るまでのプロセス(横軸・時間軸)におけるステップを定義します。「購入」がゴールのこともあれば「契約」がゴールのこともあるので、商品やサービス内容、目的に応じて柔軟に変更します。
主な購買プロセスのイメージとしては、「ニーズ把握」「商品・サービス認知」「比較・検討」「購入」「利用」などがあります。
縦軸にペルソナの行動・接点(タッチポイント)を書く
横軸の購買プロセスのステップが決まったら、顧客の行動や検討、それに対する接点(タッチポイント)を整理していきます。
自社部門のみで考えると視点が広がらないため、他部門の人にも協力を仰いでブレインストーミングを行ったり、自社に蓄積されているデータの活用、顧客アンケート調査の実施等により、多面的に情報を取得していくことが有効です。
なおタッチポイントは、オフライン・オンラインで分けられますが、オフラインでは、テレビCMやパンフレット、交通広告、チラシ、雑誌広告など、オンラインでは、Web広告やオウンドメディア、口コミサイト、ブログ、SNS、などが挙げられます。
縦軸に思考、課題感、対応策を書く
ペルソナの行動・接点について整理できたところで、それぞれの顧客接点におけるペルソナの行動に紐づく思考、課題感、対応策について検討していきます。
顧客アンケート調査など有効ですが、仮にできなくても、社外の友人や知人などへのヒアリングなどにより、顧客がどのような思考、課題感を持って、また、どのような対応策を考えているかについて具体的に想像できるような情報を蓄積しておくと、より充実したカスタマージャーニーマップの作成につながります。
カスタマージャーニーマップ活用事例
ここからはカスタマージャーニーマップの具体的な活用方法がイメージできるように、企業の活用事例を紹介したいと思います。
民泊事業者の事例(BtoC)
出典:https://qualva.com/qualvatics/archive/482/
海外旅行の宿泊先をAirbnbで探す際、ユーザーの決め手となる要件を調査し、予約率を向上する目的で上記のカスタマージャーニーマップを作成しています。ペルソナは「友人と海外旅行をする日本人」として設定しています。ポイントとしては、一般的なホテルとは異なり、オーナーとの直接取引となるAirbnbならではの、事前のやり取りを重視したマップに仕上げている点です。
百貨店利用における事例(BtoC)
出典:カスタマージャーニーマップについての簡単なまとめ – U-Site
百貨店利用における特定の顧客層をペルソナに設定しています。ペルソナの感情の起伏がタッチポイントごとに矢印で書き込んであるのが特徴です。これにより、消費者がタッチポイントに応じてどのような感情でいるのかが一目で分かりやすく、マーケティング施策の実行にもつなげやすくなります。
業務改善ソリューションプロダクト(BtoB)の事例
出典:BtoB版「刺さるコミュニケーション開発」のPDCA | ダイレクトマーケティングラボ | リコー (ricoh.co.jp)
BtoCでは基本的には対象は1人ですが、BtoBの場合は、顧客企業の登場人物が複数いるのが特徴です。意思決定権者、購買窓口担当者、ユーザー部門、など、ゴールである導入に向けて、どのようなキーパーソンとどのタイミングで接点を持ち、次につなげていくかの視点でマップを作成しています。
人材獲得の事例
株式会社ロフトワークスが、パソナキャリアにおける新卒採用のためのWebサイトリニューアルを支援した事例でカスタマージャーニーマップを作成しています。
この事例では、ゴールを「新規事業を創出できる人材を獲得すること」に設定し、ターゲットに合致する学生にインタビューをすることで情報を集め、リニューアルの方向性を定めました。
具体的なカスタマージャーニーマップの作成手順としては下記の様に進められています。
- 顧客行動の収集
- 考えていること、感じていることの収集
- 課題の収集
- 顧客行動と媒体の清書
- 課題の抽出
コスメD2Cブランドの事例
出典:カスタマージャーニーとは?概念やマップの作り方を徹底解説~事例付き~ (aainc.co.jp)
コスメD2Cブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を展開するDINETTE株式会社の事例を紹介します。「PHOEBE BEAUTY UP」は顧客の「あったらいいな」の声に応えて立ち上がったプライベートブランドで、「顧客の声」を軸にあらゆるデジタルマーケティングを打ち出していることに特徴があります。
上記カスタマージャーニーマップを起点に打ち出された施策は下記の通りです。
- 顧客の悩みや声に基づいた商品開発と商品改良
- SNSを活用し、顧客の声を起点としたコミュニケーション
- 顧客の声を活かすため、Instagram投稿及びレビューのLPへの掲載
まとめ
今回の記事ではカスタマージャーニーマップについて、事例や作成方法について紹介してきました。カスタマージャーニーマップを有効活用することにより、顧客への理解が進み、また、チーム内での共通認識も持つことができます。よりよい顧客体験の創出につなげるためにカスタマージャーニーマップの作成に取り組んで頂ければと思います。