2026年7月 ランサムウェアの被害 事例 まとめ

セキュリティニュース

投稿日時: 更新日時:

2026年7月 ランサムウェアの被害 事例 まとめ

2026年7月は、日本最大のタクシー・ハイヤー事業者である日本交通がマルウェア感染によるシステム停止に見舞われ、ランサムウェアグループAiLockが2.9TBのデータ保有を主張する事態に発展しました。ニチレイの不正アクセス事案では、RansomHouseがダークウェブで犯行声明を掲載していますが、これはあくまで攻撃者側の一方的な主張です。脅威動向としては、6月に発覚したFortiGate認証情報の大規模窃取キャンペーン「FortiBleed」が、ランサムウェアグループINC RansomおよびLynxによって実際に悪用されていた実態が明らかになりました。オーミケンシと新エフエイコムでは、それぞれ3月・4月に発生した事案の最終報・続報が7月に公表され、フォレンジック調査の長期化という共通の課題が浮き彫りになっています。

2026年7月 ランサムウェア 被害 インシデント一覧

公表日 組織・対象名 被害の概要 件数・特記事項
7/22 ニチレイ RansomHouseが犯行声明を掲載 攻撃者側の一方的主張、公式確認なし
7/13〜7/22 日本交通 マルウェア感染・システム停止、AiLockが犯行声明主張 2.9TBの非圧縮データ保有を主張
7/21 新エフエイコム 4月のランサムウェア被害の続報 取引先従業員の個人情報流出の恐れ
7/1 FortiBleed動向 INC Ransom・Lynxが窃取認証情報を悪用 SOCRadarが運用者の重複ログインを確認
7月 オーミケンシ 3月のランサムウェア被害の最終報 The Gentlemenが犯行声明、実データ公開は未確認

犯行声明・ダークウェブで確認された被害

日本交通、マルウェア感染でシステム停止・AiLockが2.9TB保有を主張

日本最大のタクシー・ハイヤー事業者である日本交通株式会社(東京都千代田区)は2026年7月13日、マルウェア感染によるシステム停止を公表し、電話配車やハイヤーWeb受注、陣痛タクシーWeb登録などに影響が生じました。7月22日には第3報を発表し、外部専門機関と連携した調査の中で同社から流出した疑いのある情報をインターネット上で確認したと明らかにしています。流出した疑いのある情報の内容や影響範囲は調査中です。一方、ダークウェブ上のリークサイトでは、ランサムウェアグループAiLockが日本交通を標的に挙げ、2.9TBの非圧縮データを保有していると主張していますが、本稿執筆時点でサンプルデータは公開されておらず、AiLockの主張部分はあくまで攻撃者側の一方的な主張です。AiLockはポスト量子暗号(PQC)を採用する新興RaaSで、2026年第1四半期に被害件数が急増したグループとされ、公共性の高い交通インフラ事業者が標的になった点は注視すべき事案です。

▶ 詳細記事:日本交通、マルウェア感染と不正アクセスでシステム停止
▶ 詳細記事:ランサムウェアグループAiLockが日本交通へのサイバー攻撃を主張

ニチレイ、RansomHouseが犯行声明を掲載

2026年7月22日、ランサムウェアグループRansomHouseがダークウェブ上のリークサイトで、7月13日に不正アクセスによるシステム障害を公表したニチレイへの犯行声明を掲載しました。リークサイトには攻撃実行日として7月13日が記載されステータスは「暗号化済み」とされていますが、この日付はニチレイが障害を検知・公表した日と一致するのみで、攻撃者が事後的に日付を合わせた可能性もあり、両社の関連をニチレイが認めたものではありません。リークサイトにはニチレイの経営陣宛の脅迫文も掲載されています。RansomHouseは2025年10月のアスクル攻撃でも犯行声明を発表し約74万件の個人情報流出の可能性を主張した実績があり、物流・流通の基幹を担う日本の大手企業を標的にする傾向がうかがえます。犯行声明の内容と被害企業側の公式発表を区別して扱う姿勢が引き続き重要です。

▶ 詳細記事:ランサムウェアグループRansomHouseがニチレイへのサイバー攻撃を主張


脅威動向:FortiBleed認証情報がランサムウェアに悪用

FortiBleedの窃取認証情報、INC RansomとLynxが悪用か

脅威インテリジェンス企業SOCRadarは2026年7月1日、FortiBleedのインフラを操作する運用者の1人が、ランサムウェアグループINC RansomとLynxの両方の交渉パネルへ同時にログインしていた形跡を確認したと発表しました。FortiBleedは2026年6月に発覚した、インターネットに公開されたFortiGateファイアウォールおよびSSL VPNゲートウェイを標的にした大規模な認証情報窃取キャンペーンで、194か国・86,644台分の有効な管理者・VPN認証情報がデータベース化されていました。Fortinet自身は本件について、新規の脆弱性ではなく過去に修正済みの認証バイパスの脆弱性(CVE-2026-24858、CVE-2025-59718、CVE-2025-59719)を通じて漏えいしていた認証情報が、パッチ適用後も変更されないまま悪用され続けた結果だと説明しています。SOCRadarは、FortiBleedを運営する初期アクセスブローカー(IAB)とINC・Lynxのランサムウェア運営主体は別組織であり、IABが窃取したアクセス権をランサムウェア側が対価を払って利用する分業構造にあると評価しています。パッチ適用済みであっても、影響を受けた期間に使用していた認証情報のローテーションを行っていない組織は、依然としてランサムウェア展開の足がかりにされるリスクがあります。

▶ 詳細記事:FortiBleed認証情報窃取キャンペーン、ランサムウェアグループINC・Lynxがサイバー攻撃に悪用か


過去事案の続報・最終報

新エフエイコム、4月のランサムウェア被害で取引先情報漏えいの恐れ

新エフエイコムは2026年7月21日、4月10日未明に発生したランサムウェア被害に関する続報を公表しました。攻撃者はアカウント情報を窃取し同社ネットワークへ不正侵入しており、外部専門機関によるフォレンジック調査の結果、一部取引先の従業員に関する個人情報(氏名・勤務先名・所属部署名)や、図面・仕様書・契約書・見積書などの取引関連資料が閲覧または取得された可能性があることが判明しています。対象情報はファイルごとに異なり、すべての対象者に全項目が含まれるわけではありません。現時点で本件に起因する二次被害は確認されていませんが、発生から続報公表まで3か月以上を要しており、フォレンジック調査の長期化が対象者への通知の遅れにつながる構造的な課題を示す事例です。

▶ 詳細記事:新エフエイコム、ランサムウェアによるサイバー攻撃で取引先情報漏えいの恐れ

オーミケンシ、3月のランサムウェア被害で最終報を公表

オーミケンシ株式会社は2026年7月、3月16日深夜に発生したランサムウェアによるとみられるシステム障害について、外部専門家によるデジタルフォレンジック調査およびダークウェブ調査が完了したとして最終報を公表しました。VPN経由での不正アクセスと外部クラウドストレージへのデータ送信は確認された一方、送信された具体的なファイルの特定には至らず、攻撃者のリークサイト上でも期限経過後の実データ公開は確認されていないという、判断の難しい状況が続いています。4月の続報時点でランサムウェアグループ「The Gentlemen」による犯行声明が確認されており、同グループはマルタケ・興亜硝子など国内複数企業への攻撃を主張してきた経緯があります。基幹システムの停止は同社の有価証券報告書提出期限の延長申請にもつながっており、ランサムウェア被害が財務報告業務にまで波及する実例として参考になります。「実データの公開が確認されていない」ことは「漏洩していないことの確定」ではないという慎重な評価姿勢が、対外説明において重要です。

▶ 詳細記事:オーミケンシ、ランサムウェア被害の最終報を公表


まとめと対策のポイント

パッチ適用後の認証情報ローテーションを徹底する必要があります。 FortiBleedの事案が示すように、脆弱性そのものにパッチを適用しても、影響を受けた期間の認証情報を変更していなければ、ランサムウェアグループによる悪用リスクは残り続けます。VPN・ファイアウォール等の管理者認証情報は、インシデント公表後の一律リセットを標準対応とすべきです。

フォレンジック調査の長期化を前提とした対外説明の準備が求められます。 オーミケンシ・新エフエイコムの事案のように、発生から最終報・続報の公表まで3か月以上を要するケースが継続しています。調査の節目ごとに進捗を公表し、「確認されていない」ことと「否定された」ことの違いを明確に伝える説明姿勢が、対象者・取引先からの信頼維持につながります。

犯行声明とインシデント公表の因果関係を慎重に見極める必要があります。 ニチレイ・日本交通の事案のように、ランサムウェアグループの犯行声明が企業側の公式確認と一致しない、あるいは真偽が確認できないケースが継続しています。リークサイトの情報を鵜呑みにせず、被害企業側の公式発表を待って対応を判断する社内ルールの徹底が重要です。