8月は新規に発覚した事案と、過去に発生した事案の続報が同じ月に集中する形となりました。WonderGOO・WonderREX・新星堂などを運営するREXTでは複数店舗が休業に追い込まれ、9月に入ってRansomHouseが犯行声明を出しています。フェースグループやハンズホールディングス、ニチレイのように、6〜7月に発覚した事案の侵入経路や被害範囲が2か月近く経ってようやく確定するケースも目立ち、ランサムウェア対応がいかに長期戦になりやすいかを物語る一か月でした。コタやジェックスのように、暗号化・漏えいそのものより「一時的に閲覧可能な状態にあった」という表現で被害を説明する事案も複数あり、確定的な漏えいと閲覧可能性の違いをどう対外説明するかが各社共通の課題になっています。
2026年に発生した主要なランサムウェア被害を年間で確認したい方は「2026年 ランサムウェアの事例-国内・海外の被害を解説」をご覧ください。過去の代表的な被害事例を含めて確認したい方は「ランサムウェアの事例まとめ【最新版】」をご覧ください。
2026年8月 ランサムウェア被害インシデント一覧
| 公表日 | 組織・対象名 | 被害の概要 | 件数・特記事項 |
|---|---|---|---|
| 8/28 | アンビションDXホールディングス | ファイルサーバー不正アクセス第3報 | 437GB窃取の主張、情報漏えい確認 |
| 8/28 | T&K TOKA | 一部システムでランサムウェア被害を確認 | 情報流出の有無は調査中 |
| 8/28 | コロナ | 施工情報クラウドへの不正アクセス | MetaEncryptorが320GB保有主張、最大3.5万人 |
| 8/26 | 米ATF | 独立システムへのサイバー攻撃 | Qilin犯行声明、米政府機関が標的 |
| 8/26 | 日本スウェージロックFST | 3月事案の続報 | 従業員・取引先担当者の個人情報漏洩確定 |
| 8/25 | ハンズホールディングス | 6月事案第2報 | マイナンバー「閲覧のおそれ」 |
| 8/21 | コタ | 3月事案の続報 | 延べ10万9,147件+株主情報5万5,408件 |
| 8/21 | フェースグループ | 6月事案続報 | 侵入経路はVPN機器と判明 |
| 8/21 | シーイーシー | データセンター事案続報 | 侵入経路特定、8/5発生 |
| 8/19 | ジェックス | 2月事案続報 | 7万7,619件が一時閲覧可能な状態 |
| 8/17 | ロジックベイン | 2025年12月事案続報 | Qilinリークサイト掲載確認、約9.7万人 |
| 8/14 | ニチレイ | 7月事案第6報 | 国内グループ会社の従業員情報 |
| 8/10 | REXT | WonderGOO等で休業 | RansomHouseが後日犯行声明 |
| 8/4 | ニデック台湾子会社 | 6月事案第2報 | ダークウェブでファイル名リスト一部公開 |
新規発覚事案
REXT、WonderGOO・WonderREX・新星堂などで一部休業
REXT Holdings株式会社は8月10日、子会社であるREXT株式会社の社内ネットワークシステムでランサムウェアによる不正アクセス被害が発生していることを確認したと公表しました。同社が展開する家電量販店「WonderGOO」「WonderREX」やCD・書籍販売の「新星堂」などで、店舗によって一部休業やサービス制限が発生しています。9月に入ってからは、ランサムウェアグループRansomHouseがダークウェブのリークサイトにREXT Holdingsを掲載し、「暗号化済み」「Status: EVIDENCE」といった表示とともにデータのダウンロード導線を示していることをセキュリティ対策Labが独自に確認しています。ただしこの日付や状況は攻撃者側が事後的に整えている可能性もあり、REXT Holdingsが関連性を認めたものではありません。小売業では店舗のPOSやレジシステムがバックエンドと連動しているため、システム障害がそのまま店頭営業の停止に直結しやすく、代替オペレーションの準備状況が業務継続力を左右します。
▶ 詳細記事:REXTでランサムウェア被害、WonderGOO・WonderREX・新星堂などで一部休業やサービス制限
▶ 詳細記事:ランサムウェア グループ RansomHouse(ランサムハウス)がREXT Holdingsへのサイバー攻撃を主張 8月のランサムウェア被害との関連は公式未確認
アンビションDXホールディングス、437GB窃取の主張とともに情報漏えいを確認
株式会社アンビションDXホールディングスは8月28日、ファイルサーバーへの不正アクセスについて第3報を公表し、一部の情報資産で情報漏えいを確認したと明らかにしました。ランサムウェアグループは437GBのデータ窃取を主張しており、初報から3回にわたる続報を経てようやく漏えいの事実が確定した形です。第3報まで積み上げる形での情報開示は、被害範囲の特定にそれだけ時間を要したことの裏返しでもあります。
▶ 詳細記事:アンビションDXホールディングス、サイバー攻撃で情報漏えいを確認
T&K TOKA、一部業務を停止しランサムウェア被害を確認
印刷インキや合成樹脂を製造・販売する株式会社T&K TOKAは8月28日、一部システムへの不正アクセスでランサムウェアによる被害を確認したと公表しました。企業側が自らランサムウェアと明言している点は、攻撃者の犯行声明のみに依拠した情報とは性質が異なります。被害拡大を防ぐ措置と復旧作業を並行して進めており、警察とも連携しながら原因と影響範囲を調べている段階です。侵入経路や情報流出の有無はまだ公表されておらず、続報が待たれます。
▶ 詳細記事:T&K TOKA、ランサムウェアの被害で一部業務を停止
コロナ、施工情報クラウドへの不正アクセスでMetaEncryptorが320GB保有を主張
住宅設備機器メーカーの株式会社コロナは8月28日、施工情報を管理する外部クラウドサービスへの第三者による不正アクセスを公表しました。事案の把握自体は8月24日で、対象クラウドの全ユーザーアカウントを無効化・再設定する対応を取っています。最大3万5,000名分の氏名・住所・施工関連資料が漏えいした可能性があり、ランサムウェアグループMetaEncryptorは約320GBのデータを保有していると主張し、リークサイト上には28.18GB相当のZIPファイルが掲載されているように見えます。ただしコロナ側はこの攻撃者への帰属を確認しておらず、ランサムウェア感染や暗号化、身代金要求の有無についても公表していません。自社が管理するオンプレミス環境ではなく外部クラウドサービスが起点になっている点は、委託先・SaaS事業者選定時のセキュリティ評価がそのまま自社の情報漏洩リスクに直結することを示しています。
▶ 詳細記事:コロナのクラウド環境に不正アクセス 最大3万5,000名の個人情報漏洩の恐れ
シーイーシー、データセンターへのランサムウェア侵入経路を特定
株式会社シーイーシーは8月21日、東京第二データセンターで発生したランサムウェア攻撃について、侵入経路と種別を特定したと公表しました。障害の発生は8月5日で、8月7日までの調査でランサムウェア攻撃であることが確定しています。セキュリティ上の理由から具体的なランサムウェア名や侵入経路の詳細は明らかにしていませんが、当該経路の遮断はすでに完了し、影響を受けたサービスは別環境で復旧済みです。8月21日時点で新たなサービス停止や二次被害は発生しておらず、顧客システムや個人情報の流出も確認されていません。データセンター事業者自身が被害を受けた場合、そこにホスティングされている顧客企業のサービス継続性にも波及するため、対応スピードの速さが評価されるポイントになります。
▶ 詳細記事:シーイーシー、データセンターへのランサムウェア侵入経路と種別を特定
米ATF、独立システムへのサイバー攻撃でQilinが犯行声明
米国のアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)は8月26日、独立して稼働するシステムに影響するサイバー攻撃を公表しました。司法省の上級当局者はこれを連邦政府のガイドラインに基づく「major incident」に指定しています。同日、ランサムウェアグループQilinがリークサイトにATFを「Government」カテゴリで掲載し犯行を主張しましたが、窃取データの量や内容、サンプルは示されていません。ATFエンタープライズネットワークやeFormsなど他システムへの影響を示す兆候はないと説明されており、法執行機関という性質上、侵入経路や影響範囲の開示に他業種よりも慎重な姿勢がうかがえます。国内事案ではありませんが、ランサムウェアグループが政府機関そのものを標的にする動きとして注視すべき事案です。
▶ 詳細記事:米ATF、独立システムで「major incident」へサイバー攻撃、ランサムウェアグループQilinが犯行声明
過去事案の続報・確定
コタ、延べ10万9,147件の個人情報と株主情報5万5,408件が閲覧の恐れ
コタ株式会社は8月20日、3月27日に発生したランサムウェア被害について、外部専門家による調査結果を踏まえた続報を公表しました。発端は社内PC端末の動作不良で、調査を進めるうちに一部サーバーやPC端末がランサムウェアに感染しデータが暗号化されていたことが判明しています。8月20日時点で個人情報の漏えいやその他情報の不正利用は確認されていないものの、第三者による閲覧の可能性を完全には否定できないとして、法令に従い対象者への通知を実施するとしています。対象はクレジットカード情報を除く個人情報延べ10万9,147件、株主情報5万5,408件です。「漏えいの確認」ではなく「閲覧可能性の否定できなさ」を理由に通知義務を果たすという判断は、確証がない段階でも保守的に対応するという姿勢の表れといえます。
▶ 詳細記事:コタ、ランサムウェアの被害で延べ10万9,147件の個人情報と株主情報5万5,408件など外部から閲覧の恐れ
フェースグループ、侵入経路はVPN機器と判明
フェースグループは8月21日、6月に発生したランサムウェア攻撃について外部専門機関による調査結果と再発防止策を公表しました。最初の侵入は6月18日22時46分頃で、原因はVPN機器だったことが特定されています。顧客のID・パスワードを含む個人情報の流出については否定できないとされ、6月の第一報・第二報時点では「被害の可能性」という表現にとどまっていた案件が、2か月かけて技術的な原因までようやく確定した格好です。VPN機器は依然としてランサムウェア攻撃の主要な侵入経路であり続けており、ファームウェアの更新状況とアクセスログの点検を定期的に行っているかどうかが、同種被害を防ぐ分かれ目になります。
▶ 詳細記事:フェースグループ、ランサムウェアの侵入経路はVPN機器
ハンズホールディングス、マイナンバーは「閲覧のおそれ」
ハンズホールディングス株式会社は8月25日、6月に発生した社内システムへの不正アクセスについて第2報を公表し、外部からの不正アクセスとランサムウェアによる侵害が発生していたことを明らかにしました。当初は感染の疑いがあるサーバー・ユーザーPCを外部から遮断する初動対応にとどまっていましたが、今回の続報で従業員等の個人情報漏えいの恐れが明らかになっています。特徴的なのは、マイナンバーについて「漏えい」ではなく「閲覧のおそれ」という表現が使われている点で、暗号化されたデータへのアクセス痕跡はあるものの、実際に内容を読み取られたかどうかまでは特定できていない状況を反映しているとみられます。
▶ 詳細記事:ハンズホールディングス、6月のランサムウェアによるサイバー攻撃により従業員等の個人情報漏えいの恐れ
ロジックベイン、Qilinのリークサイトに掲載を確認
株式会社ロジックベインは8月17日、2025年12月に発覚したランサムウェア攻撃の第4報・続報を公表しました。外部専門機関による継続調査の結果、保有していた個人情報の一部がダークウェブ上のリークサイトに掲載されていることを確認しています。対象は約9万7,338名で、うち1万7,559名分についてはリークサイトでの公開そのものを確認済みです。クレジットカード情報やマイナンバーが含まれていた事実はないとしつつ、個人情報保護委員会への複数回の報告と警察への相談、対象者への個別通知を順次進めています。発覚から8か月以上が経過してようやく漏えいの事実確認に至っており、リークサイトへの掲載有無の監視を含む長期的なフォローアップ体制がいかに重要かを示す事例です。
▶ 詳細記事:ロジックベイン、ランサムウェアによるサイバー攻撃で約9.7万人の個人情報漏洩の恐れ
ニチレイ、国内グループ会社の従業員情報にも漏えいの恐れ
株式会社ニチレイは8月14日、7月13日に発生したサイバー攻撃によるシステム障害について第6報を公表しました。攻撃を受けたサーバーの一部に国内グループ会社の従業員情報が保管されており、その一部について漏えいのおそれがあることを確認しています。取引先約5,000社への業務影響という形で表面化した事案が、1か月以上を経て今度は自社グループの従業員データという別の側面を見せた格好です。取引先向けの業務復旧と、個人情報漏洩の調査・通知という2つの対応トラックが、時間差を伴いながら並行して進んでいることがうかがえます。
▶ 詳細記事:ニチレイグループへのサイバー攻撃まとめ
ニデック台湾子会社、ダークウェブでファイル名リストの一部公開を確認
ニデック株式会社は8月4日、6月24日に第一報を公表していた台湾子会社ニデックCCIへのランサムウェア被害について第2報を公表しました。外部専門機関によるフォレンジック調査では、データの外部流出を示す明確な技術的証拠は現時点で確認されていない一方、ダークウェブ上でファイル名リストの一部公開が確認されたことを受け、情報流出の可能性は否定できないと判断を改めています。「ログ上の証拠はないが、リークサイト上の状況証拠はある」という、判断が割れやすい状態を正直に開示している点が本件の特徴です。
▶ 詳細記事:ニデック台湾子会社のランサムウェア被害、情報流出の可能性は否定できずと判断
日本スウェージロックFST、従業員や取引先担当者が対象に
日本スウェージロックFST株式会社(スウェージロック・ジャパン)は8月26日、3月10日に発生した不正アクセス・ランサムウェア攻撃について、外部専門事業者によるデータフォレンジックと対象情報の特定作業が完了したと公表しました。一部の個人情報が漏えいした、または漏えいしたおそれがあることが判明し、対象は従業員や取引先担当者です。3月の発生から半年近くを経ての確定であり、フォレンジック調査と対象情報の特定作業がそれだけ時間のかかるプロセスであることを改めて示しています。
▶ 詳細記事:日本スウェージロックFST、3月に発生したランサムウェアの被害で個人情報漏洩の恐れ
ジェックス、7万7,619件が一時閲覧可能な状態だったと確認
ジェックス株式会社は8月19日、2月に発生したランサムウェア攻撃について、外部のセキュリティ専門機関による調査結果と再発防止策を公表しました。不正アクセスを受けたサーバーに保存されていた顧客の個人情報7万7,619件が、一時的に侵入者から閲覧可能な状態にあったことが判明しています。侵入経路やランサムウェアの種類といった技術的な詳細は公表されておらず、外部への流出や不正利用も確認されていません。「閲覧可能な状態にあった」という表現は、暗号化前提のランサムウェア攻撃であっても実際にデータが盗み出されたかどうかを技術的に完全には立証しきれない場合があることを示しています。
▶ 詳細記事:ジェックス、ランサムウェアによるサイバー攻撃で顧客情報7万7,619件などが一時閲覧可能に
まとめと対策のポイント
VPN機器やクラウド委託先など、自社の直接管理下にない経由点への警戒が引き続き必要です。 フェースグループの事案ではVPN機器、コロナの事案では外部クラウドサービスがそれぞれ侵入の起点になっています。自社が直接運用していない機器・サービスであっても、そこが攻撃の入口になり得るという前提で、委託先も含めたセキュリティ評価を行う必要があります。
「漏えいの確認」と「閲覧可能性の否定できなさ」を区別した通知判断が定着しつつあります。 コタやジェックスの事案のように、実際の漏えいが確認されていなくても、閲覧された可能性を完全には否定できない段階で対象者への通知に踏み切るケースが増えています。確証を待たず保守的に通知する姿勢は、事後の信頼回復という観点でも有効な選択です。
発覚から確定までの期間を前提としたステークホルダー対応が求められます。 ロジックベインは発覚から8か月以上、日本スウェージロックFSTは半年近くを経て、ようやく個人情報漏洩の事実が確定しています。フォレンジック調査やダークウェブ監視には相応の時間がかかることを踏まえ、確定前の段階でも定期的な状況報告を行うなど、対象者・取引先との継続的なコミュニケーションを設計しておくことが重要です。








