ソニー生命保険は2026年9月11日、営業社員や元営業社員、専属代理店による金銭に関する不適切行為を受けて進めている全顧客確認の途中経過を公表しました。
今回新たに、元営業社員2名が顧客6名から計約2,190万円を詐取していたことが判明しました。2026年8月4日に公表した別の元営業社員についても調査範囲が広がり、同様の手口で顧客13名から約3,300万円を受け取っていたことが確認されています。
これらを含め、保険業務に関連する金銭詐取は累計で元営業社員4名、顧客21名、約5,640万円となりました。
さらに、保険業務そのものには直接関係しない投資話や顧客からの借り入れといった不適切な金銭授受についても、累計で営業社員・元営業社員6名、顧客17名、約1億2,420万円が確認されています。
ソニー生命は2026年4月から、営業社員と専属代理店が担当する約280万人の顧客を対象に契約内容や金銭のやり取りを確認しています。金融庁は4月に保険業法第128条に基づく報告徴求命令を出しており、9月11日の会社発表では、さらに同法第129条に基づく立入検査の通知を受けたことも明らかになりました。
ソニー生命の金銭不祥事のサマリー
- ソニー生命は9月11日、全顧客を対象に進めている「お客さま確認」の途中経過を公表しました。
- 新たに元営業社員2名が顧客6名から計約2,190万円を詐取していたことが判明しました。
- 2026年8月4日に公表済みの元営業社員1名についても、調査の結果、顧客13名から約3,300万円を受け取っていたことが分かりました。
- 保険業務に関連する金銭詐取の累計は、元営業社員4名、顧客21名、約5,640万円です。
- 保険業務に関わらない投資話や金銭借り入れなどの不適切な金銭授受は、累計で営業社員・元営業社員6名、顧客17名、約1億2,420万円です。
- 両区分の受領額を合計すると約1億8,060万円ですが、会社は「保険業務に関連する詐取」と「保険業務外の不適切な金銭授受」を別区分で開示しています。
- 調査対象は約280万人で、営業社員担当が約271万人、専属代理店担当が約9万人です。
- ソニー生命は調査を2026年11月末までに終える予定で、12月中旬を目途に結果と再発防止策を公表します。
- 金融庁は4月30日に報告徴求命令を出し、現在は保険業法第129条に基づく立入検査の通知も行っています。
- ソニー生命は、営業担当者と顧客の関係が特定担当者だけに依存する「密室化」を不正リスクの一つとして挙げ、本社から顧客へ直接連絡する仕組みを強化しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最新公表日 | 2026年9月11日 |
| 調査対象 | 約280万人 |
| 保険業務に関連する金銭詐取 | 元営業社員4名、顧客21名、約5,640万円 |
| 9月公表で新たに判明した詐取 | 元営業社員2名、顧客6名、約2,190万円 |
| 8月公表事案の追加判明 | 元営業社員1名、顧客13名、約3,300万円 |
| 保険業務外の不適切な金銭授受 | 営業社員・元営業社員6名、顧客17名、約1億2,420万円 |
| 金融庁対応 | 4月に報告徴求命令、9月時点で立入検査通知 |
| 調査完了予定 | 2026年11月末 |
| 次回公表予定 | 2026年12月中旬 |
元営業社員2名による6人・約2,190万円の詐取が新たに判明
9月11日の公表で新たに確認された保険業務に関連する詐取は2件です。
1件目は、千葉ライフプランナーセンター第5支社に所属していた50代の元営業社員によるものです。
発生時期は2021年6月から2023年10月で、顧客5名から約920万円を受け取っていました。
元営業社員は、ソニー生命の保険契約に関する面談などの際、同社が取り扱っていない投資や運用を名目として金銭を預かっていました。しかし、ソニー生命によると、当初から投資・運用に充てる意思はなく、実際には私的な用途に使用していました。
2件目は、姫路ライフプランナーセンター第2支社に所属していた40代の元営業社員です。
2023年4月から2024年11月にかけ、顧客に「別の商品に入れ替える」と説明してソニー生命の保険契約を解約させ、支払われた解約返戻金の一部を原資とする約1,270万円を受け取り、私的に使用していました。
この元営業社員については、同様の手口でほかの複数顧客からも金銭を詐取していた疑いがあり、9月11日時点で調査が続いています。
「未公開株に投資できる」とした8月公表事案は13人・約3,300万円まで拡大
9月11日の公表では、8月4日に公表された事案についても被害規模が拡大しました。
8月時点では、千葉ライフプランナーセンター第5支社に所属していた50代の元営業社員が、顧客1名から100万円を詐取した事案として公表されていました。
元営業社員は、ソニーフィナンシャルグループの持株会を利用すれば未公開株へ投資できると説明し、顧客にソニー生命の保険契約を解約させ、解約返戻金の一部を受け取っていました。
ソニー生命は当時、持株会は社員向けの福利厚生制度で、社員以外は加入できず、未公開株の取り扱いもないと説明しています。
その後の調査で、同じ元営業社員が顧客13名から約3,300万円を受け取っていたことが判明しました。
朝日新聞は9月11日の公表について、今回明らかになった元営業社員3名に関係する規模を顧客19名、計5,490万円と報じています。
一方、ソニー生命の最新の公式集計では、すでに公表済みの別事案も含め、保険業務に関連する金銭詐取の累計を元営業社員4名、顧客21名、約5,640万円としています。
記事上は、この累計値と9月公表分を分けて見る必要があります。
正規の解約返戻金を顧客から受け取る手口
今回確認された複数の事案には、保険会社から金銭を直接不正送金するのではなく、顧客に正規の保険契約の解約や減額を行わせ、その後に解約返戻金などを受け取るという共通点があります。
8月4日に公表された別の事案でも、元営業社員が「投資・運用」を名目として保険契約の減額を促し、解約返戻金を原資とする50万円を受け取っていました。
会社側から顧客への解約返戻金の支払い自体は正規の契約手続きです。
その後、担当者が顧客との信頼関係を利用して「別の商品への入れ替え」「未公開株への投資」「外部での運用」などと説明し、顧客から金銭を受け取っています。
この構造では、第三者口座への直接送金を禁止するといった会社側の取引統制だけでは不正を検知できない場合があります。
ソニー生命が9月の公表で、営業活動や顧客対応が特定の担当者だけに依存することで生じる「属人的かつ閉鎖的な関係」をリスクとして挙げているのは、この問題と重なります。
保険業務外の金銭授受は累計約1億2,420万円
全顧客調査では、保険契約を利用した詐取以外の不適切な金銭授受も確認されています。
9月11日時点で、投資やもうけ話を顧客へ持ち掛けて金銭を受け取った行為や、顧客から個人的に金銭を借りた行為について、営業社員・元営業社員6名が顧客17名から約1億2,420万円を受け取っていました。
9月公表で新たに判明した分は、2名、顧客3名、約550万円です。
保険業務に関連する詐取約5,640万円と、保険業務外の不適切な金銭授受約1億2,420万円を受領額ベースで合計すると約1億8,060万円になります。
ただし、後者には「金銭の借り入れ」も含まれるため、約1億8,060万円すべてを「詐取被害額」と表現するのは適切ではありません。
また、一部の営業社員は両区分に重複しているため、顧客数や関係社員数も単純には合算できません。
約280万人の全顧客調査で被害が追加判明
ソニー生命が大規模な顧客確認を始めたのは2026年4月です。
1月には専属代理店の保険募集人による不正事案が公表され、3月には元営業社員による顧客との個人的な金銭貸借が明らかになりました。
4月24日時点では、約30名の顧客から金銭に関する不適切行為が疑われる申し出が寄せられていました。
これを受け、ソニー生命は営業社員と専属代理店が担当するすべての顧客について、契約状況や金銭の受け渡しに不審な点がないかを確認する方針を決定しました。
9月11日時点の対象は約280万人です。
その内訳は、営業社員が担当する約271万人と、専属代理店が担当する約9万人です。
会社は5月から7月に約286万通のメール、4月から8月に約166万通の郵送通知を送り、5月から8月には約30万人へ電話をかけています。
連絡がつかない顧客への確認を続け、全体の確認完了は11月末を見込んでいます。
専属代理店7社では無届けの投資商品紹介も判明
専属代理店が担当する約9万人については、ソニー生命からの案内と申し出に対する調査がおおむね完了しました。
9月11日時点では、専属代理店について保険業務上の金銭不祥事や、顧客との不適切な金銭授受は確認されていません。
一方で、7つの専属代理店がソニー生命へ事前に届け出ることなく、同社が取り扱っていない投資商品や取扱業者を顧客に紹介していたことが判明しました。
ソニー生命は4月24日の段階で専属代理店制度を廃止する方針を決めています。
不正な金銭受領が確認されたかどうかとは別に、営業担当者が会社の管理外の商品や事業者を顧客へ紹介できる状態そのものが管理対象になっています。
金融庁は報告徴求命令から立入検査へ
行政対応も一段進んでいます。
ソニー生命は4月30日、金融庁から保険業法第128条第1項に基づく報告徴求命令を受けたと公表しました。
対象は、一連の不正事案への会社の対応と、進めている顧客確認です。
さらに9月11日の公表では、金融庁から保険業法第129条第1項に基づく立入検査の通知を受領したことを明らかにしました。
立入検査の通知を受けたことは、行政処分が確定したことを意味しません。
現段階では、金融庁が会社の内部管理、営業管理、顧客保護、不正の把握と対応などを検証する段階です。
生命保険業界全体でも営業職員のコンプライアンス管理を強化
営業職員による不適切な金銭取り扱いは、ソニー生命だけの管理課題ではありません。
生命保険協会は2023年から「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」を公表し、2026年4月にも内容を更新しています。
同協会の2026年SR報告書では、「着眼点」の公表後も不適正事象が根絶されていないとの課題認識を示し、営業職員チャネルを持つ会員各社に対して、経営トップの主導のもとで管理態勢を改めて点検することを申し合わせたとしています。
ソニー生命も6月30日、自社の営業職員チャネルについて「着眼点」に基づく取り組み状況を公表しています。
今回の追加被害は、制度や規程を整えるだけでなく、実際の顧客接点で不正を早期に把握できるかが問われている状況で判明しました。
ソニー生命は「顧客と営業社員の密室化」を防ぐ方針
ソニー生命は、金銭不祥事を防ぐうえで、担当営業社員と顧客だけで長期間関係が完結する状態をリスクとして挙げています。
会社は2017年9月以降、営業担当者が顧客から現金や小切手を預かる取り扱いを廃止しています。
また、社員個人や募集人名義の口座への振り込みを案内することも認めていません。
2024年11月からは、営業社員が案内できる商品・サービスと、案内できないものを顧客へ明示する「権限明示」を申し込み時に必須としています。
今後はさらに、本社から顧客へ直接連絡し、契約内容、顧客の意向、申し込み手続きが適切だったかを確認する仕組みを強化します。
今回の全顧客調査自体も、担当営業社員を介さず、本社と顧客が直接つながる接点を作る取り組みの一つです。
内部監査・コンプライアンス部門が確認したいポイント
今回の手口では、顧客との面談、保険契約の解約・減額、解約返戻金の支払い、担当者による投資話という複数の行動が組み合わされています。
単一の取引だけを見ると正規の手続きに見える場合があります。
金融機関や顧客資産を扱う企業では、次のような組み合わせを横断して確認できる状態にする必要があります。
- 契約の解約・減額が短期間に集中していないか
- 解約後に同じ担当者の顧客から苦情や問い合わせが発生していないか
- 社員が会社の取扱外の商品や投資先を顧客へ紹介していないか
- 社員個人との金銭貸借や私的口座への振り込みがないか
- 一人の担当者が長期間、顧客との連絡を独占していないか
- 本社や管理部門が担当者を介さず顧客へ確認できる経路があるか
ソニー生命の全顧客確認は11月末まで続く予定です。
9月11日時点でも、姫路の元営業社員については同様の手法による追加被害の疑いが残っています。会社は12月中旬を目途に、調査結果、再発防止策、顧客対応の状況を改めて公表する予定です。
過去に公表されたソニー生命元営業社員による顧客との大規模な金銭貸借については「ソニー生命元営業社員が顧客ら約100人から約22億円を個人的に借り入れし懲戒解雇」でも整理しています。
出典
- 不正事案の未然防止・早期発見に向けた弊社の取組進捗について(2026年8月末時点) – ソニー生命保険
- 弊社元営業社員による不正事案について – ソニー生命保険
- 不正事案の未然防止・早期発見に向けた弊社の取組進捗について – ソニー生命保険
- 不正事案の未然防止・早期発見に向けた弊社の取組について – ソニー生命保険
- 金融庁による報告徴求命令の受領について – ソニー生命保険
- 不正事案の未然防止・早期発見に向けた取組について – ソニー生命保険
- 詐欺等の金融犯罪にご注意ください – ソニー生命保険
- 営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点 – 生命保険協会
- SR報告書2026 – 生命保険協会
- ソニー生命で保険解約させる詐取 新たに顧客19人5490万円被害 – 朝日新聞








