ランサムウェア グループ「INC Ransom」の犯行声明サイトに、極東開発工業(Kyokuto Kaihatsu Kogyo)が2026年7月17日付で掲載されていたことが確認されました。
提供された犯行声明画面には「Kyokuto Kaihatsu Kogyo」の名称と企業概要が掲載されています。一方、画面上では窃取したとするデータの内容や容量、身代金要求額などは示されていません。
その約7週間後の9月8日、極東開発工業の100%子会社である日本トレクスでシステム障害が発生しました。
極東開発工業は当初、システム障害として公表しましたが、9月11日の第2報で「第三者による不正アクセス」が原因だったことを明らかにしています。日本トレクスではインターネットによる発注、代理店向け部品受注システム、顧客・取引先とのメール送受信を停止し、代替手段で業務を継続しています。
ただし、極東開発工業と日本トレクスは、9月の不正アクセスについてランサムウェア攻撃とは公表しておらず、7月のINC Ransomによる犯行主張との関連も明らかにしていません。
極東開発工業・日本トレクスを巡る事案のサマリー
- 2026年7月17日、INC Ransomの犯行声明サイトに「Kyokuto Kaihatsu Kogyo」が掲載されました。
- 提供された画面では企業名や売上規模などが掲載されていますが、窃取データの種類・容量や身代金要求額は表示されていません。
- 極東開発工業が7月のINC Ransomの主張を認めた公式発表は確認されていません。
- 9月8日、極東開発工業の100%子会社である日本トレクスでシステム障害が発生しました。
- 9月11日、極東開発工業と日本トレクスは、障害の原因が第三者による不正アクセスだったと公表しました。
- 日本トレクスではインターネット発注、代理店向け部品受注システム、顧客・取引先とのメール送受信を停止しています。
- 代替手段によって業務自体は継続しています。
- 9月11日時点で、個人情報や顧客データの外部流出は確認されていません。
- 復旧時期は公表されていません。
- 日本トレクスの不正アクセスがランサムウェアによるものか、INC Ransomと関係するかについて公式発表はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| INC Ransom掲載日 | 2026年7月17日 |
| 犯行声明上の対象 | Kyokuto Kaihatsu Kogyo |
| 犯行声明で確認できる内容 | 企業名、企業概要など |
| データ窃取量・身代金 | 提供画像では記載なし |
| 日本トレクス障害発生日 | 2026年9月8日 |
| 原因 | 第三者による不正アクセス |
| 停止している業務 | インターネット発注、代理店向け部品受注、メール送受信 |
| 業務継続 | 代替手段で継続 |
| 情報流出 | 9月11日時点で確認されていません |
| 復旧時期 | 公表されていません |
| INC Ransomとの関連 | 公式確認なし |
7月17日、INC Ransomの犯行声明サイトに極東開発工業
提供されたINC Ransomの犯行声明画面では、7月17日付で「Kyokuto Kaihatsu Kogyo」が掲載されています。

画面には、極東開発工業についてダンプトラック、タンク車、ごみ収集車などの特装車を手掛けるメーカーであるとの説明と、「Revenue: 790.3M$」との表示があります。
一方、この画面だけでは、INC Ransomがどのシステムへ侵入したと主張しているのか、どのデータを取得したのか、暗号化を行ったのかといった具体的な被害内容までは分かりません。
ランサムウェア被害を追跡するRansomfeedにも、7月17日付で極東開発工業がINC Ransomの対象として記録されています。同サイトでは公開データについて「N/D」とされており、具体的なデータ公開内容は記録されていません。
犯行声明サイトへの掲載は攻撃者側の一方的な主張です。
極東開発工業の公式サイトでは、7月にINC Ransomによる攻撃やランサムウェア被害を認める公表は確認されていません。
9月8日、子会社の日本トレクスでシステム障害
約7週間後の9月8日、極東開発工業はグループ会社の日本トレクスでシステム障害が発生したと公表しました。
第一報では原因を明らかにせず、システム障害によってインターネットによる発注業務を停止していると説明していました。
この時点では、個人情報や顧客データなどの外部流出は確認されていないとしていました。
復旧に向けた調査と対応を進めているものの、9月8日時点では復旧の目途は立っていませんでした。
9月11日の第2報で「不正アクセス」と公表
極東開発工業は9月11日、第2報を公表し、日本トレクスのシステム障害が第三者による不正アクセスによって発生したことを明らかにしました。
日本トレクス自身も同日、同社が管理する情報システムに9月8日、不正アクセスが発生したと公表しています。
影響範囲も第一報から拡大しました。
停止しているのは、
- 日本トレクスからのインターネットによる発注業務
- 代理店からの部品受注システム
- 日本トレクスと顧客・取引先とのメール送受信
です。
部品受注はFAXなどの代替手段を使い、業務は継続しています。
9月11日時点でも個人情報や顧客データの外部流出は確認されていません。
極東開発工業は、連結業績への影響が見込まれる場合には適時開示するとしています。
7月のINC Ransom声明と9月の不正アクセスは現時点で結び付けられない
時系列だけを見ると、
「7月17日にINC Ransomが極東開発工業を掲載」
「9月8日に100%子会社の日本トレクスで不正アクセス」
と続いています。
しかし、現時点の公式情報だけでは、この2つを同じ攻撃キャンペーンとして扱う根拠はありません。
9月の日本トレクス事案について、極東開発工業は攻撃者名を公表していません。
ランサムウェア感染、データ暗号化、身代金要求についても説明していません。
INC Ransomによる7月の犯行声明が真正なものだったのか、日本トレクスへの侵入と技術的・組織的な関連があるのかも公表されていません。
グループ企業では個別法人だけでなく横断的な侵害調査が必要
今回のように親会社やグループ名が攻撃者の犯行声明に掲載され、その後グループ企業で不正アクセスが確認された場合、調査では一つの法人だけを見ると侵害範囲を捉えられない可能性があります。
グループ内で共通のID基盤、VPN、メール、クラウド、業務システム、保守アカウントを利用している場合、一つの認証情報や接続経路が複数社への足掛かりになるためです。
情報システム部門やCSIRTでは、少なくとも次を横断して確認します。
- 親会社と子会社で共通利用するID・認証基盤
- VPNやリモートアクセスの接続履歴
- グループ共通の管理者アカウント
- メールやクラウドの認証ログ
- 子会社間で共有しているファイルサーバーや業務システム
- 外部委託先・保守ベンダーの共通アカウント
- 数週間から数か月前まで遡った不審なログインや権限変更
攻撃者の犯行声明は、それだけで侵害を確定する証拠にはなりません。
一方、後からグループ内で不正アクセスが確認された場合には、過去の犯行声明を単なる未確認情報として切り離すのではなく、フォレンジック調査の対象期間やグループ横断のログ確認を広げる材料にはなります。
INC Ransomの活動や既知の攻撃手法については「ランサムウェアグループINC Ransomとは-米保健福祉省とMITRE ATT&CKが分析する実態」でも整理しています。
ランサムウェア被害全体の事例については「ランサムウェアの事例まとめ【最新版】国内・海外の重要被害を年別・業種別に解説」を参照してください。








