埼玉県警は2026年10月14日、生命保険での資産運用を装って顧客から現金約500万円をだまし取った疑いがあるとして、大樹生命保険の元営業職員の女性(66歳)を詐欺容疑で逮捕しました。読売新聞によると、県警は在職中に同様の手口で約20人から総額1億円以上を詐取した可能性も調べています。
大樹生命はこの事件につながる元職員による金銭詐取を2025年1月に公表し、同年3月の社内調査で被害者20人、被害総額約8,130万円を確認したと説明していました。会社が2025年に認定した約8,130万円と、**警察が2026年10月時点で捜査している「1億円以上」**は、発表主体と確認段階の異なる数字です。1億円以上の被害額が確定したとするものではありません。
大樹生命元社員の詐欺容疑・社内調査のサマリー
- 逮捕日:2026年10月14日
- 逮捕容疑:生命保険商品による運用などを装い、顧客から現金約500万円を詐取した疑い
- 被害を訴えた顧客:埼玉県吉川市の80歳代男性(逮捕容疑に関する報道)
- 警察の捜査範囲:元職員が約20人から総額1億円以上を詐取した可能性
- 2025年3月の大樹生命の社内調査:被害者20人、被害総額約8,130万円
- 会社が公表した不正行為の期間:2013年5月~2025年1月
- 手口:保険契約の減額・解約返戻金、積立金の引き出し、架空の優遇投資を悪用した金銭受領
- 会社側の当時の対応:被害者への弁済、支払・職員行動のモニタリング強化など
| 区分 | 金額・人数 | 情報の位置付け |
|---|---|---|
| 2026年10月14日の逮捕容疑 | 約500万円 | 一人の顧客に関する今回の容疑。裁判で有罪が確定した事実ではない |
| 2026年10月14日の警察の捜査 | 約20人・1億円以上 | 読売新聞が報じた警察の見立て。確定した被害額ではない |
| 2025年3月の会社調査結果 | 20人・約8,130万円 | 大樹生命が自社調査で確認・公表した数字 |
| 2025年1月の会社第一報 | 約751万円(うち約651万円は返済済みと当時説明) | 調査途中で公表した暫定的な数字 |
80歳代の顧客に保険の切り替えを勧誘、約500万円を詐取した疑い
読売新聞の10月14日付報道によると、逮捕容疑は2024年夏ごろの出来事です。元職員は埼玉県吉川市の80歳代男性に別の生命保険商品による資金運用を持ちかけ、既存の保険を解約して得る資金が必要であるかのように説明し、約500万円を受け取った疑いが持たれています。
報道では、捜査関係者の説明として領収書や口座の入出金状況などから被害を特定したと伝えています。また、元職員が顧客との関係維持のために謝礼金を支払っていた可能性や、任意の調べに顧客から預かった金を別の顧客や生活費に充てた旨を述べたことも報じられています。
これらは逮捕時点の報道に基づく捜査情報です。個別の詐欺容疑について、今後の捜査や司法手続きと区別して扱う必要があります。
2025年3月の公式調査では20人・約8,130万円、被害者へ弁済
大樹生命が2025年3月14日に公開した調査結果では、元職員は埼玉支社三郷営業部に在籍し、次の2種類の手口で顧客から金銭を受領していたと説明しています。
- 保険契約の減額(一部解約)を虚偽の説明で勧め、解約返戻金や積立金の引き出しによって顧客が得た資金を受け取る行為。
- 「お得意さま向け」などと称する実在しない投資を勧誘し、顧客から資金を受け取る行為。
受け取りには、元職員個人名義の銀行口座だけでなく、所属営業部の親睦会名義の口座も用いられたとしています。実在する保険手続きで生じる資金と架空の投資勧誘が組み合わされ、顧客が通常の契約変更・運用の一環と誤認しかねない構図でした。
同社が公表した経緯では、元職員は2024年11月に退職。2025年1月17日の第一報では、判明していた被害金額を約751万円(約651万円は当時返済済み)と説明していました。その後、本人への事情聴取と担当顧客への個別確認を進め、同年3月には20人・約8,130万円へ調査結果を更新しました。大樹生命は、被害者への被害額の弁済を実施したと公表しています。
今回報じられた「1億円以上」は、この過去の公式調査額を単純に訂正した確定値ではありません。警察による被害範囲の調査・認定状況を示すものであり、両者の差額が何に由来するのかは今回参照した公表情報だけでは特定できません。
なぜ長期間見抜けなかったのか――営業職員と顧客の資金移動が焦点
会社が調査対象とした不正行為の期間は2013年5月から2025年1月までの約12年間に及びます。今回の事案は外部からのサイバー攻撃ではなく、顧客から信頼される立場にある営業職員が保険手続きや投資勧誘を利用した金銭詐取の問題です。
2025年3月の大樹生命の再発防止策は、保険手続きに関連した顧客への支払いがあった際のモニタリング、顧客への注意喚起、職員の日常活動に関する異常・予兆情報の把握の3点を柱としていました。契約減額や解約返戻金が顧客の銀行口座へ支払われた後、営業職員が個人的に資金を受け取ると、保険会社の正規の保険料・保険金の処理記録だけでは資金の最終的な移動先を把握しにくい問題があります。
顧客からの相談が事件発覚につながったと読売新聞は報じています。営業上の信頼関係に依存せず、保険契約の変更理由や資金使途に不自然な点がないかを確認し、本人から独立した窓口へ直接相談できる体制が不正の早期発見につながります。
なお、実際にどの内部統制が機能せず、いつどのような警告を把握できたかについて、当該元職員の社内記録や監査結果が詳細に公開されているわけではありません。
大樹生命は2026年6月にも営業職員の管理強化を公表
大樹生命は2026年6月26日、生命保険協会が定める「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」を踏まえた取組状況を公表し、過去の元職員による金銭詐取事案にも言及しました。
同資料によると、営業職員が直接現金を受け取らない業務フローの整備や、金銭トラブルの予兆管理を実施しています。また、70歳以上の顧客の申込みでは親族の同席や複数の職員による説明などを社内ルールとし、2026年3月からは70歳以上の顧客について、支払いを伴う一部の手続きを営業職員が取り扱わず、顧客自身が行う運用へ変更したとしています。
生命保険協会も2026年4月17日、営業職員による重大な金銭詐取などの事案がなお発生しているとの問題意識から、会員各社へ管理態勢の再点検を促しました。個人の不正だけではなく、顧客保護、営業管理、内部監査を横断する問題として扱われています。
保険契約者が注意したい「現金預かり」「優遇投資」「個人口座」
大樹生命は公式サイトで、同社職員が顧客の現金・通帳・印鑑・カードを預かること、マイページのパスワードを尋ねること、個人名義の銀行口座への振り込みを求めること、顧客から投資目的の資金を預かることはないと明示しています。また、特定顧客だけが利用できる高利回りの商品を勧めることもないとしています。
契約者がとくに確認したいのは次の点です。
- 保険の解約や減額を勧められた際は、返戻金の金額だけでなく、失う保障や再加入条件を書面で確認する。
- 「顧客限定」「社員だけの運用」「高利回り保証」などを持ちかけられた場合は、その場で現金や振り込みに応じない。
- 振込先が職員個人・任意団体の名義になっていないか確認する。会社の正式な手続きは公式窓口へ照会する。
- 担当者から渡された電話番号だけを頼らず、保険会社の公式サイトや契約書にある窓口から確認する。
- 過去に担当者へ資金を預けた記憶がある場合は、振込明細、領収書、契約変更書類、メールやメッセージを保管して相談する。
大樹生命は今回と同種の事案について、専用フリーダイヤル 0120-112-887(平日9時~17時)を公式資料で案内しています。一般的な不審な案内については、お客さまサービスセンター 0120-318-766(平日9時~18時)でも受け付けています。窓口の最新案内は公式サイトで確認してください。
金融機関が確認したい内部不正対策と顧客保護
この事例から検討できるのは、営業職員の教育だけでは防止できない、顧客資金の流れと契約変更の監督です。金融機関のリスク管理・内部監査部門では、解約・減額後の短期間での再勧誘、高齢顧客への頻繁な資金移動の働きかけ、職員個人口座への送金に関する相談、営業部門内での苦情の滞留など、複数の兆候を組み合わせて把握できるか点検する余地があります。
顧客が不審な行為を知ったときに営業担当者を介さず相談できる受付経路や、社内通報を含む監督体制の実効性も確認対象です。特に親族の同席や複数職員による説明を要する手続きでは、形式的な記録だけでなく、実施の証跡を監査可能にすることが対応を検証するうえで役立ちます。
本件は不正アクセスや情報漏えいの事案ではありませんが、組織内部の権限・信頼関係が悪用されたことによる金銭被害という観点で、内部不正と企業のガバナンスを考える具体例です。
出典
- 大樹生命元社員、顧客から500万円をだまし取った疑いで逮捕(2026年10月14日)―読売新聞オンライン
- 当社元職員による金銭詐取について(2025年1月17日)―大樹生命保険
- 当社元職員による金銭詐取事案の調査結果について(2025年3月14日)―大樹生命保険
- 営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点を踏まえた当社取組状況について(2026年6月26日)―大樹生命保険
- 営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点の更新および公表について(2026年4月17日)―生命保険協会
- 詐欺等の金融犯罪にご注意ください ―大樹生命保険








