宮内庁侍従職の20代職員が「お手元金」360万円を着服-内部統制の甘さが露呈

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宮内庁侍従職の20代職員が「お手元金」360万円を着服-内部統制の甘さが露呈

2025年5月1日、宮内庁は天皇・皇后両陛下および長女の愛子さまの私的生活費である「お手元金」360万円を着服したとして、侍従職に所属する20代の職員を懲戒免職処分としたことを明らかにしました。皇室の私的資金が着服されるのは前例のない事態で、厳格であるべき内部統制の脆弱さが改めて問われる結果となりました。

事件の概要

問題の職員は、天皇・皇后両陛下と愛子さまの活動や生活を最も近くで支える「侍従職」に所属。2023年11月から2025年3月にかけて、当直勤務の際に皇居内の事務室から数万円単位で私的資金を持ち出す行為を繰り返していたといいます。

2025年3月、帳簿の残高と現金残高に不一致があることに職員が気づき、不正が発覚。本人は着服を認め、「お金に困り、生活費などに充てた」と話しており、すでに全額を弁済しているとのことです。

管理不備と責任

宮内庁の発表によれば、現金と帳簿の残高確認が不十分だったことも事件の長期化を招いた一因であり、現金管理体制に重大な不備があったことを認めています

このため、当該職員の上司にあたる40代の課長補佐級職員には減給1カ月の懲戒処分が下されました。

「お手元金」とは何か

皇室における「お手元金」は、「内廷費(ないていひ)」と呼ばれる私的支出のための予算で、皇室経済法に基づき年間3億2400万円が支給されています。支出対象には以下が含まれます:

  • 私的職員の人件費

  • 宮中祭祀の費用

  • 皇族の私的生活費

  • 被災地などへの見舞金 など

宮内庁のコメントと今後の対応

宮内庁長官は「皇室のご活動を支える宮内庁職員としてあるまじき行為であり、誠に遺憾。皇室のみなさまがたに対して大変申し訳なく思っております」と表明。

今回の処分はすでに両陛下に報告されており、宮内庁は2025年4月28日付で皇宮警察に告発しています。今後は警察による捜査が進められる見通しです。

内部統制の観点から見た本件の示唆

今回の事件は、以下の観点で重要な教訓を含んでいます。

  • 小規模な現金管理であっても不正リスクは常に存在する

  • 日常的なダブルチェック・帳簿突合が機能していなかった

  • 物理的な現金管理と心理的な抑止力の両面が欠落

民間企業においても「少額だから」「信頼できる人だから」という油断が大きな不正を招く例は少なくありません。システム化(キャッシュレス化)やEDRの導入だけでは防げない、“人”を軸とした統制の限界が浮き彫りになった事例とも言えます。

一部参照

https://www.fnn.jp/articles/-/866005