JPCERT/CC、MetabaseのSQLインジェクション 脆弱性 CVE-2026-72898に注意喚起 ゼロデイ悪用とPoC公開を確認

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JPCERT/CC、MetabaseのSQLインジェクション 脆弱性 CVE-2026-72898に注意喚起 ゼロデイ悪用とPoC公開を確認

JPCERT/CCは2026年8月14日、オープンソースのBI・データ可視化ツール「Metabase」に存在するSQLインジェクション脆弱性CVE-2026-72898について注意喚起を公開しました。

本脆弱性は認証を必要とせず、遠隔の第三者が細工したリクエストを送信することで、Metabaseのアプリケーションデータベースに対して不正なSQLクエリを実行できる問題です。悪用に成功するとMetabaseの管理者権限を取得し、接続先データベースの認証情報や、Metabase経由で参照可能なデータへアクセスされる可能性があります。

Metabaseは2026年8月6日、Metabase Cloudが未知の脆弱性を悪用した攻撃を受けたことを公表しました。その後、CVE-2026-72898が採番され、JPCERT/CCによると海外では複数組織が被害を公表しており、8月2日にはすでに脆弱性が悪用されていたとする情報も確認されています。

セキュリティ対策Labでは8月10日、CVEが採番される前の段階でMetabaseにゼロデイ 脆弱性、Framework・Tally等の顧客データが窃取されるとして本件を取り上げています。

今回のJPCERT/CCの注意喚起では、CVE番号に加え、影響バージョン、侵害時に確認されるアクセスパターン、侵害が疑われる場合に確認・変更すべき認証情報まで具体的に示されました。PoCとみられる情報も公開されているため、セルフホスト型Metabaseを利用している組織は更新だけでなく、過去の侵害有無の確認も必要です。

Metabase CVE-2026-72898のサマリー

  • JPCERT/CCは2026年8月14日、MetabaseのSQLインジェクション脆弱性CVE-2026-72898について注意喚起を公開しました。
  • Metabaseは8月6日、Metabase Cloudに対して未知の脆弱性を悪用した攻撃が発生したことを公表しています。
  • CVE-2026-72898は、認証を必要とせずリモートから悪用可能なSQLインジェクション脆弱性です。
  • GitHub Security Advisoryでは深刻度Critical、CVSS v3.1は10.0と評価されています。
  • 攻撃者はMetabaseのアプリケーションデータベースへ任意のSQLを実行し、管理者権限を取得する可能性があります。
  • 管理者権限を取得されると、Metabaseの設定変更、接続先データベースの認証情報取得、Metabaseから参照可能なデータの閲覧・持ち出しにつながる恐れがあります。
  • JPCERT/CCによると、海外では複数組織が被害を公表し、2026年8月2日には本脆弱性が悪用されていたとする情報も確認されています。
  • Wizは8月10日時点で、公開PoCがオープンソースとして確認されていると報告しています。
  • Metabase 58系から63系の複数バージョンが影響を受けます。
  • 58系より前はCVE-2026-72898の影響を受けないとMetabaseは説明しています。
  • Metabase Cloudはすでに修正済みです。
  • 直ちに更新できない場合は、/api/session/reset_passwordへのアクセス遮断が一時的な回避策です。
  • 同エンドポイントをインターネットへ公開していた場合は、アップデートだけでなく侵害調査が推奨されています。
  • 同時期には別のSQLインジェクション脆弱性CVE-2026-72899も公表されています。
項目 内容
CVE番号 CVE-2026-72898
対象製品 Metabase
脆弱性の種別 SQLインジェクション
深刻度 Critical
CVSS v3.1 10.0(GitHub Security Advisory)
攻撃条件 ネットワーク経由、認証不要、ユーザー操作不要
悪用対象 Metabaseアプリケーションデータベース
主な影響 管理者権限取得、設定変更、接続先DB認証情報の取得、データ閲覧・持ち出し
実際の悪用 Metabaseが確認済み
ゼロデイ悪用 確認済み
PoC JPCERT/CCとWizが公開情報を確認
一時的な回避策 /api/session/reset_passwordへのアクセス遮断
Metabase Cloud 対策済み
JPCERT/CC注意喚起 2026年8月14日

CVE-2026-72898は認証不要で管理者権限取得につながるSQLインジェクション

CVE-2026-72898は、Metabaseのパスワードリセット処理に関係するエンドポイントを起点としたSQLインジェクション脆弱性です。

Metabaseの公式アドバイザリによると、リモートの未認証攻撃者がMetabaseのアプリケーションデータベースに対して任意のSQLを実行できる可能性があります。

脆弱性の悪用によってMetabaseの管理者権限を取得された場合、攻撃者はMetabase内部だけでなく、接続されているデータベースへ影響を広げる可能性があります。

Metabaseは、攻撃者が管理者権限を得た場合に想定される影響として、アプリケーション設定の変更、接続先データベースの保存済み認証情報の取得、接続を通じてアクセス可能なデータの閲覧やエクスポートを挙げています。

BIツールは複数の業務データベースやデータウェアハウスへ接続して利用されることが多いため、Metabase自体に保存されているデータだけを影響範囲として考えることはできません。

8月6日にMetabase Cloudへのゼロデイ攻撃を公表

Metabaseは2026年8月6日、Metabase Cloudが未知の脆弱性を利用した攻撃を受けたことを公表しました。

同社は攻撃を確認した後、悪用されたエンドポイントを遮断し、脆弱性を特定して修正したと説明しています。

Metabase Cloudを利用している顧客については、Metabase側ですでにアップデートと対策を実施済みです。

一方、セルフホスト型Metabaseについては利用組織自身で更新する必要があります。

Metabaseは本件を「0-day」の脆弱性を悪用した攻撃として説明しており、修正版公開前に実際の攻撃が成立していたことになります。

セキュリティ対策Labでは、CVE採番前の8月10日にMetabaseにゼロデイ 脆弱性、Framework・Tally等の顧客データが窃取されるとして、Metabase Cloudへの攻撃と海外企業への影響を記事化しています。

当時はCVE番号が公表されていませんでしたが、その後CVE-2026-72898が採番され、今回JPCERT/CCも注意喚起を公開しました。

Framework・Tally・n8n・Kilo Codeなどが影響を公表

Wizは8月10日の調査記事で、本件に関連してFramework、Tally、n8n、Kilo Code(Anaconda)などが影響を公表したとしています。

Metabaseへの攻撃は、BIツールそのものの管理者権限を奪うだけでなく、そこから接続された業務データへアクセスを広げられる点が特徴です。

セキュリティ対策Labの既報でも、FrameworkやTallyなどで顧客データへの影響が確認された事例を取り上げました。

JPCERT/CCも、海外で複数組織がCVE-2026-72898を悪用した被害を公表していると説明しています。

ただし、各組織で実際に取得されたデータの種類や侵害範囲は異なるため、「Metabaseを利用していたすべての組織でデータ漏洩が発生した」と判断することはできません。

8月2日時点ですでに悪用、公開PoCも確認

JPCERT/CCは、2026年8月2日にCVE-2026-72898が悪用されていたとする公開情報を確認しています。

Metabaseが公式にセキュリティ更新を公開した8月6日より前であり、本脆弱性がゼロデイとして利用されていたことと整合します。

さらに、JPCERT/CCはCVE-2026-72898を悪用するPoCとみられる情報が公開されていることも確認しています。

Wizも8月10日正午(UTC)時点で、公開PoCエクスプロイトがオープンソースとして確認されたと報告しました。

Metabase自身による実悪用確認に加えてPoCも公開されているため、脆弱なセルフホスト環境をインターネットへ公開している組織では、今後スキャンや攻撃が増える可能性があります。

Metabaseの影響バージョンと修正版

JPCERT/CCが示している影響バージョンと修正版は以下の通りです。

系列 影響を受けるバージョン 修正版
63系 x.63.5より前 x.63.5以降
62系 x.62.9より前 x.62.9以降
61系 x.61.11より前 x.61.11以降
60系 x.60.17より前 x.60.17以降
59系 x.59.21より前 x.59.21以降
58系 x.58.24より前 x.58.24以降

Metabaseは、58系より前のバージョンについてはCVE-2026-72898の影響を受けないと説明しています。

ただし、古いMetabaseには本件とは別の脆弱性が存在する可能性があるため、58系より前であることを理由に古いバージョンを継続利用することは推奨されません。

Metabase Cloudについては、Metabase側ですでに本脆弱性への対策が完了しています。

すぐ更新できない場合はreset_passwordエンドポイントを遮断

Metabaseは、直ちに修正版へアップデートできない環境向けの一時的な回避策として、次のエンドポイントへのアクセスを遮断するよう案内しています。

/api/session/reset_password

リバースプロキシ、WAF、ロードバランサー、ファイアウォールなどで外部から同エンドポイントへアクセスできない状態にします。

ただし、これはアップデートまでの一時的な対策です。

CVE-2026-72898にはすでに実際の悪用が確認されているため、エンドポイントを遮断しただけで過去の侵害可能性がなくなるわけではありません。

インターネットへ公開していた場合は侵害有無を確認

JPCERT/CCとMetabaseは、/api/session/reset_passwordがインターネットからアクセス可能だった環境では、修正版へのアップデートだけで対応を終えず、侵害有無を確認するよう案内しています。

Metabaseが確認した攻撃では、ログ上で次のアクセスが連続して確認されるパターンがあります。

  • POST /api/session/reset_password がHTTPステータス400
  • 続いて GET /api/user/current がHTTPステータス200

Metabaseは、この組み合わせがアプリケーションログやIngressログに確認された場合、対象インスタンスが侵害されている可能性が高いとしています。

このパターンは侵害確認の手掛かりの一つです。ログに存在しないことだけを理由に侵害を完全に否定できるとは限らないため、インターネット公開状況や稼働期間、ログ保持期間などもあわせて確認する必要があります。

侵害が疑われる場合はセッション・APIキー・DB認証情報を確認

MetabaseはCVE-2026-72898による侵害が疑われる場合、アップデートに加えて複数の対応を推奨しています。

まず、既存のユーザーセッションを無効化し、APIキーに見覚えのないものが追加されていないか確認します。

管理者アカウントについても、新規作成や権限変更など、管理者が実施していない変更がないか確認する必要があります。

さらに重要なのが、Metabaseに登録されている接続先データベースの認証情報です。

管理者権限を取得した攻撃者は、保存されているデータベース接続情報を取得できる可能性があります。そのため侵害の可能性がある環境では、Metabase側のパスワードだけでなく、接続先データベースの認証情報も変更する必要があります。

データウェアハウスや接続先データベースのログ、Metabaseのアクティビティ、クエリ履歴についても、不審なアクセスやデータ取得がないか確認します。

Metabaseでは別のSQLインジェクション脆弱性CVE-2026-72899も公表

Metabaseは2026年8月6日、CVE-2026-72898とは別に、公開共有されたダッシュボードやカードを起点とするSQLインジェクション脆弱性も公表しています。

JPCERT/CCによると、この脆弱性にはCVE-2026-72899が採番されており、PoCとみられる公開情報も確認されています。

GitHub Security Advisoryでは、公開共有されたカードやダッシュボードにField Filterパラメータが存在する場合、公開URLを知る未認証の第三者がMetabaseのアプリケーションデータベースへ任意のSQLを注入できる可能性があると説明されています。

CVE-2026-72898とは悪用経路が異なりますが、修正版は同じ系列のアップデートで提供されています。

一時的な回避策としては、公開共有機能を無効化するか、Field Filterを含む公開リンクを停止する方法が案内されています。

CVE-2026-72898だけを個別に確認するのではなく、Metabaseを利用する組織はCVE-2026-72899も含めて最新バージョンへ更新してください。

過去にもMetabaseでは重大な脆弱性が発生

Metabaseでは過去にも、接続先データベースの認証情報や管理権限に影響する重大な脆弱性が公表されています。

2026年2月には、認証済みユーザーが通知テンプレートを悪用することで、データベース接続情報などの機密情報を取得できる脆弱性が修正されました。この事案についてMetabaseは、修正前の実悪用を示す証拠は確認していないと説明しています。

今回のCVE-2026-72898は、この2月の問題とは異なり、認証不要であり、実際のゼロデイ攻撃が確認されています。

さらにMetabaseは2023年にも、未認証のリモートコード実行につながる重大な攻撃チェーンへの対応を行っており、当時も脆弱性が実際の攻撃で悪用されました。

Metabaseはデータ可視化ツールですが、その背後では複数のデータベースやデータウェアハウスへの接続情報を保持します。そのためMetabase自体を侵害された場合、BI画面だけではなく接続先システムまで影響が広がる点に注意が必要です。

情報システム部門への示唆

セルフホスト型Metabaseを利用している組織では、最初に現在のバージョンを確認し、CVE-2026-72898とCVE-2026-72899の修正版以上へ更新してください。

特に確認が必要なのは、8月6日の脆弱性公表前からMetabaseをインターネットへ公開していた環境です。

今回の脆弱性は修正版公開前から悪用されたゼロデイであり、アップデート実施日までの期間に攻撃を受けていないかを確認する必要があります。

/api/session/reset_passwordへのアクセスログを確認するとともに、Metabaseの管理者アカウント、APIキー、ユーザーセッション、クエリ履歴、接続先データベースのログを確認してください。

侵害の可能性を否定できない場合は、Metabaseの認証情報だけではなく、接続先データベースのパスワードやシークレットもローテーションする必要があります。

また、Metabaseをインターネットへ直接公開する必要があるかも見直してください。

社内利用のみであれば、VPN、ZTNA、アクセス元IP制限などを利用し、必要な利用者だけがMetabaseへ到達できる構成にすることで、未認証の脆弱性が発生した際の攻撃面を減らせます。

今回の事案では、8月6日の公表時点ですでにゼロデイ攻撃が発生しており、その後短期間でPoCも公開されました。脆弱性管理では「CVEが発行されたら対応する」だけでなく、ベンダーの緊急告知やJPCERT/CCなどの注意喚起を継続的に確認し、CVE採番前でも実悪用が確認された場合には緊急対応へ切り替える運用が必要です。

出典