ノルウェー政府の共通デジタル基盤に大規模なDDoS攻撃 ID-portenやAltinnなどに障害、短期間で3度目

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ノルウェー政府の共通デジタル基盤に大規模なDDoS攻撃 ID-portenやAltinnなどに障害、短期間で3度目

ノルウェーのデジタル化庁(Digitaliseringsdirektoratet、Digdir)は2026年8月25日、同庁が提供する政府共通のデジタルサービスが大規模なDDoS攻撃を受けていると公表しました。

攻撃は8月24日3時38分(現地時間)に始まり、ID-porten、MinID、Maskinporten、eInnsynなど複数の共通基盤に影響しました。Altinn、電子署名サービスのeSignering、Digital postkasseも影響を受け、短時間ながら完全に利用できなくなったサービスもありました。

Digdirはサービス提供をおおむね維持しており、8月26日23時04分時点では全体の稼働状況は安定しています。ただし、政府サービスへの共通ログイン基盤であるID-portenには引き続き制限が残っています。攻撃が終了したとの発表はまだありません。

今回の事案について、システムへの侵入や個人情報の流出を示す兆候は確認されていません。Digdirはノルウェー国家安全保障局(NSM)とデータ保護当局Datatilsynetへ通知しています。

なお、8月26日には親ロシア派を名乗るハッカーグループ「Server Killers」が今回の攻撃への関与を主張したとノルウェーメディアなどが報じました。ただし、DigdirやNSMなどノルウェー当局は攻撃主体を公式に特定しておらず、現時点では犯行声明と公式な帰属を区別する必要があります。

ノルウェー政府DDoS攻撃のサマリー

  • 【確認済み】Digdirは2026年8月24日3時38分からDDoS攻撃を受けています。
  • 【確認済み】影響を受けたのはID-porten、Kontakt- og reservasjonsregisteret、Maskinporten、MinID、eFormidling、ELMA、eInnsyn、Ansattporten、Selvbetjeningsløsningenなどです。
  • 【確認済み】Altinn、eSignering、Digital postkasseも攻撃の影響を受けました。
  • 【確認済み】一部サービスは短時間、完全に利用できない状態となり、多くの時間帯では部分的な障害やログイン遅延が発生しました。
  • 【確認済み】8月26日23時04分時点でサービス全体は安定していますが、ID-portenには制限が残っています。
  • 【未確認】攻撃終了を示す公式発表は記事執筆時点で確認できませんでした。
  • 【確認済み】システムへの侵入やセキュリティ侵害を示す兆候は確認されていません。
  • 【確認済み】個人情報が外部へ流出した兆候も確認されていません。
  • 【確認済み】DigdirはNSMとDatatilsynetへ通知しています。
  • 【確認済み】今回を含め、Digdirの共通基盤が短期間にDDoS攻撃を受けるのは3度目です。6月と8月3日にも同様の攻撃が発生しました。
  • 【犯行声明】親ロシア派を名乗る「Server Killers」が8月26日に関与を主張したと複数のノルウェーメディアが報じています。
  • 【未確認】ノルウェー当局による攻撃主体の公式な帰属は確認できませんでした。
項目 内容
公表日 2026年8月25日
攻撃開始 2026年8月24日3時38分(CEST)
対象組織 ノルウェー・デジタル化庁(Digdir)
インシデント DDoS攻撃
主な影響 政府共通デジタルサービスの接続障害、ログイン遅延、一時的な利用不能
主な対象 ID-porten、MinID、Maskinporten、eInnsyn、Altinn、eSignering、Digital postkasseなど
運用事業者 Vivictaと連携して対策
最新状況 8月26日23時04分時点で全体は安定、ID-portenには制限が継続
セキュリティ侵害 兆候なし
個人情報流出 兆候なし
NSMへの通知 通知済み
Datatilsynetへの通知 通知済み
攻撃主体 公式な帰属なし
犯行声明 Server Killersが関与を主張したと報道
過去の類似攻撃 2026年6月、8月3日にもDigdirのサービスがDDoS攻撃を受けた

8月24日未明からDDoS攻撃、政府共通基盤に影響

Digdirによると、DDoS攻撃は8月24日3時38分に始まりました。

影響を受けたのは、ID-porten、Kontakt- og reservasjonsregisteret、Maskinporten、MinID、eFormidling、ELMA、eInnsyn、Ansattporten、Selvbetjeningsløsningenです。

さらに、これらの共通基盤を利用するAltinn、eSignering、Digital postkasseも影響を受けました。

DDoS攻撃は、大量の人工的なネットワークトラフィックを送り込み、正規利用者がサービスへ接続しにくい状態にする攻撃です。

今回も、対象サービスが短時間完全に利用できなくなった時間帯がありました。大半の時間は部分的に利用可能だったものの、ログインに通常より長い時間がかかるなどの障害が発生しています。

Digdirは運用パートナーのVivictaと連携し、攻撃トラフィックの影響を抑えるための対策を続けています。

ID-portenの障害が複数の行政サービスへ波及

今回の影響で特に重要なのがID-portenです。

ID-portenは、ノルウェーの行政サービスへアクセスする際に使われる共通ログイン基盤です。税務、行政手続きなど多数のサービスがID-portenに依存しています。

そのため、ID-porten自体がDDoS攻撃を受けると、攻撃対象となっていない行政サービスでもログインできない、認証に時間がかかるといった影響が波及します。

ノルウェー税務当局Skatteetatenも、ID-portenの障害によって複数のサービスが利用できない状態になったとサイト上で案内していました。

8月25日には、ID-portenへの制限の影響でeSigneringの署名処理が利用できなくなる時間帯もありました。電子署名依頼自体は作成できたものの、実際の署名ができない状態となっています。

その後、eSignering側では対策が行われ、8月26日1時40分時点で通常稼働へ戻りました。

一時は複数サービスが完全停止、8月26日夜は安定

Digdirのステータスページによると、8月24日12時18分ごろには複数のサービスが完全に停止する状態となりました。

その後、攻撃の強弱に応じてサービス状況は改善と悪化を繰り返しています。

8月25日19時07分の更新では、一時的に攻撃が止まったものの、17時15分ごろから同じ強度で再開したと説明しています。

8月26日1時40分には、攻撃が短い中断を除いてほぼ終日続いていたとしています。

同日9時05分時点でも攻撃は夜通し続いていましたが、サービスは安定した状態を維持しました。

最新の8月26日23時04分の更新では、稼働状況は引き続き安定しているものの、ID-portenには制限が残っているとしています。

記事執筆時点では、今回のDDoS攻撃が終了したとの公式発表は確認できませんでした。

システム侵害や個人情報流出の兆候はなし

Digdirは、今回の攻撃についてシステムへの侵入を目的としたものではなく、サービスの可用性を妨害するDDoS攻撃だと説明しています。

同庁の調査では、攻撃によってセキュリティ侵害が発生した兆候は確認されていません。

個人情報が外部へ流出した兆候もないとしています。

このため、「ノルウェー政府のシステムが侵害された」「個人情報が漏えいした」とする根拠はありません。

DDoS攻撃によるサービス停止と、システム内部への侵入やデータ窃取は異なる事象として扱う必要があります。

Digdirは今回の事案についてNSMとDatatilsynetへ通知しています。

短期間で3度目、6月と8月3日にもDDoS攻撃

Digdirは今回について、短期間で同種の攻撃を受けるのは3度目だとしています。

2026年6月にも、DigdirのサービスはDDoS攻撃を受けました。

6月の攻撃はID-portenを対象とし、運用パートナーVivictaのネットワークインフラを通じて複数の政府共通サービスへ影響しました。攻撃は土曜日13時16分から月曜日7時30分まで続き、ID-porten、MinID、Maskinporten、Kontakt- og reservasjonsregisteret、ELMA、eInnsyn、eFormidlingなどが影響を受けています。

8月3日にもID-portenなどがDDoS攻撃を受け、Helsenorge、NAV、Skatteetatenを含む行政サービスへのログインに問題が発生しました。サービスは翌8月4日午前までに通常稼働へ戻っています。

今回の8月24日からの攻撃は、それに続く3度目の事案です。

Digdirは各攻撃について、システム侵害や個人情報流出の兆候はないと説明しています。

NSM「DDoSは主に可用性を狙う攻撃」

ノルウェー国家安全保障局(NSM)は8月4日、同国の複数組織がDDoS攻撃によるWebサイトやログインサービスの遅延に悩まされているとして解説を公表しました。

NSMは、こうした攻撃は大量の通信を送り込むことでサービスを混雑させるもので、一般的にはデータ破壊よりも注目を集めることやサービス妨害を目的とすると説明しています。

一方、行政サービスのような社会的に重要なシステムでは、データが盗まれなくても可用性が失われるだけで市民や企業の手続きに影響します。

特に今回のように共通認証基盤が狙われると、単一システムへの攻撃が複数の行政サービスへ連鎖的に影響するため、一般的なWebサイトへのDDoSよりも業務影響が大きくなる可能性があります。

親ロシア派「Server Killers」が犯行声明、公式な帰属はなし

今回の攻撃について、BleepingComputerが8月25日に報じた時点では、攻撃主体について公式な帰属はありませんでした。

その後8月26日、ノルウェーの複数メディアは、親ロシア派を名乗るハッカーグループ「Server Killers」がTelegram上でノルウェーに対する「サイバー戦争」を宣言し、攻撃への関与を主張したと報じました。

同グループは、ノルウェーによるウクライナ支援や、8月23日に締結された安全保障協力を理由として挙げたとされています。

ただし、これは攻撃者側の犯行声明です。

Digdir、NSM、ノルウェー警察などが、Server Killersを今回のDDoS攻撃主体として公式に認定した事実は記事執筆時点で確認できません。

したがって、「親ロシア派グループが攻撃した」「ロシアがノルウェー政府を攻撃した」と断定することはできません。

犯行声明と技術的・政府機関による帰属判断は分けて扱う必要があります。

情報システム部門への示唆

今回の事案は、単一サービスではなく「共通基盤」がDDoS攻撃を受けた場合の影響を示しています。

企業でも、SSO、IdP、API Gateway、DNS、WAF、クラウド接続基盤など、多数のサービスが依存する共通コンポーネントがあります。

こうしたサービスが停止すると、個々の業務アプリケーションが正常でも、利用者はアクセスできなくなります。

DDoS対策では、Webサイト単体のCDNやWAF導入だけでなく、認証基盤、名前解決、外部API、回線、クラウド接続など依存関係を洗い出し、どこが単一障害点になっているかを確認する必要があります。

また、今回のDigdirのように攻撃が数日にわたり断続的に続くケースでは、一時的にサービスが回復したからといってインシデントが終了したとは限りません。

攻撃トラフィックの変化を継続監視し、レート制限、トラフィックフィルタリング、DDoSスクラビング、地域別のアクセス制御などを状況に応じて調整できる運用が重要です。

海外からの通信を一時的に制限する対策は国内利用者を守る上で有効な場合がありますが、海外拠点や出張者、国外利用者には影響が出ます。Digdirも8月26日、国外からの通信では一部の小規模・非重要サービスに問題が残る可能性があると説明しています。

さらに、可用性インシデントであっても個人情報を扱うサービスが利用できなくなれば、規制当局への通知が必要になる場合があります。DigdirがDatatilsynetへ通知している点は、機密性だけでなく可用性も個人情報保護・事業継続の管理対象であることを示しています。

DDoS対策の基本については、セキュリティ対策Labの「DDoS攻撃とは?攻撃事例や防御策を解説」でも整理しています。

今後の確認ポイントは、攻撃の終了時刻、ID-portenの制限解除、Digdirによる事後評価、攻撃トラフィックの規模や手法、Server Killersの犯行声明に対するノルウェー当局の帰属判断です。

出典