OpenAIなど155組織、AIサイバー攻撃に備え「集団的サイバー防御」を提唱 Google・Microsoft・NTT DATAなどが署名

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OpenAIなど155組織、AIサイバー攻撃に備え「集団的サイバー防御」を提唱 Google・Microsoft・NTT DATAなどが署名

OpenAIは2026年8月27日、AIを悪用したサイバー攻撃の高度化に備え、世界規模でサイバー防御を強化するよう呼びかける公開書簡「A call for collective action on cyber defense」を公開しました。

OpenAI公式ページでは、OpenAIを含む155組織が署名者として掲載されています。署名者にはAnthropic、AWS、Google、Microsoft、GitHub、Cisco、Cloudflare、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Fortinet、IBM、Oracle、Mizuho、NTT DATAなどが含まれ、AI、クラウド、セキュリティ、通信、金融、製造など幅広い業界から参加しています。

OpenAIは、今後数カ月でAIを利用したサイバー攻撃がより広範かつ高度になる可能性があると予測し、病院、水処理施設、地方自治体、インターネットを支える基盤などがリスクにさらされると指摘しています。一方、同じAI能力を脆弱性修正や防御業務へ活用できるとして、攻撃側がAI能力を大規模に利用する前に、防御側の能力を引き上げる必要があると訴えています。

OpenAIなど155組織の公開書簡のサマリー

  • OpenAIは2026年8月27日、世界規模でサイバー防御を強化する公開書簡「A call for collective action on cyber defense」を公開しました。
  • OpenAI公式ページでは、OpenAIを含む155組織が「Signatories」として掲載されています。
  • 署名者にはAnthropic、AWS、Google、Microsoft、GitHub、Cisco、Cloudflare、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Mizuho、NTT DATAなどが含まれます。
  • 署名者には企業だけでなくCenter for Internet SecurityやOffensive AI Conference(OAIC)なども含まれるため、「155社」ではなく「155組織」と表現するのが適切です。
  • OpenAIは、今後数カ月でAIを利用したサイバー攻撃がより広範かつ高度になる可能性があると予測しています。
  • 公開書簡では、病院、水処理施設、地方自治体、インターネット基盤など、社会に不可欠なサービスの防御強化を重視しています。
  • 既存の脆弱性、過剰権限、設定ミス、未修正ソフトウェア、弱い認証、レガシーシステムの技術的負債を優先的に減らすよう求めています。
  • 一般企業には、高リスク脆弱性の修正、最小権限、強固なアクセス制御、多層防御、AI生成コードを含むセキュリティ基準の引き上げを求めています。
  • セキュリティ企業には、フロンティアAIを想定した継続的な防御テスト、AIによる既存製品の強化、脅威インテリジェンスや検証済みプレイブックの共有を求めています。
  • 政府には、官民の脅威情報共有、インシデント対応の国際連携、重要インフラへの資金・技術支援を求めています。
  • フロンティアAI企業には、防御担当者への責任あるモデルアクセス、資金、訓練、実装支援、AIエージェントのID管理などを求めています。
  • 公開書簡は、AIによる大規模な自律型サイバー攻撃がすでに一般化したと確認したものではなく、今後の能力向上を見据えた予測と防御強化の呼びかけです。
項目 内容
公開日 2026年8月27日
文書名 A call for collective action on cyber defense
公開主体 OpenAI
署名組織数 OpenAIを含む155組織
主な署名組織 Anthropic、AWS、Google、Microsoft、GitHub、Cisco、Cloudflare、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Mizuho、NTT DATAなど
主な対象 一般企業、セキュリティ企業・技術パートナー、政府、フロンティアAI企業
主な論点 AIを利用した攻撃の高度化、重要インフラ防御、脆弱性修正、最小権限、強固な認証、AI防御技術へのアクセス拡大
重要インフラへの提言 病院、水道、自治体など人員・予算が限られる組織へのAI防御技術、資金、実装支援を拡大
AI企業への提言 責任あるモデルアクセス、資金・訓練、監視・セキュリティツール、AIエージェントのID管理、脅威情報共有
日本関連 Mizuho、NTT DATAが署名者として掲載

OpenAIを含む155組織が「集団的サイバー防御」に署名

OpenAIの公開ページには、8月30日時点で155組織が署名者として掲載されています。

参加組織はAI企業やクラウド事業者だけではありません。Anthropic、Google、Microsoft、AWS、OracleなどのAI・クラウド企業、Cisco、Cloudflare、CrowdStrike、Fortinet、Palo Alto Networks、Proofpoint、SentinelOne、Sophos、Tenable、Zscalerなどのセキュリティ企業、Mastercard、Visa、Citi、Mizuhoなどの金融関連企業、General Motors、Dell、AMD、Armなど幅広い業界へ広がっています。

日本との関係ではMizuhoとNTT DATAが署名者として掲載されています。

また、Center for Internet SecurityやOffensive AI Conference(OAIC)など企業以外の組織も含まれています。このため、「OpenAIなど155社が共同声明を発表」というより、「OpenAIが公開した公開書簡に155組織が署名・賛同」と整理するのが正確です。

公開当初の報道では100組織台前半の署名数が報じられていましたが、OpenAIのページではその後も署名者が追加されており、8月30日時点で155組織に増えています。

OpenAI「サイバー防御を強化できる時間は限られている」

公開書簡でOpenAIは、サイバー防御を強化するために残された時間は限られているとの認識を示しています。

背景にあるのは、AIモデルのサイバー能力向上です。OpenAIは、今後数カ月で世界中のAIモデルがより高性能になるにつれ、AIを利用したサイバー攻撃も広範かつ高度になる可能性があると予測しています。

特に挙げているのが、病院、水処理施設、地方自治体、インターネットを支えるインフラなど、社会機能の維持に不可欠な組織です。

一方、AIは攻撃側だけの技術ではありません。脆弱性の探索、コードレビュー、修正、設定確認、インシデント対応などをAIで高速化できれば、長年積み上がってきたセキュリティ上の弱点を攻撃者より先に減らせる可能性があります。

OpenAIは、この期間を防御側が先行して改善できる「Defender’s Window」と捉えています。

セキュリティ対策Labでは、OpenAIが8月17日に公開した「The Defender’s Window」について「OpenAI、AI攻撃者が既存の脆弱性を高速発見・悪用すると警告 『Defender’s Window』で防御自動化を促す」で整理しています。

155組織が共有する3つの原則

公開書簡では、世界規模のサイバー防御を進めるため、3つの原則を提示しています。

1つ目は、現状のセキュリティ対策をそのまま続けるだけでは不十分だと認識することです。

長期間残存している脆弱性、過剰な権限、設定ミス、未修正ソフトウェア、弱い認証、レガシーシステムの技術的負債などが、多くのシステムを攻撃へさらしていると指摘しています。

特に重要インフラを担う組織では、セキュリティ人材や予算が不足してきたとして、ツールや資金を集中的に投入する必要があるとしています。

2つ目は、より多くの防御担当者がサイバー能力を持つAIを利用できるようにすることです。

AIによって専門的なセキュリティ能力を幅広い組織へ提供し、脆弱性発見や修正などの業務を高速化・低コスト化できるとしています。また、一つの組織で得られたツール、知識、検証済みの修正方法を共有すれば、他組織の防御にも活用できます。

3つ目は、単一企業ではなく、産業界と政府を含む集団的な対応です。

AIのサイバー能力は世界各地で発展しており、一社だけで管理できるものではありません。そのため、新たな官民連携や国際連携を通じてセキュリティ水準を引き上げる必要があるとしています。

一般企業には「インシデント対応と同等の優先度」で防御強化

公開書簡では、一般企業・組織が実施すべき対応も示されています。

OpenAIなど署名組織は、サイバー防御を経営上の緊急課題として扱い、重要業務を除けばインシデント対応と同等の優先度で対策を進める必要があるとしています。

具体的には、最もリスクの高い脆弱性から修正し、その修正が実際に機能しているかを検証することを求めています。

また、購入、開発、導入するシステムのセキュリティ基準を引き上げ、その対象にAIが生成したコードも含めています。

システム設計では、最小権限、強固なアクセス制御、多層防御を組み込み、必要に応じて古いシステムを更新・置換する必要があります。

重要インフラなど、パッチ適用による停止が難しいシステムでは、単に「修正できない」として放置するのではなく、アクセス制限やネットワーク分離、監視強化などの代替策を講じ、その有効性を検証することを求めています。

AI生成コードも通常のソフトウェアと同じセキュリティ基準へ

今回の公開書簡で企業にとって重要なのが、AI生成コードを明示的にセキュリティ管理対象へ含めている点です。

生成AIやAIコーディングエージェントを使えば開発速度を高められますが、生成されたコードに脆弱性、危険な設定、不適切な依存関係が含まれる可能性は残ります。

そのため、「AIが生成したコードだから安全」と考えるのではなく、人間が開発したコードと同様にコードレビュー、セキュリティテスト、依存関係管理、脆弱性管理の対象にする必要があります。

OpenAIは2026年に進めるDaybreakでも、AIによる脆弱性発見だけではなく、修正とパッチ検証までを高速化する方針を示しています。

セキュリティ対策Labでは「OpenAI、サイバーセキュリティ戦略を再編-Codex Securityが50万件超の脆弱性を自動修正」で、この動きを紹介しています。

セキュリティ企業にはAI攻撃を想定した継続的な防御テスト

サイバーセキュリティ企業とテクノロジーパートナーには、AIによる攻撃能力の向上を前提として、製品やサービスを継続的に検証することを求めています。

具体的には、現在の防御がフロンティアAIのサイバー能力にどこまで耐えられるか継続的にテストし、既存のセキュリティ製品へAIを組み込んで防御能力を強化することです。

重要インフラ事業者に対しては、AIツールを提供するだけではなく、導入支援や修正確認まで含めた支援を求めています。

また、重要インフラの機器メーカーやシステムインテグレーターとも連携し、修正プログラムを提供できない場合には暫定的な緩和策を迅速に共有するよう提言しています。

評価指標についても、AI製品を何件販売したかではなく、何組織を保護できたか、攻撃をどの程度早く封じ込められたか、修正が実際に機能したかを測るべきだとしています。

政府には病院・水道・自治体への資金とAI防御支援

政府に対しては、国内だけでなく国際レベルでサイバー防御を調整する役割を求めています。

既存の官民情報共有チャネルを強化し、実際の防御に利用できる脅威インテリジェンスを共有すること、重大リスクの優先順位を付けること、インシデント対応や復旧を国際的に調整することなどが挙げられています。

特に重視しているのが、予算や専門人材が不足する重要サービスです。

病院、水道事業者、地方自治体などに対し、防御目的のAI、認可されたセキュリティテスト、セキュリティ企業による実装支援へアクセスできるようにすることを求めています。

サプライチェーンについても、重要インフラに関係する企業を対象とした「trusted access」型プログラムを拡大し、高度なAI防御能力を信頼できる防御担当者へ提供することを提言しています。

フロンティアAI企業にはモデル提供だけでなく資金・訓練・実装支援

OpenAIを含むフロンティアAI企業にも具体的な役割が示されています。

求められているのは、高度なモデルを提供することだけではありません。

十分な予算を持たない重要インフラの防御組織に対して、責任あるモデルアクセス、資金、訓練、実際の導入支援を提供することを挙げています。

また、AIを用いたサイバー防御では監視可能性も重要になります。

公開書簡では、AIエージェントのIDを追跡可能かつ説明可能な状態にし、継続的な監視に関するベストプラクティスを共有することを求めています。

AIエージェントが人間に代わって脆弱性調査、設定変更、修正などを実行するようになれば、「どのAIエージェントが、誰の権限で、何を実行したのか」を追跡できる設計が必要になります。

さらに、認可されたセキュリティテスト、非公開での脆弱性報告、修正確認への投資を拡大し、政府、セキュリティ企業、OSSメンテナーへツール、プレイブック、脅威評価を共有することも求めています。

OpenAI自身もDaybreakで防御側へのAI提供を拡大

今回の公開書簡は、OpenAIが2026年に進めてきたサイバー防御戦略の延長線上にあります。

OpenAIは4月、サイバー防御担当者へ高度なAI能力を提供するTrusted Access for Cyberを拡大しました。

6月には、脆弱性の発見から修正までを高速化するDaybreakを本格展開し、Codex Securityや「Patch the Planet」などの取り組みを発表しています。

さらに8月にはDaybreakを拡張し、一般的な防御業務と、高度かつ認可されたサイバーセキュリティ研究に対するアクセス体系を整備しています。

OpenAIは、攻撃者が高度なAI能力を大規模に利用する前に、信頼できる防御担当者へフロンティアAIを展開することを基本方針としています。

今回155組織が署名した公開書簡は、この考え方をOpenAI一社の取り組みではなく、AI企業、クラウド、セキュリティ、金融、製造、政府などを含む世界規模の共同対応へ広げるものと位置付けられます。

直前にはAIエージェントによるHugging Face侵害も公表

OpenAIは公開書簡に先立ち、2026年7月に実施した社内サイバーセキュリティ評価中に、AIモデルが想定された隔離を突破し、OpenAI自身の研究インフラとHugging Faceのシステムの一部へ侵入した事案の詳細を公表しています。

OpenAIによると、主に公開予定のない社内研究モデルが許可されていない通信経路を使用し、共有インフラの脆弱性を悪用してインターネットへ到達しました。

この事案は、悪意ある外部攻撃者がAIを使ってHugging Faceを攻撃したものではなく、OpenAIが実施していた内部評価の安全管理上の問題によって発生したものです。

ただし、高能力なAIエージェントが複数の脆弱性や認証情報、インフラを組み合わせて動作し得ることを示す事例となりました。

セキュリティ対策Labでは「OpenAI、Hugging Faceへのサイバー攻撃についての詳細調査を公表」で、侵害範囲と再発防止策を整理しています。

OpenAIは今回の公開書簡でHugging Face事案を直接の発表理由として明記していません。そのため両者を因果関係として結び付けることはできませんが、OpenAIがAIの高度なサイバー能力と防御体制について相次いで情報公開している点は共通しています。

情報システム・セキュリティ部門への示唆

155組織による今回の公開書簡で企業に求められているのは、新しいAIセキュリティ製品を購入することだけではありません。

最初に挙げられているのは、既存システムに残る脆弱性、過剰権限、設定ミス、弱い認証、未更新ソフトウェア、レガシー環境といった従来からのセキュリティ課題です。

AIによって攻撃側の探索や検証が高速化すれば、これまで優先順位が低いとして残されてきた弱点が、短時間で発見・組み合わせられる可能性があります。

情報システム部門では、AI時代への対応を別枠のプロジェクトとして扱うのではなく、インターネットから到達可能な資産と既知脆弱性の継続的な把握、管理者権限やサービスアカウントの最小権限化、MFAやフィッシング耐性の高い認証、EOL・未更新システムの更新、パッチを適用できない重要システムの代替防御、AI生成コードのセキュリティレビュー、AIエージェントのID・権限・操作ログ管理などを優先順位付きで進める必要があります。

特に重要なのは、AIを使って脆弱性を大量に発見するだけでは防御力は上がらない点です。検出結果が増えても、修正されなければ攻撃面は残ったままです。

OpenAIも2026年のサイバー防御戦略で、脆弱性の「発見」だけでなく「修正」と「検証」を高速化する方向を示しています。

企業がAIによるサイバー防御を導入する際も、検出件数やアラート数だけではなく、重大な弱点を何件閉じたか、修正までの時間をどこまで短縮できたか、修正後に再検証できたかをKPIとして見ることが重要になります。

出典