「聖闘士星矢」作者、約46億円の資金流出を主張 元マネージャーらに約28億8,600万円の賠償請求

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「聖闘士星矢」作者側、約46億円の資金流出を主張 元マネージャーらに約28億8,600万円の賠償請求

人気漫画「聖闘士星矢」などで知られる漫画家・車田正美さんと、著作権や商品化権などを管理する関連会社3社が2026年9月2日、元マネージャーの男性らを相手取り、約28億8,600万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

原告側は、元マネージャーらが2018年ごろから2024年まで、会社資金の無断送金や、本来関連会社へ支払われるはずだったライセンス料の別会社への振込などを通じ、合計約46億8,600万円の損害を与えたと主張しています。

このうち約18億円はすでに回収したとしており、今回の訴訟では残額の支払いを求めています。

本件は現時点で民事訴訟の提起段階です。約46億8,600万円という金額や「横領」とされる行為は原告側の主張に基づくもので、被告側の反論や裁判所による事実認定は確認されていません。

一方、原告側の記者会見では、長年にわたり一人の担当者へ経理、出納、対外交渉などを集中させていたことや、2024年の税務調査をきっかけに問題が表面化したと説明されています。内部統制や職務分掌、取引先との直接確認という観点でも注目される事案です。

車田正美さん側による提訴のサマリー

  • 車田正美さんと関連会社3社は2026年9月2日、元マネージャーの男性らを相手取り東京地裁へ提訴しました。
  • 被告は個人・法人を合わせて11者と報じられています。
  • 原告側は、2018年ごろから2024年までに合計約46億8,600万円の損害が生じたと主張しています。
  • 主張されている主な資金流出は、会社口座からの無断送金、ライセンス料の別会社への振込、保険・再保険を経由した資金移転です。
  • 原告側によると、約18億円はすでに回収されています。
  • 今回の損害賠償請求額は約28億8,600万円です。
  • 問題発覚のきっかけは、2024年に行われた国税当局による税務調査だったと原告側は説明しています。
  • 原告側は、元マネージャーが経理、出納、対外交渉など広範な業務を担っていたと説明しています。
  • 一部報道では、取引先と車田さん本人との接点も長期間限定されていたと、代理人弁護士が説明しています。
  • 現時点では民事訴訟の提起段階で、被告側の反論や裁判所による事実認定は確認できませんでした。
  • 刑事事件として有罪が確定したとの情報も確認できませんでした。
  • 約46億8,600万円を「確定した横領被害額」と断定するのではなく、「原告側が損害として主張している金額」として扱う必要があります。
項目 内容
提訴日 2026年9月2日
原告 車田正美さん側の関連会社3社など
原告側関連会社として報じられた会社 NEXT WING、車田プロダクション、K-PROJECT
被告 元マネージャーの男性ら個人・法人計11者と報道
原告側が主張する対象期間 2018年ごろ~2024年
原告側が主張する損害額 約46億8,600万円
回収済みとされる金額 約18億円
今回の請求額 約28億8,600万円
主張されている行為 無断送金、ライセンス料の別会社への振込、保険・再保険を経由した資金移転など
発覚のきっかけ 国税当局による税務調査と原告側が説明
被告側の反論 現時点で確認できませんでした
裁判所の判断 未判断
刑事責任 有罪確定等は確認できませんでした

車田プロダクションなど3社が東京地裁へ提訴

9月2日、車田正美さん側は、元マネージャーの男性やその関係者、関連法人などを相手取り、約28億8,600万円の支払いを求める民事訴訟を東京地裁に起こしました。

弁護士ドットコムや弁護士JPニュースなどによると、原告側の関連会社は、株式会社NEXT WING、株式会社車田プロダクション、株式会社K-PROJECTの3社です。

これらの会社は、車田さんの著作権や商品化権、ライセンス収入などを管理していたと報じられています。

被告は、元マネージャーの男性本人に加え、男性の親族や知人、男性が実質的に関与していたと原告側が主張する法人など、個人7人と法人4社の計11者とされています。

ただし、訴訟は始まったばかりであり、被告側の認否や反論は現時点で確認できませんでした。

原告側は約46億8,600万円の資金流出を主張

原告側は、元マネージャーの男性らによって約46億8,600万円の損害が発生したと主張しています。

複数の報道によると、原告側が説明している資金流出の方法は大きく3種類あります。

第一は、本来、車田さん側の著作権管理会社へ入るはずだったライセンス料を、別会社の口座へ振り込ませたとするものです。

第二は、車田さん側の関連会社口座から、元マネージャー本人や関係法人、親族・知人らの口座へ資金を無断で送金したとするものです。

第三は、保険や再保険の仕組みを経由して海外へ資金を移し、最終的に元マネージャー側が支配すると原告側が主張する海外法人へ資金を移転したとするものです。

これらはいずれも原告側の訴状や記者会見で示された主張です。

裁判所が認定した事実ではないため、「3つの手口で46億円を横領した」と確定表現するのは適切ではありません。

ライセンス料を別会社へ振り込ませたと主張

車田さんの作品は、漫画やアニメだけでなく、商品化や海外展開などを通じてライセンス料が発生します。

原告側によると、元マネージャーは車田さん側の著作権管理会社「NEXT WING」と似た名称の別会社を設立し、一部の取引先に対して、本来NEXT WINGへ支払われるべきライセンス料をその別会社へ振り込ませていたとされています。

この主張が事実であれば、単純な会社口座からの不正送金だけではなく、売上やライセンス収入の受取先自体を変更する形で資金が会社に入る前に流出していたことになります。

内部不正対策では、支払側の取引先と受取側の管理部門が、振込先変更を独立して確認する手続きが重要になります。

特に、著作権料、ロイヤリティ、ライセンス料のように定期的かつ高額な入金が発生する事業では、契約担当者だけでなく経理部門や経営者が入金先と入金実績を直接確認できる仕組みが必要です。

会社口座から関係先への無断送金も主張

原告側は、元マネージャーが車田さん側の会社口座から、自身や関係会社、親族・知人などの口座へ資金を無断で送金したとも主張しています。

この点は、内部統制の観点では典型的な出納リスクです。

経理担当者が、

  • 支払依頼の作成
  • 振込先登録
  • 承認
  • インターネットバンキングの実行
  • 月次照合
  • 通帳・残高確認

まで一人で担う状態では、不正送金を長期間検知できない可能性があります。

原告側の説明では、元マネージャーが長期間にわたり経理や出納、外部との交渉など幅広い業務を担っていたとされています。

本件の裁判で個別の統制状況がどのように評価されるかは別として、業務集中が内部不正リスクを高める典型例として確認すべき論点です。

保険・再保険を使った海外への資金移転も主張

法務系メディアが原告側会見の内容として報じたところでは、保険と再保険を使った資金移転も問題とされています。

原告側の説明では、国内で支払った保険料が再保険、再々保険などを経由して複数の海外事業者へ移転し、最終的に元マネージャー側が支配するとされる海外法人へ資金が渡る構造だったとしています。

この部分についても、裁判所による認定はまだありません。

ただし、企業の内部統制という観点では、通常の振込だけでなく、保険、投資、海外取引、委託契約などを使った資金移動についても、契約目的、相手先、実質的受益者、資金の最終到達先を確認する必要があります。

形式上は正規の契約や支払いに見える取引でも、実質的な資金移転先が社内で確認されていなければ、不正を見つけにくくなる可能性があります。

問題発覚のきっかけは2024年の税務調査

原告側の代理人弁護士は、問題が表面化したきっかけについて、国税当局による税務調査だったと説明しています。

弁護士ドットコムによると、2024年1月、国税当局が車田さん側へ質問状を送付しました。

原告側は、元マネージャーが税務調査の存在を車田さん本人へ知らせず、翌月には車田さんの筆跡をまねた署名や印鑑を使って回答書を提出したとも主張しています。

その後、国税当局と車田さん側が直接やり取りしたことで、不審な資金の流れが判明していったと説明されています。

この経緯も現時点では原告側の説明に基づくものです。

税務当局から、この件に関する公式な調査結果や処分内容が公表されたことは確認できませんでした。

約18億円を回収、残る約28億8,600万円を請求

原告側によると、問題発覚後の調査や交渉を通じ、約18億円はすでに回収できたとしています。

法務系メディアは、元マネージャー側が一部資金を暗号資産に投資しており、その価格上昇もあって一部を回収できたと代理人が説明したと報じています。

原告側は約46億8,600万円を損害総額とし、そこから回収済みの約18億円を差し引いた約28億8,600万円について今回の訴訟で支払いを求めています。

このため、

「被害額46億8,600万円」

「訴訟の請求額28億8,600万円」

は同じ数字ではありません。

また、約18億円と約28億8,600万円を単純に「新たな被害」として別々に扱うこともできません。

原告側の主張では、約46億8,600万円という総額のうち約18億円が回収済みで、残額を今回請求している関係です。

25年近く業務を任せていたと原告側が説明

弁護士JPニュースなどによると、元マネージャーの男性は約25年前から車田さんの仕事に関わっていたとされています。

原告側代理人は、車田さんが創作活動へ集中するため、経理だけでなく、取引先との交渉や外部窓口など幅広い業務を元マネージャーへ任せていたと説明しています。

また、元マネージャーが取引先などに対して、車田さん本人との直接連絡を制限するような説明をしていたとの主張もあります。

一人の担当者が、

  • 経営者への情報伝達
  • 取引先との交渉
  • 契約
  • 入出金
  • 会計情報
  • 外部専門家との連絡

を実質的に集中管理すると、経営者や第三者が不整合を発見する機会が減る可能性があります。

今回の事案では、単なる経理不正だけでなく、「情報の集中」そのものが内部統制上の論点となっています。

「不正のトライアングル」で見る内部統制上の論点

内部不正を考える際によく使われる枠組みの一つが「不正のトライアングル」です。

セキュリティ対策Labでは、犯罪心理学者によるコラム「なぜパワハラは内部不正を生むのか―犯罪心理学者が解説する『モノ言えぬ組織』のセキュリティリスク」で、不正のトライアングルを「動機(プレッシャー)」「機会」「正当化」の3要素から解説しています。

この枠組みを今回の訴訟へ機械的に当てはめ、元マネージャーの心理や行為を断定することはできません。現時点では被告側の反論も出そろっておらず、「動機」や「正当化」に当たる事情は裁判で確認されていないためです。

一方、原告側の説明から内部統制上確認できる論点としては、「機会」があります。

原告側は、元マネージャーが長年にわたり経理、出納、取引先との交渉、外部との連絡など幅広い業務を担っていたと説明しています。仮に一人の担当者が、資金移動、会計情報、取引先との連絡、経営者への報告まで広範に管理していたのであれば、第三者による牽制や独立した照合が働きにくい状態になります。

不正のトライアングルにおける「機会」は、単にシステム上の権限を持っていることだけを意味しません。承認者が実質的に確認しない、銀行明細を担当者以外が直接確認しない、取引先との連絡経路が一人に集中するなど、「不正を実行・継続しても発見されにくい環境」も含まれます。

今回の原告側主張が裁判でどこまで認定されるかとは別に、企業側は「信頼している担当者だから任せる」のではなく、信頼の有無にかかわらず、権限分離と独立確認が機能する状態を作る必要があります。

「一人に任せる」ことが危険なのではなく、牽制できない状態が問題

セキュリティ対策Labの犯罪心理学コラム「なぜ役職員が組織資産の悪用・私物化に走るのか―『モノ言えぬ組織』チェックシートで犯罪心理学者が可視化する着服・不正受給が起きる組織の『危険サイン』」では、株式会社フコクの海外子会社で発生した着服事案を題材に、会計担当者へ入出金、記帳、銀行取引明細の保管、原価計算などが集中していたことを、内部不正の「危険サイン」として分析しています。

同コラムが指摘するのは、特定担当者が有能であることや長く勤務していること自体が問題なのではなく、その担当者が示す情報を他の管理者が独立して確認できない状態です。

今回の訴訟でも、原告側は元マネージャーに経理や出納だけでなく、対外交渉や外部窓口まで広く任せていたと説明しています。

内部統制上は、担当者本人が提出する帳簿や説明だけを確認資料とするのではなく、

  • 銀行から直接取得した残高・取引明細
  • 取引先へ直接確認した契約・支払先情報
  • 会計システムと銀行口座の突合
  • 契約主体とライセンス料の入金先の照合
  • 外部専門家から経営者・監査担当者への直接報告

といった、担当者から独立した情報源を持つことが重要です。

「長年問題が起きていない」「担当者を信頼している」という事情は、牽制を省略する理由にはなりません。むしろ長期間同じ担当者へ業務が固定化している場合ほど、定期的なローテーション、休暇取得時の代理担当、第三者による残高確認などを組み合わせる必要があります。

口座残高がわずかな状態になったと車田さん側

9月2日の記者会見で、車田さんは問題発覚当初、会社口座の残高がわずかになっており、多額の納税が困難な状態だったと説明しました。

車田さんは、会社存続や自身の創作活動にも影響しかねない状況だったと述べています。

一方、この点についても具体的な口座残高や税額などは公表されていません。

経営者が会社の資金繰りを特定担当者に任せている場合でも、銀行残高、キャッシュフロー、税金支払予定などについては、金融機関や会計システムから経営者が直接確認できる経路を持つことが重要です。

現時点では原告側の主張、刑事責任は確定していない

複数の報道で「46億円横領被害」と表現されていますが、記事執筆時点では民事訴訟が提起された段階です。

確認できているのは、

  • 車田さん側が訴訟を起こしたこと
  • 原告側が約46億8,600万円の損害を主張していること
  • 約18億円を回収したと原告側が説明していること
  • 約28億8,600万円を請求していること

です。

一方、

  • 被告側が原告の主張を認めているのか
  • 各送金に正当な権限や契約があったのか
  • 損害額が原告主張どおり認定されるのか
  • 各被告にどの範囲の責任が認められるのか
  • 刑事上の横領罪などが成立するのか

については、現時点で確定していません。

そのため、本記事では裁判上の主張と確定事実を分けています。

内部監査・コンプライアンス部門への示唆

今回の事案から、内部不正対策で確認したいのは「経理担当者を信用するかどうか」ではありません。

信頼している担当者であっても、一人の人物へ複数の権限と情報を集中させない統制が必要です。

特に確認したいのは職務分掌です。

支払申請、支払承認、振込実行、会計記帳、残高照合を別担当者に分け、一定額以上の送金は複数承認にする必要があります。

銀行口座についても、経理担当者が作成した月次資料だけでなく、経営者や監査担当者が金融機関の明細を直接確認する仕組みが重要です。

また、今回原告側が主張するように、ライセンス料などの受取先を別法人へ変更するケースは、支出管理だけでは検知できません。

売上側でも、

  • 契約書上の受取口座
  • 請求書上の口座
  • 実際の入金口座
  • 取引先が認識している契約主体

を定期的に突合する必要があります。

取引先から振込先変更の依頼や通知があった場合は、担当者個人とのやり取りだけで完結させず、既知の代表電話や別経路で確認する仕組みも有効です。

さらに、外部窓口を一人に集約すると、金融機関、税理士、会計士、弁護士、取引先などからの異常情報が経営者へ届かなくなる可能性があります。

経営者や監査担当者が、

  • 金融機関
  • 税理士・会計士
  • 税務当局
  • 主要取引先
  • 主要ライセンス先

と直接連絡できる経路を確保しておくことも、牽制機能の一つです。

内部統制は、不正を疑うための制度ではなく、不正や誤りが一人の判断だけで継続できないようにするための仕組みです。

今回の訴訟では今後、原告側が主張する各資金移動の事実関係や、被告側の反論、損害額の算定根拠が争点になるとみられます。新たな裁判資料や被告側の主張が明らかになった場合は、現在の整理を更新する必要があります。

出典