さいたま市、「支援措置対象者」の住所情報を相手方へ漏えい 浦和区・中央区で2事案、警告表示の見落とし・誤認

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さいたま市、「支援措置対象者」の住所情報を相手方へ漏えい 浦和区・中央区で2事案、警告表示の見落とし・誤認

さいたま市は2026年8月31日、住民基本台帳事務における「支援措置対象者」の個人情報を、支援措置申出の相手方へ漏えいした事案を浦和区と中央区でそれぞれ公表しました。

支援措置は、DV、ストーカー行為等、児童虐待やこれらに準ずる行為の被害を申し出、支援の必要性が確認された人について、相手方からの住民票や戸籍の附票などの請求を制限し、住所探索を防ぐ制度です。

浦和区では2026年6月1日、窓口職員が相手方に支援措置対象者2名の住所情報を口頭で伝え、1名については住所地番まで、もう1名については都道府県名まで漏えいしました。

中央区では2025年12月25日、支援措置対象者の戸籍の附票の写しを相手方に交付していました。2026年6月25日、相手方が過去に附票を取得したと発言したことで判明しました。

両事案とも、戸籍システム上には支援措置対象者であることを示す注意喚起メッセージが表示されていましたが、浦和区では見落とし、中央区では別の支援措置対象者に関する警告と誤認したことで漏えいを防げませんでした。

さいたま市は、2名以上での確認、マニュアル統合、チェックリスト修正、定期研修、戸籍システム改修の検討などを再発防止策として示しています。

さいたま市の支援措置対象者情報漏えいのサマリー

  • さいたま市は2026年8月31日、浦和区と中央区で発生した2件の個人情報漏えいを同時に公表しました。
  • いずれも住民基本台帳事務における「支援措置対象者」の情報を、支援措置申出の相手方へ伝達・交付した事案です。
  • 浦和区では6月1日、対象者2名の住所情報を口頭で伝え、1名は住所地番まで、もう1名は都道府県名まで漏えいしました。
  • 浦和区では戸籍システムの「注意喚起メッセージ」の見落としが原因でした。
  • 中央区では2025年12月25日、支援措置対象者を含む戸籍の附票の写しを相手方へ交付しました。
  • 中央区の事案は2026年6月25日、相手方が過去の取得を発言したことで発覚しました。
  • 中央区では、同じ戸籍に相手方の異なる複数の支援措置対象者が含まれ、警告を別人分と誤認したことが原因でした。
  • 浦和区で住所地番まで漏えいした対象者と、中央区の対象者は、安全確保のため転居したと市が公表しています。
  • 中央区では警察署にパトロール強化を依頼しています。
  • 市は2名以上での確認、チェックリスト・マニュアルの見直し、定期研修、戸籍システム改修の検討を進めます。
  • 個人情報保護委員会への報告状況や、相手方による住所情報の悪用・接触などの二次被害については、公表資料では確認できませんでした。
項目 浦和区 中央区
公表日 2026年8月31日 2026年8月31日
発生日 2026年6月1日 2025年12月25日
発覚日 公表資料では個別記載なし 2026年6月25日
対象 支援措置対象者2名 支援措置対象者1名
漏えい先 支援措置申出の相手方 支援措置申出の相手方
漏えい内容 1名は住所地番まで、1名は都道府県名まで 戸籍の附票の写し
原因 システムの注意喚起メッセージを見落とし 複数対象者の警告を別人分と誤認
安全確保 住所地番まで伝えた対象者は転居 対象者は転居、警察へパトロール強化を依頼
再発防止 2名以上確認、マニュアル統合、研修、システム改修検討 チェックリスト修正、責任者確認、2名以上確認、研修、システム改修検討
個人情報保護委員会への報告 公表資料では確認できませんでした 公表資料では確認できませんでした
二次被害 公表資料では確認できませんでした 公表資料では確認できませんでした

支援措置は相手方による住所探索を防ぐ制度

さいたま市は今回の発表で、支援措置を「DV、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為」の被害を申し出た人のうち、支援の必要性が確認された人を保護する制度と説明しています。

対象者については、支援措置申出の相手方から住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票の写し等、戸籍の附票の写しの請求があっても交付を制限・拒否します。

目的は、相手方が行政手続きを利用して支援措置対象者の住所を探索することを防ぐことです。

今回公表された各対象者について、DV、ストーカー、児童虐待などのどの事由で支援措置を受けていたかは明らかにされていません。そのため、個別の被害類型を推測することはできません。

ただし、住所を秘匿すること自体が安全確保の中核となる制度であり、一般的な宛先誤送付とは異なり、情報が渡った相手が「支援措置申出の相手方」である点は重く見る必要があります。

浦和区、窓口で2名の住所を口頭で伝達

浦和区の事案は2026年6月1日に発生しました。

浦和区区民課の窓口へ、戸籍届書の記載内容確認のため相手方が来庁し、支援措置対象者2名の住所を尋ねました。

この際、戸籍システムには対象者への戸籍の附票の写しの発行を抑止する「注意喚起メッセージ」が表示されました。

しかし、職員がメッセージを見落とし、相手方へ2名の住所情報を伝えてしまいました。

1名については住所地番まで、もう1名については都道府県名まで伝えています。

市は住所地番まで漏えいした対象者に電話で経緯を説明し、その後直接謝罪しました。当該対象者は現在、安全確保のため転居しています。

都道府県名まで漏えいした対象者については、電話で説明・謝罪し、その後も定期的に連絡して状況を確認しています。

中央区、戸籍の附票を相手方へ交付

中央区の事案は、浦和区より約半年早い2025年12月25日に発生していました。

中央区区民課の窓口で、支援措置対象者の戸籍の附票の写しを相手方へ交付しました。

事案が判明したのは約6か月後の2026年6月25日です。

市によると、相手方から「過去に支援措置対象者の戸籍の附票の写しを取得した」との発言があり、漏えいが判明しました。

中央区でも証明書発行時に注意喚起メッセージは表示されていました。

しかし、対象となった戸籍には、相手方が異なる複数の支援措置対象者が含まれていました。

職員は表示された注意喚起を別の支援措置対象者に関するものと誤認し、本件の対象者が含まれていることを見落としました。

その結果、本来除外すべき情報を除外せず、戸籍内全員分の戸籍の附票の写しを交付しています。

中央区では警察へパトロール強化を依頼

中央区は事案判明後の6月26日、対象者の自宅を訪問しましたが不在でした。

6月28日に本人へ経緯を説明して謝罪し、翌29日に改めて電話で説明するとともに、警察署へパトロール強化を依頼しました。

対象者は現在、安全確保のため転居しています。

浦和区でも住所地番まで伝えられた対象者が安全確保のため転居しています。

市の公表資料では、漏えいした住所を使った接触、つきまとい、脅迫などの二次被害が確認されたとの記載はありません。

したがって、現時点で二次被害が発生したと断定することはできません。

一方で、2事案とも市自身が転居や警察との連携を含む安全確保措置を取っており、住所情報の漏えいが通常の個人情報事故とは異なる安全上のリスクを伴ったことが分かります。

共通点は「警告が表示されたのに止められなかった」こと

2件で共通しているのは、支援措置対象者であることを示すシステム上の警告機能そのものは動作していた点です。

浦和区では警告を見落とし、中央区では警告の対象者を誤認しました。

つまり、今回判明している範囲では「システムが警告を出さなかった」ことが直接の原因ではありません。

一方、人間が警告を見落としたり、解釈を誤ったりしても処理を継続できる設計だったため、最終的な漏えいを防げませんでした。

市は両区で、支援措置案件では他の職員へ声をかけ、必ず2名以上で注意点と必要な対応を確認してから処理することを徹底するとしています。

中央区ではさらに、戸籍の附票を発行する際に構成員全員を確認するようチェックリストを修正し、支援措置責任者である区民課長などが確認する運用へ変更します。

市は戸籍システムの改修を検討

さいたま市は人的なダブルチェックに加え、戸籍システム自体の改修も検討します。

浦和区では、支援措置に関する複数の個別事務マニュアルを一つに集約し、一連の処理フローを漏れなく記載する方針です。

さらに、システムの画面遷移や注意喚起メッセージの画面例をマニュアルへ掲載し、職員の確認漏れ・見落としを防ぐとしています。

このマニュアルは全区へ周知します。

中央区でも、支援措置対象者の見逃しを防ぐため戸籍システム改修を検討するとしています。

警告表示だけでなく、対象者が含まれる場合に処理を一時停止する、責任者承認を必須にする、相手方との関係を確認しなければ発行処理へ進めないなど、誤操作を前提にした制御が今後の検討ポイントになります。

さいたま市は「二次被害のおそれ」「秘匿性の高い情報」は個別公表

さいたま市では、通常の事務処理ミスや事件・事故については1か月分をまとめて翌月に公表する運用を取っています。

一方、二次被害のおそれがあるもの、市民へ不利益を与える可能性があるもの、秘匿性の高い個人情報の漏えいなどについては、その都度個別に公表するとしています。

今回の2事案が8月31日に個別公表されたことは、この運用に沿ったものとみられます。

自治体の情報漏えいでは件数の多さが注目されがちですが、本件では対象人数よりも、秘匿すること自体が本人の安全確保につながる情報を、制度上アクセスを制限すべき相手へ直接渡した点が重要です。

セキュリティ対策Labでは、自治体・官公庁の外部攻撃、委託先侵害、職員の誤操作、内部不正などを「2026年に発生した自治体・官公庁へのサイバー攻撃・情報漏洩事例」で整理しています。

個人情報保護委員会への報告状況は公表資料で確認できず

個人情報保護法では、行政機関や地方公共団体についても、一定の保有個人情報の漏えい等が発生した場合に個人情報保護委員会へ報告する制度があります。

個人情報保護委員会の行政機関等向けガイドラインでは、報告対象外の場合であっても、公表を行う漏えいなど国民の不安を招きかねない事案については、委員会へ速やかに情報提供することが望ましいとしています。

ただし、さいたま市の8月31日付の2件の公表資料には、個人情報保護委員会へ報告・情報提供したかどうかの記載はありません。

そのため、本稿では報告済みとは断定せず「公表資料では確認できませんでした」と整理します。

自治体・行政機関の情報管理部門への示唆

今回の事案では、アクセス制御や警告表示を導入するだけでは、高リスク情報の漏えいを防ぎ切れないことが示されました。

第一に、「警告を表示する」だけでなく「警告を確認しなければ処理を続行できない」設計が必要です。

大量の窓口処理では注意喚起が日常化し、警告疲れが発生する可能性があります。支援措置対象者のように漏えい時の影響が大きい情報については、単なるポップアップではなく、処理停止、再認証、責任者承認など強制力のある制御を検討する必要があります。

第二に、対象者単位ではなく「証明書に含まれる全構成員」を確認する必要があります。

中央区では、同じ戸籍に複数の支援措置対象者が含まれていたことで警告の対象を誤認しました。システム側でも、誰についてどの相手方からの請求を制限するのかを明確に表示し、構成員全員の確認を完了しなければ発行できない設計が求められます。

第三に、高リスク事務ではダブルチェックの「形式化」を避ける必要があります。

2名で確認するだけでなく、確認者が何を確認したかをチェックリストやシステムログへ残し、相手方との関係、支援措置の有無、交付対象、除外情報まで確認する運用が必要です。

第四に、漏えい後は情報セキュリティ対応だけでなく本人の安全確保を優先します。

本件では転居や警察へのパトロール要請が行われました。DV・ストーカー等に関係する可能性のある支援措置情報では、通常の「謝罪・再発防止・本人通知」だけでなく、福祉部門、警察、相談機関と連携した安全計画が必要になります。

第五に、自治体全体で横展開する必要があります。

同じシステム、同じ住民基本台帳・戸籍事務、同じ業務マニュアルを複数の区役所や出張所で使っている場合、1拠点のミスをその拠点固有の問題として扱うべきではありません。

さいたま市が浦和区のマニュアル見直しを全区へ周知し、システム改修も検討するとした点は、同種事故を組織全体で防ぐために重要です。

今回の2事案はサイバー攻撃ではありません。しかし、秘匿性の高い情報を守るという情報セキュリティの目的から見れば、技術、業務フロー、人の確認を組み合わせた多層防御が必要であることを示す事案です。

出典