鳥取ガス、児嶋太一前社長を解任―会社資金10.8億円を個人口座へ送金、私的流用3億円超を会社側が指摘

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鳥取ガス、児嶋太一前社長を解任―会社資金10.8億円を個人口座へ送金、私的流用3億円超を会社側が指摘

鳥取ガスは2026年10月2日、児嶋太一前社長について、会社資金の私的流用や取締役会の承認を経ない資金移動などが確認されたとして、9月14日付で社長から解任した経緯を公表しました。

会社側の説明では、児嶋氏は鳥取ガスとグループ会社の法人カードを2023年から2026年にかけて私的に利用し、ブランド品や飲食費など約2億8200万円を支出していました。これとは別に、会社預金約10億8000万円を自身の個人口座へ移していたことも確認され、この約10億8000万円は10月までに全額返済されたとしています。

また報道によると、児嶋氏と妻が2026年6月に設立した会社に約1億1500万円が送金され、契約書がない支出も確認されたとされています。

一方、児嶋氏は弁護士を通じ、会社側の説明について「会社側による事実認識および法的評価」であり、その内容を争うとの立場を表明しています。現時点では刑事手続きによって事実関係や法的責任が確定した段階ではありません。

鳥取ガス前社長を巡る問題のサマリー

  • 鳥取ガスは2026年9月14日の取締役会で、児嶋太一氏を代表取締役社長から解任しました。
  • 10月2日に佐藤陽子新社長が記者会見し、解任に至った経緯を説明しました。
  • 会社側は、2023年から2026年にかけて法人カードによる約2億8200万円の私的利用があったと説明しています。
  • 車両のリースなどを含めると、会社側が私的流用とみている金額は約3億1000万円と報じられています。
  • 2026年3月から6月にかけ、取締役会の承認を経ず会社資金計約10億8000万円が児嶋氏の個人口座へ送金されたとされています。
  • 約10億8000万円は10月までに全額返済されたと報じられています。
  • 児嶋氏と妻が6月に設立した会社にも約1億1500万円が送金され、一部について契約書が確認できないと報じられています。
  • 鳥取ガス側は損害額を精査し、回収状況によっては刑事告訴を検討するとしています。
  • 後任社長には児嶋氏の実姉である佐藤陽子氏が就任しました。
  • 佐藤氏は「長年の一族経営による意識のおごりと甘え」などを挙げ、会社としてガバナンスが欠如していたとの認識を示しました。
  • 児嶋氏は会社側の事実認識や法的評価を争う姿勢を示しています。
項目 内容
会社 鳥取ガス株式会社
所在地 鳥取県鳥取市
前社長 児嶋太一氏
解任 2026年9月14日
新社長 佐藤陽子氏
法人カードの私的利用と会社側が説明した額 約2億8200万円
その他を含む私的流用と会社側が説明した額 約3億1000万円
個人口座への資金移動 約10億8000万円
約10.8億円の状況 全額返済済みと報道
前社長夫妻の会社への送金 約1億1500万円と報道
今後 損害精査、資金回収、刑事告訴も検討
前社長の立場 会社側の事実認識・法的評価を争う

鳥取ガスとは―1918年設立、地域インフラを担う企業

鳥取ガスは鳥取市に本社を置き、都市ガスや簡易ガス、ガス機器販売、電力・通信サービスなどを展開する地域エネルギー企業です。

同社の設立は1918年7月です。採用情報によると、2025年3月期の鳥取ガス単体売上高は33億8200万円、グループ全体では58億1400万円となっています。

鳥取ガスと鳥取市は2015年、地域で発電した電力の地産地消を目的に「とっとり市民電力」を共同で設立するなど、自治体とも地域エネルギー事業を進めてきました。

児嶋氏は2011年に鳥取ガスの社長に就任しました。また、鳥取商工会議所の副会頭も務めており、同会議所の2026年10月5日時点の公開名簿にも児嶋氏の氏名が掲載されています。

今回の問題は、地域インフラを担う企業の経営トップによる資金管理を巡る事案として表面化しました。

法人カードで約2億8200万円、ブランド品や飲食費などに使用と会社説明

鳥取ガス側によると、児嶋氏は2023年から2026年8月にかけ、鳥取ガスやグループ会社の法人クレジットカードを私的に利用していました。

報道では、高級ブランド品の購入や飲食費などに使われたとされています。

毎日新聞の報道によると、会社側が確認した法人カードによる私的利用は、

  • 2023年から2025年:約1億7000万円
  • 2026年4月から8月:約1億1200万円

で、合計約2億8200万円です。

さらに車両のリースなどを含め、鳥取ガス側が私的流用と位置付けている金額は約3億1000万円と報じられています。

会社側は現在も損害額を精査しており、回収が困難な場合には刑事告訴も検討する方針です。

会社預金約10億8000万円を個人口座へ移動

金額が最も大きいのが、会社預金から児嶋氏の個人口座への資金移動です。

鳥取ガス側の説明として複数の報道機関が伝えたところでは、2026年3月から6月にかけて、取締役会の承認を経ないまま計約10億8000万円が児嶋氏の個人口座へ送金されました。

この約10億8000万円については、10月に入って児嶋氏から全額返済されたとされています。

返済されたことと、資金移動の社内手続きが適切だったかは別の論点です。

会社側は、必要な取締役会承認を得ていなかったとして問題視しています。

一方で児嶋氏側は、会社側が示した一連の事実認識や法的評価について争っています。

前社長夫妻が設立した会社へ約1億1500万円送金

毎日新聞は、児嶋氏と妻が2026年6月に設立した会社に対し、鳥取ガスから約1億1500万円が送金されていたと報じています。

会社側によると、必要な社内手続きを経ていない資金移動だったとされています。

一部はCM制作費に使われたとみられるものの、契約書がなく、用途を確認できない支出もあったとされています。

この約1億1500万円については、法人カードの約2億8200万円や個人口座へ移された約10億8000万円とは性格が異なる資金移動を含むため、単純に合算して「被害額」と表現するのは適切ではありません。

現時点では、鳥取ガス側が調査している複数の資金移動・支出として整理する必要があります。

9月14日の取締役会で解任、実姉の佐藤陽子氏が新社長に

鳥取ガスは9月14日に取締役会を開き、児嶋氏を社長から解任しました。

後任には実姉の佐藤陽子氏が就任しています。

佐藤氏は10月2日の会見で、児嶋氏の行為だけでなく、それを長期間止められなかった会社側の体制にも問題があったとの認識を示しました。

日本海テレビなどの報道によると、佐藤氏は、

  • 身内である児嶋氏に対する判断の甘さ
  • 長年の一族経営による意識のおごりと甘え
  • 経営に携わる者としての知識不足
  • 法令順守意識の不足

などを挙げています。

また「会社としてガバナンスが欠如していた」として、経営体制を見直す方針を示しました。

なぜ10億円規模の資金を動かせたのか―問題は権限管理と相互牽制

今回の事案では、個々の支出だけでなく「なぜ経営トップが巨額の資金を移動できたのか」が企業の内部統制上の論点になります。

内部不正対策では、一般社員だけでなく経営者や管理者など強い権限を持つ人物も対象に含める必要があります。

IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」は、内部不正対策として、

  • 経営者の責任の明確化
  • 組織横断的な管理体制
  • 必要最小限のアクセス権限
  • 管理者権限の管理
  • 操作履歴や証跡の記録
  • 定期的な監査
  • 内部不正防止の観点を含む確認

などを挙げています。

今回の鳥取ガスの事案は情報システムへの不正アクセスではありませんが、「正規の権限を持つ内部者の行為を誰がチェックするのか」という点では、内部不正と共通する管理課題があります。

特に経営トップや経理責任者など高い権限を持つ役職では、単独で支払い・送金・承認まで完結できる状態を避け、一定額を超える資金移動に複数人の承認を求める仕組みが考えられます。

経営者による内部不正で企業が確認したいポイント

経営トップによる不正は、一般社員の内部不正とは異なり、社内規程や承認フローそのものを変更・迂回できる権限を持っている場合があります。

企業では少なくとも次の点を確認できます。

  • 高額送金について複数の取締役や責任者の承認が必要になっているか
  • インターネットバンキングの申請者と承認者を分離しているか
  • 法人カードの利用明細を本人以外が定期的に確認しているか
  • 経営者・役員に対しても経費規程を例外なく適用しているか
  • 関係会社・役員個人・親族会社への送金を関連当事者取引として管理しているか
  • 契約書がない支払いを会計システムで止められるか
  • 高額・異常な支出を監査役や取締役会へ報告する仕組みがあるか
  • 内部通報制度が経営トップから独立しているか
  • 定期監査で役員による取引も対象としているか

「社長だから承認済みとみなす」という運用では、最も強い権限を持つ人物に対する統制がなくなります。

権限の強さに応じて監視や承認を強くする設計が必要です。

前社長は会社側の説明を争う

児嶋氏は10月2日、弁護士を通じて声明を出しています。

児嶋氏側は、鳥取ガスの新経営陣が公表した内容について、会社側による事実認識と法的評価であり、その内容を争うとの立場です。

そのため現時点で、

  • 約3億1000万円すべてが法的に「横領」と認定された
  • 約10億8000万円の送金が犯罪行為だった
  • 刑事責任が確定した

と断定することはできません。

鳥取ガス側は刑事告訴を含む法的措置を検討していますが、2026年10月5日時点では今後の調査と法的手続きが残っています。

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