PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?

PMFは、スタートアップ企業やスタートアップへの投資、あるいは、大企業で新規事業の立ち上げ、新商品開発に携わる方は聞いたことがあるフレーズかと思います。今回の記事では、PMFの意味や重要性などの基礎知識から、手順や検証方法などの具体的な方法について紹介します。

PMFとは

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは、「Product Market Fit」の頭文字を取った言葉であり、直訳すると、「プロダクトが市場に適合している状態」と訳すことができます。言い換えると、商品やサービスを提供する市場において、当該市場を満足させることができる商品・サービスを提供できている状態のことを指します。

PMFの考え方自体は、アメリカのソフトウェア開発者であり投資家のマーク・アンドリーセン氏によって広められたと言われています。

先ほどの言い換えの箇所を分解すると、スタートアップ企業や新商品・新サービスが成功するためには、「適切な市場を選択しその上で当該市場に受け入れられていること」および「顧客の課題を満足させる商品・サービスを提供」していることが求められています。

スタートアップにありがちなのが、どれだけ技術力を用いて製品を開発しても、市場自体がそこまでの価値を求めていないケースがあり、結果として市場から受け入れられず、資金回収ができず、事業自体がストップしてしまうケースも往々にしてあります。

最適なプロダクトを最適な市場で提供することはビジネスを進める上で必要不可欠です。

PSFとは

PMFの話を進める前に重要な定義であるPSFについて触れたいと思います。

PSFとは、「Problem Solution Fit(プロブレムソリューションフィット)」の略称で、課題に対して解決策が適合している状態を指します。利用者の課題解決のための最適な方法を導き出している状態です。

PSFを測るためには、必ずしも実際の商品やサービスは必要ではなく、新規事業において商品・サービス開発に取り掛かる前段階の「事業企画」や「市場調査」において用いられる指標です。

PMFとの関係性で言えば、下記のようなイメージです。

課題発見 ⇒ PSF(解決策の有効性検証) ⇒ PMF(解決策を提供する商品・サービスの市場ニーズ検証)

例えば、共働き世帯を例に挙げると、十分な家事の時間を取れないという課題が考えられます。ニーズとしては、「時短で料理をしたい」「代わりに料理・掃除をしてくれる人を雇う」「便利な料理・掃除用品の購入」などが挙げられます。

これらの課題を解決するための方策として、「食材キット」「時短調理器具」「時短レシピ」「家事代行サービス」「便利な料理・掃除用品」の提供などが考えられます。このような状態がPSFです。

PMFの重要性

PMFがビジネスを進める上で重要と言われている理由としては以下の3つが挙げられます。

  • 多様化するユーザーニーズへの対応
  • 事業の成功へ導く
  • 他部門への応用も可能

多様化するユーザーニーズへの対応

ユーザーニーズは日々変化しており、立ち止まることがありません。つまり、商品やサービスを提供してから、バージョンアップや改善作業を怠ると、すぐに陳腐化してしまいます。一方で、常にユーザーの目線に立ち、自社商品・サービスがPMFを満たしているか、の基準で検証をし続けていると、例え、ユーザーのニーズが変化して市場とのズレが生じても迅速に対応ができます。

事業の成功へ導く

スタートアップ企業や新規事業を開発・展開する際に、そのビジネスがPMFを満たすかどうかで最終的な結果に大きな影響を与えます。

一部のユーザーのニーズを満たしたプロダクトの開発だけでは、ビジネス自体の成功には必ずしも結び付きません。最適な市場を選択することでビジネスとして成り立ち、結果としてマネタイズもできることにつながり、スタートアップ企業の成長や新規事業の成功に導かれます。

他部門への応用も可能

PMFは基本的にはビジネスにおけるプロダクト開発の際に有効な概念です。一方で、他の部門への応用も可能です。例えば、マーケティング部門においては、Web広告の出稿の場面でPMFを意識したターゲティング、あるいは、人事部門において、自社事業と関連性の高い学部への求人出稿など、PMFの概念を知っているだけで、他の部門への応用も可能となります。

PMF実現までのプロセス

PMFを実現するためのプロセスとしては大まかには以下の3つのステップに分けられます。

  1. PSFを目指す
  2. MVPの開発・提供
  3. 効果測定を行う

PSFを目指す

まず最初のステップとしてはPSFの実現を目指します。つまり、先のPSFの解説でも触れた「課題に対して解決策が適合している状態」を目指します。ユーザーの求めるプロダクトを開発する前に、ユーザーの課題を把握しておく必要があります。

ユーザーの課題を発見する方法としては、市場の分析や競合他社のプロダクトの検証などが挙げられます。また、市場調査やユーザーインタビューなども有効です。

課題発見後はどのような解決策(Solution)を提供できるかを考えます。ここでは、自社ならではの付加価値を考えることが重要です。

MVPの開発・提供

MVPとはMinimum Viable Productの略称で、実用最小限の製品のことを指します。つまりは、1番目のステップにより解決策を用意できる状態になったら、次の段階としては解決策をプロダクトに落とし込むフェーズに入ります。

まずは必要最小限の機能のみを搭載したプロダクトの開発を行います。時間を意識して、効率的にプロダクトの開発を進めます。

効果測定を行う

ビジネスでPDCAを回すのと同様、PMFを達成する際にもPDCAを回すことが重要です。2番目のステップでMVPの開発・提供を行える段階に至った後は、実際にリリースをし、想定している市場のニーズとマッチしているのかを判断するために効果測定を行います。最初から想定していた市場にマッチするプロダクトの開発は難しいため、市場と対話しながら、効果を検証しながら改善していく必要があります。

市場との対話の視点としては、必要最小限の機能でユーザーの課題を解決できているか、改良部分はあるか、機能の中で不必要なものはないか、加えるべき機能はないか、などの視点を持ち、効果検証を行いスピード感を持って、PDCAサイクルを回していきましょう。

PMFの検証方法

自社プロダクトをリリースした後は定期的にPMFを満たしているのかの視点で検証していく必要があります。ここでは、PMF検証に有効な5つの方法を紹介します。

  • NPS(ネットプロモータースコア)
  • リテンションカーブ
  • Product/Market Fit Survey
  • 口コミ調査
  • エンゲージメント調査

NPS(ネットプロモータースコア)

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の頭文字を取った略称であり、顧客のロイヤリティ(愛着)を計測するための指標です。

NPSでは、顧客に「その企業および製品を友人に薦める可能性はどの程度ありますか?」という質問を投げかけて、0~10の11段階で回答してもらいます。その回答をもとに「0~6:批判者」「7~8:中立社」「9~10:推奨者」として、推奨者の割合から批判者の割合を指しい引いた値がNPSのスコアです。

業界によりNPSスコアの平均値は異なります。

参照:NPS業界別 おすすめランキング | NTTコム オンライン (nttcoms.com)

リテンションカーブ

リテンションとは維持や保持などの意味を持つ言葉ですが、マーケティング分野においては、提供している製品がどのくらい消費者に継続して使用されているかを示す指標として用いられています。

リテンションカーブとは、縦軸にリテンション率、横軸に製品のリリースからの期間を設定したグラフのことで、このグラフがリリース以降に横ばいの状態であれば、その製品はPMFに成功している可能性、一方で、リテンションカーブが下降を続けている場合は、PMFを達成できていないと判断できます。

Product/Market Fit Survey

PMFの状態を定量的に把握するために実施されます。顧客に直接質問する手法で、顧客に「もしも、その製品が使えなくなったらどう思いますか?」という質問を投げかけて、「非常に残念」「やや残念」「残念ではない」「該当しない(製品を使用していない)」の4つの選択肢から回答してもらいます。

数値感としては、調査対象のうち40%以上が「非常に残念」と回答した場合には、その製品は今後も継続して顧客を獲得できると判断され、PMFを達成している可能性があると考えられます。

口コミ調査

単純な調査ではありますが、好意的な口コミが多い場合は顧客のニーズを満たしている、一方で批判的な口コミが多い場合には改善の必要があると判断できます。SNSや口コミサイトですぐに確認ができます。

エンゲージメント調査

エンゲージメント調査とは、利用者がどのくらいプロダクトに愛着を持っているかを調査する手法です。業種や提供サービスなどにより、見るべき指標は異なります。サブスクリプションサービスの場合は、継続率や利用頻度、買い切りの商品であれば、購入頻度や購入個数、購入金額などの指標を参考にすると良いでしょう。

まとめ

今回の記事ではPMFについて紹介してきました。スタートアップ企業やスタートアップ投資に携わる方、あるいは新規事業の開発に携わる方などは、当然にPMFを意識して日々のビジネスに取り組んでいるかと思いますが、基本に立ち返る意味でも本記事が皆さまのお役に立てると幸いです。

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