LTVとは?計算方法や高める方法を解説
今回はLTV(「Life Time Value」の略称、日本語訳では「顧客生涯価値」を意味する)について解説していきたいと思います。マーケティングに関わる皆さまにおいては、KPIを設定することなどにおいてLTVに接する機会は多いかと思います。今回記事では、LTVに関して、LTVが重視されるようになった背景や計算方法、LTVを高める施策などについて紹介していきたいと思います。
目次
LTVとは
LTVとは、先にも触れましたが「顧客生涯価値」と訳される指標で、ある顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間に、自社に対してどれだけの利益をもたらしてくれるかを表した数値です。後に数式は紹介しますが、顧客単価や粗利率、購買頻度、取引期間などをベースに表します。顧客と1回だけの取引で終わってしまうよりも、2回、3回と取引が継続した場合の方がLTVは高くなります。
LTVが注目される背景
近年は、多くの市場において競争激化により新規顧客の獲得コストが高まり、いかに既存顧客との関係性を強固にしていくかが重要となってきています。そこで既存顧客との関係性を図る上で重視されている指標がLTVと言えます。ここでは、LTVが近年特に注目されるようになってきた背景について説明していきます。
主には以下の4つが挙げられます。
- 新規顧客獲得のハードルの高まり
- One to Oneマーケティングの主流化
- サブスクリプションサービスの流行
- 顧客ロイヤルティの向上
新規顧客獲得のハードルの高まり
日本国内における人口減少は新聞紙面でも話題にもなっていますが、人口減少とあわせて商品・サービスが世の中に溢れていることによる、市場の飽和も重なり、新規顧客の獲得のハードルが以前にも増して高まっている状況にあります。商品やサービスの品質や価格などでの商品・サービス力で競合他社と差別化を図ることの難易度も高まっています。
新規顧客開拓は膨大な時間と費用がかかっており(新規顧客の開拓は、既存顧客の維持の約5倍のコストがかかると言われています)、利益を生み出すためには一定の時間を要します。一方で、既存顧客の場合は、良好な関係を築くことで、継続購入もしくはアップセル、クロスセルなどが見込めます。
One to Oneマーケティングの主流化
WebやSNSが普及する以前は、TVCMなど画一的なマスマーケティングが主流であり、そもそも手段が多くありませんでした。しかしながら近年は、ITの広がりにより、ひとりひとりに合ったマーケティングを行うことが可能となりました。つまり、顧客ひとりひとりに合わせた「One to Oneマーケティング」を行うことが可能となり、近年では主流となってきました。
One to Oneマーケティングでは、顧客と丁寧なコミュニケーションを行い、ロイヤルティを高めることが重要となってきており、顧客ロイヤルティを測る指標のひとつとして、LTVが注目されるようになってきました。
サブスクリプションサービスの流行
皆さまもなじみ深くなってきているかと思いますが、近年、定額料金を支払うことで製品やサービスを一定期間利用することができるサブスクリプションサービスが流行しています。継続的に利益を享受できるサブスクリプションサービスは企業にとってもメリットが大きく、サブスクリプションサービスの拡大の要因となっています。長期的に自社の商品・サービスを利用してもらうことでLTVは増加するため、サブスクリプションサービスを継続的に利用してもらうための施策を講じる企業は増えてきています。
顧客ロイヤルティの向上
顧客ロイヤルティとは、自社の商品やサービスに対する顧客の愛着や信頼を示す指標です。ロイヤルティが高い顧客は「ロイヤルカスタマー」と呼ばれています。「ロイヤルカスタマー」は競合他社に流れない傾向にあり、継続的に自社商品・サービスを購入するだけでなく、SNSなどでの発信も期待され、自社商品やサービスの認知拡大、ブランド力向上にも貢献してくれます。
このような顧客ロイヤルティの強さを図る指標のひとつとしてLTVは注目されており、LTVを高める施策を実施することでロイヤルカスタマーが増加し、既存顧客を維持する好循環が生まれることにつながります。
LTVの計算方法
LTVの計算方法については、2種類紹介します。
一般的には以下の式で算出されます。
LTV=平均顧客単価×収益率(粗利率)×購買頻度×継続期間
- 顧客単価:1回の購買によって顧客が支払う単価
- 収益率(粗利率):売上金額に対する利益額(粗利額)の割合
- 購買頻度:一定期間に顧客が購買活動を行う頻度
- 継続期間:顧客が継続して取引(購買活動)を行う期間
例えば、ある企業が月額20万円(粗利率20%)のサイト運用サービスを2年間利用したとします。その場合は、LTV=顧客単価20万円×粗利率0.2×購買頻度12回/年×継続期間2年間=96万円、となります。
また、新規顧客獲得コストと既存顧客維持コストを加味した全体は把握するため計算式は下記の通りです。
LTV=平均顧客単価×収益率(粗利率)×購買頻度×継続期間ー(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)
LTVを高める方法
LTVを高める方法は、計算式で表せる通り、主には下記に示す5つの方法があります。
- 平均顧客単価を高める
- 収益率(粗利率)を高める
- 購買頻度を高める
- 継続期間を延ばす
- 新規顧客獲得・既存顧客維持コストを下げる
平均顧客単価を高める
平均顧客単価は、「平均購入品数×平均購入商品単価」で表すことができます。つまりは平均購入品数を増やすための施策、また、平均購入商品単価を上げるための施策が有効です。平均購入品数を増やすための施策として「クロスセル」、平均購入商品単価を上げるための施策として「アップセル」、またその他の施策として「商品値上げ」が挙げられます。
クロスセル:商品の単品販売ではなく、関連する商品やサービスの購入やセット販売での購入を促し、購入商品点数を増加する施策です。ECサイトのレコメンド機能などが挙げられます。
アップセル:ある商品を購入しようとしている顧客に対し、より上位の商品・サービスの購入を促し、平均購入商品単価を引き上げる施策です。上位モデルの商品性や品質などを顧客に受け入れてもらうことが重要です。
商品値上げ:単に商品・サービスの値上げを行うだけでは、顧客が不満や不安を抱き、離れていく可能性もあります。値上げを仮に行う場合は、顧客とのコミュニケーションを重視し、納得感を得られた上で行う必要があります。
収益率(粗利率)を高める
ここでは粗利率を参考に紹介します。粗利率=利益(売上-原価)÷売上で求めることができます。粗利率の向上は売上げを高めるか、原価を下げることで粗利率を高めることができます。
購買頻度を高める
購買頻度を高める方法としては、継続的な顧客とのコミュニケーションが挙げられます。自社商品やサービスを購入した顧客に対して、メールマガジンでなどでの「お役立ち情報」の配信などを行い、メールの開封・クリック情報、アクセス履歴などを活用し、適切なタイミングでのアプローチを行うことで、購買のきっかけにつながる可能性があります。
また、その他の施策として、利用範囲(時間帯)を拡大する施策(夕方や夜でのサービス利用が多い顧客に対して、午前中での利用を促す施策など)や利用範囲(場所)を拡大する施策(これまで家でしか利用できなったサービスを家の外でも利用できるようにするなど)なども購買頻度を高める施策として挙げられます。
継続期間を延ばす
継続期間を延ばす施策としては、顧客ロイヤルティを高め、継続的に購入してもらうことが重要です。商品やサービスを購入してもらって終わりではなく、購入後に継続して商品・サービスを利用してもらうために、既に表れている顕在的な顧客の悩みや課題だけではなく、顧客自身が気付いていない潜在的な悩みや課題を解決の貢献することが重要です。
既存顧客だからこその特典の提供や、他社にはないここにしかない商品・サービスを継続的に提供することで顧客をロイヤルカスタマー化し、競合他社に流れない関係性を築いていきましょう。
新規顧客獲得・既存顧客維持コストを下げる
新規顧客獲得・既存顧客維持コストを考える上で、新規顧客獲得と既存顧客獲得コストのイメージ感を持つことが重要です。一般的に、既存顧客と取引する際のコストとしては、これまでの取引に対しての条件提示や価格交渉などが想定されることに対して、新規顧客の獲得においては、広告・プロモーション、見込み顧客の精査、一からの信頼関係の構築、商品説明、商談、価格交渉、契約など、新規顧客獲得は既存顧客維持と比較しても多くの時間と費用を要すことが容易に想定できます。世の中的には「1:5の法則」と言われ、「新規顧客に販売するコストは、既存顧客へ販売するコストの5倍かかる」と言われています。
当然、企業の戦略上、新規顧客獲得も重要な課題で新規獲得が無ければ企業としてもジリ貧状態となります。限られた予算や人材などのリソースをいかに有効に活用していくか、戦略をしっかりと策定した上で、新規顧客の獲得及び既存顧客維持のバランスを考慮して、施策を実行していくことが重要です。
ここでの施策としては、SFA(Sales Force Automation、営業支援システム)やCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)を活用した効率的なマーケティング及び営業施策によるコストの抑制、LP(ランディングページ)の見直し、ウェビナーの実施(温度感の高い見込み顧客の獲得)、メルマガの配信などが挙げられます。
まとめ
今回の記事ではLTVについて、LTVが注目される背景や計算式、LTVを高める方法について紹介しました。今回記事が皆さまのマーケティング活動のお役に立てると幸いです。