THE MODEL(ザ・モデル)とは?The MODELのフレームワークを紹介
ここまでの記事の中で、SaaSビジネスを展開していく上で欠かせない指標(「ROI」や「ARPU」など)を解説してきました。
今回は、SaaSビジネスが世界的に拡大していく中で注目されている営業モデル「The Model(ザ・モデル)」について解説していきます。
目次
「The Model」とは
the modelは近年、SaaS/IT業界で導入が進む新しいビジネスモデルです。具体的には、マーケティングにおける一連の流れで、顧客の集客から、インサイドセールス及びフィールドセールス(外勤営業)でのセールス活動、そしてカスタマーサクセスまでの工程を役割毎に分け、効率よく売り上げの最大化を図る考え方を指します。
なお、the modelは、セールスフォース・ジャパンが活用してきた営業プロセスの一つであり、同社で活躍した福田康隆氏が著書「THE MODEL」で提唱し、併せて、SaaSビジネスが世の中に浸透してきたことで一気に広がっていきました。
the model が注目される背景
the model の営業モデルが注目される背景は大きく2つの理由が挙げられます。
サブスクリプションやSaaSの浸透
サブスクリプションは月額課金や定額制で契約するビジネスモデルであり、単発の売り切りモデルではなく、継続的にユーザーに利用し続けてもらうことが重要な仕組みです。the modelは顧客の満足度向上に焦点を当て、部門間で密にいち顧客の満足度向上に向け連携しあう点が営業モデルの構造的に相性が良いとされ、評価されてきました。
営業支援のデジタルツールの普及
営業支援のツールとしてMA(マーケティングオートメーション)ツールやCRM(顧客管理ツール)などの営業支援ツールの企業への導入が進んできたことで、企業の部門間で情報の共有が容易になり、より部門間連携がしやすくなったことが、the modelが広がる背景として挙げられます。
the modelの特徴
the modelの考え方で特徴的な点は、以下の3つが挙げられます。
- 営業プロセスを分解し、各プロセスでの情報を数値化、可視化する。
- 各プロセスを担当する部門間で連携することで、顧客満足度の向上を図る
- カスタマーサクセスを重要な営業プロセスと位置付ける
顧客体験を最重要テーマとし、商品やサービスを顧客が認知する前から購入後をイメージし、一貫した顧客満足の提供を行う点がthe modelの特徴と言えます。
the modelの営業プロセス
the model は顧客に商品やサービスを展開するまでの営業プロセスを分ける点に特徴がある点は上記で述べた通りですが、具体的には各営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4段階に分けます。
以下では、各プロセスについての役割を解説していきます。
マーケティング
マーケティング部門がthe modelの出発点となるプロセスであり、ここでは主に潜在顧客を対象に、見込み客(リード)の獲得を担います。
マーケティング部門はthe modelの営業プロセスの中において、最も多くの人と接点を持ちます。認知獲得に向け、主にはメールマガジンや広告配信、SEO対策、SNS運用など、様々な手段を使い、自社商品やサービスへの興味関心を惹きつける役割を担います。
認知を獲得し、次の営業プロセスに顧客を進めることが重要な役割となります。
インサイドセールス
インサイドセールス部門の主な役割は、マーケティング部門で認知を獲得したリードに対し、次の営業プロセス(フィールドセールス)に向け、リードの育成、案件発掘を行うことです。
マーケティング部門が集めたリードも、商品やサービスへの興味関心度合いは人によって様々です。より効率的に次のプロセスに進めるために、より熱量の高い人に絞ってアプローチを進めて行きます。
具体的には、営業メールや電話等により直接コミュニケーションを取ることで購買意欲をより高めていきます。
リード顧客は必ずしも今すぐに商品やサービスを購入・利用したいという人ばかりではありません。しかしながら、時間をかければ顧客となる可能性を秘めていると言い換えることはできます。このような顧客となりうる層をストックとして貯めて置き、適切なタイミングで直接コミュニケーションを図ることで、よりコストパフォーマンス良く(顧客獲得コストをさほどかける必要なく)、次のプロセスに進めることも可能となります。
フィールドセールス(外勤営業)
フィールドセールス部門は顧客と商談をし、契約を獲得する役割を担います。
従来のフィールドセールス部門は、目の前の顧客に追われ、新規開拓や既存顧客のフォローが難しい点がありました。the modelの営業プロセスの分業化により、フィールドセールス部門は商談により集中できる環境になった点が特徴として挙げられます。
具体的なプロセスとしては、顧客の状態を下記フェーズに当てはめて管理します。
- フェーズ1「リード以上商談未満」
- フェーズ2「ビジネス課題の認識」
- フェーズ3「評価と選定」
- フェーズ4「最終交渉と意思決定」
- フェーズ5「稟議決裁プロセス」
カスタマーサクセス
カスタマーサクセス部門は、既存顧客の継続利用サポート及びアップセル、クロスセルを促す枠割を担います。
売り切り型の商品・サービスと異なり、サブスクリプション型の商品・サービスの場合、いかに継続利用してもらえるかが重要です。解約リスクを抑えつつ、アップセル、クロスセルを促すため、継続的に既存顧客と接点を持ち続ける必要があります。
顧客と継続的に接点を持ち、顧客満足度の向上を図ることで更なる提案に繋げ、自社の収益力向上に繋げることもカスタマーサクセスの役割と言えます。
the model導入の効果・メリット
the modelを導入した場合の導入効果やメリットについてここでは解説していきます。
営業部門の属人化の解消
従来の営業スタイルは、一人の営業員が新規顧客の発掘からアプローチ、契約獲得、顧客フォロー等、一連のプロセスを担っていました。そのため、一人の営業員の個々のスキルや経験値次第という側面がありました。また、一人の営業員にかかる負担の大きさのために離職するケースもあり、結果として企業単位でのノウハウが蓄積されず、会社の成長にも繋がらないという点が問題視されてきました。
the model導入により、営業プロセスが分担、見える化することにより、一人の営業員の負担が軽減するのみならず、企業単位でノウハウや顧客との接点、情報管理ができるため、例え営業員が離職しても営業力の低下を防ぐことが出来る点が、導入の大きなメリットと言えます。
営業活動の効率化を図ることが出来る
the modelの導入により、顧客獲得から既存顧客のフォローまでを各プロセスに応じて役割分担を行うことができます。営業員個人の負担が分散されるだけでなく、各プロセスの担当は担当プロセスの業務に集中できるため、各部門で業務が効率化され、結果的に営業活動全体の効率化に繋げることができます。
再アプローチが容易になる
一人の営業員が一連のプロセスを管理する従来の営業手法では、マンパワー的に適時適切なタイミングでのフォローが難しいという側面があります。例えば、一度接触した顧客候補に関して、今のタイミングでは難しいけれど、一定期間経過すれば興味関心を持ってくれるかもしれない顧客候補に対して、適時適切なタイミングでの再度の接触は、営業員の記憶や管理手法に頼ることになってしまいます。一方、the modelの営業プロセスが確立されていれば、インサイドセールス部門でリードの状況はフォローされているため、適時適切なタイミングでアプローチすることで、再び新規案件としてフォローできる可能性があります。
まとめ
今回は、the modelの概要やフレームワーク、広がってきた背景やメリットなどについて解説してきました。自社の営業プロセスをより良くするために、本記事がお役に立てれば幸いです。