トヨタ 子会社シンテックホズミの元社員が営業秘密漏えい 疑いで逮捕―AGV充電装置の原価データをクラウド共有か

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トヨタ 子会社シンテックホズミの元社員が営業秘密漏えい 疑いで逮捕―AGV充電装置の原価データをクラウド共有か

愛知県警は2026年10月5日、トヨタ自動車の子会社「シンテックホズミ」の営業秘密を漏えいしたとして、同社の元社員2人を不正競争防止法違反(営業秘密領得、開示)の疑いで逮捕しました。

問題となっているのは、工場などで使用される無人搬送車(AGV)の充電装置に関する原価明細データです。複数の報道によると、当時シンテックホズミに在籍していた元社員が社内サーバーからデータを複製し、すでに別企業へ転職していた元上司の依頼を受け、クラウドストレージへアップロードした疑いが持たれています。

愛知県警は2人の認否を明らかにしていません。逮捕段階で刑事責任が確定したものではありません。

※2026年10月6日8時58分時点の公表・報道内容をもとに整理しています。

シンテックホズミの営業秘密漏えい疑いのサマリー

  • 愛知県警は10月5日、シンテックホズミの元社員2人を不正競争防止法違反の疑いで逮捕
  • 対象は無人搬送車の充電装置に関する原価明細データ
  • データを複製した疑いが持たれている元社員は、2024年9月当時シンテックホズミに在籍
  • データを受け取った疑いが持たれている元上司は2023年1月まで同社に勤務し、その後別企業へ転職
  • 報道では、元上司からの依頼を受け、取引先とのデータ共有にも使われるクラウドへデータをアップロードしたとされる
  • 2人はシンテックホズミ在籍時、装置やシステムを扱う設計部で勤務していたと報じられている
  • シンテックホズミは2024年12月、内部調査で事案を把握し、愛知県警に相談
  • 警察は今回の原価情報以外にも営業秘密が漏えいした可能性を視野に捜査していると報じられている
項目 内容
逮捕日 2026年10月5日
対象組織 株式会社シンテックホズミ
容疑 不正競争防止法違反(営業秘密領得、開示)
対象情報 無人搬送車の充電装置に関する原価明細データ
データ複製・開示の時期 2024年9月
会社から警察への相談 2024年12月
情報の受け渡し クラウドストレージへのアップロードと報道
捜査状況 愛知県警は2人の認否を明らかにしておらず、ほかの営業秘密についても捜査中と報道

元上司の依頼を受け、原価データをクラウドへアップロードした疑い

共同通信などによると、逮捕されたのはシンテックホズミの元社員、寺田悠一容疑者(48)と高山幸容疑者(60)です。

逮捕容疑は、2024年9月、当時シンテックホズミに在籍していた高山容疑者が、無人搬送車の充電装置に関する原価データを複製し、すでに退職していた元上司の寺田容疑者に漏らしたというものです。

テレビ愛知や読売新聞などの報道では、寺田容疑者が高山容疑者にデータの提供を依頼したとみられています。高山容疑者は社内サーバーから原価明細データを複製し、クラウドストレージへアップロードした疑いがあるとされています。

読売新聞によると、このクラウドはシンテックホズミが取引先とデータをやり取りするためにも利用しており、寺田容疑者側からも接続できたとされています。

今回の事案では、退職者が退職時にデータを直接持ち出したという構図ではなく、退職後に在職中の元部下へデータ提供を依頼したとみられている点が特徴です。

CBCは、2人がシンテックホズミ在籍時に装置やシステムをつくる設計部で勤務し、寺田容疑者が高山容疑者の元上司だったと報じています。

シンテックホズミは2024年12月に愛知県警へ相談

シンテックホズミが愛知県警へ相談したのは2024年12月です。読売新聞は、同社が内部調査で事案を把握したと報じています。

問題とされるデータの複製・開示は2024年9月で、会社が警察へ相談したのは約3か月後となります。その後、2026年10月5日に元社員2人が逮捕されました。

また、CBCや中京テレビ系の報道では、警察が今回の原価データ以外にも営業秘密にあたる情報が漏えいした可能性を視野に調べているとされています。

シンテックホズミは報道に対し、関係者への謝罪とともに、情報管理の徹底とコンプライアンス意識の向上に取り組む方針を示しています。

シンテックホズミはトヨタ自動車が70%出資、AGVなどを展開

シンテックホズミは愛知県みよし市に本社を置き、1992年9月に設立された企業です。公式サイトによると、資本金は3億5,000万円、従業員数は450人で、トヨタ自動車が70%を出資しています。

事業としては、AGV(無人搬送車)、設備製作、自動車整備機器、DX・デジタルコンテンツ、マニュアル制作などを展開しています。

同社のAGVは、工場内の搬送用途向けに複数のタイプを展開しており、磁気テープ誘導とSLAM方式によるガイドレス走行に対応した製品もあります。充電方式についても接触式・非接触式を用意しています。

今回、警察が営業秘密として捜査対象としているのは、こうした無人搬送車の充電装置に関連する仕入れ先の原価情報などです。

不正競争防止法の「営業秘密」とは

不正競争防止法上の営業秘密は、単に「社外秘」と指定された情報すべてを指すものではありません。

経済産業省は、営業秘密として保護されるために、次の3要件を満たす必要があるとしています。

  • 秘密管理性:秘密として管理されていること
  • 有用性:事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
  • 非公知性:公然と知られていないこと

顧客情報や設計データだけでなく、原価・価格情報や仕入れ条件なども、これらの要件を満たす場合には営業秘密として保護の対象になり得ます。

セキュリティ対策Labでは、営業秘密の3要件や企業が確認すべき管理方法を「営業秘密とは?機密情報との違い、不正競争防止法の3要件と企業の管理方法を解説」で整理しています。

情報システム・セキュリティ部門が確認したいポイント

今回の捜査内容だけから、シンテックホズミの具体的な管理上の不備を断定することはできません。

一方、同様の内部不正を想定する場合、退職者のアカウント停止だけでは対策が完結しません。在職者が正規の権限で重要情報へアクセスし、外部と共有可能なクラウドなどを経由して持ち出すケースも想定する必要があります。

企業では、少なくとも次の項目を確認する必要があります。

  • 原価、設計、仕入れ先、製造条件など重要情報の範囲を定義する
  • 業務上必要な担当者だけにアクセス権を限定する
  • 異動、退職、担当変更に合わせて権限を棚卸しする
  • 外部共有可能なクラウドストレージへのアップロードを記録する
  • 機密ファイルの大量コピー、ダウンロード、外部共有を検知する
  • 取引先向け共有領域へ置けるデータの種類を制限する
  • ファイルアクセス、クラウド監査、認証、端末操作などのログを一定期間保存する
  • 内部不正が疑われた場合に、端末やログを消去せず証拠保全できる手順を整備する

IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」は、資産管理、技術的管理、人的管理、事後対策など33項目の対策を示しています。IPAが公表した調査では、内部不正対策として中途退職者や中途採用者を想定したアクセスログの活用なども課題として挙げられています。

情報漏洩対策全体については、セキュリティ対策Labの「情報漏洩対策とは?企業が実施すべき原因別の予防策と発生時の対応」でも、アクセス権、DLP、クラウド監査ログ、ファイルアクセスログなどの確認項目を整理しています。

https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/corporate-data-protection-response-guide/

出典