ノルウェー軍の演習、レンタカーが兵士の行動や軍施設の入門コードが録画され中国系企業へ送信か

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ノルウェー軍の演習、レンタカーが兵士の行動や軍施設の入門コードが録画され中国系企業へ送信か

ノルウェー軍の大規模演習で使用されたレンタカーに、兵士の移動状況や軍施設のゲートで入力したセキュリティコードが映像として保存されていたことが分かりました。ノルウェーの経済紙Dagens Næringsliv(DN)が2026年10月8日に報じ、同国の主要メディアや軍事専門メディアも伝えています。車両はノルウェーでHertzブランドを運営する企業から調達されており、その親会社をたどると中国の浙江吉利控股集団(Geely)に行き着きます。

軍の演習に参加した兵士らが車内に保存された映像を発見しましたが、映像が中国企業や中国政府へ送信・提供されたと確認されたわけではありません。今回明らかになったのは、調達した車両の録画機能を十分に把握しないまま、軍事施設へのアクセスや部隊の移動に利用していた問題です。

ノルウェー軍のレンタカー録画問題のサマリー

  • 発覚した演習は、2026年9月14~18日にオスロと周辺地域で行われた「Øvelse Hovedstad(首都演習)」です。
  • 主催した郷土防衛隊・オスロ/アーケシュフース地区(HV-02)の兵士約5,000人が参加した大規模訓練でした。
  • 参加した兵士がレンタカー内に保存された映像を発見。乗降した兵士、立ち寄り先、移動や滞在の状況が分かる内容だったと証言しています。
  • 軍施設のゲートや扉を開ける際に入力したセキュリティコードも録画されていたと報じられています。
  • 少なくとも2台は、中国・長安汽車(Changan)系の自動車ブランド「Deepal」の車両と報じられました。
  • レンタカーはノルウェー国内でHertzを運営するFirst Rent A Car Norwayから調達。同社はVolvo Carsを通じて中国・Geelyグループと資本関係があります。
  • 車内で発見された録画データは演習後に削除されたと報じられていますが、車外への送信や他の場所への保存の有無は確定していません。
  • 10月8日にはノルウェー議会議員が国防相に対し、データ取得の防止策や調達車両の安全性について質問を提出しました。
項目 確認された内容
主な報道日 2026年10月8日(DN)
演習期間 2026年9月14~18日
演習名 Øvelse Hovedstad(首都演習)
部隊 オスロ・アーケシュフース郷土防衛隊地区 HV-02
問題となった情報 兵士の乗降・移動・滞在状況、軍施設のアクセスコードを含む車載映像
調達先 First Rent A Car Norway AS(ノルウェーのHertzブランド運営会社)
報じられた車種 少なくとも2台がDeepalブランド
データの外部送信 確認されていない
軍のレンタカー契約 2024年6月~2028年5月、上限3億5,000万ノルウェークローネの枠組みと報道

軍事演習中の車載カメラに、兵士の移動やゲートの入力操作が記録

ノルウェー国防軍の公式案内によると、「Øvelse Hovedstad」は9月14~18日にオスロ・アーケシュフース地区の郷土防衛隊(Heimevernet、HV-02)が実施した演習です。約5,000人が参加し、警察などとの連携や、政府関連施設・重要インフラの警備を想定した訓練が行われました。DNは、戦時におけるオスロ空港の防衛を想定した活動にも車両が利用されていたと報じています。

DNの取材に応じたフレドリク・ブランク(Fredrik Blanck)中尉によると、演習中、兵士らは使用していたレンタカーに動画が保存されていることに気づきました。その映像からは、誰が乗車・降車したか、どこに移動し、誰を乗せ、どこにどれくらい滞在したかが分かったといいます。

さらに、軍用施設のゲートや扉で兵士が入力するアクセスコードまで撮影されていました。DNの取材では、事情を知る他の関係者も録画の存在を裏付けています。演習部隊は代替車両の確保が難しかったため、録画機能の問題を発見した後も車両の利用を続けたと報じられています。

車載映像は演習終了後に車両から削除されたとされています。一方、録画されたデータが車内だけに保存されていたのか、メーカーやレンタカー事業者側のクラウドなど、ほかの保存先にも存在したのかは判明していません。映像が第三者に閲覧された事実や、国外へ転送された事実を示す調査結果も公表されていません。

2024年締結の大型レンタカー契約―Hertz Norwayの所有関係とDeepalは別

DNが9月20日に報じた契約情報によると、ノルウェー軍の兵站組織は2024年、レンタカーの全国的な枠組み契約を締結しました。期間は2024年6月から2028年5月までで、契約の上限額は3億5,000万ノルウェークローネです。これは契約枠の最大値であり、すでに同額が支出されたという意味ではありません。

契約の第一供給者とされるFirst Rent A Car Norway ASは、ノルウェーでHertzのレンタカー事業を運営する会社です。Hertz Norwayの公式発表やプライバシーポリシーでも、ノルウェー事業はFirst Rent A Car Norwayが担うと説明されています。同社はVolvo Carsの企業グループを通じ、中国・Geelyの系列に位置付けられます。米国を本拠とするHertzブランドの世界全体がGeely傘下にあるという意味ではありません。

一方、今回の録画に関係したと報じられた車両のうち、少なくとも2台は「Deepal」ブランドです。Deepalは中国・長安汽車(Changan Automobile)のブランドであり、Hertz Norwayの資本関係に登場するGeelyとは別の企業系列です。レンタカー会社の所有者と、個々の車両の製造元は分けて評価する必要があります。

ノルウェー軍は車両・電子機器に伴う情報セキュリティ上の問題を認識していると説明する一方、特定国のメーカーの車両を一律に禁止する方針は採っていません。また、軍の装備調達当局は、契約に盛り込まれたGPS、車載カメラ、遠隔アクセス、データ保存などの具体的な安全要件について、安全保障上の理由から開示していないと現地紙に説明しています。

ノルウェー議会で国防相への質問に発展

報道当日の10月8日、ノルウェー議会(Stortinget)では、進歩党のヒマンシュ・グラティ(Himanshu Gulati)議員が国防相に書面質問を提出しました。軍事任務に中国関連の車両を利用することの妥当性に加え、軍事施設への出入りに関する機微情報が車両に取得されることを防ぐため、どのようなリスク評価・制限措置が採られていたか説明を求めています。

議会公式サイトでは、質問は10月9日に国防相へ送付されたと記録されています。2026年10月13日の確認時点で、同ページに回答は掲載されていません。

ノルウェーの警察専門誌Politiforumは、警察側にも取材しています。警察の共通調達・サービス部門(PFT)は、警察車両では外部通信を認めず、その状態を検証していると説明しました。他方、レンタカーの利用では、任務の内容に応じて機微情報が外部へ露出する可能性を個別に評価すべきだとしています。

問題は「車載データを誰が管理するか」

今回の事案では、レンタカー内で映像が保存されていたことと、その映像が中国に送られたかどうかは明確に分ける必要があります。ノルウェーの現地報道で確認できるのは車内の録画機能と保存された映像の存在であり、中国政府によるスパイ活動や、中国の親会社による映像取得が立証されたという発表ではありません。

Volvo Carsは、同社に中国資本が入っていること自体が安全保障上のリスクになるとの見方を否定し、Geelyとのデータ共有には法的根拠が必要だと説明しています。ただし、この説明は今回のDeepal車両について、データがローカル保存だけだったことを技術的に証明するものではありません。

機微情報を扱う車両では、車内カメラ、ドライブレコーダー、走行位置履歴、車外カメラ、音声認識、通信モジュールなど、複数の機能が情報取得の経路になり得ます。通信の有無だけでなく、保存先、保存期間、管理権限、車両返却時の消去方法を把握していなければ、業務利用の結果として第三者管理下にデータを残すおそれがあります。

日本の防衛・重要インフラ企業にも通じる車両調達の課題

今回の問題は、社用車やレンタカーが単なる輸送手段ではなく、カメラや通信機能を備えた情報システムでもあることを示しています。防衛関連施設、電力・通信設備、研究所など、立ち入りや移動経路自体が機微情報になる場所では、車両の調達・利用基準にも情報管理の確認が必要です。

車両を機微な任務に使用する際は、①カメラと録画機能の有無、②録画・位置情報の保存場所と閲覧権限、③セルラー通信や遠隔診断の有無、④業務利用中の録画停止・通信制限の可否、⑤返却前の情報消去、⑥委託先・車両メーカー・クラウド運営者の責任分界を事前に確認する運用が考えられます。施設のゲートコードなどが撮影された疑いがある場合は、単なる車両データの削除だけでなく、対象となった認証情報の更新要否を施設管理者が判断する必要もあります。

セキュリティ対策Labでは、中国製EV・コネクテッドカーを巡る安全保障リスクでも、ノルウェーの公共交通機関が行った車両の通信・遠隔管理機能に関する検証を整理しています。そこでも、メーカーによる遠隔アクセス機能の存在と、機能が実際に悪用された事実を区別する必要があります。

出典

ノルウェーの一次資料

現地の調査報道・関連報道