ARPUとは?ARPPU、ARPAとは?計算方法や活用方法について解説!

前回記事ではSaaSビジネスを展開していく上で欠かせない指標であるARR、MRRについて解説しました。

今回はARRやMRRと同様にSaaSビジネスを展開していく上で欠かせない指標「ARPU」について解説していきたいと思います。

ARPUとは

「ARPU」とは「アープ」と読むケースが多く(エーアールピーユーと読むケースも稀にあり)、「Average Revenue Per User」の略語です。英文通り、意味としては「1ユーザーあたりの平均売上金額」を表す指標です。

SaaSビジネスの事業の進捗を把握するためや投資家への説明時などに活用されます。

従来は主に通信事業を始めとする月額課金モデルのビジネスで活用されてきたようですが、SaaS事業を展開する企業が増加してくるとともに、最近ではSaaSにおいてより普及してきています。

ARPUの計算方法

基本的にARPUは以下の計算式で求められます。

ARPU=合計売上高÷ユーザー数

例えば、ユーザーが100人で売上高が5万円の場合、ARPUは以下のとおり算出されます。

50,000÷100=500円

ただし、上記計算式で求められる数値は、過去の売上高に対する数値に限定されるため、ビジネスモデル次第でより適したARPUの計算方法は異なってきます。

ここからは事業の形態別に3つのビジネスモデルにおけるARPUの計算方法を解説していきます。

サービス利用課金ビジネスモデルの場合

サービス利用課金ビジネスモデル(例:サブスクリプションビジネス)の場合、ARPUは以下の計算式で求められます。

ARPU = 1課金ユーザーあたりの平均売上金額(※ARPPU)× 課金ユーザー率(PUR:Paid User Rate)

※ARPPUについては後ほど詳細について触れます

ユーザーにおいて基本の利用料は無料でサービスを利用でき、追加の機能をオプションとして利用する場合に課金が発生するビジネスモデルの場合に活用される指標です。1課金ユーザーあたりの平均売上金額課金ユーザー率からARPUを計算します。

具体的な計算方法

例えば、あるSaaSビジネスモデルにおいて、1ヵ月ごとにサービスを購入しているユーザーの割合が10%、サービスを購入しているユーザーの1カ月あたりの平均購入金額が5,000円、平均購入数が1点、購入頻度が1カ月に1回というケースを想定すると、ARPPUおよびARPUはそれぞれ以下のとおり算出されます。

ARPPU=5,000円×1点x1回=5,000円

ARPU=5,000円×10%=500円

広告表示課金ビジネスモデルの場合

広告の表示をマネタイズポイントとしている広告表示モデル(無料アプリなど)の場合には、ARPUは以下の計算式で求められます。

ARPU =広告表示単価(CPM:Cost Per Mille)×1ユーザーあたりの広告表示機会数(エンゲージメント)

なお、1ユーザーあたりの広告表示機会数(エンゲージメント)とは、ユーザー1人あたりのアプリ使用時に表示される広告機会の数と言い換えると分かりやすいかもしれません。

具体的な計算方法

ある無料アプリのCPMが200円、エンゲージメントが20回/日というケースを想定すると、ARPU(日次)は以下のとおり算出されます。

ARPU=20回×(200円÷1,000)=4円

クリック型広告課金ビジネスモデルの場合

ユーザーが広告をクリックすることで収益が発生するビジネスモデルの場合、ARPUは以下の計算式で求められます。

ARPU=1クリックあたりで発生する売上金額(CPC:Cost Per Click)×広告クリック率(※CTR:Click Through Rate

※CTR=総クリック数÷広告表示回数

具体的な計算方法

ある無料アプリにおいて、CPCが100円、1日あたりの広告表示回数が10万回、1日の総クリック数が1,000回というケースを想定すると、CTRおよびARPUはそれぞれ以下のとおり算出されます。

CTR=1,000回÷100,000回= 0.01(1%)

ARPU=100円×0.01=1円

SaaSビジネスにおけるARPUの活用方法

SaaSビジネスの売上を拡大していくためには、基本的には件数である新規加入者を増やすか、金額を示すARPUを向上させる施策を講じるしかありません。一般的にはSaaSビジネスは一定の水準である閾値まで普及率が達成すると加入者が伸び悩む傾向があることから、ARPUを向上させる施策を講じることが重要です。

また、ARPUを算出する際、ユーザーによるSaaSの導入開始から1週間単位や1カ月単位といった特定期間におけるARPUの累積値を算出(日次ARPU、週次ARPU、月次ARPU等)することにより、継続率と売上の相関性を分析することなども可能となります。

ARPPUARPAについて

ARPUと類似する名称の指標として「ARPPU」や「ARPA」が挙げられます。下記では、「ARPPU」や「ARPA」について説明していきます。

ARPPU(Average Revenue Per Paid User)

ARPPUとは「Average Revenue Per Paid User」の略であり、「1課金ユーザーあたりの平均売上金額」を表します。計算式は下記の通りです。

ARPPU=合計売上金額÷課金ユーザー数

ARRPUは、無料・有料の両方の契約プランを提供しているサービスのうち、有料プランに課金しているユーザーのみを対象とする分析を行うために用いる指標です。無料と有料のユーザーが混在しているサービスを展開している場合に有用な指標です。

無課金ユーザーは含まれない指標であるため、ロイヤルティが高いユーザーがどれほどの金額を支払っているのかを把握することが出来ます。

ARPA(Average Revenue Per Account)

ARPAとは「Average Revenue Per Account」の略であり、「1アカウントあたりの平均売上金額」を示す指標です。計算式は下記の通りです。

ARPA=合計売上金額÷アカウント数

ARPUとの大きく異なる点は、1ユーザーではなく1アカウントあたりの売上を求める点です。今日において1ユーザーが複数のアカウントを持つようになってきており、特にSaaSビジネスでは実態に即した数値の把握という点ではARPAの方が適していると言えます。

ARPUを向上させる取り組み

ここまでARPUの基本的なところを解説してきましたが、ここからいかにARPUを向上させていくかについて触れていきたいと思います。

顧客ロイヤルティの向上

ARPUを増やすためには顧客一人当たりの課金金額を増やす必要があります。具体的にはアップセル(より高額な上位モデルに切り替えてもらうこと)やクロスセル(基本サービス以外に複数のサービスを利用してもらうこと)により課金額を増やすイメージです。

しかしながらロイヤルティが低い段階でアップセルやクロスセルの施策を行っても、押し売りとみられてしまい逆効果となってしまいます。

まずは展開しているサービスの現状把握を行うこと、例えば、NPS(ネットプロモータースコア)調査などは定量的に現在展開しているサービスの評価を把握できる点で有効です。

現状把握をした上で課題点を見つけ、顧客とのコミュニケーションを通じてUI/UXの改善などを行い顧客ロイヤルティを高めることが重要です。

有料・無料の差別化

ARPUを伸ばすためには課金ユーザーを増やすことが重要です。その施策の一つとして、無料ユーザーを有料ユーザーのサービスの内容に差をつけることが挙げられます。

無料ユーザーに対して、サービスの重要部分や顧客にとって必要な内容を有料化することにより、課金してでもサービスを利用したいと思わせる必要がありますが、バランスには注意が必要です。有料ユーザーと無料ユーザーの間であまりにも大きな差が生じるようだと、サービスの利用自体から離れていく可能性もあります。

見極めが難しいところではありますが、無料ユーザーの関心度合の高まりなどを見て、有料サービスの接点も増やしていき、比較的ユーザーにとって負荷が軽いサービスから利用してもらうことで、購買へつながるようなきっかけ作りを進めていくことが有効です。

まとめ

今回の記事ではARPUについて解説してきました。SaaSビジネスを進めて行く上で様々な指標が出てきますが、自社のビジネスモデルを捉えた上でどのような指標を活用していくか、各指標の意味を正しく理解した上で、事業の改善及び向上につなげていきましょう。

関連記事

TOPへ