クレジットカード 受け取りがマイナンバーなどICチップでの確認へ-海外在住者・一時滞在先での受け取りにどう影響するか

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クレジットカード受け取りがマイナンバーなどICチップでの確認へ-海外在住者・一時滞在先での受け取りにどう影響するか

日本郵便は2026年9月14日、クレジットカードなどの送付に利用される「本人限定受取郵便」を2027年4月1日から見直すと公表しました。

変更の中心は、本人確認書類の券面を目視する方式から、運転免許証やマイナンバーカードなどのICチップ情報を使って真正性を確認する方式への移行です。

特定事項伝達型で利用できる本人確認書類は、運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書の4種類へ限定されます。スマートフォンに搭載したマイナンバーカードによる本人確認にも対応します。

この変更は、偽造された本人確認書類を使って他人名義のクレジットカードなどを受け取る行為の難易度を上げる一方、パスポートを主な本人確認書類としている人や、海外在住者が日本の一時滞在先でカードを受け取るケースでは、受け取り方法の確認が必要になります。

ただし、「海外在住者はカードを受け取れなくなる」「民泊を使った不正受け取りがなくなる」とまでは公表されていません。本稿では、日本郵便の新ルールと国外転出者向けマイナンバーカードの制度を基に、実務上想定される影響を整理します。

クレジットカード受け取りIC確認のサマリー

  • 日本郵便は2027年4月1日から本人限定受取郵便を見直します。
  • 背景には、2027年4月に施行される犯罪収益移転防止法施行規則の本人確認方法の厳格化があります。
  • 特定事項伝達型では、本人確認書類の券面確認からICチップ情報を使った確認へ移行します。
  • 利用できる物理的な本人確認書類は、運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書の4種類です。
  • パスポートは新しい本人確認書類の対象外になります。
  • 特定事項伝達型では、スマートフォンに搭載したマイナンバーカードも利用できます。
  • 日本郵便は現在も、郵便物の宛名と本人確認書類の記載が一致しない場合、郵便物を渡せない場合があると案内しています。
  • 基本型でも本人確認書類はICチップ付きの4種類へ限定されます。
  • 基本型は2027年4月から住所・居所への配達にも対応します。
  • 特例型は2027年3月31日で終了します。
  • 日本国籍の海外在住者は、一定の条件を満たせば国外転出者向けマイナンバーカードを継続利用・新規申請できます。
  • IC確認により、券面だけを改ざんした偽造身分証によるなりすましは難しくなると考えられます。
  • 一方、正規本人確認書類そのものの盗難・悪用や、本人をだます詐欺まで防止できる制度ではありません。

2027年4月からクレジットカード受け取りは何が変わるか

本人限定受取郵便には「基本型」「特例型」「特定事項伝達型」があります。クレジットカード会社や金融機関が本人確認を兼ねて利用するのが、特定事項伝達型です。

項目 現行 2027年4月以降
特定事項伝達型の本人確認 写真付き本人確認書類の券面を確認 ICチップ情報と券面を照合
利用できる書類 パスポート等を含む複数の写真付き書類 運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書
スマホのマイナンバーカード 対応なし 特定事項伝達型で対応
基本型 郵便局窓口が原則 住所・居所への配達も可能
特例型 利用可能 2027年3月31日で終了

制度変更そのものは、以下の既存記事で詳しく整理しています。

日本郵便、本人限定受取郵便を2027年4月に見直し ICチップ確認へ移行、スマホのマイナンバーカードにも対応

なぜICチップ確認へ変えるのか

従来の券面目視では、氏名、住所、生年月日、顔写真などが精巧に改ざんされた場合、郵便局員が外観だけで真正性を判断する必要がありました。

ICチップ確認では、券面に記載された情報とカード内部の電子情報を照合できます。例えば、券面の住所だけを別の住所へ書き換えた偽造カードであれば、ICチップ内部の情報と一致しないため、従来より発見しやすくなります。

2027年4月の犯収法本人確認変更については、以下の記事で整理しています。

犯収法の本人確認、2027年4月に大幅変更 身分証の画像・コピーからICチップ確認へ

民泊・ホテルなど一時滞在先を使った不正受け取りは難しくなるのか

ICチップ確認によって影響を受ける可能性があるのが、「郵便物の送付先」と「偽造した本人確認書類の住所」を合わせてカードを受け取る手口です。

例えば、第三者が他人名義でカードを申し込み、民泊、ホテル、一時利用している住居などを送付先として登録し、その住所に合わせて本人確認書類の券面を偽造した場合を考えます。

現行の券面目視では、郵便物の宛名と偽造書類の券面情報が整っていれば、精巧な偽造を人の目で見抜く必要があります。2027年4月以降はICチップ内部の情報との照合が加わるため、券面だけを書き換えた偽造書類では受け取りの難易度が上がります。

ただし、民泊やホテルを受取場所として使う行為そのものを新制度が禁止するわけではありません。現在の特定事項伝達型でも、郵便物の宛名と本人確認書類の記載が一致しない場合は受け取れません。

したがって、「民泊を使った不正受け取りがなくなる」というより、「一時滞在先の住所に合わせて券面だけを偽造するタイプのなりすましは成立しにくくなる」と捉える方が正確です。

クレジットカードの不正発行を完全に防げるわけではない

今回強化されるのは、主に「郵送でカード等を交付する際、本当に名あて人本人へ渡しているか」という本人確認部分です。

フィッシングで既存カード情報を盗む、ECサイトからカード情報を取得する、正規の本人確認書類そのものを盗んで使うといった手口には直接の効果はありません。

セキュリティ対策Labでは、偽造マイナンバーカードを利用した口座開設やクレジットカード不正利用が疑われる事件も扱っています。

偽造マイナンバーカードで口座開設、クレカなど約6億円不正使用か

海外在住者はクレジットカードを受け取りにくくなる可能性

今回の変更で影響を確認したい利用者の一つが海外在住者です。

従来、本人確認書類として利用できたパスポートは、2027年4月以降の新しい本人限定受取郵便では対象外になります。

そのため、海外在住の日本人が一時帰国中に日本国内でカード等を受け取るケースでは、運転免許証やマイナンバーカードなど、新ルールに対応した本人確認書類を準備できるかが問題になります。

ただし、海外在住者が一律にマイナンバーカードを利用できないわけではありません。

2024年5月27日から、日本国籍を持つ人は国外転出後も所定の手続きを行えばマイナンバーカードを継続利用できます。2015年10月5日以降に国外転出した日本国籍の人で、現在マイナンバーカードを持っていない場合も、国外転出者向けマイナンバーカードを申請できます。2026年5月からはオンライン申請にも対応しています。

実務上の論点は、国内で利用できる4種類の本人確認書類を持っているか、郵便物の宛名と本人確認書類の記載内容を照合できるか、カード会社自体が海外在住者への発行・更新を認めているか、一時帰国先をカード送付先として利用できるかです。

パスポートしか持たない一時帰国者は選択肢が狭まる

海外在住で、日本の運転免許証を持っておらず、国外転出者向けマイナンバーカードも準備していない場合、2027年4月以降は本人限定受取郵便で利用できる本人確認書類がなくなる可能性があります。

カード会社によっては本人限定受取郵便以外の本人確認・受け取り方法を提供している場合があります。海外在住者や長期出張者へカードを発行する企業では、「郵便側で受け取れない場合にどの代替手段を用意するか」を確認する必要があります。

国外転出者向けマイナンバーカードが代替手段になる可能性

国外転出者向けマイナンバーカードは、海外在住の日本国籍者が利用できる公的なIC本人確認手段です。

ただし、本人限定受取郵便では郵便物の宛名と本人確認書類の記載内容の照合が必要です。国外転出者向けカードを持っているだけで、任意の国内滞在先へカードを送付して受け取れるとまでは確認できません。

この点は、利用するカード会社と日本郵便の案内を確認する必要があります。

カード会社には海外居住・一時帰国者向けの代替フローが必要

カード会社や金融機関側では、本人確認厳格化によって不正リスクを減らせる一方、正規利用者が受け取れないケースへの対応が必要になります。

特に確認したいのは、海外駐在員、海外移住者、長期留学者、一時帰国中の利用者、引っ越し直後で本人確認書類の住所更新が終わっていない利用者、旧姓・新姓の変更直後の利用者です。

日本郵便は、郵便物の宛名が新住所・新姓で、本人確認書類が旧住所・旧姓のままの場合、特定事項伝達型では渡せない場合があると案内しています。

本人確認強化で期待できる効果

1. 券面だけを偽造した身分証への耐性向上

人の目で券面を見るだけでなくIC情報と照合するため、氏名や住所、写真だけを書き換えた偽造書類を使いにくくなります。

2. 他人名義カードの受け取り難易度上昇

郵便物の宛名と本人確認書類の電子情報を一致させる必要があるため、他人名義で申し込んだカードを第三者が受け取る難易度が上がります。

3. カード発行時KYCの信頼性向上

本人限定受取郵便をKYCフローへ組み込む金融機関・カード会社にとって、郵便配達時の本人確認結果の信頼性を高められます。

ただし、これらは「不正をゼロにする」効果ではなく、特定のなりすまし手口のコストと難易度を上げる効果と考えるのが適切です。

利便性は下がる面と上がる面がある

本人確認書類の種類が減るため、一部利用者にとっては不便になります。

一方で、特定事項伝達型ではスマートフォンのマイナンバーカードを利用できるようになり、基本型では希望に応じて住所・居所への配達も選べるようになります。

今回の変更は「本人確認書類は厳格化する」「受け取り手段は一部拡張する」という2つを同時に進めるものです。

クレジットカード会社・金融機関が2027年4月までに確認したいこと

  • 特定事項伝達型・基本型・特例型のどれを利用しているか
  • 特例型終了に伴う移行が必要か
  • 利用可能な本人確認書類の案内を4種類へ更新したか
  • パスポート利用終了を顧客へ案内したか
  • 海外在住者・一時帰国者向けの代替本人確認手段を用意するか
  • 引っ越し・改姓直後の受取不能ケースをFAQへ反映したか
  • スマートフォンのマイナンバーカードを案内するか
  • 受取不能時の再本人確認・再発送手順を整備したか
  • 2027年3月末発送分が4月1日以降に受け取られるケースを確認したか
  • コールセンターや店舗の案内を更新したか

マイナンバーそのものを郵便局員が確認する制度ではない

今回利用されるのは、マイナンバーカードなどのICチップを使った本人確認です。

「マイナンバーカードを使う」ことと「12桁のマイナンバーを本人確認のために利用する」ことは同じではありません。

今回の目的は、本人確認書類の真正性と名あて人本人であることを確認することです。

2027年4月はカード受け取りだけでなくKYC全体の転換点

2027年4月には、本人限定受取郵便だけでなく、犯収法に基づく対面・非対面の本人確認方法も大きく変わります。

金融機関やカード会社では、eKYC、店頭本人確認、郵送本人確認、本人限定受取郵便、スマートフォンのマイナンバーカードを個別に対応するのではなく、本人確認フロー全体を見直す時期になります。

本人確認の厳格化で不正発行のハードルは上がる一方、海外在住者、住所変更直後の利用者、パスポートしか持たない利用者など、正規顧客が手続きを完了できないケースも想定しておく必要があります。

出典