EU理事会は2026年3月13日、AIに関する一部ルールを簡素化する案について加盟国側の立場に合意したと発表しました。
最大の実務影響は高リスクAIの適用延期
今回の見直しで最も実務に影響しそうなのは、高リスクAIシステムに関する適用時期の後ろ倒しです。欧州委員会は、高リスクAI向けの必要な標準や実務ツールが整うまで、適用開始を最大16か月遅らせることを提案していました。理事会案では、その遅延後の日程を固定し、単体の高リスクAIシステムは2027年12月2日、製品に組み込まれた高リスクAIシステムは2028年8月2日から適用する形に整理しました。
非同意の性的・親密画像生成を新たに禁止
今回の理事会案で特に注目される追加点は、AI Actに新たな禁止行為を加えたことです。理事会は、本人の同意のない性的または親密なコンテンツの生成、および児童性的虐待素材の生成に関するAI実務を禁止する規定を新たに盛り込みました。EUの簡素化案という位置づけでありながら、ここでは明確に規制強化が入った形です。
この点は、いわゆるディープフェイクの中でも、非同意の性的画像や動画、いわゆるAIヌード生成のような用途を強く意識した改正と読めます。生成AIを巡る規制議論では、競争力や負担軽減が前面に出やすい一方、EUはここで被害性の高い領域については明確に線を引いたことになります。特に、非同意の性的・親密コンテンツと児童性的虐待素材を同列で禁止対象に置いたことは、今後の実装・執行でも重視されるポイントになりそうです。
ヌード化やディープフェイク規制が強まる背景
今回EU理事会が、非同意の性的・親密コンテンツ生成を明確に禁止対象へ加えた背景には、生成AIの普及によって、本人の画像や映像をもとにしたヌード化や性的ディープフェイクの作成が容易になり、権利侵害や人格権侵害が急速に深刻化している事情があります。
AIの利用を巡っては、他者の権利侵害、誤情報の拡散、AI悪用による攻撃の巧妙化が問題になっていると整理されています。また、近年は国家を背景としたアクターが、AIで生成した偽の音声や動画を悪用して情報戦や影響工作を行う事例も目立っており、欧州ではルーマニア大統領選挙、ドイツ総選挙、ポーランド大統領選挙、モルドバ共和国議会選挙で外国からの影響工作が観測されたとされています。








